はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

好きとか言ってないし ブログトップ
前の10件 | -

好きとか言ってないし 1 [好きとか言ってないし]

後期の期末試験が終わったある日の午後のこと。

突然腕を掴まれた。何者かの力強い手に引き寄せられ、迫田陸は足元を大きくよろめかせた。

「こいつ。こいつが俺の男」

俺の男?

陸はありえないほど身体を密着させる――抱きしめられているといっても過言ではない――男を見上げた。
兄であるコウタの背を追い抜かしていい気になっていたが、この男は陸など足元にも及ばないほど背が高い。これは言い過ぎだが、長兄の聖文を思わせるような、威圧感さえある。その威圧感はいまは陸にではなく、抱き合う二人を迎え撃つ相手に向けられているのだが。

陸は困惑したままの顔で、その相手に視線を向けた。

「そんなわけないっ。こんな子供がユーリの相手なはずないっ!」

興奮する相手も男で――男子校なので当たり前だが、陸は自分に向けられた敵意に満ちた目を見ないように努めた。

ユーリと呼ばれた男がくくっと笑った。「馬鹿かお前は」

わぁ、この口調まさにいにそっくり。

「こいつが何も知らないうぶなガキに見えるか?」
男の手が、陸の身体を滑り降り、尻たぶをぐっとつかんだ。陸はぎょっとして思わず呻き声を漏らした。

「ほら、いい声出すだろう」
耳元にふっと息を吹きかけるように囁かれ、陸の膝がガクンと折れた。抱きしめられていなかったら、無様に尻もちをついていたに違いない。

「やだ、ユーリ。僕を捨てないでっ」
相手の男が両手で顔を覆い、わっと泣きだした。

陸は彼が哀れに思えた。男子校にいがちな線の細い綺麗な男の子で、このユーリという極悪非道な男に心酔しているのは一目瞭然だ。

「ハル、泣くな」
ユーリのあまりに冷たい口調に、陸は身震いした。

「また抱いてくれる?」

ええっ!この状況でよくそんなこと言えるな……。このハルってやつが相当な馬鹿なのか、それともユーリってやつが相当いい男なのか?見た目は確かにいい男に見えなくもないが、朋ちゃんみたいな綺麗で優しい感じは一切なく、どっちかといえば、まさにいみたいな目元に凄味を利かせたような恐ろしい雰囲気だ。

「気が向いたらな」
そっけない一言。

きっとハルはユーリの気が向くなんて思ってないはずだ。けれど、いまは食い下がるべきではないと判断したのだろう。涙を止め、二度三度と振り返りその場から去っていった。

その姿をじっと見ていた陸は、思い切り手を伸ばしユーリを突き飛ばした。
不意をつかれたユーリは少しよろめいただけで、愉快そうな目を陸に向けている。まるで力の強い五歳児でも見るような目つきだ。

「お前、サイテーだな」
陸はそう言い放つと、廊下を出口に向かい大股で歩き始めた。

前方の沈みかけた夕日の強烈な光が、陸の目をすがめさせた。

なんでこんなまぶしい造りなんだ?設計者は誰だ?
これだから高等部の校舎には来たくなかったんだ。進学するにあたって書類に不備がありそれを届けに来たのだが、中等部の迫田兄弟は有名なようで、いちいち足止めを食らった。有名の原因は本人たちよりも、長兄の聖文によるもので、兄の近況を訊かれてうんざりとしていたところに、痴話げんかに遭遇した。というよりも巻き込まれた。

「生意気なガキだ」

「ちょっ!!」

陸はいともたやすく腕を取られ、手近な部屋に引きずり込まれた。

つづく


>>次へ

あとがき
こんばんは、やぴです。
新連載スタートしました。
今度は陸ですが、コウタと朋のゆるゆるな感じとは違って、
いきなりアレアレな展開に(;´Д`A ``` 
時系列的にはコウタと朋が恋人になったのが8月末で、現在は11月末です。

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好きとか言ってないし 2 [好きとか言ってないし]

たまたまそこにいたガキの腕を取った瞬間、不思議な感覚に襲われた。ハルに対して腹を立てていたはずなのに、そんな事も忘れ、ガキを抱き寄せていた。
こいつの尻の掴み心地のよさに、こっちが呻き声をあげそうになった。

ハルが何を言って、俺が何を言い返したのかも思いだせないほど、全神経が腕の中のガキに集中していた。
いったいなぜだ?

