はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
縁側と双子と愛猫と 前編 [迫田家シリーズ 番外編]
お話的には、『憧れの兄、愛しの弟』の番外編になります。
前編は海目線で。
「なあ陸。なんかさぁ……朋ちゃんて、コウタの事かわいがり過ぎだと思わないか?」
「そんなの前からじゃん。ねぇ、ブッチぃ」
夕暮れ時、迫田家の縁側では陸と海の双子の兄弟と、愛猫のブッチがいつものようにまったりとした時を過ごしていた。
猫なで声でブッチの名を呼んだ陸に、海はうんざりとした顔を向け「ブッチはいいからさぁ」と呆れた溜息を洩らした。
陸はブッチを撫でるのに忙しそうで、聞く耳を持とうとしない。
海はほんの少し苛つきつつ、話を続ける。
「俺が思うに、朋ちゃんてコウタの事好きなんじゃない?」
陸が視線をブッチから海に向けた。
「そりゃそうだろ。俺だってブッチの事好きだもんねぇ」
そう言って、海にそそがれた視線は、すぐにブッチに戻った。
「そう言う意味じゃない!」
まったく。こいつは馬鹿なのか?一言目にはブッチ、二言目にもブッチ。いちいち語尾を伸ばして『ブッチぃ』と言うのもいい加減気持ちが悪い。
「他にどういう意味があるんだよ!」陸も少しムッとして返す。
「恋愛感情みたいな『好き』に決まってるだろう!」
いちいち説明させるなよっ!馬鹿陸!
「言っとっけどさ、俺、ブッチの事愛してるからな」
陸はツンと顎先をあげ、馬鹿みたいなことを堂々と宣言した。
海がちらりとブッチに視線を向けると、ブッチも心なしか顎をツンとあげている。
「馬鹿じゃねぇか?ブッチはオスだぞ!」
問題はそこじゃないよ。とでも言いたげに、ブッチが陸の膝の上で大あくびをした。洗濯板みたいな上顎をこれ見よがしに海に見せつける。
「オスとか言うなっ!ブッチはうら若き男の子だぞ!それにコウタも男じゃんか!」
もはや話の論点がずれてしまっているし、言葉の使い方も微妙だ。
「そうだよ!その男であるコウタを朋ちゃんは好きなんだよ。だって、よく考えてみろよ。コウタの彼女が家に来た時の事をさ。コウタの為に体張ってキスまでしちゃってさ……」
キスをしたのは彼女の方からだと、朋ちゃんは言った。もちろん俺もそう思っている。朋ちゃんはモテるけど、軽い男ではない。
「まぁ、キスはやり過ぎだよな。俺はブッチとキスできるけど、朋ちゃんとコウタはおかしいだろ?」
確かにおかしいけど、いまそんなこと訊いたか、俺?
海はそこは完全にスルーするして、会話を続ける。
「前の彼女と別れてから随分と経つよな。しかも、最近はバイト減らしてさぁ……」
「何?コウタと一緒にいたいから、とか言う気?」陸は馬鹿馬鹿しいとかぶりを振った。
「他に何があるんだよっ!俺たちの事もかまってくれないしさ――」
「海、それって嫉妬?それならよく分かる!」
陸は何かひらめいた時のように目を輝かせ、ブッチを愛おしげに撫でた。
「何が?」海はきょとんと陸を見つめ訊き返す。
「俺だってブッチがコウタの膝の上に乗ったら、キーってなるし、まして朋ちゃんにすりすりする姿は見たくもない。もみもみだって他の人にはして欲しくないし、この前朋ちゃんの膝の上でしてるの見た時、もう少しで朋ちゃんを部屋から追い出しそうになったんだ」
そこまでブッチを愛しているのか?
