はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

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花嫁の秘密 番外編 結婚へのカウントダウン 1 [花嫁の秘密 番外編]

花嫁の秘密 番外編
婚約から結婚までの一コマ

*****

「それで、断ったのか?」
これで何度目だろうか?兄のロジャーがアンジェラに幾度となく言った言葉だ。

「まだ……侯爵様は領地の方に行ってらっしゃるから」
「ここからそんなに遠くないだろう?」
「でも、どんな理由で断ればいいのか分からなくて…」

「そうだよねぇ……男だから結婚できませんとは言えないし、下手すると訴えられちゃう可能性だってあるしね」
セシルが口を挟んだ。

「ここまで来た以上、侯爵だけには秘密を打ち明けるしかない。まだ幸い誰も婚約の事を知らないし、口止め料も兼ねて、慰謝料をたっぷりと支払うしかないだろう」
そう言って、ロジャーはふうっと大きく息を吐いた。

「でも、弁護士は知っているよ」
セシルが鋭い指摘をする。

「ああ、そうだったな。お互いの弁護士は知っているが、これは何とか抑えられるだろう」
ロジャーはうんざりとした顔つきで、言葉を続ける。

「それはそうと、エリックは来ていないのか?」

「リックなら、一度来たけど、もう帰って行ったよ。――結婚式楽しみにしているって言って……」
セシルもエリックの言葉にはさすがに同意しかねるといった感じで答えた。

「あのやろう……」
ロジャーが悪態をつくのは珍しい。

「で、マーサはなんて?」
アンジェラに向かってロジャーが訊いた。

「それが変なの。報告して以来、この事については何も言ってくれないの……たぶん相当怒っているんだと思う」
アンジェラはマーサの吊り上った眉、困惑し歪んでいく表情を思い出し、切なくなった。

「マーサがそんな風になるのは初めてじゃない?」
セシルがアンジェラの心に更に杭を打ち込む。

「そうなの、避けられている気がして……先日もマーサ一人で町まで出かけて、一日一人ぽっちだったの」

「一人ぽっちというか、一人で母様の相手をしていたのだろう?今の母様は手が付けられないからな」
ロジャーのその言葉に、婚約破棄という問題の一番の問題を思い出した。

「母様にはなんて言うの?」
セシルが問う。

「それが難題だな」
ロジャーは顔を顰め、アンジェラを見た。

「わたしだって、どうしたらいいか……」

「あっ、そうだ!僕いい事思いついた。兄さまがどこかの令嬢と結婚すればいいんじゃない?そしたら母様だって、そっちに気がいくし」
セシルの思わぬ名案にアンジェラはロジャーを見る。

「悪いが、結婚する気は今の所ない」
ロジャーは冷たく言い放つ。

そう言えば、ロジャーの恋人って貴族の人じゃなかったんだ。
色々大変なんだろうなぁ……とアンジェラとセシルは同じことを思っていた。

「とにかく母様は後回しにして、まずは上手く断ることが先決だよ」
セシルが冷たくなった空気を何とかしようと、出来るだけ明るく言う。

「そうねぇ」とアンジェラが口にしたところで、マーサが三人のいる部屋へ慌ただしい様子でやって来た。

「お嬢様!大変です!」
マーサはあたふたとしながら、新聞を手に駆け寄る。

あっけにとられる三人の前に新聞が広げられる。

そして目にした記事に全員が凍りついた。

つづく



>>次へ

あとがき
こんばんは、やぴです。
第二部の前に番外編ですが、婚約後どうしてこうなっちゃった?的な話を書いています。

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花嫁の秘密 番外編 結婚へのカウントダウン 2 [花嫁の秘密 番外編]

メイフィールド侯爵とラウンズベリー伯爵の妹レディ・アンジェラ・コートニー婚約!
結婚へ!!と大きく載っていた。しかも侯爵の写真入りで。
そのスクープを裏付ける証拠として、侯爵がレディ・アンジェラの住むヘイ・ウッドに幾度となく足を運んでいた事、更には、宝石類の購入、ウエディングドレス用のレースを注文したという事を掴んだ、などといろいろな事が書き連ねてあった。

