はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

裏・花嫁の秘密 ブログトップ
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裏・花嫁の秘密 1-1 [裏・花嫁の秘密]

本編160話の続き、別視点



こういう屋敷の例にたがわず、中央には玄関広間そして階段がある。
小さな屋敷の為、階段は半円を描く様にカーブしている。
サミーは階段をあがり、無意識にアンジェラのいる部屋とは反対方向へ向かう。そうすれば、そちらはおのずと屋敷の主人の部屋がある。

サミーはおそらくエリックの寝室の扉を開けた。左右に続き部屋があり、珍しく二階にバスルームが備え付けられているようだ。

とにかく横になりたかった。
アルコールには弱いと知っているくせに、エリックはなんだかんだ言いながら飲ませる。
酔って、アンジェラの事を忘れろという意味なのだろう。
そんな事で忘れられるのならば、忘れたい。

サミーはベッドに横になった。

先ほどエリックが言った言葉が頭の中をぐるぐると回っている。

『愛する夫に――』

それは自分ではない。どうして、自分ではなくクリスなのだろうか。どうしてすべてクリスのものなのだろうか。
何もいらないから、アンジェラだけ僕にくれないだろうか。

サミーは目を閉じた。

こんな気持ちのまま一生を過ごすのだろうか。僕は、アンジェラのいない世界へ行くべきなのだろうか。

酔っている時はどうしても、気持ちがマイナス方向へ向く。
だから、酒は飲みたくないのだ。

ここのバスルームはすぐにお湯が出るのだろうか。
酔いを醒ますためにもシャワーを浴びたい。その前にシャワーは完備されているのだろうか。

サミーはゆっくりと起き上がった。傍の椅子にエリックが座っていた。

「悪趣味だな。いるならいるって言えよ」

「何か考え事でもしてるのかと思ったから、時間をやったのさ」

「シャワーは備え付けてあるのかと考えていたのさ」

「だと思った」
エリックがふふっと笑い、立ち上がる。バスルームへつづく扉を開け、「準備は出来ている」と得意げに言った。

サミーはベッドの淵へ腰かけ慎重に足を絨毯へおろす。このまま立ち上がってもふらつかないだろうかと、今更格好の悪い姿を晒す事を気にする自分に苦笑する。

「だが、シャワーはだめだ。傷に触る」
エリックが再び傍までやってきた。

「子供じゃないんだ、かまわないでくれ」
年下のくせにいちいち僕を子ども扱いする。サミーは差し出された手を振り払い立ち上がった。

足元がほんの少しふらりと揺れた。
それを見たエリックが、ほら見ろとばかりにふふんと鼻を鳴らした。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。
本編はしばしお休み。
サミーとエリック視点でお話は進みます。
とりあえず、傷ついたサミーは酔ってます。 

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裏・花嫁の秘密 1-2 [裏・花嫁の秘密]

傷を庇うように浴槽のふちに左腕をのせ湯船にしっかりと浸かった。
ぐるぐると目が回る。
急速に酔いが回るのを感じ、サミーはこのまま湯船に沈んでしまえばいいと思った。
楽になりたい。

だが結局は、湯船からあがりタオルで肌の表面に残る水分を残らず拭き取った。傍にあった木製の椅子におかれたガウンを羽織り、元の部屋へ戻った。

部屋へ戻ると、当たり前のようにエリックが待っていた。

「もしかして、僕を抱こうとでもしているのか?」
熱い湯で頬を上気させたサミーは無防備な猫のように懐っこくエリックに近寄る。

「抱かせてくれるのか?」
真面目に訊き返すエリックの手には、新しいガーゼと包帯が握られていた。

サミーは黙って、エリックの前に立った。

「さっさと腕を出せ」
そう言って、エリックはガウンの腰ひもを解いた。

「何する!腕だけなら、ガウンを脱ぐ必要はないだろう」
サミーは焦り、ガウンの前をしっかりと合わせた。

「まさか、お前、実は女だとか言わないよな」笑いを堪えながら言う。

「そうだと言ったら?」
同じように笑いを堪えるが、ついぷっと吹き出してしまった。

「尚更脱がせたいね」
エリックはサミーをベッドの端に座らせると、袖をまくり腕に清潔なガーゼを当て包帯を巻いた。
その間サミーは、エリックの手際をじっくりと眺めていた。

