はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 番外編 侯爵の憂鬱 [花嫁の秘密 番外編]
クリスがロンドンへ来たアンジェラを追い返した後(33話)、フェルリッジの屋敷に戻るまでの出来事。
「なんでわざわざロンドンに呼び出したんだ?」
書斎へ入って来た男が言った。
男はオークロイド子爵アーサー・クラーク。クリスの友人だ。
「そっちへ行くほど気力がなかったからだ」
クリスは力なさげに言葉を発した。
「だから言っただろう」アーサーはソファに腰をおろし続ける。「結婚なんかするからだ」得意顔で、テーブルの上のグラスにブランデーを注ぎ入れた。
クリスは痛いところを突かれ、うなるように言葉を発した。
「結婚は間違っていない……だが、こんなにも難しい事だとは思わなかった」
クリスもグラスにブランデーを注ぎ、口に運んだ。
「俺は結婚なんかごめんだね。跡取りの為の結婚。馬鹿馬鹿しい」
アーサーは吐き捨てるように言った。
「お前は結婚を毛嫌いしてるが、俺は慎重だっただけで、お前とは考え方は違うからな」
いかにも同類というように言われては、さすがに否定はしておきたい。いくら気力がないとはいえ。
「それにしても、酷い顔をしているな。だいたい、なんで一人でここにいるんだ?新婚のくせに」
熟成されたブランデーと同じような蜜色の瞳が愉快そうに輝いた。
「わからない……俺はなんでこんなところにいるんだろうなぁ…」
「おいおい、しっかりしろよ。いくらなんでも、結婚から逃げ出すには早すぎないか?お前があんな子供と結婚すると言った時は、まあ、もって一年と思ったが、まだ三ヶ月くらいなもんだろう?」
「子供ってなんだ?それは侮辱の言葉ととってもいいのか?」
クリスはアーサーを睨みつけた。
「そんな気力は残っているのか……」アーサーは呆れつつ言葉をつづけた。「お前の目にどう映っているかは知らないが、結婚するには幼すぎだと思ったが……十二,三歳だろう?」
「十六歳だ」
「まさかっ?」
「それに、愛らしくて美しい妻として、この目に映っているが?まだ、続くのか、その侮辱は」
「いや、たしかに可愛いとは思ったが……」
その後の言葉をアーサーは理性を持って呑み込んだ。
「お前の言うとおり、彼女は幼いし、世間も知らなさすぎる。けど、それなりに上手くいくと……いや、上手くいきそうだったんだが――」
クリスはそこで口をつぐみ、迷った挙句思い切って親友だからこそ打ち明けた。
「実はまだ、初夜も迎えていない」
ぼそっと早口で発した言葉に、アーサーが飲みかけていたブランデーを思わず噴き出した。
暫く沈黙が流れ、アーサーは目をしばたたかせてクリスを見た。
「お前、今何て言った?結婚して三ヶ月過ぎて、まだ、って……」
「その内の一ヶ月はお前の屋敷にいただろう」
そう言ったとしても、ニケ月もそのチャンスがあって初夜も迎えていないとはだれが思うのだろうか?
そもそも結婚当日に済ませているとばかり思っていたアーサーは、いまだに信じられないと言ったような面持ちで、なおもクリスを見る。
「そんな顔で見るな。キスくらいはしている」
なんとか取り繕いたいクリスだが、そのキスも触れ合うだけのものを入れても三度しかない。ますます落ち込む。
「まさか、お前?」
アーサーの表情を見たクリスが、その意味を悟り急いで否定する。
「違う!俺のものは今まで通り、元気いっぱいだ」
「そうか、それならいいが……目の前にいくらでも好きに出来る女がいるのに、手を出さないとはお前らしくないと思って、思わず心配した」
「その言い方は気に入らないな。俺は妻を自分の好きに扱うような夫になるつもりはない」
きっぱりと言い切った。
「お前の所は、母親が早くに亡くなっているから知らないだろうが、結婚すれば、妻は夫の持ち物の一部になるんだ。どんな酷い事をされても、妻は文句を言えない……うちの親がいい例だ」
アーサーが結婚を嫌う理由は、両親の結婚が、そんなにいいものではなかったからだろう。噂と、今までアーサーから聞いた話だけでも、先代のオークロイド子爵の妻の扱いは酷いものだった。
「それなら、どうして、愛する妻と離れて暮らしている?まだシーズンも来てないのに」
アーサーが話を元に戻した。
「愛する妻に……愛されていないかもしれないからだ」ぽつりと言った。
「本気なんだな。まあ、そうだろうな。今までどんな女と付き合っても、結婚などちらつかせもしなかったのに。今回は会っていきなり求婚だろ?いくら相手が伯爵家の娘とは言え……」
「そうだな、なぜか彼女の噂を聞いた時に、絶対に会いに行かなければと思った。そして、会ってみて、すぐに求婚しなければと……頭で考えると言うよりも、魂がそう呼びかけた」
「お前がそんなロマンチストだとは思わなかったよ」
アーサーはふっと息を吐き、ソファに深く沈んだ。
「で、どうして俺を呼んだ?」
「別に、他にこんな話出来る奴いないからな」
「まだ初夜もすませてないとは、言えないよな」
アーサーは口の端でにっと笑った。
「ああ、そうだ」
クリスも情けない顔で笑った。
おわり
