はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 430 [花嫁の秘密]

「セシル、エリックを見なかった?」サミーは居間でセシルを見つけ、向かいのソファに座った。ここ数日すっきりしない空模様だったが、今日はよく晴れていて暖かいからか、暖炉の火も小さいままだ。

「リックならちょっと出かけてくるって」セシルが読んでいる本から顔を上げた。昨日から読み始めた本は、もう半分まで進んでいる。

「こんな田舎のどこへ出かけるって?」サミーはうんざりとした口調にならないよう気をつけながら尋ねた。エリックはどこにいても忙しなく、じっとしていることがない。

「知らない。ああ、そうだ。電報が届いてたから、それかなぁ……」セシルは本を置いて、考え込むように頬杖をついた。「特に慌てた様子はなかったけどね」

「エリックがいったい何をしているのかは知らないけど、ブラックは一向に戻ってこないし、うちの使用人にも勝手に指示は出すし、もう向こうへ戻ってくれないかな」駆けつけてくれたことには感謝しているけど、大袈裟に騒ぎすぎだし、いまもまだ目立つような行動を取っている。

「そろそろ戻るでしょ。向こうで用があるって言ってたしさ」サミーの言いたいことはよくわかるよと、セシルは同情めいた視線を向ける。兄に振り回されることに慣れていても、少々行き過ぎていると考えているようだ。

「セシルは何を命じられたんだい?」答えを聞かなくても、僕を見張れと言われていることはわかっている。セシルはわざわざ後ろをついて歩くような真似はしないけど、離れる気もないのは明らか。こっちは問題ないが、セシルが恋人に会えずにいるのを黙って見ているわけにはいかない。

「命じたりはしていないよ。僕は自分の意思で行動しているんだからね」セシルが気遣いは無用とばかりに言う。また本を開いて、続きを読み始めた。

「まあ、そうだね。変なこと言ってごめん」サミーはぼんやりとセシルが本のページを繰る様を眺めた。アンジェラも本を読むのが好きだが、こんなにじっとはしていない。

エリックはクラブを手に入れたらセシルに手伝わせようとしているけど、セシルにはもっと違う場所が相応しい。植物学者になりたいというのなら――なりたいとは言っていなかった気がするが――どうにか後押しをしてやりたい。

もちろんセシルがそばで手助けしてくれたらとても助かるけど、あの話自体白紙に戻したいと思っている。エリックは反対するだろう。説き伏せる自信もない。だが、無駄だとしても話し合いは必要だ。

「セシル、あとで気分転換に出かけないか?何日も引きこもっていたせいで、肩が凝ってさ」マーカスのせいであちこち痛んでいた身体はすっかり癒えたが、気持ちは鬱々としたままだ。外の空気を吸えば多少はよくなるだろうし、ずっと先延ばしにしていたアトリエの片付けにも着手できるだろう。

そろそろ動き出さなければ。いつまでも引きずっていたせいで、今回襲われる羽目になった。あの時、二人の寝室なんかにいなければあんなことにはならなかった。もちろんマーカスは何が何でも襲う気だっただろうけど、少なくとも僕が味わった屈辱は半分ほどで済んだはずだ。

エリックはマーカスを見つけたら、僕に断りもなく報復するはずだ。僕がマーカスをどうしたいかなんて気にもしないだろう。襲われたのは僕だっていうのに!

「いいよ。ちょうど行きたいお店があったんだ」セシルはにっこりと笑って、軽く請け合った。

つづく


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