もはや呆れると言うよりも、ここまで馬鹿になれる陸が羨ましい。
海は同じ顏の兄と恋愛対象が被らなかったことに安堵を覚えた。そういえば、いままで同じ子を好きになった事ないな。
「ブッチは俺にももみもみするぞ」わざわざ陸の嫉妬を煽ることも無いが、つい口をついて出てしまった。「唯一もみもみしないのが、まさにいだな。ブッチもブッチなりに危険を感じているんだな」これで変な嫉妬の矛先を逸らせただろう。
「もしブッチがまさにいにもみもみしたら、俺、ブッチと家を出るからな!」
いったい誰に向かって宣言しているのか。陸があまりにも興奮しているためか、ブッチは陸の膝からおりた。
「あぁん、ブッチどこへ行くのぉ~」
哀れな声を出す陸を尻目に、ブッチは縁側から庭先へドスンと飛び降りた。
最近ブッチは太ったのだ。
くだらない話が途切れたところで、海はこれ幸いとばかりに話を切り替えた。
つづく
>>次へ
あとがき
こんばんは、やぴです。
お喋りな双子たちの日常はこんな感じです
彼らが主人公のお話は、まだまだ後になりそうです。
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前編は海目線で。
「なあ陸。なんかさぁ……朋ちゃんて、コウタの事かわいがり過ぎだと思わないか?」
「そんなの前からじゃん。ねぇ、ブッチぃ」
夕暮れ時、迫田家の縁側では陸と海の双子の兄弟と、愛猫のブッチがいつものようにまったりとした時を過ごしていた。
猫なで声でブッチの名を呼んだ陸に、海はうんざりとした顔を向け「ブッチはいいからさぁ」と呆れた溜息を洩らした。
陸はブッチを撫でるのに忙しそうで、聞く耳を持とうとしない。
海はほんの少し苛つきつつ、話を続ける。
「俺が思うに、朋ちゃんてコウタの事好きなんじゃない?」
陸が視線をブッチから海に向けた。
「そりゃそうだろ。俺だってブッチの事好きだもんねぇ」
そう言って、海にそそがれた視線は、すぐにブッチに戻った。
「そう言う意味じゃない!」
まったく。こいつは馬鹿なのか?一言目にはブッチ、二言目にもブッチ。いちいち語尾を伸ばして『ブッチぃ』と言うのもいい加減気持ちが悪い。
「他にどういう意味があるんだよ!」陸も少しムッとして返す。
「恋愛感情みたいな『好き』に決まってるだろう!」
いちいち説明させるなよっ!馬鹿陸!
「言っとっけどさ、俺、ブッチの事愛してるからな」
陸はツンと顎先をあげ、馬鹿みたいなことを堂々と宣言した。
海がちらりとブッチに視線を向けると、ブッチも心なしか顎をツンとあげている。
「馬鹿じゃねぇか?ブッチはオスだぞ!」
問題はそこじゃないよ。とでも言いたげに、ブッチが陸の膝の上で大あくびをした。洗濯板みたいな上顎をこれ見よがしに海に見せつける。
「オスとか言うなっ!ブッチはうら若き男の子だぞ!それにコウタも男じゃんか!」
もはや話の論点がずれてしまっているし、言葉の使い方も微妙だ。
「そうだよ!その男であるコウタを朋ちゃんは好きなんだよ。だって、よく考えてみろよ。コウタの彼女が家に来た時の事をさ。コウタの為に体張ってキスまでしちゃってさ……」
キスをしたのは彼女の方からだと、朋ちゃんは言った。もちろん俺もそう思っている。朋ちゃんはモテるけど、軽い男ではない。
「まぁ、キスはやり過ぎだよな。俺はブッチとキスできるけど、朋ちゃんとコウタはおかしいだろ?」
確かにおかしいけど、いまそんなこと訊いたか、俺?