神宮優羽里は腕を掴まれジタバタともがく子供を、まるで初めて見る生き物のように上から下へと視線を這わせた。

「大人しくしないと、いますぐ犯す」

脅しが効いたのか、ガキの動きが止まった。見上げる瞳には怯えが見えたが、それも仕方がない。

「名前は?」

「陸」
声は怯えるどころか、噛みつきそうな程攻撃的だ。

「陸……ああ、双子のあれか?」
名前には聞き覚えがあった。中等部に三組の双子がいるのは有名な話だ。しかも、『陸』『海』の双子は最強だという噂だ。
勝手にケンカの強い大男を想像していたが、どうやら別の意味で最強のようだ。

不思議な感覚の訳がわかった。とにかく半端ないほど、そそられる。いますぐこいつとヤリたい。

ユーリは視線を彷徨わせた。入りこんだ部屋はあまりにも都合のいい場所で、こんなチャンスをみすみす逃す馬鹿はいないと、陸を半ば抱き上げるように移動すると、応接室の革張りのソファに横たわらせた。

「何すんだよっ!馬鹿、離せっ!」
陸は手足をばたつかせ抵抗する。さすがに押し倒されて、何もされないとは思わないのだろう。

「何って、おいっ、暴れるな」

くそっ!引っ掻きやがった。発情期の雌猫さながらにフェロモン振り撒いているくせに、なんつーやんちゃな雄猫だ。

「静かにしろっ。いまここに誰か入ってきたらどうなると思う?」まず誰も入って来ないだろう。鍵も閉めたし。「進級できないかもな――」

陸の動きが止まった。

「そっちが悪いくせに?」
憤慨している口調だ。

「そうだな。けど、見た奴が都合よくそう思ってくれるかどうかは、わかんないからな」

困り果てた表情に欲情する俺は、どこかおかしいのかもしれない。
だいたいこんなガキに興味を示す時点で、らしくない。にわかに湧き上がった欲求をさっさと静めてしまえば、こんなガキに興味を示すような事は二度と起こらないだろう。

「大人しくしてれば、すぐにすむ」

そう言って、ユーリは陸に口づけた。噛みつかれなかったのは意外だった。柔らかな唇を素早くこじ開け、舌を滑り込ませる。陸は驚いたのか、逃れようと身を捩った。
ユーリは力で抑え込み、陸を味わった。おかしくなりそうだった。こんなにキスが下手なくせに、唇を離すことが出来ない。
しっかりリードしてやるから逃げるなと舌を絡みつかせると、陸の口から喘ぎにも似た吐息が洩れた。

ふいに陸の乱れた呼吸を落ち着かせてやりたくなった。ゆっくりとキスを味わい、身体を昂らせて、欲するままに存分にセックスを愉しみたい。

今のこの衝動的な行動からは想像もつかない事を考えるとは、気でも触れたに違いない。ユーリは唇と舌をゆっくりとした動きに変え、陸の反応を伺った。そんな場合ではないと分かっていたのに、そうせずにはいられなかった。

つづく


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好きとか言ってないし 3 [好きとか言ってないし]

やっと、まともに息を吸えた。
しばし唇を解放され、陸は思い切り胸を上下させながら呼吸を整えた。

この男は気が触れたに違いない。いきなり、キスして、いつの間にかシャツのボタンも肌蹴、いったい何をするつもりだ?
いや、わかっている。このまま犯されるんだ。

どうやっても圧し掛かるこいつを押しのけることが出来ない。それもそのはず、すでに両手は頭の上に束ねられ拘束されてしまっているのだから。

ああ、でもこれがキスってやつなんだ。海が言っていた話とずいぶん違う。確か、『そんなによくもないかな』って言ってなかったか?
くそうっ!
キスだけならもうちょっとしてもいいかもって思うくらい、気持ちいいじゃないか!海の嘘吐きっ!!

ユーリの動く方の手が陸の頬を包んだ。

「か、帰らなきゃ――」
大きな声を出したかったのに、弱弱しい掠れ声しか出なかった。

「まだだめだ」

やっぱり……。キスだけでは到底終わりそうにもないので、早々にお暇したかったのに。

再び口を封じられた。陸はなんとか気持ちを奮い立たせ、ユーリの大きな身体の下で必死にもがいた。
けれどその動きが相手を刺激してしまったようで、ユーリの唇は首筋に移動し、夢中で陸の身体を味わっている。
その時、ユーリに掴まれている手首が自由になった。
それに気付いた陸は、痺れた腕でユーリを押しのけようとしたが、腕どころかすっかり身体に力が入らなくなっていることに愕然とした。

「もう、帰らなきゃ――ブッチが、待って……るぅんっ」
乳首を吸われて、陸はいままで感じた事のない快感に襲われた。

「ブッチ?女――いや、男か?」

「お、とこ」
もうやめて。乳首がちぎれちゃう。

「終わるまではそいつの事は忘れろ」

ブッチを?忘れられるはずない。
とにかくこいつから逃れ、無事家に辿り着かなければ。

「無理だよ――ふぅん」
ああ、変な声が出るし。背中が勝手に仰け反って、股間をこいつに押し付けちゃってる。絶対勘違いする。

「年上か?」

えっ……歳?確かブッチは三歳だから……。

「三十歳くら、いっ」

もうやだっ!
陸は思い切って大声を出すことにした。
この事が問題になっても、ちゃんと説明すれば進学できないなんてことはないはずだ。
もし万が一進学できなくなったら、仕方がないのでコウタと同じ高校に行くしかない。

陸は思い切り息を吸った。
さあ、いまだ。助けてと叫ぶぞ!