どうしてこいつはこんなにも何事においても手際がいいのだろうか?すべてが用意周到で恐ろしささえ感じる。

「さて、ご褒美をもらおうか?」
ガウンの袖をおろしながら、エリックは顔を近づけて来た。

また、キスをされるのだろうか。エリックとのキスは、ロゼッタ夫人の晩餐会以来だっただろうか。そういえばあの時も酔っていた。

こんなふうにキス一つを記憶している自分に驚く。そうしている間に、エリックの唇が重なった。最初はいたずらに戯れるように軽く。そのうち舌先で唇の隙間を擽り、厚かましくも侵入してきた。

厚かましいと思っているのに、身体が裏腹に熱く反応している。きっと酒のせいだ。
だが、エリックのキスは、何というか、以前と全く違って、心地いい。

この感触、最近味わった気がする。
けれど、よく思い出せなかった。

エリックのキスが最初に比べ激しくなってきた。
ついていけない。

サミーは息継ぎをするように、顔を逸らした。
エリックはサミーの頭を抱えるようにして、もう一度口づけて来た。

二度も許した覚えはない。

サミーは抵抗しようと、腕をあげたが、それがかえってエリックに身体を抱き込ませる隙を与えてしまった。

つづく


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裏・花嫁の秘密 1-3 [裏・花嫁の秘密]

身体も反応し、キスも返してくるのに、それでも拒もうとする。そんなサミーが、らしくて、いい。

なかなか従順じゃない所が、所有欲を掻きたてられる。
けれど、そろそろ本当にこいつが欲しい。

抱いてしまえば、何かが変わるかも知れない。変わって貰わなければ困る。いい加減、他の男のものなど諦めるんだ。
エリックはサミーの腕を庇うように、ゆっくりと押し倒していった。
ガウンの合わせから手を差し入れ、胸元に手を這わせる。指先で乳首をかすめると、サミーは敏感に反応し、甘い吐息を洩らした。

欲望に一気に火がついた。
押し倒したサミーの足を持ち上げるようにして身体すべてをベッドの上へあげる。
その上に跨り、自分の重みをサミーに知らしめた。

いま、お前といるのは俺だと感じさせたかった。

サミーの口元を離れた唇は頬から耳、首筋へと移動し、鎖骨にキスをすると舌でその窪みを愛撫した。

「エリック……」
掠れた声で、エリックの名を呼ぶサミーは、いつもの反抗的な感じは全くなくなり、従順そのものだった。

エリックはこの機会を逃すまいと、つい気が焦る。

普段なら、男であれ女であれ、酔ったやつを組み敷こうなど思った事は無かった。だが、サミーは酔っていなければおそらく抱く事など出来ないだろう。

エリックはサミーに応えるように、胸元から腹まで感じる場所すべてにキスをする。

透き通るような金色の産毛が濡れて光り、白い肌にまるで星が煌めいているようだ。

この男は美しい。

軟弱そうに見えた身体は、バランスよく筋肉が付き、射撃も乗馬も得意なのが頷ける。

エリックは吸い寄せられるように、半開きになった唇に口づける。舌先で歯の淵をなぞり舌を滑り込ませる。サミーの甘い吐息を呑み込む様に深く唇を重ねる。
サミーは目を閉じるのが面倒なのか、濡れた瞳でじっと見ている。酔っていて、目の焦点が定まっていないと分かっていても、そこには何かしらの感情が含まれていると期待してしまう。

いったい何を期待している?

エリックは己の感情に戸惑った。
最初はアンジェラとクリスの間に割り込ませないために、牽制する意味だった。サミーの事はおそらくクリスよりもよく知っているとエリックは自負している。
だからこそ、扱いやすかった。

だが、今はどうだ。
何の感情もなくキスをしたあの日から、しつこいくらいサミーに執着している。明らかにサミーを欲しているのは理解している。だがそれは欲望のみだと思っていた。

きっと一度抱けば満足する。早く終わらせてしまおう。

エリックは何かを振り払うように、サミーの首筋に顔を埋め自分の身体を密着させた。昂ったものを擦り付け、これから起こることをサミーに知らせる。逃げ出すなら今だと。

だが、サミーはじっと動かなかった。それどころか息遣いが艶を帯び、心臓も激しく鼓動している。

目障りなガウンを早く取り払ってしまおうと、身体とガウンの間に手を滑り込ませ背を抱いた。

その時、手に触れた感触にエリックは凍りついた。

つづく


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裏・花嫁の秘密 1-4 [裏・花嫁の秘密]

