はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
ひとひらの絆 1 [ひとひらの絆]
※引っ越し記事です。そのまま再度UPします。
**主な登場人物**
容(よう) 17歳
守(まもる) 10歳
一葉(かずは) 16歳
<ちょっとしたあらすじ>
容と守の二人の兄弟が、母が亡くなった後、別の家庭を持っている父親と共に暮らし始めるところから始まります。
父は兄弟が幼い頃、母と別れ、新しい妻の間には一人息子の一葉がいます。
容は父とその家庭を恨み、憎んでいます。
「守、今日から俺たちはここで暮らすんだ」
「兄ちゃん……大きいおうちだね。ここにパパがいるんでしょ」
「そうだよ――ここには母さんを捨てた男と、母さんから父さんを奪った女と俺たちの幸せをすべて自分のものにしたやつがいるんだ」
「兄ちゃん、それって悪い人なんでしょ」
「守はよく分かってるなぁ――だから、すべてを奪ってやろうな」
そう言って兄弟は手をぎゅっと繋ぎ、この家のチャイムを鳴らした。
弟の手を引き、容は父のいる家までやって来た。
容は今一七歳、弟の守は十歳――ひと月ほど前に母が亡くなった。
父は守が生まれて間もなくして、家族を捨てて新しい家族の元へ行った。
その家にはすでに六歳になる男の子がいた。
そして相手の女は、母がもっとも信頼を寄せていた親友だったのだ。
優しかった母は何も言わず、父がその女のところへ行くのを許した。
父は捨てた家族に見向きもしなかった。
母は働き詰めであまり家にいなかった。
だけど容と守は寂しいとは思わなかった――いや、思わないようにしていた。
暮らしだって楽ではなかったが、家族三人顔を合わせているだけで幸せだった。
母が背負った苦労が、母を蝕み、二人から母を奪った。
それから、二人は父を捜した。
父は地元では有名な会社の社長ですぐに見つけることができた。
会社はあの女のものだという。
自分たちが苦労していた間に、父がのうのうと暮らしていたかと思うと湧き上がる怒りを自制できないほどだった。
そして復讐してやろうと思った。
父はあっさり二人を引き取ることを了承した。
まるで最初から容達がやって来ることを想定していたみたいだった。
同じ家で家族として暮らす――世間体を考えての事だろう――虫唾が走るほど腹が立った。
しかし、これが始まりなのだ。
この家で、憎いやつらの苦しむ姿を見る。
それだけが容にとって、この家で暮らす意味なのだ。
そうでなければ、父の顔など二度と見たくはなかった。
「兄ちゃん、玄関開いたよ」
守が自分よりもずっと背の高い容を見上げて、中に入ろうよと促す。
「そうだな……守、何があっても兄ちゃんの傍にいるんだぞ。守ってやるからな」
そう言って二人は始まりの一歩を踏み出した。
つづく
>>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
**主な登場人物**
容(よう) 17歳
守(まもる) 10歳
一葉(かずは) 16歳
<ちょっとしたあらすじ>
容と守の二人の兄弟が、母が亡くなった後、別の家庭を持っている父親と共に暮らし始めるところから始まります。
父は兄弟が幼い頃、母と別れ、新しい妻の間には一人息子の一葉がいます。
容は父とその家庭を恨み、憎んでいます。
「守、今日から俺たちはここで暮らすんだ」
「兄ちゃん……大きいおうちだね。ここにパパがいるんでしょ」
「そうだよ――ここには母さんを捨てた男と、母さんから父さんを奪った女と俺たちの幸せをすべて自分のものにしたやつがいるんだ」
「兄ちゃん、それって悪い人なんでしょ」
「守はよく分かってるなぁ――だから、すべてを奪ってやろうな」
そう言って兄弟は手をぎゅっと繋ぎ、この家のチャイムを鳴らした。
弟の手を引き、容は父のいる家までやって来た。
容は今一七歳、弟の守は十歳――ひと月ほど前に母が亡くなった。
父は守が生まれて間もなくして、家族を捨てて新しい家族の元へ行った。
その家にはすでに六歳になる男の子がいた。
そして相手の女は、母がもっとも信頼を寄せていた親友だったのだ。
優しかった母は何も言わず、父がその女のところへ行くのを許した。
父は捨てた家族に見向きもしなかった。
母は働き詰めであまり家にいなかった。
だけど容と守は寂しいとは思わなかった――いや、思わないようにしていた。
暮らしだって楽ではなかったが、家族三人顔を合わせているだけで幸せだった。
母が背負った苦労が、母を蝕み、二人から母を奪った。
それから、二人は父を捜した。
父は地元では有名な会社の社長ですぐに見つけることができた。
会社はあの女のものだという。
自分たちが苦労していた間に、父がのうのうと暮らしていたかと思うと湧き上がる怒りを自制できないほどだった。
そして復讐してやろうと思った。
父はあっさり二人を引き取ることを了承した。
まるで最初から容達がやって来ることを想定していたみたいだった。
同じ家で家族として暮らす――世間体を考えての事だろう――虫唾が走るほど腹が立った。
しかし、これが始まりなのだ。
この家で、憎いやつらの苦しむ姿を見る。
それだけが容にとって、この家で暮らす意味なのだ。
そうでなければ、父の顔など二度と見たくはなかった。
「兄ちゃん、玄関開いたよ」
守が自分よりもずっと背の高い容を見上げて、中に入ろうよと促す。
「そうだな……守、何があっても兄ちゃんの傍にいるんだぞ。守ってやるからな」
そう言って二人は始まりの一歩を踏み出した。
つづく
>>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 2 [ひとひらの絆]
出迎えたのは、父の今の妻京子と、十六歳になる息子の一葉だ。
「二人ともよく来たわねぇ。さあ、中へ入って、疲れたでしょ」
優しく出迎える京子を内心冷やかな気持ちで容は見ていた。
しかしその顔には穏やかな笑みを浮かべ京子の後をついていく。
容と守が、案内されたリビングの豪華なソファに座ると、お手伝いさんがジュースとケーキを持ってきた。
守は目をキラキラさせ、容を見た。
「兄ちゃん、食べてもいい?」
容はそんな守の表情に和やかに微笑みながら、ちらりと京子の方を見た。
京子は穏やかな優しい口調で「どうぞ」と言った。
守はフォークを持つと、一気にばくばくと食べ始めた。
「守、ゆっくり食べるんだよ」容が声を掛けると、守は言われた通り食べる速度を落とした。
それから、軽い自己紹介が行われた。
お互いの名前を言い合い、容は一葉に「よろしく」とにっこりと笑いかけた。
一葉は青白い顔で、小さく「うん」と言った。
「兄ちゃん、おかしいよ。男なのに髪が長ーい」
ケーキをすっかり食べ終えた守が、一葉を指差して言う。
「こら、指は指しちゃだめだっていったろ――ごめんな」
容は守を注意し、一葉に謝った。
一葉はまた小さく「うん」と言った。
確かに一葉の容姿はおかしい。
女じゃあるまいし、髪を肩まで伸ばしている。
その長い髪は、細い髪質でさらさらと流れるようだ。
顔は青白いし、服装も男っぽいとは言えない――胸のあたりにフリルがついたようなブラウスを着ている。目は伏し目がちで、おどおどしたように見える。
容はもっと威張った奴がいると思っていたから、なんだか肩透かしを食らった気分だった。
それに、京子もいやににこにこして――母の死を知っているくせに、無神経だと思った。
いや、もしかすると自分たちに気を使って、わざとこういう態度なのかもしれないと、容は京子に対しての気持ちが少し緩んだりもしたが――それは罪悪感があるからだろう――このくらいの対応当たり前なのだと思い直した。
だけど、見た目や態度は重要ではない。
目的は必ずやり遂げる。
それから、容と守は自分たちの部屋に案内された。
一人部屋だ――今まで、この一人部屋と同じくらいの広さのアパートで家族三人で暮らしてきた。