「このままでは、コートニー家は醜聞に塗れてしまう」
ロジャーが当主としての危機感を口にした。

「そうだよ。そうなったら、母様に本当の事が分かってしまう」
セシルも続く。

「お母さまだけには知られたくないわ」
アンジェラも続いた。

ピンと張りつめた空気が漂う中、アンジェラの頭にある考えが浮かんだ。
それはロジャーもセシルも同じだった様で、マーサも含め全員が顔を見合わせ息を呑む。
そして、アンジェラが恐る恐る口にした。

「まさか、リックの仕業じゃないわよね……」
誰か否定してとみんなの顔色を伺う。

一呼吸おいて、セシルが何とか否定した。

「まさか、リックだってそこまではしないよ――きっと……」
何とも心もとない。

次男のエリックは自称ジャーナリストだ。
自称というだけあって、実態は分からないのだ。確かにそういう様な仕事をしている時もあるのだが、アンジェラよりも謎が多いといってもいい。

ひとまずエリック犯人説は置いておくことにして、話題を元に戻すことにした。

一体何の話だったかと頭を整え、セシルがとある提案をした。
「婚約期間を延ばして、世間の噂から逃れたところで、破棄するって言うのはどう?」

「セシル!そんなことしたら侯爵様がかわいそう」

「確かに、二,三年婚約期間があれば、そのまま自然消滅で何とかなるかもしれないな」
ロジャーは本気で考えていた。
婚約解消などざらにあるのだ。何とかなるかもしれないと、ロジャーはかすかな希望に縋り付くことにした。

しかし、そう思い通りにいかないのが現実で――


クリスマス休暇も終わり、セシルは学校へ戻り、ロジャーはロンドンへ出て行った。

「アンジェラ、今日も侯爵様からお手紙が来ているわよ」
ソフィアが読んで聞かせて欲しそうな顔で、アンジェラに手紙を渡した。

(もうっ!手紙は部屋に入れておいてって頼んでいたのに)
気が利かない執事にアンジェラは腹を立てつつ、「後で部屋で読むわ」と母に言った。

侯爵の手紙はいつも同じような内容だ。アンジェラの体を気遣う言葉、それと、結婚が待ち遠しいと言う言葉。
断らなければいけないという焦りと共に、純粋に待ち遠しいと思っている自分がいるのだ。
いけないって分かっているのに。
アンジェラは手紙をそっと胸に当て、侯爵の優しい笑顔を思い浮かべた。

つづく


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花嫁の秘密 番外編 結婚へのカウントダウン 3 [花嫁の秘密 番外編]

手紙には次回の訪問日時も書かれていた。

先日侯爵が訪問した際には、アンジェラが愛用している香水をプレゼントしてくれた。母にも違う香りのものを用意してくれていた。
定期的にアップル・ゲートを訪れる侯爵に、どんどん惹かれていく。
それはどちらかといえば、母の方がはっきりとわかるほどだ。
毎回ほんの三十分ほどの滞在だが、母は二人きりの時間を作ってくれるのだ。

そして、この日も母は二人きりにさせようと、子供の様な作戦に出る。

「婚約してるのだから、二人きりでも何の問題もないのよ」と侯爵に聞こえるようにアンジェラに耳打ちをする。
そして「ちょっと用事を思い出して、五分ほど席を外すわ」とわざとらしく言うのだ。

そんな母の姿に、アンジェラも侯爵も笑いをかみ殺しながら、部屋から出て行く姿を見送る。

アンジェラの座る長椅子に侯爵が移動してきた。
それだけでアンジェラは顔が火照り、心臓の鼓動が早くなる。

「今日はミセス・モーガンはいないんだね」

ミセス・モーガンはマーサの事だ。
マーサはいつも母が退出した後、反対のドアからそっと入って来て、部屋の隅で見守っているのだ。

「今日は町へ出掛けています」
最近はマーサは町へ出掛けることが多い。
何しに行っているのかは訊いても教えてくれないのだ。

「そう。あの、ミス・コートニー、何か心配な事は無いですか?その……結婚について」

そう言った侯爵の方が不安そうな顔をしている。

(今がチャンスかもしれない。結婚は無理だと、今言えば――)