噂は本当だったのか。
いや、ごく近しい人物しか知りえない事実だ。

おそらく当時屋敷にいたものは全員知っていただろう。幼いサミーが父親に折檻されていたことを。痕が残るほど鞭打たれていたことを。父親のやり場のない失望感の犠牲になっていたのだ。

親が子供を鞭打つことはしつけ上よくあることだ。
だがこれはあまりにもひどい。

エリックには理解できなかった。当たり前だ。コートニー家には鞭打つ者など誰もいなかったし、両親は子供を傷つける行為を嫌悪していたほどだ。

成長して引き攣れた傷跡に指先で優しく触れた。もう、傷が痛むことがないと分かっていても、まるでその痛みが伝わるかのように胸が苦しくなった。

「醜いだろう」
悲しそうに顔を歪めたサミーが小さく言った。

エリックは一瞬言葉が出なかった。そんな事は無いと言ってやりたかったのに、あまりにすべてを諦めたような口調にショックを受けていた。

「抱く気が、失せただろう」

サミーはまるで抱いてくれと言っているようだった。

こんな傷ごときで、サミーを欲する気が失せるはずがない。
エリックは思わずにやりと笑みを浮かべていた。

「そんなこと言っても、やめない。もう抱くと決めているからな」

エリックはサミーの足の間に、自分の足を入れ、股をひらかせた。

「いい子だ。毎日浴びるほど酒を飲ませてやろう」
サミーが従順なのは酒のおかげだ。

「君は僕が酔っていると思っているのか」

「違うのか」

「違うさ。僕はそんなに酒に弱くない」

エリックは笑いを堪えた。
シルバーの瞳が澄み切った湖のように、穏やかにたっぷりと潤んでいる。
おそらくこちら側を見ているのだろうが、俺の顔がはっきりと見えているとは言い難い。口元が妙に色っぽくうごめくさまを見て、だれがいつもと変わらないサミーだと思うのだろうか。

酒を飲んでいない時の皮肉たっぷりに引き結ばれた唇とは大違いだ。

まあ、それでも酔っていないと言うならそういう事にしておこう。
しらふでも、俺に抱かれてもいいと思ってくれていると解釈することにする。

「そうだな、お前は酒に弱くない」サミーが納得したようにふんと鼻を鳴らした。「ただ、酒に酔ったお前に、俺が弱いんだ」

サミーは言葉の意味を理解できていないのだろう。「そうだ、お前は弱い」と得意げに返してきたのだから。

急に愛おしさが込み上げた。

そろそろ認めるしかないのだろう。サミーに対する気持ちが欲望のみではない事を。俺はこの男を心底欲している。その心さえも手に入れたいと思っているのだ。

長い道のりになりそうだ。

つづく


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裏・花嫁の秘密 1-5 [裏・花嫁の秘密]

エリックが自分を受け入れさせるために施す愛撫を、サミーは抵抗することなく受け入れていた。

なぜそんな気持ちになったのかは分からないが、どうやら身体は欲に素直に反応したようだ。

いよいよ抱く段になって、エリックがサミーの身体をうつ伏せにした。
サミーは抵抗した。

「暴れるな、いますぐ、よくしてやるから」

背中の醜い傷跡に唇を押し付け、そのまま一気にエリックが体内へ入りこんできた。

「んっ、はぁ……馬鹿、手加減しろっ…」
苦しさに喘ぎつつ、満たされた事への充足感が心の内に沁み渡っていく。

「お前にはそんなもの必要ない。久しぶりだ。しっかり満足させてやる」
エリックがゆっくりと動き始めた。焦らすように入口付近で動きを繰り返し、そして奥まで突き入れてくる。

久しぶりだと言ったエリックの言葉は、自分の事なのか、それとも僕のことを言っているのだろうか。
サミーの一瞬湧いた些細な疑問はエリックの動きに取り去られていった。

身体を密着させ耳の裏の窪みを舐められる。背筋に快感が走り、二人が繋がる個所がぎゅっと締まるのを感じた。締め付けられたエリックが低い呻き声を漏らす。

エリックはどうしてこうも弱い個所ばかりついてくるのだろうか。
ああ、そうか。
僕は世の中を知らない。決められた人としか関わりを持てなかった。けど、彼は違う。自由だ。