そのため、守は寂しいから兄ちゃんと一緒がいいと駄々をこねた。
守のくせのある柔らかい髪をくしゃっと撫でながら、さみしかったら兄ちゃんの部屋にいつでも来てもいいと言ってなんとか宥めた。
容は与えられた部屋で、ふうっと一息つき、これから始まる暮らしに思いを巡らせていた。
しかし落ち着く暇もなく、早速守が部屋にやって来た。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
「二人ともよく来たわねぇ。さあ、中へ入って、疲れたでしょ」
優しく出迎える京子を内心冷やかな気持ちで容は見ていた。
しかしその顔には穏やかな笑みを浮かべ京子の後をついていく。
容と守が、案内されたリビングの豪華なソファに座ると、お手伝いさんがジュースとケーキを持ってきた。
守は目をキラキラさせ、容を見た。
「兄ちゃん、食べてもいい?」
容はそんな守の表情に和やかに微笑みながら、ちらりと京子の方を見た。
京子は穏やかな優しい口調で「どうぞ」と言った。
守はフォークを持つと、一気にばくばくと食べ始めた。
「守、ゆっくり食べるんだよ」容が声を掛けると、守は言われた通り食べる速度を落とした。
それから、軽い自己紹介が行われた。
お互いの名前を言い合い、容は一葉に「よろしく」とにっこりと笑いかけた。
一葉は青白い顔で、小さく「うん」と言った。
「兄ちゃん、おかしいよ。男なのに髪が長ーい」
ケーキをすっかり食べ終えた守が、一葉を指差して言う。
「こら、指は指しちゃだめだっていったろ――ごめんな」
容は守を注意し、一葉に謝った。
一葉はまた小さく「うん」と言った。
確かに一葉の容姿はおかしい。
女じゃあるまいし、髪を肩まで伸ばしている。
その長い髪は、細い髪質でさらさらと流れるようだ。
顔は青白いし、服装も男っぽいとは言えない――胸のあたりにフリルがついたようなブラウスを着ている。目は伏し目がちで、おどおどしたように見える。
容はもっと威張った奴がいると思っていたから、なんだか肩透かしを食らった気分だった。
それに、京子もいやににこにこして――母の死を知っているくせに、無神経だと思った。
いや、もしかすると自分たちに気を使って、わざとこういう態度なのかもしれないと、容は京子に対しての気持ちが少し緩んだりもしたが――それは罪悪感があるからだろう――このくらいの対応当たり前なのだと思い直した。
だけど、見た目や態度は重要ではない。
目的は必ずやり遂げる。
それから、容と守は自分たちの部屋に案内された。
一人部屋だ――今まで、この一人部屋と同じくらいの広さのアパートで家族三人で暮らしてきた。
そのため、守は寂しいから兄ちゃんと一緒がいいと駄々をこねた。
守のくせのある柔らかい髪をくしゃっと撫でながら、さみしかったら兄ちゃんの部屋にいつでも来てもいいと言ってなんとか宥めた。
容は与えられた部屋で、ふうっと一息つき、これから始まる暮らしに思いを巡らせていた。
しかし落ち着く暇もなく、早速守が部屋にやって来た。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 3 [ひとひらの絆]
大体だがこの家の中を見て回った。
二階は自分たちの部屋も含めて四部屋ほどがあり、一階には父の書斎とおそらく二人の寝室の他は、応接室や事務スペース、リビングなどいたって普通だ。確かに応接室は広くて豪華だったが、有名な会社の社長と言う割にはそんなに豪邸に住んでいるわけでもなかった。
そもそも会社自体は京子の家のものだ。
元々は粉製品を扱う食品会社だったが、今では数店舗レストランなど飲食店も経営している。
イタリアンレストランにラーメン屋など粉を使った麺がウリなのだろうと思う。
生パスタはスーパーにも卸している。
まさか、父は金でこっちの家族を選んだわけではないよな……いや、そうかもしれない、そうでなければ母さんを捨てるはずない。
ふと、容の中に湧いた疑問はあっさりと脳内で肯定されてしまった。
そう思うと、自分の中の怒りや恨みがまた沸々と湧き上がってくる。
そしてその怒りは自分自身にも向いている。
容は母の病気に気がつかなかった自分が許せないでいた。
母の好きな、暖かく彩り豊かな春が来たというのに、例年よりも早く散り始めた桜と同じくその命の火を消してしまった。いつもと変わらず元気だったのに、桜が咲き始めた頃、急に体調を崩し病院に入院して、そのまま帰宅する事は無かった。
だけど、一つだけ分かっている事は、母は自分の死期に気付いていたと言う事だ。確実に知っていたといってもいい。
自分が亡くなった後に、容と守が困らないように身の回りの整理がきちんとされていたからだ。
それなのに父の連絡先はおろか、父に関する物が何も残されていなかったことが不思議でならない。
もし、容が父に連絡を取らなかったらどうなっていたのだろうか?父は母の死を知ることも無かったのだろうか?
堂々巡りする考えに、容は父やその家族に対しての恨みで雁字搦めになる。
容の考えは一貫している。守以外のこの家に住む人間はすべて敵なのだ――だからまずはじっくり相手がどんな奴か見極めなければならない。
転校手続きも終え、容は一葉と同じ公立高校に通うことになった。守は家から五百メートルほどの距離にある小学校へ通う。
容はこの家に越してきてから、しばらく各々の人となりを観察していた。
父は初日にちらりと顔を出したが、気まずいのか書斎に閉じこもりあまり顔を合わせようとはしなかった。
守は初めて見る自分の父親に不思議そうな顔を向けていた。だけど、その幼く可愛らしい顔には僅かだが、嬉しそうな表情が垣間見えた。
容の背に隠れるようにして父を覗き見る守を、父も同じような表情で見ていた。いや、それよりももっと――そう、親が子供に対して見せる、愛おしい者を見る様な顔つきだった。
容はそんな父親に、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
しかしそんな気持ちを押し殺し、その顔に笑みさえ浮かべて堪えたのは、ここで成し遂げるべき事があったからだった。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
二階は自分たちの部屋も含めて四部屋ほどがあり、一階には父の書斎とおそらく二人の寝室の他は、応接室や事務スペース、リビングなどいたって普通だ。確かに応接室は広くて豪華だったが、有名な会社の社長と言う割にはそんなに豪邸に住んでいるわけでもなかった。
そもそも会社自体は京子の家のものだ。
元々は粉製品を扱う食品会社だったが、今では数店舗レストランなど飲食店も経営している。
イタリアンレストランにラーメン屋など粉を使った麺がウリなのだろうと思う。
生パスタはスーパーにも卸している。
まさか、父は金でこっちの家族を選んだわけではないよな……いや、そうかもしれない、そうでなければ母さんを捨てるはずない。
ふと、容の中に湧いた疑問はあっさりと脳内で肯定されてしまった。
そう思うと、自分の中の怒りや恨みがまた沸々と湧き上がってくる。
そしてその怒りは自分自身にも向いている。
容は母の病気に気がつかなかった自分が許せないでいた。
母の好きな、暖かく彩り豊かな春が来たというのに、例年よりも早く散り始めた桜と同じくその命の火を消してしまった。いつもと変わらず元気だったのに、桜が咲き始めた頃、急に体調を崩し病院に入院して、そのまま帰宅する事は無かった。
だけど、一つだけ分かっている事は、母は自分の死期に気付いていたと言う事だ。確実に知っていたといってもいい。
自分が亡くなった後に、容と守が困らないように身の回りの整理がきちんとされていたからだ。
それなのに父の連絡先はおろか、父に関する物が何も残されていなかったことが不思議でならない。
もし、容が父に連絡を取らなかったらどうなっていたのだろうか?父は母の死を知ることも無かったのだろうか?