「何か私に出来る事はある?君が不安になることは早めに解決しておきたい」

侯爵は結婚の準備を進めている。きっと早く日取りを決めたがっている。早く断らなければ――そう思って、いざ口をついて出た言葉は、自分でも信じられないものだった。

「結婚式は家族だけで、あまり大勢人が集まるのは嫌です」

そう言った瞬間、自分でも驚いて、思わず侯爵をじっと見つめてしまった。
侯爵の顔がたちまち明るくなって、いつもの優しい笑顔というより、無邪気な笑顔を覗かせた。

それもそのはず、初めてアンジェラの方から結婚という言葉が出たのだ。
どんな注文だろうと、侯爵が舞い上がらないはずない。

「わかった、そうしよう。もし、不安なら特別結婚許可証をとっておくから、二人ですませることも出来るけど」

「いえ、大丈夫です」
迷ったけれど、そう言ったのは、やはり母のためにきちんと結婚式をしたかったのだ。
それに、侯爵がウエディングドレス用にレースを注文している。もちろん直接確かめてはいないけど、新聞にはそう書いてあった。

「そろそろ、五分経つかな?」
侯爵は長椅子から立ち上がると、アンジェラの前に立った。
思わずアンジェラも立ちあがる。

「本当に待ち遠しいよ」
そっとアンジェラを抱きしめた。
マーサがいないのをいいことに侯爵は大胆な行動に出た。

アンジェラの身体が強張った。侯爵に抱きしめられるのは今までに何度かあったが、やはり一瞬後ろへ引きそうになる。
けれどあまりに優しい抱擁に、アンジェラの身体は一気に熱くなり、不思議とそれが心地よく、そのまま侯爵の胸に身体を預けた。

「お待たせしているかしら?」
ドアの外で母がまたしてもわざとらしく声を掛けた。
二人はかすかに笑いながら身体を離すと、侯爵はそのままドアまで歩いていき「ミセス・コートニー、私はそろそろ失礼いたします」とドアを開け入ってきた母に挨拶をすると帰って行った。

母と侯爵を見送って、応接室へ戻ったアンジェラは、母から好奇心いっぱいの攻撃を受けることになる。

「それで、侯爵様と手ぐらい握ったのかしら?」
せっかく時間をあげたのだから、と目を輝かせてアンジェラの返事を待つ。

「そんなはしたない事しないわ」
母の好奇心を満たすようなことは言えない。

「まあ、そうなの?もうすぐ結婚するんだから、その、キスくらいなら許されるわよ」
母はうっとりとした様子で宙を見つめていた。

きっと父との思い出に浸っているのだ。
肖像画の中でしか知らない父。優しくて威厳のあるその姿。
時々、自分だけ知らないと思うととてつもなく悲しくなる。

アンジェラはうっとりする母を残して、自室へ戻った。

つづく


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花嫁の秘密 番外編 結婚へのカウントダウン 4 [花嫁の秘密 番外編]

「お嬢様、今日は侯爵様がいらっしゃってましたが――お断りしたのですか?」

あれ以来初めてマーサがこの事を口にした。

「いいえ、出来なかったの。どちらかといえば、結婚話が進んだといってもいいわ……」
きっとマーサに責められる、そう思っていたら、マーサが意外な事を口にした。

「もう、このまま結婚してしまえばいいのです」
アンジェラは驚き、テーブルの脇に立つマーサを見た。

「どうしたのマーサ?そんなこと、出来ないわ」

「出来ないのに、お断りしないのはなぜですか?」
マーサの表情がいつもより堅い。
アンジェラにはマーサが今怒っているのか、それとも別の感情なのかが分からなかった。
答えられないアンジェラの代わりにマーサが言葉にする。

「侯爵様がお好きなのですよね。もう、ここまで来たら到底後戻りはできませんよ。秘密のまま結婚するしかありません。侯爵様は全く気付きもせず、あんなにも熱烈に結婚したがっているのですから、応えるしかないです」

「そうだけど……」
アンジェラはそれ以上言葉が出ない。

「秘密が明らかになった時は、その時で対処することにしましょう。それとも、ソフィア様にすべてを打ち明けて、結婚できないと言いますか?」
マーサは厳しい口調で続ける。
「わたしはアンジェラ様に幸せになっていただきたいのです。ただそれだけです」