だから彼の巧みな愛撫を受けたものは多いのだろう。僕でさえ、こうして身体を開き受け入れているのだから。
エリックにはアンジェラと同じように不思議な魅力が備わっている。それは認めざるを得ないだろう。

チクリと甘い痛みが首筋に走る。

「やめろっ」
サミーは首筋に印をつけられたことに憤慨した。

エリックは気にする素振りもなく腰を動かし肩口にキスをする。
それから指で古傷をなぞり、そこに口づける。何度も何度も繰り返されるその行為に、例えようのない、愛情のようなものを感じるのは、気のせいだと思いたかった。

誰もこの傷を見ようとはしなかった。
まだ傷が癒えていない時でさえ、背中はベッドに押し付けられたままだった。
例えシーツに血が滲もうとも、彼は僕の顔を見ながらしか抱かなかった。彼は綺麗なものしか見ようとしなかった。

けど、醜いと言われたくなくて、その時はただ痛みに耐えた。

それなのに、エリックはその背ごと抱いてくれている。

サミーは強張る身体を緩め、エリックにその身をすべて委ねた。エリックがそれを感じ取り、より一層動きが激しくなった。

「従順なお前も悪くない」

意地悪く言うエリックに言い返すほどの余裕はなく、サミーはただ小さく喘ぎ声を漏らすだけだった。

大きな杭を差し込まれ動きを封じられ、もうこれ以上抗う気などないのにエリックは更にサミーをがんじがらめにする。

「俺でも感じられるんだな」
エリックが耳元で囁き、握り込んだサミーの昂りを弄ぶ。滴る蜜で滑る感触に、サミーの息が荒くなる。

感じている。おかしくなるほど。早く解放されたい。

「まだまだじっくりと楽しませてやる」
朦朧とする意識のなか、悪魔の声が聞こえた。

つづく


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裏・花嫁の秘密 1-6 [裏・花嫁の秘密]

エリックは様々な感情と戦っていた。
快楽に溺れないように自制心を働かせ、サミーを傷つけたメイフィールド卿への怒りも抑えつけた。

けれど抑えきれない感情がひとつだけあった。心地よくその身を包まれながら感じていたのは、紛れもなく嫉妬だった。

エリックはサミーの背の傷跡を見ながら思わず奥歯を噛みしめた。

この傷に指先で触れ、唇を寄せ愛撫した者が他にもいると思うと激しい嫉妬に襲われる。こんな感情初めてだった。今まで誰にも嫉妬などした事がなかった。しかも今は過去の相手に対して、そんな無駄な感情を抱いているのだ。

舌を大きく出しその背にしゃぶりつく。この男のすべてはもう俺のものだ。

「んんっ…ぁ…っ」

傷の敏感になっている部分に触れたようだ。大きく背を撓らせ、尻をこすりつけてきた。
その一方で、サミーはきっと腕の傷の事は忘れている。その痛みさえも今は感じないようだ。

エリックはサミーの腕を庇うように、左半身に羽根枕を滑り込ませ、そのまま腰を両手でしっかりと掴んだ。腰を高く持ち上げ、更に奥深くまで自身を挿し込んだ。

サミーは圧迫感に小さく呻いたが、扱いは心得ているとばかりに内壁をリズミカルに動かす。

このままこの中でいきたい。

エリックはサミーの肉棒を掴んだ。女の味も知っている硬く張りつめたサミーの分身。ここも、もう俺のものだ。もう、二度と、女を抱けなくしてやる。

満足するのは俺に抱かれた時だけだと、身体に刻み付ける。

「エリック…そんなにしたら……」

「いきたいのか?まだだめだ」

「もう、何度もそう言っている――早く……」
シーツを掴み身悶えするサミーを見て、限界はこっちの方だと、わざとゆっくりと腰を揺り動かす。手を動かすのをやめると、より一層サミーが身体を擦りつけエリックを求める。そうやって何度も焦らし続けてきたが、いよいよエリック自身が我慢の限界だった。

今すぐ動きを止め、孔内から自身を引き抜いたとしてもその流れに逆らう事が出来そうになかった。
エリックは内心毒づき舌打ちをした。

サミーのものを再び強く握りしめると、根元から先へと絶妙な力加減で扱き始めた。エリックに残された自制心はそれが限界だった。自らはやみくも腰を打ちつけ、ただ頂上へ登りつめようとしている。肌がぶつかり合う音が荒い息遣いと混じり、あまりにも淫らだった。