堂々巡りする考えに、容は父やその家族に対しての恨みで雁字搦めになる。
容の考えは一貫している。守以外のこの家に住む人間はすべて敵なのだ――だからまずはじっくり相手がどんな奴か見極めなければならない。
転校手続きも終え、容は一葉と同じ公立高校に通うことになった。守は家から五百メートルほどの距離にある小学校へ通う。
容はこの家に越してきてから、しばらく各々の人となりを観察していた。
父は初日にちらりと顔を出したが、気まずいのか書斎に閉じこもりあまり顔を合わせようとはしなかった。
守は初めて見る自分の父親に不思議そうな顔を向けていた。だけど、その幼く可愛らしい顔には僅かだが、嬉しそうな表情が垣間見えた。
容の背に隠れるようにして父を覗き見る守を、父も同じような表情で見ていた。いや、それよりももっと――そう、親が子供に対して見せる、愛おしい者を見る様な顔つきだった。
容はそんな父親に、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
しかしそんな気持ちを押し殺し、その顔に笑みさえ浮かべて堪えたのは、ここで成し遂げるべき事があったからだった。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 4 [ひとひらの絆]
別に父は後回しでもいい――そう思って、京子と一葉を主に観察した。
一見京子はいい人そうに見える――いつも穏やかな表情で、容達に実の子のように接しようと努力しているのが伺える。
しかし、容は別の面に気付いていた。
京子はまだ四十手前の女盛り、父とはもうそういう行為はなさそうだ。変によそよそしく見えるし、父はどうやら仕事人間のようで京子は放っておかれているのだと思った。もし、若くていい男が傍にいたら、どういう反応を示すのだろうか?
そして、一葉。
一葉については全くと言っていいほど分からない。
あまり喋らないし、いつも俯いて目も合わせない。色々な面で好き嫌いが激しいらしく、食事にはかなり気を使うらしい。もちろん作る方が、だ――
だからこんなに青白い顔で、軟弱そうなのかと思う。
あとはお手伝いの五月さん。
見た感じ普通のおばさんだ。長い事勤めているのかと訊いたら、まだ五年程度だと言われた。それが長いのか短いのかは容には判断できなかった。週に四日程度通い、朝来て夕方には帰る。
そして時々見かけるのが、父の秘書の森野だ。まだ二十代そこそこの青年で、秘書と呼ぶにはいささか頼りなさそうだった。この男を観察していて思ったのは、どうやら森野は京子に気があるようだ、何かといちいち赤面して、喋るのもままならない。
しかし、京子は森野に全く興味がなさそうだし、好意を持たれている事にすら気付いてなさそうだった。
そういえばもう一人いた。
一葉を学校に送迎している運転手――名前は知らないが、見る限りではただのじいさんだ。
一人考えを巡らせていると、部屋の外でノック音と共に守の声がした。
「兄ちゃん、ぼく」
守が一緒に寝るために、容の部屋へやってきた。
容が返事をするまでもなく、守はドアを開け枕を持って入って来る。ベッドにいそいそと入り、容にベッドに来て欲しそうな顔を向けている。
「しょうがないなぁ」
容は甘えん坊の弟の為に、寝るには少し早いがベッドへもぐり込んだ。
いつも守の背を包むようにして、二人くっついて眠る。
「ねえ、兄ちゃん。ぼくの触って」
守はいつも容に股間に手を添えて貰って寝る。
容は言われた通り、たいして膨らみもない股間に手を添え包むようにしてやる。
掴まれていると落ち着くのか何なのかは分からないが、大抵ねだられる行為だ。
でも、容はそんな守をかわいいと思っていた。
歳が離れているせいだろうか――少々のわがままは聞いてやりたいし、すごく守ってやりたいと思う存在だ。
「へへっ、兄ちゃんに触られると安心する」
そう言ってから暫くすると、守は早くも寝息を立て始めた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
一見京子はいい人そうに見える――いつも穏やかな表情で、容達に実の子のように接しようと努力しているのが伺える。
しかし、容は別の面に気付いていた。
京子はまだ四十手前の女盛り、父とはもうそういう行為はなさそうだ。変によそよそしく見えるし、父はどうやら仕事人間のようで京子は放っておかれているのだと思った。もし、若くていい男が傍にいたら、どういう反応を示すのだろうか?
そして、一葉。
一葉については全くと言っていいほど分からない。
あまり喋らないし、いつも俯いて目も合わせない。色々な面で好き嫌いが激しいらしく、食事にはかなり気を使うらしい。もちろん作る方が、だ――
だからこんなに青白い顔で、軟弱そうなのかと思う。
あとはお手伝いの五月さん。
見た感じ普通のおばさんだ。長い事勤めているのかと訊いたら、まだ五年程度だと言われた。それが長いのか短いのかは容には判断できなかった。週に四日程度通い、朝来て夕方には帰る。
そして時々見かけるのが、父の秘書の森野だ。まだ二十代そこそこの青年で、秘書と呼ぶにはいささか頼りなさそうだった。この男を観察していて思ったのは、どうやら森野は京子に気があるようだ、何かといちいち赤面して、喋るのもままならない。
しかし、京子は森野に全く興味がなさそうだし、好意を持たれている事にすら気付いてなさそうだった。
そういえばもう一人いた。
一葉を学校に送迎している運転手――名前は知らないが、見る限りではただのじいさんだ。
一人考えを巡らせていると、部屋の外でノック音と共に守の声がした。
「兄ちゃん、ぼく」
守が一緒に寝るために、容の部屋へやってきた。
容が返事をするまでもなく、守はドアを開け枕を持って入って来る。ベッドにいそいそと入り、容にベッドに来て欲しそうな顔を向けている。
「しょうがないなぁ」
容は甘えん坊の弟の為に、寝るには少し早いがベッドへもぐり込んだ。
いつも守の背を包むようにして、二人くっついて眠る。
「ねえ、兄ちゃん。ぼくの触って」
守はいつも容に股間に手を添えて貰って寝る。
容は言われた通り、たいして膨らみもない股間に手を添え包むようにしてやる。
掴まれていると落ち着くのか何なのかは分からないが、大抵ねだられる行為だ。
でも、容はそんな守をかわいいと思っていた。
歳が離れているせいだろうか――少々のわがままは聞いてやりたいし、すごく守ってやりたいと思う存在だ。
「へへっ、兄ちゃんに触られると安心する」
そう言ってから暫くすると、守は早くも寝息を立て始めた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 5 [ひとひらの絆]
この家に来てひと月が過ぎる頃には生活にも慣れ、家族を少しずつ崩壊させていくために、何から始めようかと言うところが決まりつつあった。
しかし、未だ一葉については分からない。
ほとんど避けられているように思う。
こんな内向的な奴が、そのうち会社を継いだりするのだろうかと疑問に思う。
そうはさせるものかと容は思っていた。
歳からいけば容の方が上だ――それに社交的だし、それなりに頭もいい。
ただ、もとは京子の親の会社だ――後を継がせるなら、実の子がいいに決まっている。
要は自分がそれに見合うほど、優秀でありさえすればいいのだ。
一葉に関しては、そっち方面で攻めていこうと、とりあえずは考えていた。
しかし、まずは京子からだ。
「おばさま……ちょっといいですか?」
容は学校から帰宅するや否や、リビングでパッチワークに夢中になっていた京子に声を掛けた。
京子はその声に手を止め顔をあげた。
「あら、どうしたの容くん」
京子は容を礼儀正しくいい子だと思っている。猫を被っているとは夢にも思っていない。
容は京子の向かい側のソファに腰をおろし、早速話を切り出した。