海はそこは完全にスルーするして、会話を続ける。
「前の彼女と別れてから随分と経つよな。しかも、最近はバイト減らしてさぁ……」
「何?コウタと一緒にいたいから、とか言う気?」陸は馬鹿馬鹿しいとかぶりを振った。
「他に何があるんだよっ!俺たちの事もかまってくれないしさ――」
「海、それって嫉妬?それならよく分かる!」
陸は何かひらめいた時のように目を輝かせ、ブッチを愛おしげに撫でた。
「何が?」海はきょとんと陸を見つめ訊き返す。
「俺だってブッチがコウタの膝の上に乗ったら、キーってなるし、まして朋ちゃんにすりすりする姿は見たくもない。もみもみだって他の人にはして欲しくないし、この前朋ちゃんの膝の上でしてるの見た時、もう少しで朋ちゃんを部屋から追い出しそうになったんだ」
そこまでブッチを愛しているのか?
もはや呆れると言うよりも、ここまで馬鹿になれる陸が羨ましい。
海は同じ顏の兄と恋愛対象が被らなかったことに安堵を覚えた。そういえば、いままで同じ子を好きになった事ないな。
「ブッチは俺にももみもみするぞ」わざわざ陸の嫉妬を煽ることも無いが、つい口をついて出てしまった。「唯一もみもみしないのが、まさにいだな。ブッチもブッチなりに危険を感じているんだな」これで変な嫉妬の矛先を逸らせただろう。
「もしブッチがまさにいにもみもみしたら、俺、ブッチと家を出るからな!」
いったい誰に向かって宣言しているのか。陸があまりにも興奮しているためか、ブッチは陸の膝からおりた。
「あぁん、ブッチどこへ行くのぉ~」
哀れな声を出す陸を尻目に、ブッチは縁側から庭先へドスンと飛び降りた。
最近ブッチは太ったのだ。
くだらない話が途切れたところで、海はこれ幸いとばかりに話を切り替えた。
つづく
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こんばんは、やぴです。
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縁側と双子と愛猫と 後編 [迫田家シリーズ 番外編]
「そういえば最近、まさにい帰ってくるの遅いと思わないか?」
海のその言葉に、陸はほんの少し考えるように頭を傾げ言った。
「あー、確かにね。休みの日も夕方から出かけたりしてさ……あまり家にいないよね。何してるのかな?」
「俺はさ、彼女が出来たんだと思うんだよね」
海は悪戯を企む子供の様に、ニヒヒと笑った。
「海、その笑い方気持ち悪い……。でもさ、まさにいの彼女って想像できなくない?というか、まさにいの恋愛の話って聞いたことないよね」
陸は首を伸ばし外に出て行ったブッチを探している。
「まあ、そう言われればそうだね。というか、あんまり知りたくないや」
「確かにー!」
陸はそう言いつつも、視線は隣の畑のトマトの苗の間にそそがれている。
ちなみに陸の口癖は『確かに』なのだ。
「まさにいって、彼女に対してもあんな感じなのかな?命令口調と言うか、軍の隊長みたいな」
絶対そうに違いない。海は自分で言っておいて、ゾッとした。隣の陸も同じような反応だ。
聖文の恋愛事情など知りたくもない双子たちだが、案外楽しい話題なので続けることにした。
「デートとか遅れたら怒られそう。『罰として、俺にキスしろ』とか言ったりして」
大して似てもいない聖文のものまねをして、陸は自ら笑いのツボにはまった。
「キスもダメ出ししたりして~。『そうじゃない!もっと舌を使え!』とかさぁ」
海も面白がって聖文の口調をまねつつ、表情まで作ってみせた。
陸の笑いがぴたりと止まった。
それにつられて海も口を閉じる。いったい何?と陸の方を見る。
「舌、使うの?」
陸は上目遣いで、ぼそりと言った。その頬がほんのりとピンク色に色づいている。
「えっ?」
海はまさか?というような目で陸を見る。
陸はもじもじと指先を擦り合わせ、同い年の弟の出方を伺った。陸はまだ深く濃いキスを知らない。唇が軽く重なるだけの爽やかな、いかにも学生らしいキスしかした事がないのだ。しかも弟である海も同程度だと思っていたため、先ほどの海の言葉の衝撃は相当なものだった。
「海はそういうキスするの?」弟に後れを取った屈辱はさほどなく、好奇心の方が勝った。
「まあね。最近はしてないけど」
若干得意げなのが鼻につくが、陸はブッチ以外の事には心が広いのだ。
「ふうん。それっていいの?」
「んー……それほどでもないかな?」
海のその返事に陸は心底ほっとした。まぁ、たいした経験の差ではないな。
そんなことよりも――
陸はこれ以上ブッチと離れていられないと、おもむろに立ち上がり、庭先にブッチ同様飛び降りた。サンダルを適当に引っかけると、畑の中に勢いよく突き進んでいった。
話の途中で置き去りにされた海は、やれやれと言った感じでアイスを取りに立った。
おわり
前へ<<
あとがき
こんにちは、やぴです。
双子の兄の方の陸は、ブッチLOVEのマイペース。
弟の海は大人ぶった悪がきといった感じでしょうか!?