「サミー、いけっ」
まるで何かの合図のように、サミーは嬌声をあげた。
その声こそが聞きたかったと、エリックは満足げにサミーの中へ精をほとばしらせた。

二人が登り詰めた瞬間、サミーの撓る背に翼が見えた気がした。
引き攣れた傷が片翼をかたどっている。

片方は生まれ落ちたその時、父親によってもぎとられてしまったのだ。
エリックはそのもぎ取られた翼になってやりたいと思った。すべてを奪われたサミーにそれ以上のものを与えてやりたい。

一人の男に溺れるような、間抜けな奴に成り下がったと、エリックは失笑しながらサミーの背をぎゅっと抱きしめた。

つづく


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裏・花嫁の秘密 1-7 [裏・花嫁の秘密]

「二度目はないからな。それに憐みなんて欲しくない」
行為が終わった途端、サミーはいつもの調子に戻って言った。

たっぷりと汗をかき、酔いも醒めてきたのか。本当に可愛くない奴だ。いままで俺に刺し貫かれ、ベッドの上で甘く乱れていたとは思えない。だが、これがサミーだと、半分諦め、エリックも元に戻り言葉を返す。

「憐みだと?」

「僕を哀れに思ったんだろう。醜い傷を背負い、愛する人に目もむけて貰えない僕を――」
サミーはベッドの下に手を伸ばし、くしゃくしゃになったガウンを拾おうとする。ほんの少し届かず、諦めてシーツを絡め丸まった。

「お前の事を哀れに思うだと?お前のような奴を哀れに思ったりするものか。俺がお前を抱いたのは、ただの欲望だ」
易々とアンジェラの事を愛する人と言ったサミーにエリックは苛ついた。それはサミーに苛つくというよりも、そのサミーの心を捉え離さないアンジェラに嫉妬する自分にだった。
まさか、溺愛する弟に嫉妬する日が来るとは全く思いもしなかった。

「なら、君は欲を満たしたわけだ」
サミーはいつもの腹立たしいくらい取り澄ました顔でエリックを見据える。まったくエリックの苛立ちには気付いていない。

「そういう事になるな」
エリックも同じように見返した。

「なら、僕の頼みを一つ聞いてくれないか?」

「なんだ?」
わざとらしく片眉をあげ、なんでも言ってみろとばかりに返事をする。

「僕は僕のうちへ帰るよ。ここにいることをアンジェラに知られたくない。あの子に会ってしまえば、僕は言ってしまう。君を助けたのは僕だってね。あの子は僕の事など見てくれなかった。いつもその目に映るのはクリスなんだ」
サミーは今にも泣きだしそうに顔を歪め、さらに身体を丸めた。

「お前の目にもハニーしか映ってないんだろう?」
そっと指先で頬に触れる。返事は聞きたくないのに、何かを期待してつい訊いてしまった。

サミーはなにも答えなかった。

エリックはほっとして、「わかった。すぐに準備しよう」と身を起こした。

「君も行くのか?」

エリックはベッドから下り振り返り言う。引き締まった裸体が汗で光り、しっとりと濡れた長髪が背を中ほどまで隠している。

「フェルリッジだろう?すぐそこだ。送っていく」

「すぐそこなものか!」

エリックはサミーの言葉を無視してバスルームへ続く扉に手を掛けた。
「シャワーを浴びる。さっさと来い」

「さっきはシャワーはダメだと言った」

「腕は俺が庇ってやる」
エリックがバスルームへ入った。

「もう身体はやらないからな」
そう言いながらもサミーは、素直にエリックの待つバスルームへ向かった。

つづく


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裏・花嫁の秘密 2-1 [裏・花嫁の秘密]

玄関前に馬車が停車した。従者によりステップがおろされ、サミーは数カ月ぶりにフェルリッジの屋敷へ戻った。

馬車はそのまま進みだし、緩やかに方向を変えながら石畳の道を門へと向かう。サミーはそれに目もくれず、玄関先で出迎えたダグラスを一瞥する。

ダグラスは無表情を装っているが、見慣れぬ馬車とそれから下りてきたのが主ではなくサミーだった事に戸惑っているようだ。

「君はいつもそうなんだね」
玄関ホールに入り上着を脱ぎ捨てる。ダグラスが慌てて拾い上げ、次の言葉を待つ。

サミーは仕方がないというようにため息をつき、ダグラスに向き直る。

「クリスは当分帰ってこないよ。おそらく知らせが来ると思うけど、溜まっている執務を僕が代りにこなすから、そのサポートをよろしく」
くるりと背を向け、中央の階段を上がる。そして何か思い出したようにもう一度振り返り「事故の事は聞いているね。ここの連中はみんな知っているの?」と問いかけた。