「実は……家庭教師をお願いしたくて。あっ、でもおばさまに迷惑掛けるような事ではないんです。僕の友人のお兄さんが――今、大学院生なんですけど、その人が空いている時間に僕の勉強を無償で見てくれると言ってくれてて……それで、時々家にやって来ることになるので、了承を得たいと思って……。僕、来年受験だし――」
容は少し上目遣いで京子を見ながら、出方を伺った。
容の黒い瞳がしっかりと京子を捉える。
話を聞いていた京子はどんどん嬉しそうな顔に変わっていき、自分の返事を待っている容に優しく微笑み言葉を返した。
「ええ、もちろんいいわよ。それに無償だなんて、相手の方もお忙しいでしょうし、わたしにできることなら協力したいわ。その……お値段の方もどのくらいがいいのかしら?一葉にも以前何度か家庭教師を付けた事があったから……その辺は秘書の森野に今度訊いてみておくわ」
「それでは、相手の方に伝えておきます。実は――やはりタダで見てもらうのは気が引けたので、おばさまの好意をありがたく受けたいと思います。いつも良くしていただいてありがとうございます」
容はそう言うと、頭を深く下げ、そのまま立ち上がって自分の部屋へ行った。
京子は純粋に自分が頼りにされたと思い喜んでいた。
容は部屋に入るとベッドにごろりと横になった。
とりあえず、準備は整った。
容は別に家庭教師が必要なほどでもない。勉強など適当にやっていても、それなりに上位をキープできる。
相手が大学院生と言うのは本当だが、友人の兄ではない。普通に容の知り合いだ。
そして、この男は熟した女性が好みだ。
あとは、京子がうまく引っかかるのを待つだけだった。
その為には、自分もそれなりにお膳立てをしなければならないのだが――
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
しかし、未だ一葉については分からない。
ほとんど避けられているように思う。
こんな内向的な奴が、そのうち会社を継いだりするのだろうかと疑問に思う。
そうはさせるものかと容は思っていた。
歳からいけば容の方が上だ――それに社交的だし、それなりに頭もいい。
ただ、もとは京子の親の会社だ――後を継がせるなら、実の子がいいに決まっている。
要は自分がそれに見合うほど、優秀でありさえすればいいのだ。
一葉に関しては、そっち方面で攻めていこうと、とりあえずは考えていた。
しかし、まずは京子からだ。
「おばさま……ちょっといいですか?」
容は学校から帰宅するや否や、リビングでパッチワークに夢中になっていた京子に声を掛けた。
京子はその声に手を止め顔をあげた。
「あら、どうしたの容くん」
京子は容を礼儀正しくいい子だと思っている。猫を被っているとは夢にも思っていない。
容は京子の向かい側のソファに腰をおろし、早速話を切り出した。
「実は……家庭教師をお願いしたくて。あっ、でもおばさまに迷惑掛けるような事ではないんです。僕の友人のお兄さんが――今、大学院生なんですけど、その人が空いている時間に僕の勉強を無償で見てくれると言ってくれてて……それで、時々家にやって来ることになるので、了承を得たいと思って……。僕、来年受験だし――」
容は少し上目遣いで京子を見ながら、出方を伺った。
容の黒い瞳がしっかりと京子を捉える。
話を聞いていた京子はどんどん嬉しそうな顔に変わっていき、自分の返事を待っている容に優しく微笑み言葉を返した。
「ええ、もちろんいいわよ。それに無償だなんて、相手の方もお忙しいでしょうし、わたしにできることなら協力したいわ。その……お値段の方もどのくらいがいいのかしら?一葉にも以前何度か家庭教師を付けた事があったから……その辺は秘書の森野に今度訊いてみておくわ」
「それでは、相手の方に伝えておきます。実は――やはりタダで見てもらうのは気が引けたので、おばさまの好意をありがたく受けたいと思います。いつも良くしていただいてありがとうございます」
容はそう言うと、頭を深く下げ、そのまま立ち上がって自分の部屋へ行った。
京子は純粋に自分が頼りにされたと思い喜んでいた。
容は部屋に入るとベッドにごろりと横になった。
とりあえず、準備は整った。
容は別に家庭教師が必要なほどでもない。勉強など適当にやっていても、それなりに上位をキープできる。
相手が大学院生と言うのは本当だが、友人の兄ではない。普通に容の知り合いだ。
そして、この男は熟した女性が好みだ。
あとは、京子がうまく引っかかるのを待つだけだった。
その為には、自分もそれなりにお膳立てをしなければならないのだが――
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 6 [ひとひらの絆]
「兄ちゃん」
この日も守は、容の部屋へ枕を持ってやって来た。
そしていつものように二人はぴったりと寄り添いベッドに横になる。
「兄ちゃん、触って」
これもいつものセリフだ。
容が守の股間に手を添える。
「んふっ、兄ちゃんの手温かい。ねぇ……兄ちゃん、もっとぎゅっとして」
守がかわいくおねだりする。
容が少し力を入れて、ぎゅっと握ってやると、守は何とも言えない気持ちよさそうな声を出した。
「兄ちゃん、ぎゅっぎゅして」
守の言うとおりにぎゅっぎゅっとしてやると、「あんっ、兄ちゃん、いっぱいしてー」と、更にねだった。
「守、気持ちいいのか?」容は嬉しそうに守に訊いた。
「うん…兄ちゃん。ぼく最近兄ちゃんに触られると、むずむずして、もっとぎゅってして欲しかったんだ」
守もそう言う年頃か……と容は思いつつ、守の股間をやわやわと揉み始めた。
「あんっ、兄ちゃん…兄ちゃん……」守がかわいく喘ぐ。
「守、ぎゅってするより気持ちいいだろ。でも、あまり声は出しちゃだめだぞ」
さすがに声が漏れてはまずい。
「うん、わかった。あっ…あ……気持ちいいよぉ」
守は言いつけどおりに小さな声で喘ぐ。
容は守のズボンとパンツを一緒にずらし、守に声を掛けた。
「このまま、もっと気持ちよくしてやるから、やばくなったらティッシュで押さえるんだぞ」
そう言ってベッド脇からティッシュを数枚取り守に渡した。
「やばくなったらって何?」まだ、射精未体験の守が訊く。
「守のおちんちんから、液体が出るからそれをティッシュで受け止めるんだ。気持ちよくなったら分かるから」
「おしっこの事?」
「ちょっと違うけど、そんな感覚だよ」
容が守のペニスを擦り始めた。いっちょ前にペニスは硬くなり、守は兄にされる行為に夢中になって喘いだ。それから間もなくして、守が出そうかもと報告した。
容は守の口元を押さえ、声を出させないようにした。
守は射精の瞬間、ちゃんとティッシュでほんの少しの精液を受け止めた。
「はぁ……はぁ…にいちゃん……でちゃった…ぼく、ビクンってなった…気持ちよかった、兄ちゃん好き」
守は容の腕の中で、満足そうにそのまま眠った。
容は守が寝たのを見計らって、手を洗う為に部屋を出た。
それと同時に、部屋の扉がパタンと閉まる音がした。
どこの部屋かは分からなかったが、二階にいるのは他には一葉しかいない――それでも、容は特に気にせず、手を洗いに階下へ降りた。
それ以来、守は時々「兄ちゃん、出してもいい?」とお願いするようになった。
*****
暫くして、容の家庭教師を務める男――堂林が家にやって来た。
当然勉強はしているふりだけで、適当にお喋りでもして時間を潰していた。
京子は必ずお茶とお菓子を持って部屋へやって来た。
もちろん、母親気分で当たり前の行為をしているだけだった――
堂林はいつもチラチラとそれとなく視線を送った。
目が合えば、あからさまに視線を逸らし、自分が相手に好意を寄せているというところをアピールした。
最初の一歩は容が時間になっても帰宅しないというベタな作戦だった。