そう言ってマーサはアンジェラに歩み寄り、優しく抱きしめた。
まるで母親の様な温もりをアンジェラは感じた。

わたしは幸せだわ。
父親がいない代わりに、母親が二人もいる。

アンジェラの瞳から自然と涙が零れた。
マーサをぎゅっと抱きかえし、「マーサ、好きよ」と囁いた。

その時から、結婚まで一気に突き進むことになった。
マーサが町へよく出かけていたのは、アンジェラの嫁入り衣裳の為だったのだ。
嫁入り衣装の準備が整い次第、日取りを決めることになる。
アンジェラの衣裳のすべてはマーサに任されているのだ。
仕立て屋に注文し、その後マーサが手を加える。数十着にも上るそれらを間に合うように揃えなければならない。
もちろんウエディングドレスも例外ではない。マーサはドレスの素材や、飾りに使うパーツなどの下調べをしていたのだ。

こうして、アンジェラの結婚を後押しする者が一人増えたのだ。

母ソフィア、マーサ――そう言えばもう一人、兄のエリック。
そして、なぜだかセシルも恐る恐るだが応援するようになっていた。
ただ、ロジャーだけは猛烈に反対していた。けれど、シーズン中は忙しくしていたため、気付けばアンジェラとともに教会へ向かう馬車に乗っていることになる。

第二部へ続く



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花嫁の秘密 番外編 侯爵の憂鬱 [花嫁の秘密 番外編]

クリスがロンドンへ来たアンジェラを追い返した後(33話)、フェルリッジの屋敷に戻るまでの出来事。


「なんでわざわざロンドンに呼び出したんだ?」
書斎へ入って来た男が言った。
男はオークロイド子爵アーサー・クラーク。クリスの友人だ。

「そっちへ行くほど気力がなかったからだ」
クリスは力なさげに言葉を発した。

「だから言っただろう」アーサーはソファに腰をおろし続ける。「結婚なんかするからだ」得意顔で、テーブルの上のグラスにブランデーを注ぎ入れた。

クリスは痛いところを突かれ、うなるように言葉を発した。

「結婚は間違っていない……だが、こんなにも難しい事だとは思わなかった」
クリスもグラスにブランデーを注ぎ、口に運んだ。

「俺は結婚なんかごめんだね。跡取りの為の結婚。馬鹿馬鹿しい」
アーサーは吐き捨てるように言った。

「お前は結婚を毛嫌いしてるが、俺は慎重だっただけで、お前とは考え方は違うからな」
いかにも同類というように言われては、さすがに否定はしておきたい。いくら気力がないとはいえ。

「それにしても、酷い顔をしているな。だいたい、なんで一人でここにいるんだ?新婚のくせに」
熟成されたブランデーと同じような蜜色の瞳が愉快そうに輝いた。

「わからない……俺はなんでこんなところにいるんだろうなぁ…」

「おいおい、しっかりしろよ。いくらなんでも、結婚から逃げ出すには早すぎないか?お前があんな子供と結婚すると言った時は、まあ、もって一年と思ったが、まだ三ヶ月くらいなもんだろう?」

「子供ってなんだ?それは侮辱の言葉ととってもいいのか?」
クリスはアーサーを睨みつけた。

「そんな気力は残っているのか……」アーサーは呆れつつ言葉をつづけた。「お前の目にどう映っているかは知らないが、結婚するには幼すぎだと思ったが……十二,三歳だろう?」

「十六歳だ」

「まさかっ?」

「それに、愛らしくて美しい妻として、この目に映っているが?まだ、続くのか、その侮辱は」

「いや、たしかに可愛いとは思ったが……」
その後の言葉をアーサーは理性を持って呑み込んだ。

「お前の言うとおり、彼女は幼いし、世間も知らなさすぎる。けど、それなりに上手くいくと……いや、上手くいきそうだったんだが――」
クリスはそこで口をつぐみ、迷った挙句思い切って親友だからこそ打ち明けた。

「実はまだ、初夜も迎えていない」

ぼそっと早口で発した言葉に、アーサーが飲みかけていたブランデーを思わず噴き出した。

暫く沈黙が流れ、アーサーは目をしばたたかせてクリスを見た。

「お前、今何て言った?結婚して三ヶ月過ぎて、まだ、って……」

「その内の一ヶ月はお前の屋敷にいただろう」

そう言ったとしても、ニケ月もそのチャンスがあって初夜も迎えていないとはだれが思うのだろうか?