「はい、サミュエル様」

「誰も口外しないように、きちんと口止めしたの?」

「もちろんでございます」

そう言ったダグラスに、サミーは疑いの目を向ける。

ここの使用人が口が堅い事は知っている。ここだけじゃなく、リード家に仕える者すべてだ。だが、誰かが僕の秘密をエリックに漏らした。

直接なのか間接なのか分からないが、確実にエリックはリード家の秘密を知っている。本来ならサミーがこの家の当主であることも、幼いころから父に虐待されていた事も、そして、そのころ唯一のよりどころだったマーカスのことも、すべて知っているのだ。

確かに、背の傷跡に触れた時エリックは驚いていた。だが、それは知っていたからこその驚きだったとサミーは思った。

いったいあの男は何者なのだ。

サミーは思考をもとに戻し、目の前のダグラスに微笑みかけた。それはまるで氷細工の彫像のような冷酷な笑みだった。

「そう。もしも少しでも余計な噂話をする者がいたら、即刻クビにして。紹介状は持たせないつもりだから。頼んだよダグラス」

執事の唖然とした表情を尻目にサミーは階段をあがっていった。

つづく


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裏・花嫁の秘密 2-2 [裏・花嫁の秘密]

サミーはズキズキとした痛みに目を覚ました。
左腕が熱い。

暫くぼうっと窓際のカーテンに取り付けられた房飾りを眺める。それから視線を天井へ向け、痛みの原因を思い出そうとする。

深い眠りから覚めたばかりの頭は、相当働きが悪かった。おおよそ五分ほどして、やっと痛みの原因を思い出す。

そうか、僕は撃たれたんだった。

サミーはまた目を閉じ、呼吸と気持ちを整えた。
いつもは呼び鈴で使用人を呼びつける事はしなかったが、いまはすぐにでも呼ぶ必要があった。

だが、僕の世話をしてくれる者がいただろうか?僕の事を気に掛けてくれる人物など一人もいない。
不意に溢れ出ようとする涙を歯を食いしばり堪えた。

目を瞑り、おでこに右腕をのせる。突如暗闇にエリックの顔が浮かんだ。
サミーはカッと目を見開き、急いで呼び鈴に手を伸ばした。

すぐさまダグラスが部屋へ入って来た。

外で待ち構えていたのか。結局ダグラスも僕を見捨てたりしないということなんだろうな。それとも、ただ見張っていたのだろうか。

サミーは身体を起こした。ダグラスが素早くサミーの背に枕をちょうどよく整える。それにもたれかかると、ダグラスに指示を出す。

「アップル・ゲートのラウンズベリー邸に使いを出してくれ。クリスに手紙を渡してほしい。それと――ミスター・キャノンを呼んでくれ」

ダグラスは何も身につけていないサミーの身体を見ないように努めていた。腰から下は上掛けに隠れているものの、サミーがこうして裸を誰かに晒すという事は今までになかった事だ。

だが、どうしても腕の包帯には目がいってしまい、ダグラスはつい余計な事を口にする。

「腕の怪我は、ミスター・キャノンに診れるものですか?」

キャノンはこの村に住む、獣医だ。

「そんなことはお前には関係のない事だ」

「失礼いたしました」
ダグラスは音もたてず部屋を出ていくと、しばらくして必要なものを持って戻ってきた。

サミーは暫く便箋の前で悩んだ後、必要な事を簡潔に書いて、侯爵家の紋章入りの封筒に手紙を入れベッドサイドの銀トレーに置いた。

ダグラスはまるですべてを覗き見ているのではないかと思うほど、絶妙なタイミングでやってきた。

トレーを片手に部屋を出ようとするダグラスに問いかける。

「キャノンはすぐにこれそう?」サミーはまたカーテンの房飾りをぼんやりと見つめている。

「はい」

「何か言ってた?」

「いいえ、特には」

「言ってたんだね。またいいところを邪魔しちゃったかな」

最後の一言は聞こえないふりをしてダグラスは仕事に戻った。

つづく


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裏・花嫁の秘密 2-3 [裏・花嫁の秘密]