もちろんそれはきっかけに過ぎず、その後は堂林の腕にかかっていた。
堂林が容の帰宅を待つ間、京子が相手をする。
もじもじしながら、頬を赤く染め、会話をぽつぽつと楽しむ。
京子はそんな堂林をかわいいと思っているようだった。
堂林は二十四歳、京子からすればまだまだ子供みたいなものだ。
しかし時折真剣な目で見つめられると、そこに男を感じる。
京子も徐々に堂林に興味を持ち始めた。
容の作戦は成功したのだ。
ただ、堂林が思いの外真剣な気持ちだと言う事だけが気がかりだった。
そして、容がこの作戦に気を取られている間に、思いもよらぬ出来事が起こっていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
この日も守は、容の部屋へ枕を持ってやって来た。
そしていつものように二人はぴったりと寄り添いベッドに横になる。
「兄ちゃん、触って」
これもいつものセリフだ。
容が守の股間に手を添える。
「んふっ、兄ちゃんの手温かい。ねぇ……兄ちゃん、もっとぎゅっとして」
守がかわいくおねだりする。
容が少し力を入れて、ぎゅっと握ってやると、守は何とも言えない気持ちよさそうな声を出した。
「兄ちゃん、ぎゅっぎゅして」
守の言うとおりにぎゅっぎゅっとしてやると、「あんっ、兄ちゃん、いっぱいしてー」と、更にねだった。
「守、気持ちいいのか?」容は嬉しそうに守に訊いた。
「うん…兄ちゃん。ぼく最近兄ちゃんに触られると、むずむずして、もっとぎゅってして欲しかったんだ」
守もそう言う年頃か……と容は思いつつ、守の股間をやわやわと揉み始めた。
「あんっ、兄ちゃん…兄ちゃん……」守がかわいく喘ぐ。
「守、ぎゅってするより気持ちいいだろ。でも、あまり声は出しちゃだめだぞ」
さすがに声が漏れてはまずい。
「うん、わかった。あっ…あ……気持ちいいよぉ」
守は言いつけどおりに小さな声で喘ぐ。
容は守のズボンとパンツを一緒にずらし、守に声を掛けた。
「このまま、もっと気持ちよくしてやるから、やばくなったらティッシュで押さえるんだぞ」
そう言ってベッド脇からティッシュを数枚取り守に渡した。
「やばくなったらって何?」まだ、射精未体験の守が訊く。
「守のおちんちんから、液体が出るからそれをティッシュで受け止めるんだ。気持ちよくなったら分かるから」
「おしっこの事?」
「ちょっと違うけど、そんな感覚だよ」
容が守のペニスを擦り始めた。いっちょ前にペニスは硬くなり、守は兄にされる行為に夢中になって喘いだ。それから間もなくして、守が出そうかもと報告した。
容は守の口元を押さえ、声を出させないようにした。
守は射精の瞬間、ちゃんとティッシュでほんの少しの精液を受け止めた。
「はぁ……はぁ…にいちゃん……でちゃった…ぼく、ビクンってなった…気持ちよかった、兄ちゃん好き」
守は容の腕の中で、満足そうにそのまま眠った。
容は守が寝たのを見計らって、手を洗う為に部屋を出た。
それと同時に、部屋の扉がパタンと閉まる音がした。
どこの部屋かは分からなかったが、二階にいるのは他には一葉しかいない――それでも、容は特に気にせず、手を洗いに階下へ降りた。
それ以来、守は時々「兄ちゃん、出してもいい?」とお願いするようになった。
*****
暫くして、容の家庭教師を務める男――堂林が家にやって来た。
当然勉強はしているふりだけで、適当にお喋りでもして時間を潰していた。
京子は必ずお茶とお菓子を持って部屋へやって来た。
もちろん、母親気分で当たり前の行為をしているだけだった――
堂林はいつもチラチラとそれとなく視線を送った。
目が合えば、あからさまに視線を逸らし、自分が相手に好意を寄せているというところをアピールした。
最初の一歩は容が時間になっても帰宅しないというベタな作戦だった。
もちろんそれはきっかけに過ぎず、その後は堂林の腕にかかっていた。
堂林が容の帰宅を待つ間、京子が相手をする。
もじもじしながら、頬を赤く染め、会話をぽつぽつと楽しむ。
京子はそんな堂林をかわいいと思っているようだった。
堂林は二十四歳、京子からすればまだまだ子供みたいなものだ。
しかし時折真剣な目で見つめられると、そこに男を感じる。
京子も徐々に堂林に興味を持ち始めた。
容の作戦は成功したのだ。
ただ、堂林が思いの外真剣な気持ちだと言う事だけが気がかりだった。
そして、容がこの作戦に気を取られている間に、思いもよらぬ出来事が起こっていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 7 [ひとひらの絆]
学校から帰ってきた守が階段を上り自分の部屋へ入ろうとするところで、一葉が声を掛けた。
「守くんっ」
一葉の弾むような声に守は驚いて振り返った。
自分の部屋からひょいと青白い顔を覗かせ、守ににっこりと笑い掛けている。
一葉が自分の名前を呼ぶとも思っていなかったし、そんな風に笑うとも思ってなかった守は更に驚いた。
「どうしたの?」
守は部屋へ入ろうとしていた足を一葉の部屋へと向け、てくてくと傍まで歩み寄った。
「美味しいチョコレートがあるんだけど、一緒に食べない?」
守は食べ物には目がない。美味しいチョコレートという言葉が脳内をくるくる回る。
目を大きくあけ、「うんっ!」と元気よく返事すると一葉の部屋へ入った。
一葉の部屋は白色の家具で統一されていて、カーテンもカーペットもアイボリーの柔らかな色で揃えられていた。
一人掛けのソファと小さなテーブル置いてあり、守はそのソファに座って差し出されたチョコレートを美味しそうに食べていた。
一葉はその様子を微笑みながら見ていた。
「守くん、クッキーもあるよ」
一葉はそう言ってクッキーの缶をテーブルに置き、部屋の隅の小さな冷蔵庫から缶ジュースを取り出して守に渡した。
「ありがとう。これ美味しい!えーっと、一葉……兄ちゃん……」
守は少し躊躇いながら一葉をお兄ちゃんと呼んだ。
「一葉でいいよ。守くんのお兄ちゃんは、容兄さんだけだもの。それと、ここでお菓子を食べたこと容兄さんには内緒にしてて――」
一葉が少し真面目な顔で守に言った。
「どうして?兄ちゃんに内緒なんてしないよ」
守は当たり前のようにそう答えた。
「でも、勝手におやつを僕があげたと知ったら、僕が怒られちゃうんだ。守くんも美味しいお菓子もっと食べたいでしょ?」
守はうーん……と少し考え、「食べたい」と答えた。
容への秘密と、美味しいおやつが天秤にかけられ、あっさりおやつが勝利を収めたのだ。
家では毎日おやつは用意されている。だけど、一葉から貰ったようなチョコレートを口にすることはなかった。食いしん坊の守は、秘密にすることを約束した。
それから時々、容がいない時は、守は一葉の部屋に入り浸っておやつを食べていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
「守くんっ」
一葉の弾むような声に守は驚いて振り返った。
自分の部屋からひょいと青白い顔を覗かせ、守ににっこりと笑い掛けている。
一葉が自分の名前を呼ぶとも思っていなかったし、そんな風に笑うとも思ってなかった守は更に驚いた。
「どうしたの?」
守は部屋へ入ろうとしていた足を一葉の部屋へと向け、てくてくと傍まで歩み寄った。
「美味しいチョコレートがあるんだけど、一緒に食べない?」
守は食べ物には目がない。美味しいチョコレートという言葉が脳内をくるくる回る。
目を大きくあけ、「うんっ!」と元気よく返事すると一葉の部屋へ入った。
一葉の部屋は白色の家具で統一されていて、カーテンもカーペットもアイボリーの柔らかな色で揃えられていた。
一人掛けのソファと小さなテーブル置いてあり、守はそのソファに座って差し出されたチョコレートを美味しそうに食べていた。
一葉はその様子を微笑みながら見ていた。
