はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 310 [花嫁の秘密]

ふと目を覚ますと、暖炉の小さな炎が目に入った。顔に当たるふわふわとした毛布はいつもと違う匂いがした。狭い場所は嫌いじゃない。広い場所だと身を守れないからだ。

そろりと起き上がると、肩がみしりと音を立てた。下になっていた腕が血流を取り戻し、みるみる生き返ってくのがわかった。こういう感覚も嫌いじゃない。

目の前の椅子でエリックが目を閉じて座っている。眠っているのだろうか?なぜベッドへ行かない?

傍のテーブルにはブランデーで満たされたままのグラスがひっそりと置かれていた。結局口を付けなかったのか、飲んでいる途中で眠ってしまったのか、どちらだろう。

炉棚の上の時計を見ようとしたが、暗くて時間が読み取れなかった。脚をソファから降ろし、毛布を抱いて再びソファに深く沈んだ。

エリックの話を聞きそびれてしまった。まあ聞いたところで僕にできることはなさそうだけど。クィンと何を話したのか気にはなるけど、あのクラブを譲れという以外の会話をしたとは思えないし、あの短い時間ではたいした話も出来ていないだろう。

数日後にはまたジュリエットと出掛けないといけないと思うと、ひどく気が滅入った。しかもこの関係を少なくともあと半年は続けなければならない。賭けはもうやめるとエリックは言ったが、具体的に何か考えがあるのだろうか。

「起きたのか?」エリックのしゃがれた声に、サミーの物思いは遮られた。

「そっちこそ」

「ちょっと考え事をしていただけだ。お前のせいで考えることは山のようにあるからな」

「僕の事は放っておいて構わないよ。自分の事は自分で何とかするから。それよりも、アンジェラが無事ラムズデンへ行けるようにこっちでできることをしなきゃ」

「ハニーがクリスの言うことを聞いて余計なことをしなければ、問題は起こりようがない」エリックは大きなあくびをして、肘掛に寄り掛かった。

「もう手配済みなんだな」サミーは毛布を脇に置いた。今夜もうこれでお開きだ。

「ただ旅をしてしばらく向こうに滞在するだけだ。今回の犯人が誰であれ、おそらくこれ以上何かをする気はないだろう。念のため危険の少ない場所へ避難してもらう、それだけだ」エリックは簡単なことだとばかりに言いきった。

サミーはエリックに同意するしかなかった。確かに難しく考える必要はない。「向こうはフェルリッジ以上に閉鎖的な場所だから、よそ者が来ればすぐにわかるし、そもそも村に入れないと思う」

「ハニーがうまく受け入れてもらえればいいが」さすがのエリックも、ようやく兄らしい不安な様子を見せた。危険を取り除くことは出来ても、領民の心までは操れないようだ。

「あの子なら大丈夫だよ」サミーは自信を持って請け合った。

つづく


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