はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
裏・花嫁の秘密 2-3 [裏・花嫁の秘密]
「さあて、本当に僕が必要だったのかな?」
ダグラスが部屋を出て行って、一時間ほどして、大柄な男が部屋へ入ってきた。胸もとは肌蹴、黒々とした胸毛が覗いている。侯爵邸を訪問するにはいささか不向きな格好だ。
「必要じゃないのに呼んだ事はないだろう」
サミーはキャノンのくしゃくしゃになった黒髪を見ながら、やはり邪魔をしたようだと、片方の口角をあげ皮肉交じりの笑みを浮かべた。
「ここに呼ばれたのは初めてだ」
キャノンは黒い大きな目を左右に動かし部屋を見渡した。
「そうだね。君に会うのは厩舎か、僕のカビ臭い穴倉かどっちかだったからね」カビ臭い穴倉とはもちろん、サミーが数年ほど住まいにしていた温室の事だ。
「どれ、腕を見せてみろ」
キャノンは腕の包帯を外し、傷をじっくりと見る。
「すこし傷が化膿している。熱もあるようだし」
「それは僕にも分かる。だから、君を呼んだ」
わざと呆れた表情で、さっさと治療しろとキャノンを見る。
「いつも言うが、僕は獣医だ」キャノンはそう言いながら、持ってきた鞄を探る。
「邪魔したようだね」
サミーはキャノンの動きを目で追いながら、彼の身体から漂ってくるきつい香水の香りに顔をしかめてみせた。
「いや、ちょうど良かった。しつこい女を追い払う方法を考えていたところだったんだ」
「村の女はみんな君のものなんじゃないかと、僕はいつも思っているんだ」
「そういうサミーも、愛し合った後なんだろう?そのせいでこの傷が悪化したんじゃないのか」
サミーはキャノンの言葉の意味がすぐには分からなかった。ハッと気づき包帯を巻いている最中の左手で首筋のあとを隠す。包帯がギュッと締まりサミーは痛さにうぅっと呻いた。
「おいおい、動くなよ。相変わらずわかりやすいな」
サミーの透き通るような金色の髪は肩のあたりまで伸びている。うなじに付けられたキスマークなど見えるはずがない。
キャノンは手を元に戻し、包帯を巻き終え、傍の椅子に座った。長い脚を組み椅子の背もたれに身体を預けた。
サミーは顔を真っ赤にしながら「愛なんてない」と強がる子供のように呟いた。
「僕もさ」
サミーは驚いてキャノンを見た。
いつもは男らしくつりあがっている眉が心なしか下がっているように見える。
女との戯れを楽しんでいる彼の口から、そんな事を聞いたのは初めてだった。愛なんて言葉さえも気にしていないと思っていた。
「君が以前言っていた子とはうまくいっていないのか?」
ふと思い出して訊く。
「うまくいくも何も、向こうは僕に関心がないのさ」
サミーはまさかというような顔をした。
キャノンの周りにはいつも女が群がっている。毎日違う女を抱けるほどだ。そんな彼に関心がない女がこの村にいるのか……。
「驚く事ないだろう。僕はただの村の獣医だ。高貴なお方は僕になど関心を持たないのさ」
「君が退屈な淑女が好みだとは思いもしなかったよ」
「女だとは言っていない」キャノンは無精ひげをさすりながら言った。
サミーはなんとか驚きを隠し、「その高貴なお方は、僕ではないようだね」と言った。キャノンがまさか男に興味があるなどとはいまのいままで、全く気付かなかった。
「残念ながら。それに君は僕みたいな大柄な男は好みじゃないだろう」
「ふんっ。僕の好みは関係ないだろう」
「まあ関係はないが、君を変えた男を一度見てみたい」
「どうして男と決めつける?」
「僕は意外と君の事を知っているのさ。さてと、請求書は後日届けるからよろしく頼むよ」キャノンは立ち上がり、もう一度鞄を探る。包みを取り出し「これを煎じて飲めばすぐに治る」とサミーの手元に置いた。
「薬は嫌いだ」
サミーはぶすっとした顔で、包みをつついて脇へ寄せた。
「そうだろうと思って、とびきり苦くしておいた」
ハハッと大きく笑いキャノンは帰って行った。
サミーはキャノンが帰った後、僕を変えた男はいったい誰なのだろうかと真剣に考えた。
つづく
前へ<< >>次へ
あとがき
こんばんは、やぴです。
キャノンは、男~!って感じの人です。
サミーとの付き合いもわりと長いです。