「さあて、本当に僕が必要だったのかな?」
ダグラスが部屋を出て行って、一時間ほどして、大柄な男が部屋へ入ってきた。胸もとは肌蹴、黒々とした胸毛が覗いている。侯爵邸を訪問するにはいささか不向きな格好だ。

「必要じゃないのに呼んだ事はないだろう」
サミーはキャノンのくしゃくしゃになった黒髪を見ながら、やはり邪魔をしたようだと、片方の口角をあげ皮肉交じりの笑みを浮かべた。

「ここに呼ばれたのは初めてだ」
キャノンは黒い大きな目を左右に動かし部屋を見渡した。

「そうだね。君に会うのは厩舎か、僕のカビ臭い穴倉かどっちかだったからね」カビ臭い穴倉とはもちろん、サミーが数年ほど住まいにしていた温室の事だ。

「どれ、腕を見せてみろ」

キャノンは腕の包帯を外し、傷をじっくりと見る。

「すこし傷が化膿している。熱もあるようだし」

「それは僕にも分かる。だから、君を呼んだ」
わざと呆れた表情で、さっさと治療しろとキャノンを見る。

「いつも言うが、僕は獣医だ」キャノンはそう言いながら、持ってきた鞄を探る。

「邪魔したようだね」
サミーはキャノンの動きを目で追いながら、彼の身体から漂ってくるきつい香水の香りに顔をしかめてみせた。

「いや、ちょうど良かった。しつこい女を追い払う方法を考えていたところだったんだ」

「村の女はみんな君のものなんじゃないかと、僕はいつも思っているんだ」

「そういうサミーも、愛し合った後なんだろう?そのせいでこの傷が悪化したんじゃないのか」

サミーはキャノンの言葉の意味がすぐには分からなかった。ハッと気づき包帯を巻いている最中の左手で首筋のあとを隠す。包帯がギュッと締まりサミーは痛さにうぅっと呻いた。

「おいおい、動くなよ。相変わらずわかりやすいな」

サミーの透き通るような金色の髪は肩のあたりまで伸びている。うなじに付けられたキスマークなど見えるはずがない。

キャノンは手を元に戻し、包帯を巻き終え、傍の椅子に座った。長い脚を組み椅子の背もたれに身体を預けた。

サミーは顔を真っ赤にしながら「愛なんてない」と強がる子供のように呟いた。

「僕もさ」
サミーは驚いてキャノンを見た。
いつもは男らしくつりあがっている眉が心なしか下がっているように見える。

女との戯れを楽しんでいる彼の口から、そんな事を聞いたのは初めてだった。愛なんて言葉さえも気にしていないと思っていた。

「君が以前言っていた子とはうまくいっていないのか?」
ふと思い出して訊く。

「うまくいくも何も、向こうは僕に関心がないのさ」

サミーはまさかというような顔をした。
キャノンの周りにはいつも女が群がっている。毎日違う女を抱けるほどだ。そんな彼に関心がない女がこの村にいるのか……。

「驚く事ないだろう。僕はただの村の獣医だ。高貴なお方は僕になど関心を持たないのさ」

「君が退屈な淑女が好みだとは思いもしなかったよ」

「女だとは言っていない」キャノンは無精ひげをさすりながら言った。

サミーはなんとか驚きを隠し、「その高貴なお方は、僕ではないようだね」と言った。キャノンがまさか男に興味があるなどとはいまのいままで、全く気付かなかった。

「残念ながら。それに君は僕みたいな大柄な男は好みじゃないだろう」

「ふんっ。僕の好みは関係ないだろう」

「まあ関係はないが、君を変えた男を一度見てみたい」

「どうして男と決めつける?」

「僕は意外と君の事を知っているのさ。さてと、請求書は後日届けるからよろしく頼むよ」キャノンは立ち上がり、もう一度鞄を探る。包みを取り出し「これを煎じて飲めばすぐに治る」とサミーの手元に置いた。

「薬は嫌いだ」
サミーはぶすっとした顔で、包みをつついて脇へ寄せた。

「そうだろうと思って、とびきり苦くしておいた」
ハハッと大きく笑いキャノンは帰って行った。

サミーはキャノンが帰った後、僕を変えた男はいったい誰なのだろうかと真剣に考えた。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。 
キャノンは、男~!って感じの人です。
サミーとの付き合いもわりと長いです。

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