はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 306 [花嫁の秘密]
エリックがあれほど怒っている姿を見たのは初めてだった。
ドアの向こうで盗み聞きする余裕があったのは、デレクがアンジェラのことを口にするまで。
暗にジュリエットをけしかけるぞと脅していたけど、すでに行動を起こしたのでは?あのクリスマスの贈り物がデレクの仕業だったとしたら、このあとどう行動すべきだろう。
「だいたいなんだってデレクを部屋に入れたんだ?」
「そっちがドアを閉めて行かなかったからだろう」サミーはエリックに詰め寄った。あんな無防備な姿をデレクに見られて、僕がどれほど屈辱的だったか。
「ドアは閉めた……」エリックは曖昧に返事をし、腕を伸ばしてサミーを抱きすくめた。
「誤魔化そうたって――」言い掛けた言葉はエリックの口で封じられた。黙らせるには一番効果的な方法だ。けど、いったいどうしてこんな場所で。「エ……リッ――」
エリックはアルコールの味がした。クィンと話をするときに飲んだのだろうか?ふんわりと香るのは僕の苦手なブランデーか。
「ココアは来たのか?」エリックがキスの合間に尋ねた。
「まだだ」もしかすると今にも給仕係がココアを持ってここへやってくるかもしれない。だから今すぐエリックを押し退けないといけないのに、もう少しだけ味わいたいという誘惑に抗えなかった。
ほんの一瞬離れた唇は再び重なり、サミーは自然とエリックの首に両腕を回していた。これではどちらの方がより欲しがっているのかわからない。
すっかり酔いは冷めたと思っていたのに、エリックのキスでまた酔ってしまったのだろうか。こんなことでデレクの企みに対処できるとでも?
サミーは目を開けた。エリックと目が合い、こいつがずっと目を開けていたことに気づいた。悪趣味にもほどがある。
「デレクとのこと、聞かせてもらうぞ」エリックはそう言って、名残惜しげに唇を離した。
「クィンとは何の話を?君がきちんと話すなら、僕も考えるけど」口元を手で拭い、エリックから離れた。距離が近くなり過ぎないように気を付けているのに、結局エリックの思い通りだ。それとも僕が弱いだけなのか。
「戻ってからな」エリックは諦めの溜息を吐いて、絨毯に落ちた革紐を拾った。いつの間にほどけたのかと、サミーを横目で見ながら素早く髪を結びなおした。
「もう帰るのか?デレクはどうする?」
「さっき来たホワイトと次の計画でも練るんじゃないのか。監視はつけてあるからそのうち報告が来る」
だったら今夜は何しにここへ?もしかして僕がエリックの計画を壊してしまったのだろうか。例えそうだったとしても、悪いのはデレクで僕じゃない。
「ホワイトにも挨拶しておこうか?」様子見はもう終わった。ホワイトにも宣戦布告しておけば手間が省ける。
「お前は余計なことをするな。とにかく回りくどいことはやめだ」
エリックに強く言い返され、サミーはムッとした。「それなら何をする?」
「賭けはもう終わりだってことだ。あいつらには今後この件には関わらせない」
「それだとジュリエットが動けなくなるだろう?」
「どうかな?ジュリエットはすんなり諦めるような女じゃない。デレクが当てにならなくても、何か考えるだろう。それにデレクがこのまま引き下がると思うか?」今度はエリックの方から詰め寄り、サミーに同意を求めた。
確かに、これは一旦戻って次の手を考える必要がありそうだ。
「それならぐずぐずしてないで、さっさと帰ろう」
つづく
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ドアの向こうで盗み聞きする余裕があったのは、デレクがアンジェラのことを口にするまで。
暗にジュリエットをけしかけるぞと脅していたけど、すでに行動を起こしたのでは?あのクリスマスの贈り物がデレクの仕業だったとしたら、このあとどう行動すべきだろう。
「だいたいなんだってデレクを部屋に入れたんだ?」
「そっちがドアを閉めて行かなかったからだろう」サミーはエリックに詰め寄った。あんな無防備な姿をデレクに見られて、僕がどれほど屈辱的だったか。
「ドアは閉めた……」エリックは曖昧に返事をし、腕を伸ばしてサミーを抱きすくめた。
「誤魔化そうたって――」言い掛けた言葉はエリックの口で封じられた。黙らせるには一番効果的な方法だ。けど、いったいどうしてこんな場所で。「エ……リッ――」
エリックはアルコールの味がした。クィンと話をするときに飲んだのだろうか?ふんわりと香るのは僕の苦手なブランデーか。
「ココアは来たのか?」エリックがキスの合間に尋ねた。
「まだだ」もしかすると今にも給仕係がココアを持ってここへやってくるかもしれない。だから今すぐエリックを押し退けないといけないのに、もう少しだけ味わいたいという誘惑に抗えなかった。
ほんの一瞬離れた唇は再び重なり、サミーは自然とエリックの首に両腕を回していた。これではどちらの方がより欲しがっているのかわからない。
すっかり酔いは冷めたと思っていたのに、エリックのキスでまた酔ってしまったのだろうか。こんなことでデレクの企みに対処できるとでも?
サミーは目を開けた。エリックと目が合い、こいつがずっと目を開けていたことに気づいた。悪趣味にもほどがある。
「デレクとのこと、聞かせてもらうぞ」エリックはそう言って、名残惜しげに唇を離した。
「クィンとは何の話を?君がきちんと話すなら、僕も考えるけど」口元を手で拭い、エリックから離れた。距離が近くなり過ぎないように気を付けているのに、結局エリックの思い通りだ。それとも僕が弱いだけなのか。
「戻ってからな」エリックは諦めの溜息を吐いて、絨毯に落ちた革紐を拾った。いつの間にほどけたのかと、サミーを横目で見ながら素早く髪を結びなおした。
「もう帰るのか?デレクはどうする?」
「さっき来たホワイトと次の計画でも練るんじゃないのか。監視はつけてあるからそのうち報告が来る」
だったら今夜は何しにここへ?もしかして僕がエリックの計画を壊してしまったのだろうか。例えそうだったとしても、悪いのはデレクで僕じゃない。
「ホワイトにも挨拶しておこうか?」様子見はもう終わった。ホワイトにも宣戦布告しておけば手間が省ける。
「お前は余計なことをするな。とにかく回りくどいことはやめだ」
エリックに強く言い返され、サミーはムッとした。「それなら何をする?」
「賭けはもう終わりだってことだ。あいつらには今後この件には関わらせない」
「それだとジュリエットが動けなくなるだろう?」
「どうかな?ジュリエットはすんなり諦めるような女じゃない。デレクが当てにならなくても、何か考えるだろう。それにデレクがこのまま引き下がると思うか?」今度はエリックの方から詰め寄り、サミーに同意を求めた。
確かに、これは一旦戻って次の手を考える必要がありそうだ。
「それならぐずぐずしてないで、さっさと帰ろう」
つづく
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