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ダグラスが部屋を出て行って、一時間ほどして、大柄な男が部屋へ入ってきた。胸もとは肌蹴、黒々とした胸毛が覗いている。侯爵邸を訪問するにはいささか不向きな格好だ。
「必要じゃないのに呼んだ事はないだろう」
サミーはキャノンのくしゃくしゃになった黒髪を見ながら、やはり邪魔をしたようだと、片方の口角をあげ皮肉交じりの笑みを浮かべた。
「ここに呼ばれたのは初めてだ」
キャノンは黒い大きな目を左右に動かし部屋を見渡した。
「そうだね。君に会うのは厩舎か、僕のカビ臭い穴倉かどっちかだったからね」カビ臭い穴倉とはもちろん、サミーが数年ほど住まいにしていた温室の事だ。
「どれ、腕を見せてみろ」
キャノンは腕の包帯を外し、傷をじっくりと見る。
「すこし傷が化膿している。熱もあるようだし」
「それは僕にも分かる。だから、君を呼んだ」
わざと呆れた表情で、さっさと治療しろとキャノンを見る。
「いつも言うが、僕は獣医だ」キャノンはそう言いながら、持ってきた鞄を探る。
「邪魔したようだね」
サミーはキャノンの動きを目で追いながら、彼の身体から漂ってくるきつい香水の香りに顔をしかめてみせた。
「いや、ちょうど良かった。しつこい女を追い払う方法を考えていたところだったんだ」
「村の女はみんな君のものなんじゃないかと、僕はいつも思っているんだ」
「そういうサミーも、愛し合った後なんだろう?そのせいでこの傷が悪化したんじゃないのか」
サミーはキャノンの言葉の意味がすぐには分からなかった。ハッと気づき包帯を巻いている最中の左手で首筋のあとを隠す。包帯がギュッと締まりサミーは痛さにうぅっと呻いた。
「おいおい、動くなよ。相変わらずわかりやすいな」
サミーの透き通るような金色の髪は肩のあたりまで伸びている。うなじに付けられたキスマークなど見えるはずがない。
キャノンは手を元に戻し、包帯を巻き終え、傍の椅子に座った。長い脚を組み椅子の背もたれに身体を預けた。
サミーは顔を真っ赤にしながら「愛なんてない」と強がる子供のように呟いた。
「僕もさ」
サミーは驚いてキャノンを見た。
いつもは男らしくつりあがっている眉が心なしか下がっているように見える。
女との戯れを楽しんでいる彼の口から、そんな事を聞いたのは初めてだった。愛なんて言葉さえも気にしていないと思っていた。
「君が以前言っていた子とはうまくいっていないのか?」
ふと思い出して訊く。
「うまくいくも何も、向こうは僕に関心がないのさ」
サミーはまさかというような顔をした。
キャノンの周りにはいつも女が群がっている。毎日違う女を抱けるほどだ。そんな彼に関心がない女がこの村にいるのか……。
「驚く事ないだろう。僕はただの村の獣医だ。高貴なお方は僕になど関心を持たないのさ」
「君が退屈な淑女が好みだとは思いもしなかったよ」
「女だとは言っていない」キャノンは無精ひげをさすりながら言った。
サミーはなんとか驚きを隠し、「その高貴なお方は、僕ではないようだね」と言った。キャノンがまさか男に興味があるなどとはいまのいままで、全く気付かなかった。
「残念ながら。それに君は僕みたいな大柄な男は好みじゃないだろう」
「ふんっ。僕の好みは関係ないだろう」
「まあ関係はないが、君を変えた男を一度見てみたい」
「どうして男と決めつける?」
「僕は意外と君の事を知っているのさ。さてと、請求書は後日届けるからよろしく頼むよ」キャノンは立ち上がり、もう一度鞄を探る。包みを取り出し「これを煎じて飲めばすぐに治る」とサミーの手元に置いた。
「薬は嫌いだ」
サミーはぶすっとした顔で、包みをつついて脇へ寄せた。
「そうだろうと思って、とびきり苦くしておいた」
ハハッと大きく笑いキャノンは帰って行った。
サミーはキャノンが帰った後、僕を変えた男はいったい誰なのだろうかと真剣に考えた。
つづく
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あとがき
こんばんは、やぴです。
キャノンは、男~!って感じの人です。
サミーとの付き合いもわりと長いです。
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2011-09-11 00:10
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