はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 320 [花嫁の秘密]

暖かな部屋でお腹が満たされると、細かいことはどうでもよくなった。

サミーがいつもより素直なのは、隠し事をしているからだとわかっている。それを追求するつもりはいまのところはない。せっかく機嫌良くワインを飲んでいるのに、雰囲気をぶち壊すような真似をするのはあまりにも愚かだからだ。

「それで?君は今夜どこへ行っていたんだ」

エリックが追求しないからといって、サミーもしないとは言っていない。

「帽子屋へ行くと言っただろう」ひとまず月並みな返しをしたが、サミーが納得するはずもなく、じろりとひと睨みしてワインをちびりと飲んだ。

「それから?」サミーはテーブルにグラスを戻し、ソファの上に足を乗せてウールケットにくるまった。本格的に話を聞く体勢なのか、ソファの肘かけと背中の間にクッションを挟みもぞもぞといい位置を探っている。

「聞いてどうする?」それこそ聞いても無駄だろう。

「ただの世間話だよ。黙ってろって言うのならそうするけど」サミーはそう言って、目を閉じた。まさかまた寝ようってわけじゃないだろうな。

「たいしたことはしていない。帽子屋と仕立屋に寄って、それから雑誌社に顔を出した。頼まれていた記事をひとつ渡してきたんだ」そのあとS&J探偵事務所に寄ったが、これは言うべきかどうか迷うところだ。

「君はいつ記事を書いているんだい?僕は一度も君が机に向かっている姿を見たことないんだけど」サミーは挑発的な目をエリックに向けた。

「お前がのんびり茶を飲んでいる間に、俺が何をしていると?」こいつのために俺がどれだけ動き回っていると思っているんだ。時々自分でも馬鹿馬鹿しくなるが、一日中サミーの事ばかり考えている。いまはまだ考えていられる時間があるからいいが、そのうち仕事が入ればそんな余裕はなくなる。

「さあね。でも教えてくれたら、僕に何かできることがあるかもね」サミーはにこりとした。

エリックは思わず顔を顰めた。「酔っているのか?」渋面のままじっとサミーを見つめ返事を待ったが、酔っていると認めるはずがないことはよく知っている。

もう少し酒に強くなってもらわないと、おちおち一人でパーティーにも出席させられない。いったいいままでどうしていたのか。もちろんそんなものに出席しないし、酒も飲まなかったのだろう。

サミーが足先でエリックの太ももを突いた。「クィンの話はいつしてくれるんだ?」

「こっちへ来たら喋ってやる」エリックはサミーの足を掴み軽く引っ張った。ちょっかいを出してきたのはサミーだ。せっかく一緒に飲んでいるのに――サミーはほとんど飲んでいないし、もう飲んでいないが――離れている方がおかしい。

「君がこっちに来ればいい」どことなしか、揶揄うような声音。こういうきわどいやり取りをジュリエットとしているかもしれないという可能性が頭に浮かび、カッと頭に血がのぼるのを感じたが、誘惑には逆らえなかった。

エリックはほとんど横になっているサミーに重なるようにして距離を縮めた。

つづく


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