「守くん、クッキーもあるよ」
一葉はそう言ってクッキーの缶をテーブルに置き、部屋の隅の小さな冷蔵庫から缶ジュースを取り出して守に渡した。
「ありがとう。これ美味しい!えーっと、一葉……兄ちゃん……」
守は少し躊躇いながら一葉をお兄ちゃんと呼んだ。
「一葉でいいよ。守くんのお兄ちゃんは、容兄さんだけだもの。それと、ここでお菓子を食べたこと容兄さんには内緒にしてて――」
一葉が少し真面目な顔で守に言った。
「どうして?兄ちゃんに内緒なんてしないよ」
守は当たり前のようにそう答えた。
「でも、勝手におやつを僕があげたと知ったら、僕が怒られちゃうんだ。守くんも美味しいお菓子もっと食べたいでしょ?」
守はうーん……と少し考え、「食べたい」と答えた。
容への秘密と、美味しいおやつが天秤にかけられ、あっさりおやつが勝利を収めたのだ。
家では毎日おやつは用意されている。だけど、一葉から貰ったようなチョコレートを口にすることはなかった。食いしん坊の守は、秘密にすることを約束した。
それから時々、容がいない時は、守は一葉の部屋に入り浸っておやつを食べていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 8 [ひとひらの絆]
「ごちそうさま。一葉、このクッキー美味しかった!」
「ふふっ、それはクッキーじゃなくてマドレーヌっていうお菓子だよ」
この日も、二人は仲良くおやつタイムを楽しんでいた。
守はおやつに釣られ、一葉と思いの外仲良くなっていた。
「守くん――」
一葉がソファに座る守の傍へ近寄り、守を見上げる様にしてその足元に座り込んだ。
「なあに?一葉」
守がくりっとした目を不思議そうに一葉に向ける。
「ねぇ、いつも容兄さんとしてること、僕がしてあげようか?」
一葉のいつもとは違う艶っぽい表情に、守はドキッとした。
「兄ちゃんとしてることって……何の事?」
守はしらばっくれている訳ではなく、本当に何のことか分からず訊いていた。
「ここだよ」
一葉がそう言って、守の股間に手を触れた。
「あっ、そこは――」ダメと言いかけた守だが、すでに一葉の手が動き出していて思わず口を閉じてしまった。
「あっ……あん…一葉、そこは兄ちゃんがするところなんだ……」
かわいらしく吐息交りの声を発しながら、守が口だけで抵抗する。
「守くん、かわいい。ここ気持ちいいんでしょ。僕もっと触りたい――だめ?」
ふにふにと揉みながら一葉が訊いた。
「う……うん…いいよ……でも、兄ちゃんには内緒だよ……あふっ」
守が自ら、容に秘密を作った。
一葉は内心ほくそ笑みながら、かわいく喘ぐ守の股間を揉んでいた。
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげるから。ズボン脱いで、ベッドへおいで」
一葉は守から離れて、ベッドへ腰を下ろした。
守は言われた通りにズボンとパンツを脱いで、ベッドに上がってちょこんと座りこんだ。
「いつも容兄さんにはどんなふうにしてもらうの?」
守は一葉に訊かれ、いつもは背中から抱きかかえられて、触ってもらっていると説明した。
そして、気持ちよくなって出そうになったらティッシュでガードすると言った。
一葉がにっこりと笑い、「じゃあ、今日はティッシュなしでやってみる?」と言った。
守はよく分からなかったが「うんっ」と張り切って答えた。
守をベッドに横にすると、一葉が股のあたりを覗き込んでいた。
そして守の小さなペニスを手で優しく包み込み、そのまま口に咥えた。
「あっ、一葉!何するんだ?あっ……あっ……一葉、あんっ…気持ちいい……」
守は初めてフェラチオをされ、すぐにその気持ちよさに喘ぎ始めた。
「かず……は、ぁん……ぼく…もうでそうっ……一葉、どうしたらいいの……あっ、でちゃうよー」
守が泣きそうになりながら、このままでは一葉の口の中に出してしまうと、困っていた。
だけど、もうどうしようもなくなってそのまま小さく喘ぐと、ピクンとペニスを震わせ一葉の口の中へ射精した。
一葉が顔をあげ、守の目の前でごくんと口の中のモノを呑み込む姿を見せた。
「んふっ、守くんの美味しかった――気持ちよかった?」
初めてされたフェラチオに少し脱力気味の守は、頬を上気させ「うんっ」と少し恥ずかしそうに答えた。
この日から、おやつとフェラチオはセットになった。
守は今では一葉の虜になっていた。正確には一葉のする行為にだが……。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
「ふふっ、それはクッキーじゃなくてマドレーヌっていうお菓子だよ」
この日も、二人は仲良くおやつタイムを楽しんでいた。
守はおやつに釣られ、一葉と思いの外仲良くなっていた。
「守くん――」
一葉がソファに座る守の傍へ近寄り、守を見上げる様にしてその足元に座り込んだ。
「なあに?一葉」
守がくりっとした目を不思議そうに一葉に向ける。
「ねぇ、いつも容兄さんとしてること、僕がしてあげようか?」
一葉のいつもとは違う艶っぽい表情に、守はドキッとした。
「兄ちゃんとしてることって……何の事?」
守はしらばっくれている訳ではなく、本当に何のことか分からず訊いていた。
「ここだよ」
一葉がそう言って、守の股間に手を触れた。
「あっ、そこは――」ダメと言いかけた守だが、すでに一葉の手が動き出していて思わず口を閉じてしまった。
「あっ……あん…一葉、そこは兄ちゃんがするところなんだ……」
かわいらしく吐息交りの声を発しながら、守が口だけで抵抗する。
「守くん、かわいい。ここ気持ちいいんでしょ。僕もっと触りたい――だめ?」
ふにふにと揉みながら一葉が訊いた。
「う……うん…いいよ……でも、兄ちゃんには内緒だよ……あふっ」
守が自ら、容に秘密を作った。
一葉は内心ほくそ笑みながら、かわいく喘ぐ守の股間を揉んでいた。
「じゃあ、もっと気持ち良くしてあげるから。ズボン脱いで、ベッドへおいで」
一葉は守から離れて、ベッドへ腰を下ろした。
守は言われた通りにズボンとパンツを脱いで、ベッドに上がってちょこんと座りこんだ。
「いつも容兄さんにはどんなふうにしてもらうの?」
守は一葉に訊かれ、いつもは背中から抱きかかえられて、触ってもらっていると説明した。
そして、気持ちよくなって出そうになったらティッシュでガードすると言った。
一葉がにっこりと笑い、「じゃあ、今日はティッシュなしでやってみる?」と言った。
守はよく分からなかったが「うんっ」と張り切って答えた。
守をベッドに横にすると、一葉が股のあたりを覗き込んでいた。
そして守の小さなペニスを手で優しく包み込み、そのまま口に咥えた。
「あっ、一葉!何するんだ?あっ……あっ……一葉、あんっ…気持ちいい……」
守は初めてフェラチオをされ、すぐにその気持ちよさに喘ぎ始めた。
「かず……は、ぁん……ぼく…もうでそうっ……一葉、どうしたらいいの……あっ、でちゃうよー」
守が泣きそうになりながら、このままでは一葉の口の中に出してしまうと、困っていた。
だけど、もうどうしようもなくなってそのまま小さく喘ぐと、ピクンとペニスを震わせ一葉の口の中へ射精した。
一葉が顔をあげ、守の目の前でごくんと口の中のモノを呑み込む姿を見せた。
「んふっ、守くんの美味しかった――気持ちよかった?」
初めてされたフェラチオに少し脱力気味の守は、頬を上気させ「うんっ」と少し恥ずかしそうに答えた。
この日から、おやつとフェラチオはセットになった。
守は今では一葉の虜になっていた。正確には一葉のする行為にだが……。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 9 [ひとひらの絆]
最近、守は夜自分の部屋で寝るようになった。
この家の暮らしにも慣れてきたのだろうか?