そして二人は案外兄たちの動向を見逃さず、勝手気ままに分析してます
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海のその言葉に、陸はほんの少し考えるように頭を傾げ言った。
「あー、確かにね。休みの日も夕方から出かけたりしてさ……あまり家にいないよね。何してるのかな?」
「俺はさ、彼女が出来たんだと思うんだよね」
海は悪戯を企む子供の様に、ニヒヒと笑った。
「海、その笑い方気持ち悪い……。でもさ、まさにいの彼女って想像できなくない?というか、まさにいの恋愛の話って聞いたことないよね」
陸は首を伸ばし外に出て行ったブッチを探している。
「まあ、そう言われればそうだね。というか、あんまり知りたくないや」
「確かにー!」
陸はそう言いつつも、視線は隣の畑のトマトの苗の間にそそがれている。
ちなみに陸の口癖は『確かに』なのだ。
「まさにいって、彼女に対してもあんな感じなのかな?命令口調と言うか、軍の隊長みたいな」
絶対そうに違いない。海は自分で言っておいて、ゾッとした。隣の陸も同じような反応だ。
聖文の恋愛事情など知りたくもない双子たちだが、案外楽しい話題なので続けることにした。
「デートとか遅れたら怒られそう。『罰として、俺にキスしろ』とか言ったりして」
大して似てもいない聖文のものまねをして、陸は自ら笑いのツボにはまった。
「キスもダメ出ししたりして~。『そうじゃない!もっと舌を使え!』とかさぁ」
海も面白がって聖文の口調をまねつつ、表情まで作ってみせた。
陸の笑いがぴたりと止まった。
それにつられて海も口を閉じる。いったい何?と陸の方を見る。
「舌、使うの?」
陸は上目遣いで、ぼそりと言った。その頬がほんのりとピンク色に色づいている。
「えっ?」
海はまさか?というような目で陸を見る。
陸はもじもじと指先を擦り合わせ、同い年の弟の出方を伺った。陸はまだ深く濃いキスを知らない。唇が軽く重なるだけの爽やかな、いかにも学生らしいキスしかした事がないのだ。しかも弟である海も同程度だと思っていたため、先ほどの海の言葉の衝撃は相当なものだった。
「海はそういうキスするの?」弟に後れを取った屈辱はさほどなく、好奇心の方が勝った。
「まあね。最近はしてないけど」
若干得意げなのが鼻につくが、陸はブッチ以外の事には心が広いのだ。
「ふうん。それっていいの?」
「んー……それほどでもないかな?」
海のその返事に陸は心底ほっとした。まぁ、たいした経験の差ではないな。
そんなことよりも――
陸はこれ以上ブッチと離れていられないと、おもむろに立ち上がり、庭先にブッチ同様飛び降りた。サンダルを適当に引っかけると、畑の中に勢いよく突き進んでいった。
話の途中で置き去りにされた海は、やれやれと言った感じでアイスを取りに立った。
おわり
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弟の海は大人ぶった悪がきといった感じでしょうか!?
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