そもそも結婚当日に済ませているとばかり思っていたアーサーは、いまだに信じられないと言ったような面持ちで、なおもクリスを見る。

「そんな顔で見るな。キスくらいはしている」
なんとか取り繕いたいクリスだが、そのキスも触れ合うだけのものを入れても三度しかない。ますます落ち込む。

「まさか、お前?」

アーサーの表情を見たクリスが、その意味を悟り急いで否定する。

「違う!俺のものは今まで通り、元気いっぱいだ」

「そうか、それならいいが……目の前にいくらでも好きに出来る女がいるのに、手を出さないとはお前らしくないと思って、思わず心配した」

「その言い方は気に入らないな。俺は妻を自分の好きに扱うような夫になるつもりはない」
きっぱりと言い切った。

「お前の所は、母親が早くに亡くなっているから知らないだろうが、結婚すれば、妻は夫の持ち物の一部になるんだ。どんな酷い事をされても、妻は文句を言えない……うちの親がいい例だ」

アーサーが結婚を嫌う理由は、両親の結婚が、そんなにいいものではなかったからだろう。噂と、今までアーサーから聞いた話だけでも、先代のオークロイド子爵の妻の扱いは酷いものだった。

「それなら、どうして、愛する妻と離れて暮らしている?まだシーズンも来てないのに」
アーサーが話を元に戻した。

「愛する妻に……愛されていないかもしれないからだ」ぽつりと言った。

「本気なんだな。まあ、そうだろうな。今までどんな女と付き合っても、結婚などちらつかせもしなかったのに。今回は会っていきなり求婚だろ?いくら相手が伯爵家の娘とは言え……」

「そうだな、なぜか彼女の噂を聞いた時に、絶対に会いに行かなければと思った。そして、会ってみて、すぐに求婚しなければと……頭で考えると言うよりも、魂がそう呼びかけた」

「お前がそんなロマンチストだとは思わなかったよ」
アーサーはふっと息を吐き、ソファに深く沈んだ。
「で、どうして俺を呼んだ?」

「別に、他にこんな話出来る奴いないからな」

「まだ初夜もすませてないとは、言えないよな」
アーサーは口の端でにっと笑った。

「ああ、そうだ」
クリスも情けない顔で笑った。

おわり




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花嫁の秘密 番外編 晩餐会に出席する人々 [花嫁の秘密 番外編]

第四部 晩餐会編
晩餐会の招待客(二組)の晩餐会前の出来事
『伯爵と少年』 エドワード×アンディ
S&J探偵事務所 ステフ×ジョン


エドワードがアンディの書斎に入って来た。
机の向こうに座るアンディがすぐさま立ち上がり、エドワードに駆け寄る。

「どうしたのエディ?」
「そろそろ、仕事は終わりだろう?少し話があるけどいいかい?」
「うん、何?」

『話がある』なんて言われて、ドキドキとするアンディは、それでも数時間振りに見たエドワードに満面の笑みを浮かべる。

二人は暖炉の前の小さな机の傍の長椅子に腰かけ、話を始めた。

「実はね、来週なんだけど、一緒に晩餐会に出席しないかい?」

「えっ――ぼくも一緒に?でも……」
アンディは驚きと戸惑いを隠せずエドワードをじっと見る。

そんな躊躇いの表情で見つめるアンディの頬にそっと優しく触れる。

「大丈夫だよ。内輪の晩餐会でグリフィス伯爵が出席するようなこともない。それに出席者も貴族はそう多くないから。ロゼッタ夫人はね、慈善活動をされていてアルフと昔から付き合いのある方なんだ。その方の誕生祝の晩餐会で、今年はアンディと一緒に出席すると、もう言ってあるんだけど――」

アンディを社交場へ連れ出すことはほとんどない。いや、まったくないと言ってもいい。それはアンディのその顔立ちが、見る人が見れば妹のキャサリンとうり二つで、気付く人もいるかと思うからだ。
未だ父親であるグリフィス伯爵とは顔を合わせていないのだが、伯爵がアンディを見たら気付くだろうか?
アンディは父親に関する記憶がない。だから父親会いたいとか会いたくないというよりかは、会った事でエドワードと離れてしまうことを恐れている。

社交場への初めての誘いに、アンディは嬉しそうに晩餐会に出席すると言った。

返事を聞き終わるや否や、エドワードは立ち上がるとアンディを抱きかかえた。
「じゃあ、アンディ、キスして」
どうしてそうなるのか疑問に思うが、アンディはエドワードの首に手を回しそっと口づける。
熱く重なる唇に、エドワードはアンディを抱きかかえたまま書斎を後にした。