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「なんでわざわざロンドンに呼び出したんだ?」
書斎へ入って来た男が言った。
男はオークロイド子爵アーサー・クラーク。クリスの友人だ。
「そっちへ行くほど気力がなかったからだ」
クリスは力なさげに言葉を発した。
「だから言っただろう」アーサーはソファに腰をおろし続ける。「結婚なんかするからだ」得意顔で、テーブルの上のグラスにブランデーを注ぎ入れた。
クリスは痛いところを突かれ、うなるように言葉を発した。
「結婚は間違っていない……だが、こんなにも難しい事だとは思わなかった」
クリスもグラスにブランデーを注ぎ、口に運んだ。
「俺は結婚なんかごめんだね。跡取りの為の結婚。馬鹿馬鹿しい」
アーサーは吐き捨てるように言った。
「お前は結婚を毛嫌いしてるが、俺は慎重だっただけで、お前とは考え方は違うからな」
いかにも同類というように言われては、さすがに否定はしておきたい。いくら気力がないとはいえ。
「それにしても、酷い顔をしているな。だいたい、なんで一人でここにいるんだ?新婚のくせに」
熟成されたブランデーと同じような蜜色の瞳が愉快そうに輝いた。
「わからない……俺はなんでこんなところにいるんだろうなぁ…」
「おいおい、しっかりしろよ。いくらなんでも、結婚から逃げ出すには早すぎないか?お前があんな子供と結婚すると言った時は、まあ、もって一年と思ったが、まだ三ヶ月くらいなもんだろう?」
「子供ってなんだ?それは侮辱の言葉ととってもいいのか?」
クリスはアーサーを睨みつけた。
「そんな気力は残っているのか……」アーサーは呆れつつ言葉をつづけた。「お前の目にどう映っているかは知らないが、結婚するには幼すぎだと思ったが……十二,三歳だろう?」
「十六歳だ」
「まさかっ?」
「それに、愛らしくて美しい妻として、この目に映っているが?まだ、続くのか、その侮辱は」
「いや、たしかに可愛いとは思ったが……」
その後の言葉をアーサーは理性を持って呑み込んだ。
「お前の言うとおり、彼女は幼いし、世間も知らなさすぎる。けど、それなりに上手くいくと……いや、上手くいきそうだったんだが――」
クリスはそこで口をつぐみ、迷った挙句思い切って親友だからこそ打ち明けた。
「実はまだ、初夜も迎えていない」
ぼそっと早口で発した言葉に、アーサーが飲みかけていたブランデーを思わず噴き出した。
暫く沈黙が流れ、アーサーは目をしばたたかせてクリスを見た。
「お前、今何て言った?結婚して三ヶ月過ぎて、まだ、って……」
「その内の一ヶ月はお前の屋敷にいただろう」
そう言ったとしても、ニケ月もそのチャンスがあって初夜も迎えていないとはだれが思うのだろうか?
そもそも結婚当日に済ませているとばかり思っていたアーサーは、いまだに信じられないと言ったような面持ちで、なおもクリスを見る。
「そんな顔で見るな。キスくらいはしている」
なんとか取り繕いたいクリスだが、そのキスも触れ合うだけのものを入れても三度しかない。ますます落ち込む。
「まさか、お前?」
アーサーの表情を見たクリスが、その意味を悟り急いで否定する。
「違う!俺のものは今まで通り、元気いっぱいだ」
「そうか、それならいいが……目の前にいくらでも好きに出来る女がいるのに、手を出さないとはお前らしくないと思って、思わず心配した」
「その言い方は気に入らないな。俺は妻を自分の好きに扱うような夫になるつもりはない」
きっぱりと言い切った。
「お前の所は、母親が早くに亡くなっているから知らないだろうが、結婚すれば、妻は夫の持ち物の一部になるんだ。どんな酷い事をされても、妻は文句を言えない……うちの親がいい例だ」
アーサーが結婚を嫌う理由は、両親の結婚が、そんなにいいものではなかったからだろう。噂と、今までアーサーから聞いた話だけでも、先代のオークロイド子爵の妻の扱いは酷いものだった。
「それなら、どうして、愛する妻と離れて暮らしている?まだシーズンも来てないのに」
アーサーが話を元に戻した。
「愛する妻に……愛されていないかもしれないからだ」ぽつりと言った。
「本気なんだな。まあ、そうだろうな。今までどんな女と付き合っても、結婚などちらつかせもしなかったのに。今回は会っていきなり求婚だろ?いくら相手が伯爵家の娘とは言え……」
「そうだな、なぜか彼女の噂を聞いた時に、絶対に会いに行かなければと思った。そして、会ってみて、すぐに求婚しなければと……頭で考えると言うよりも、魂がそう呼びかけた」
「お前がそんなロマンチストだとは思わなかったよ」
アーサーはふっと息を吐き、ソファに深く沈んだ。
「で、どうして俺を呼んだ?」
「別に、他にこんな話出来る奴いないからな」
「まだ初夜もすませてないとは、言えないよな」
アーサーは口の端でにっと笑った。
「ああ、そうだ」
クリスも情けない顔で笑った。
おわり
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2011-02-19 00:01
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