容はそれよりも京子と堂林の動向が気になり、あまり守を構ってやれていなかった。
とりあえず容の作戦は成功し、最近では二人は外で頻繁に会う様になっていた。
その為、容は無理に外で時間を潰す必要もなくなった。
この日は学校から真っ直ぐ帰宅し、二階の自分の部屋に上がるところだった。
階段から右手の奥に一葉の部屋、一部屋挟んで左手に守、容の部屋と続く。
階段を上りきったところで、何かささいな違和感を覚えた。
一葉の部屋の方向に目を向け、耳を澄ませた。
その方向から、守の声が聞こえた。
何を言っているのかは分からなかったが、紛れもなく守の声だ。
いつの間に守は一葉と仲良くなったのかと、カッと頭に血が上って、一葉の部屋のドアを思い切り開けた。
そして目にした光景に愕然とした。
急に開いたドアに驚き、一葉が顔をあげた。
その途端、ベッドに横になっていた守のペニスからピュッと精液が飛び、一葉に掛かった。
容は守の顔を見た。
守は怒られると思って怯えた顔をしていた。
「守、ズボン履いて自分の部屋へ行きなさい」
容は落ち着いて言葉を発していたが、腸が煮えくり返るほどムカついていた。
守はビクビクしながら自分の部屋へと戻って行った。
容が一葉に目線を向けると、自分に掛かった守の精液をティッシュで拭き取っているところだった。
そして、口の端で笑いながら容を見た。
一葉は容が思っていた様な男ではなかったのだ。
青白い顔で、弱そうなやつだと思っていたのは間違いだったのだ。
その本当の姿は、容の想像をはるかに超えるほど強かだった。
「容兄さん……入る時はノックくらいしてよね」
いつもは俯きおどおどとし、容の顔を見る事すらしない一葉が、真っ直ぐ顔をあげ容の目を見て発言している。
容は眉根にきゅっと皺を寄せ、一葉を見返した。
「お前、どういうつもりだ。守に何してた?」怒りで握った拳が震えていた。
「何って…見たんでしょ。いつも容兄さんがしている事よりも、気持ちいいことしてあげたんだ。守くん喜ぶから」一旦視線を逸らし、ふふっと微笑みながら、目の脇で容を見る。
「いつからだ――」
「んー、最近だよ。容兄さんが家庭教師連れて来た頃かな。僕、黙ってやられるほど馬鹿じゃないから」
こいつ――気付いていたのか?
一葉は容がどういうつもりでこの家にやって来て、ここで何をするのかを分かっていたのだ。
特にそれを止めるつもりはなかったが、その代り自分も攻撃に出たというわけだ。
「守を手懐けてどうするつもりだ」
容はさっきよりも冷静になっていた。相手が相当なやり手だと気付いたからだ。容は怒りで我を失うようなタイプではない。状況に応じて、すぐさま次に何をどうするべきかを判断する。
「手懐けるだなんて……一応兄弟なんだし、仲良くして何が悪いの?本当は容兄さんとも仲良くしたかったんだけどな」一葉は肩をひょいと竦め、少しおどけたように言った。
さすがに容はその顔に怒りを露にした。
こいつに兄弟だなどと言われたくない――
ずかずかと一葉に近寄ると、そのままベッドに押し倒した。
掴んだ肩は、やはり見た目通り華奢で強く掴めば折れるのでは、と思うほどだった。
「僕を押し倒してどうするの?今度は容兄さんが僕を気持ちよくしてくれるの?」
薄く笑いながらそんなセリフを吐く一葉に、容はなんとなく敗北感を味わっていた。
ここの家族を崩壊させることよりも、守を奪われた事の方が気になって、どうしようもなく胸がざわざわする。
容は掴んでいた一葉の肩を乱暴に突き放し、守には手を出すなと言うと、一葉の部屋から出た。
そしてそのまま、守の部屋へ向かった。
部屋へ入ると、守はカーペットに膝を抱えて座り込んでいた。そしてぐすんと鼻をすすりながら容の方を見た。怒られると思い、ビクッと肩を震わせた。
「にぃちゃん……」容の顔を見ながらか細く声を発した。
容は守の傍へ寄り座ると、頭を優しく撫でながら「怒らないから大丈夫だよ」と声を掛けた。
守が容にぎゅっと抱き付いた。
「兄ちゃん、ごめんなさい。内緒にしてて……」
今まで兄に秘密など持ったことがなかった守は、激しい罪悪感に襲われていた。
「いいよ、別に――」それがあいつの狙いで、幼い守が引っかかって当たり前なんだ。
容は自分が油断していたことを後悔し、恥じていた。
守るべきはずの弟を、まんまと相手の手に渡してしまったのだ。
「今度は何でも兄ちゃんに報告するんだぞ」
それだけ言って、容は自分の部屋へ戻った。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
この家の暮らしにも慣れてきたのだろうか?
容はそれよりも京子と堂林の動向が気になり、あまり守を構ってやれていなかった。
とりあえず容の作戦は成功し、最近では二人は外で頻繁に会う様になっていた。
その為、容は無理に外で時間を潰す必要もなくなった。
この日は学校から真っ直ぐ帰宅し、二階の自分の部屋に上がるところだった。
階段から右手の奥に一葉の部屋、一部屋挟んで左手に守、容の部屋と続く。
階段を上りきったところで、何かささいな違和感を覚えた。
一葉の部屋の方向に目を向け、耳を澄ませた。
その方向から、守の声が聞こえた。
何を言っているのかは分からなかったが、紛れもなく守の声だ。
いつの間に守は一葉と仲良くなったのかと、カッと頭に血が上って、一葉の部屋のドアを思い切り開けた。
そして目にした光景に愕然とした。
急に開いたドアに驚き、一葉が顔をあげた。
その途端、ベッドに横になっていた守のペニスからピュッと精液が飛び、一葉に掛かった。
容は守の顔を見た。
守は怒られると思って怯えた顔をしていた。
「守、ズボン履いて自分の部屋へ行きなさい」
容は落ち着いて言葉を発していたが、腸が煮えくり返るほどムカついていた。
守はビクビクしながら自分の部屋へと戻って行った。
容が一葉に目線を向けると、自分に掛かった守の精液をティッシュで拭き取っているところだった。
そして、口の端で笑いながら容を見た。
一葉は容が思っていた様な男ではなかったのだ。
青白い顔で、弱そうなやつだと思っていたのは間違いだったのだ。
その本当の姿は、容の想像をはるかに超えるほど強かだった。
「容兄さん……入る時はノックくらいしてよね」
いつもは俯きおどおどとし、容の顔を見る事すらしない一葉が、真っ直ぐ顔をあげ容の目を見て発言している。
容は眉根にきゅっと皺を寄せ、一葉を見返した。
「お前、どういうつもりだ。守に何してた?」怒りで握った拳が震えていた。
「何って…見たんでしょ。いつも容兄さんがしている事よりも、気持ちいいことしてあげたんだ。守くん喜ぶから」一旦視線を逸らし、ふふっと微笑みながら、目の脇で容を見る。
「いつからだ――」
「んー、最近だよ。容兄さんが家庭教師連れて来た頃かな。僕、黙ってやられるほど馬鹿じゃないから」
こいつ――気付いていたのか?
