はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 312 [花嫁の秘密]

いままで彼女と二人きりになったことがあっただろうかと、サミーは束の間記憶を巡らせた。
確か、アンジェラ救出の時にエリックの屋敷で。会話はほとんどしなかったはずだ。僕は怪我をしていて、熱もあったせいかぼんやりとしていたから、記憶があいまいなだけかもしれない。

エリックが例の調査員――クレインと言ったか――に呼ばれ、席を外してもう一〇分は過ぎた。もちろん見たこともない男がずかずかと居間に入ってきたわけではなく、エリックが勝手にクレインの気配を察知して出て行ったわけだけど、きっとあの男は何度かここに忍び込んだことがあるのだろう。

エリックがここを拠点として仕事をするのを、黙って見ているべきかどうか悩ましいところだ。

「今回のこと、エリックから説明は?」メリッサがひと通り皿の上のものを胃に納めるのを待って、サミーはようやく口を開いた。いつまでも黙っているわけにもいかないので仕方がない。

「カウントダウンのイベントに一緒に行こうとだけ。いつもそうだけど、詳しいことは話してくれないのよ」お腹の満たされたメリッサは、持っていたハンカチで上品に口元を押さえた。こういう女性らしい仕草は演技なのか素なのか。

「アンジェラのことは聞いた?」どこまで勝手に話すべきだろうか。彼女の事はほとんど知らないが、エリックは頼りにしているし、アンジェラの親友でもある。僕もそれなりに信頼関係を結ぶべき時かもしれない。

「まだ詳しくは。ただ危険があるとだけ」メリッサは心配そうに眉根を寄せた。

「危険はあるかもしれないけど、クリスがそばにいるから大丈夫さ」そうでなければならない。きっとクリスは神経質になっているだろうから、なだめ役でセシルが送られたのだろう。「それと、年明けにはその正体不明の危険を避けて、北の領地へ旅発つ予定だ」

「ミスター・リードもご一緒に?」メリッサはテーブルに手を伸ばして、ティーポットに触れた。空のカップを見て慣れた手つきで紅茶を満たしていく。

「サミーでいい」どうせみんなそう呼んでいる。信頼関係を結ぶにはまずそこからだろう?「僕はこっちでジュリエットの相手をしなきゃいけないんでね。エリックの指示で」もちろん自分の考えも同じだが、エリックに指示されたことには変わりない。

「まあ、それでわたくしの出番ね」メリッサの口調からは、当然予想していたことがうかがえた。

エリックが女性を伴う場所へ出席するときはいつも彼女が一緒だ。他に頼める相手はいないのだろうか?

「いまはマナースクールの準備で忙しいのでは?購入した屋敷に不具合があったと聞きましたが」サミーは訊いて、せっかく注いでもらった紅茶に口をつけた。

「少し手入れが必要なだけでたいしたことはありません。エリックがどうしてあの屋敷を選んだのか、理由がわかって腹は立てましたけど」メリッサは優雅に眉を吊り上げた。

「エリックが選んだのか?」そう尋ねたものの、意外でも何でもないことに気づいた。

あそこはオークロイド領に隣接してコートニー家の土地がある。オークロイドが一括して管理しているんだったか、前にそんなことを聞いた覚えがある。記憶が確かなら、屋敷は破産したウィンター卿が所有していたはず。もしかして、エリックは彼女にあの屋敷を贈ったのだろうか?てっきり彼女が購入したものだと思っていたが、そっちの考えの方がしっくりくる。

エリックとメリッサの関係はどういう類のものなのだろう。かなり親密な様子から、やはり過去に付き合っていたのだろうか。お互い隠れ蓑にしているとばかり思っていたが、別の可能性もあるということだ。

つづく


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