*****

「おい、出掛けるぞ。準備しろ」
「どちらへ?」
「ちょっとな……その前にこっちこい――」
ステファンは書斎机に手をつき椅子から立ち上がると、傍に寄って来たジョンの腕を掴み引き寄せた。

「…ぁ、ステフ…待って…」
引き寄せられたジョンは今から起こるであろう出来事を想像し、すでに興奮を隠せず声がうわずっている。

「待たないの知ってるだろ」
ジョンの後頭部を鷲掴みにし、ねっとりと口づける。
ステファンは目を開け、ジョンのいやらしい顔を愉しむ。待ってと言う割に、舌を絡められれば、待ってましたとばかりに吸い返してくる。更には、下腹部を擦り付けるようにして密着してくる。
まったく、甘やかしすぎた。躾がなってないな。
ステファンは乱暴にジョンを突き放すと、さっさと上着を羽織り、帽子を手にした。

「何してるジョン。後は帰るまでお預けだ」
そういうとステッキを手にし、部屋を出る。

ジョンは慌てて自分も上着を着ると、帽子とマフラーとステッキを手に急いでステフの後を追いながら、下腹部の圧迫に耐えつつ帰宅後のお楽しみに胸を弾ませていた。

ジョンが通りへ出るとステファンがすでに馬車に乗り込んでいた。慌ててジョンも乗り込む。

何とか座席に腰を落ち着けたジョンは「いったいどこへ?」と質問をぶつける。

「アルフレッド様に会いに行く。今日は事務所に顔を出すと言っていたからな」

「でも、どうしてアルフレッド様に?」

「今度開かれる、ちょっとした晩餐会のことでね……」

おわり


あとがき
こんばんは、やぴです。
こんなところでアンディとエディの近況。
実際晩餐会にはチラッとしか登場しませんが、そんなこんなで出席しますという感じです。
『伯爵と少年』を読まれてない方は、ちょっと分かんない部分もありますよね

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花嫁の秘密 番外編 寝間着と誘惑の行方 1 [花嫁の秘密 番外編]

今夜はクリスに呼ばれていない。

けれどアンジェラは、クリスからのプレゼントに身を包み、化粧着を羽織るとクリスの寝室へ向かった。

そっと声を掛けて中へ入ると、クリスは書き物机で手紙を書いていた。まだシャツにズボン姿で、寝るような姿ではなかった。

「どうした?ハニー」
クリスは驚いて立ち上がった。

「あの、忙しかった?」
アンジェラは急に不安になった。勝手に寝室にやって来て、迷惑だったのかもしれない。

「そんなことないよ」
クリスは足早に部屋の入口まで歩み寄り、今にも部屋から出て行きそうなアンジェラを抱きしめる。

アンジェラはクリスを見上げ「よかった」と笑みをこぼした。
そしてドキドキとしながらも、優しく抱きしめるクリスの腕の中で少し身じろぎし、化粧着をするりと下へ落とした。

クリスからプレゼントされたばかりの、淡い薔薇色の寝間着姿が晒される。

クリスが下に落ちた化粧着に視線を向け、そのまま下から上へアンジェラの寝間着姿を確認している。

クリスの視線が熱い。

裸足でやって来たアンジェラは、素足を見られることさえ恥ずかしかった。つま先から、視線が身体の中心へ達した時には、心臓はドキドキとし、あそこもドキドキとしているように脈打つのを感じた。

それから視線は胸元へ移った。
寝間着が少し透けているのが分かっていたから、なおさら恥ずかしい。まるで裸を見られているような感覚に陥っていた。

クリスの喉が上下するのが見えた。
そして少しかすれた声で、「綺麗だよ、ハニー」と言ってくれた。

「クリス、プレゼントありがとう。とても素敵だし、着心地もとてもいいの」
そう言って、アンジェラはクリスに抱きつき、見上げた。

まるでキスをせがむように――

アンジェラはクリスの唇を待った。
すっと顔が近づき、望んだように唇が重なった。

クリスはいつもリードしてくれる。このキスもクリスに誘われる様に唇を差し出した。

今日はわたしの番。
アンジェラが積極的にいこうとした瞬間、クリスが突然唇を離した。

つづく


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花嫁の秘密 番外編 寝間着と誘惑の行方 2 [花嫁の秘密 番外編]