一葉は容がどういうつもりでこの家にやって来て、ここで何をするのかを分かっていたのだ。
特にそれを止めるつもりはなかったが、その代り自分も攻撃に出たというわけだ。
「守を手懐けてどうするつもりだ」
容はさっきよりも冷静になっていた。相手が相当なやり手だと気付いたからだ。容は怒りで我を失うようなタイプではない。状況に応じて、すぐさま次に何をどうするべきかを判断する。
「手懐けるだなんて……一応兄弟なんだし、仲良くして何が悪いの?本当は容兄さんとも仲良くしたかったんだけどな」一葉は肩をひょいと竦め、少しおどけたように言った。
さすがに容はその顔に怒りを露にした。
こいつに兄弟だなどと言われたくない――
ずかずかと一葉に近寄ると、そのままベッドに押し倒した。
掴んだ肩は、やはり見た目通り華奢で強く掴めば折れるのでは、と思うほどだった。
「僕を押し倒してどうするの?今度は容兄さんが僕を気持ちよくしてくれるの?」
薄く笑いながらそんなセリフを吐く一葉に、容はなんとなく敗北感を味わっていた。
ここの家族を崩壊させることよりも、守を奪われた事の方が気になって、どうしようもなく胸がざわざわする。
容は掴んでいた一葉の肩を乱暴に突き放し、守には手を出すなと言うと、一葉の部屋から出た。
そしてそのまま、守の部屋へ向かった。
部屋へ入ると、守はカーペットに膝を抱えて座り込んでいた。そしてぐすんと鼻をすすりながら容の方を見た。怒られると思い、ビクッと肩を震わせた。
「にぃちゃん……」容の顔を見ながらか細く声を発した。
容は守の傍へ寄り座ると、頭を優しく撫でながら「怒らないから大丈夫だよ」と声を掛けた。
守が容にぎゅっと抱き付いた。
「兄ちゃん、ごめんなさい。内緒にしてて……」
今まで兄に秘密など持ったことがなかった守は、激しい罪悪感に襲われていた。
「いいよ、別に――」それがあいつの狙いで、幼い守が引っかかって当たり前なんだ。
容は自分が油断していたことを後悔し、恥じていた。
守るべきはずの弟を、まんまと相手の手に渡してしまったのだ。
「今度は何でも兄ちゃんに報告するんだぞ」
それだけ言って、容は自分の部屋へ戻った。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
ひとひらの絆 10 [ひとひらの絆]
一葉への作戦は変更せざるを得なかった。
しかし、守を奪われたショックがあまりにも大きくて何も思いつかない。
考えようとすればするほど、守と一葉のあのドアを開けた瞬間の姿が思い浮かび、怒りや苛立ちと共に、自分が犯した失態に情けなくなる。
ただ一つ考えついたのは、守がされたことを一葉にしてやることだった。
そして、そのまま身体全部を奪ってやろうと思った。
もしそんなことが親に知れたら、それこそ家族は崩れ去る。
家族そろっての食事の時間、一葉はいつも通りに一人だけ別メニューで何事もなかったように食事をしていた。
守はしょんぼりとした感じだったが、食べる勢いはいつもと変わらなかった。
京子は上機嫌だった。表情にすべて出ている。きっと今日は堂林と会ったに違いない。
珍しく夕食の席にいる父は、いつもと変わらず無口だ。適当におかずをつまみながらの晩酌。家族が食事を終える頃には、自室に引きこもり、ウィスキーをちびちびとやる。
容は夜遅くになり、一葉の部屋のドアをノックした。
「俺だ――」
『どうぞ』
中へ入ると、一葉は背にふかふかの枕をいくつも重ねベッドに座り本を読んでいた。
「なあに?容兄さん」本にしおりを挟み、パタンと閉じ、容を見る。
容は無言で傍により、ベッドに腰を掛けた。
「お前、昼に言ったよな、気持ちよくしてくれるの?って……だからしてやろうと思って来たんだ」
そう言って容は一葉の頬に触れ、顔を近づけキスをした。
一葉は少し驚いた表情を見せたが抵抗しなかった。
唇を離すと、一葉が挑発するように容を見つめ口を開く。
「それだけ?舌は入れないの?」
お互い唇が付きそうなほど近い場所で相手の顔を見る。
「入れて欲しいのか?」
「だって、気持ちよくしてくれるんでしょ」
この言葉のやりとりが、お互いどっちが勝つのかと勝負しているようだった。
容はまた一葉に唇を重ね、ぬるりとした舌を差し入れた。一葉はその舌に自分の舌を絡め、お互いの舌を吸い合い、唾液を混ぜ合い、ただ夢中になってキスをした。
お互いが相手を堕とすことに必死になっていた。
だがそれとは違うところで、容は一葉とのキスに酔いしれていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村
しかし、守を奪われたショックがあまりにも大きくて何も思いつかない。
考えようとすればするほど、守と一葉のあのドアを開けた瞬間の姿が思い浮かび、怒りや苛立ちと共に、自分が犯した失態に情けなくなる。
ただ一つ考えついたのは、守がされたことを一葉にしてやることだった。
そして、そのまま身体全部を奪ってやろうと思った。
もしそんなことが親に知れたら、それこそ家族は崩れ去る。
家族そろっての食事の時間、一葉はいつも通りに一人だけ別メニューで何事もなかったように食事をしていた。
守はしょんぼりとした感じだったが、食べる勢いはいつもと変わらなかった。
京子は上機嫌だった。表情にすべて出ている。きっと今日は堂林と会ったに違いない。
珍しく夕食の席にいる父は、いつもと変わらず無口だ。適当におかずをつまみながらの晩酌。家族が食事を終える頃には、自室に引きこもり、ウィスキーをちびちびとやる。
容は夜遅くになり、一葉の部屋のドアをノックした。
「俺だ――」
『どうぞ』
中へ入ると、一葉は背にふかふかの枕をいくつも重ねベッドに座り本を読んでいた。
「なあに?容兄さん」本にしおりを挟み、パタンと閉じ、容を見る。
容は無言で傍により、ベッドに腰を掛けた。
「お前、昼に言ったよな、気持ちよくしてくれるの?って……だからしてやろうと思って来たんだ」
そう言って容は一葉の頬に触れ、顔を近づけキスをした。
一葉は少し驚いた表情を見せたが抵抗しなかった。
唇を離すと、一葉が挑発するように容を見つめ口を開く。
「それだけ?舌は入れないの?」
お互い唇が付きそうなほど近い場所で相手の顔を見る。
「入れて欲しいのか?」
「だって、気持ちよくしてくれるんでしょ」
この言葉のやりとりが、お互いどっちが勝つのかと勝負しているようだった。
容はまた一葉に唇を重ね、ぬるりとした舌を差し入れた。一葉はその舌に自分の舌を絡め、お互いの舌を吸い合い、唾液を混ぜ合い、ただ夢中になってキスをした。
お互いが相手を堕とすことに必死になっていた。
だがそれとは違うところで、容は一葉とのキスに酔いしれていた。
つづく
前へ<< >>次へ
よろしければこちらをぽちっとお願いします。
↓
にほんブログ村