唇が少し触れただけで、身体中に快感が走り、抑えつけていたはずの欲望に一気に火がついた。
クリスはアンジェラから離れようとした。このままでは昨日のように泣かせてしまいそうだったからだ。

けれど離れた瞬間クリスの想いとは裏腹に、アンジェラはぎゅっとしがみついてきた。
アンジェラの驚いたような顔に、クリスも驚いたような顔を返した。実際驚いている。

アンジェラが首元に手を伸ばし、ゆるく結ばれているクラヴァットを外し始めた。緊張だろうか、手が小刻みに震えている。

クリスはアンジェラの意外な行動に戸惑った。
だが、どうすべきなのか分からず――情けない話だが――そのまま身を任せていた。

クラヴァットが化粧着同様、毛足の長い絨毯の上にするりと落ちた。

アンジェラの両手がクリスの逞しい胸板に滑り落ちて来た。そのまますっと撫でられ、クリスは小さくうめき身体を震わせた。

アンジェラはボタンに手を掛け、クリスを見上げた。少し伺うような表情にクリスは思わずアンジェラの手に自分の手を重ねた。一緒にボタンを外しながら、クリスは屈み込みアンジェラにキスをする。

今度は深く、じっくりと舌を使いアンジェラを味わう。
甘い――
ふっと鼻に抜けるココアの香り。

いつもハニーは甘い。
クリスがそんな事を思っている間に、アンジェラが肩に手を伸ばしシャツを脱がせていた。そして、直接肌になめらかな手が触れた。

「ハニー……」
クリスは熱に浮かされたような声を出し、愛しい妻の名を呼んだ。

アンジェラは筋肉の動きを確かめるように、手を胸から腹へと滑らせ、その下まで進ませた。

一体どういう事なのだろうか?
クリスは困惑していたが、それ以上に、アンジェラの行為が素晴らしく魅惑的でその場に縛りつけられているかのように動くことが出来なかった。

アンジェラの手がそっとズボンの上から膨らみを包み込んだ。
クリスは繊細な手の感触に過剰なくらい反応し小さく喘ぐ。

「ハニー」
妻の名を口にしたもの、それはこの行為をやめさせたいのか、このまま続けて欲しいのかクリス自身が自分に問うような口調だった。

アンジェラはなおも手を休めることなく、今度はズボンのボタンに手を掛けた。
クリスの身体に緊張が走る。
さすがにアンジェラにこんな事はさせられないと、その手を掴んだ。
アンジェラは驚いたように、クリスを見上げた。

「クリス、手を離して」
いつもよりも艶っぽい笑みを浮かべ、ゆっくり言葉を発すると、クリスの手を押しのけた。

いつのまにこんな表情をするようになったのだろうか?

もはやクリスはぽうっとしたままアンジェラの艶っぽい笑みを見つめるだけだ。身体の横で腕をだらりとさせ、なぜか分からないが一生懸命になっているアンジェラを見守ることしか出来ないでいた。

つづく


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花嫁の秘密 番外編 寝間着と誘惑の行方 3 [花嫁の秘密 番外編]

アンジェラの手はいまなお震えている。

何がハニーをそこまでさせるのだろうかと考えてみたが、今の所全く分からない。だが、だんだんとこの状況が楽しくなってきた。

アンジェラはズボンをおろし、更には下着に手を掛け、そのままゆっくりとずらしていった。
そこから現れたのは深紅の草むらから大きく突き出たクリスの分身。

アンジェラの息を呑む音が聞こえた。
なんてかわいらしいのだろうか。同じものがついているはずなのに、この初々しい反応に自分の分身が何か期待を込めたように更に質量を増した気がする。

これから何が起ころうとしているのだろうか?
外気に晒された昂りがアンジェラの温かな手に包み込まれた。
クリスは驚き、もちろん握られたそれも驚きで大きく跳ねた。

「あぁ、ハニー」
クリスは大きく息を吐き、アンジェラの手を強く掴んだ。

「クリス、だめ?」
アンジェラは小首を傾げ問う。

「そんなことは、ない…」
積極的なアンジェラに戸惑いつつ、本当はもっとぎゅっと握って欲しいと思っている。
だから、アンジェラの手を握るクリスの手には力がこもっているのだ。

「なあ、ハニー、このままベッドへ行こう」

部屋の入り口近くに立ったまま、この行為を続けるのはなんだか滑稽な気がした。
それにこんな状況はそうそうあるものではない。ハニーが何をしようとしているのかはよく分からないが、ベッドで思う存分愉しもうとしていることは間違いないだろう。

クリスは昨日泣かせてしまったことなど、すっかり忘れてしまっている。

クリスは手を離すと、中途半端に肌蹴たシャツを脱ぎ、半分ほど脱げたズボンと下着も驚異的なスピードで脱いだ。

アンジェラは脱ぎ始めたクリスを見て恥ずかしそうに、パッと手を離し、その手をどうしていいのか分からないまま宙に浮かせている。

思わず笑みが漏れる。どんな仕草もかわいくて仕方がない。

一人裸になったクリスはアンジェラをすっと抱きかかえ、ベッドへ連れて行った。

ちょこんとベッドに座ったアンジェラは、クリスの逞しい身体に釘付けになっている。

クリスはベッドにあがり、アンジェラの頬に手を伸ばすと、顔を近づけ優しく唇を重ねた。

「今日はどうした…こんな、ふうに…」

「んっ……いや、…だった?」

唇を吸い合いながらの会話は魅力的だった。
けれどふいにアンジェラは唇を離し、何か言いたそうにクリスをじっと見つめた。

「今日は、わたしがいろいろしたいの。だめ?」
そういうと、クリスを押し倒すように上に圧し掛かった。
上から見下ろし、クリスの返事を待っている。

クリスは考えた。
いろいろの中には何が入っているのだろうかと……。
けれど考えると同時にすでに返事をしていた。

「いいよ」と一言。

つづく


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花嫁の秘密 番外編 寝間着と誘惑の行方 4 [花嫁の秘密 番外編]

アンジェラはクリスの腹に跨った状態で、そっと手を伸ばし、首筋を指先でなぞった。
そのまま屈み込み、顎先にキスをし、男らしく突き出た喉仏にもキスをした。

クリスはなおも荒く息を吐き、アンジェラの初めての愛撫に身を任せている。
実際少し触れられるだけで、爆発してしまいそうなほどの欲望に身を包まれ、呼吸さえも苦しいくらいだった。
アンジェラのキスはどんどん降下している。

そしてとうとうアンジェラの唇は、クリスの硬く猛った中心へと到達した。

アンジェラは先ほどよりも強く握りしめると、先端に口づけ、すでに溢れ出ていた滴りをぺろりと舐めあげた。

クリスはうぅっとうめき、背を撓らせた。

「ハニー、一体どこでそんな事覚えて来たんだい?」
訊かずにはいられない。

「あ…の、…クリスが昨日してくれたから……」
アンジェラはどぎまぎしながら答え、またぺろりと舐めた。
そして、くびれの部分をくるりと舐めると、ぱくっと口に含んだ。
舌を動かし、きゅっと吸う。

「あぁ…ハニー」
クリスはもはやうめき声とアンジェラの名前しか口に出来ない。

クリスは上半身を起こすと、アンジェラの一生懸命な姿を目に映した。

小さな口をいっぱいにして頑張る姿に思わず見惚れる。しかも拙いながらも、自分を今までにないくらい感じさせているのだから、愛おしくてたまらない。
そしてその表情が見たくなった。

「ハニー、こっち向いて」

クリスのその声にアンジェラの視線が上へ向いた。

ハニーに見つめられた瞬間一気に限界が押し寄せてきた。
こういう事はテクニックが重要だと思っていたが、どうやら違っていたようだ。

クリスは我慢しきれず、アンジェラに手を伸ばしぐいっと抱き寄せた。

「あっ、クリス、まだだめ」
アンジェラは玩具を取り上げられた子供のような声をあげた。

「何がまだダメなの?いつの間にかこんなことまで覚えて」
抱き寄せたアンジェラの唇に軽くチュッとキスをする。

「だって、クリスに満足して欲しくて……」

「どうして急に?いつも満足しているよ。し過ぎておかしくなってるくらいだ。それに――ハニーのその姿だけでも、かなり満足なんだけどね」

まだ寝間着姿のアンジェラだが、薄絹を持ち上げている膨らみにクリスが気付かないはずはない。それに、かなり透けて見えているのだから、そこに目がいかない方がおかしい。

つづく


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