だがその瞬間、ユーリに巧みな手つきで股間を弄られ、大きな喘ぎが洩れる事となったのだった。

つづく


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好きとか言ってないし 4 [好きとか言ってないし]

「ぁああっ……んっ」

なんて声を出しやがる。
ユーリは慌てて陸の口を手で抑えつけた。

それでも素早く陸のズボンの前を開け、手を滑り込ませた。硬く膨らんだ部分は、男相手に感じているのだと証明している。
もしかして、『ブッチ』とやらは恋人なのか?すでにこの身体は男を知っているのか?
三十歳。上等だ。

「いい子にしてろ。ちゃんと気持ちよくしてやる」

陸の口に当てた手に、温かな吐息がかかる。
おそらく、口の中に呑みこまれた言葉は「いやだ」だろう。

ユーリは再び陸の唇を唇で塞いだ。
ズボンを下着ごとずらし、直接昂りに触れると、言葉とは裏腹にそこはしっかりと濡れていた。

嫌だという割には、感度が良すぎる。
ユーリは割れ目から滴る雫を親指の腹に擦り付け、そのまま手を上下させた。

陸が快感に身を反らせた。
握り締める手に強弱をつけ、ユーリは子供を甘やかす親の様に快感を与え続けた。唇を離しても、陸の口からは抵抗するような言葉は出て来ず、甘い喘ぎが洩れるだけだ。

どうやら、こうやって擦られるのは好きなようだな。

こうやってたっぷりとキスをするのも、相手を愛撫するのも久しぶりだった。
ハルはキスをされたがったが、ユーリはそれを避けた。薄々ハルの過度な気持ちに気付いていたからなのだろうか。

恋愛感情抜きの付き合いでしかないのに、必要以上にベタベタとするのはごめんだ。
だったら、いまこいつにしつこいくらいキスをしているのはどういう訳だ?

いままでの自分の考え方から程遠い行いにユーリは思わず顔を顰めた。

こいつとだって恋愛云々は全く関係ない。ただの欲望だ。それを満たすためにこのガキに圧し掛かってるだけで、一度やったらそれでお終いだ。

「やめないと、大声出す――」
陸が荒い呼吸の合間にやっと言葉を発した。

「それで凄んでるつもりか?お前の淫乱な身体は、もっと触ってくれと言ってるが?」
ユーリは手の動きを速めた。

「言ってないっ……やめっ、でる――」

「出せよ。お前のイク瞬間を見てやるから」

「もう、ほんとに……やめて――っ!」

その言葉を最後に、陸はユーリの手によって達した。
仰け反り震える身体をユーリは思わずぎゅっと抱きしめていた。
手の中で跳ねる分身が、勢いよく精を吐き出している。
何日分溜まっていたのかは知らないが、これだけ派手に飛ばすということは、随分と溜まっていたのだろう。

ユーリは手を止め、薄暗い室内に浮かび上がる陸の気だるげな顔を見下ろすと、無意識にキスをしていた。それは唇を素早く触れ合わせただけの、軽いものだった。
頭をあげ、もう一度陸の顔をゆったりと見下ろす。キスの名残でぽってりと腫れあがった陸の唇が、呼吸を整えようと小さく動いている。

「その顔いいな」
そう口走った自分にぎょっとした。
いままで面白がるような口調でしか言ったことのない言葉だった。それなのにいまは、愛しい相手に口にするような、優しい声音になっていた。

「帰らなきゃ――」

ぼんやりと上を見つめる陸の口から零れた言葉にカッとなった。
いまだかつて、俺の腕の中にいた奴が帰りたいなどと言った事はなかった。
帰すものか。
まだ俺はイっていない。

つづく


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好きとか言ってないし 5 [好きとか言ってないし]

なんてこった。

陸はハァハァと息を弾ませ、天井をぼんやりと見つめた。
汗ばむ身体がソファに当たって気持ちが悪い。

すでに外は暗くなっているだろう。早く帰らないと、みんな心配する。

「悪いが、まだ帰せない。お前に突っ込むまではな」

その口調はまるで裁きを下す執行官の様に陸の耳に届いた。

怖い――

「や、だよ」

「安心しろ。手際よくやってやるから」

全然安心できない口調だ。
早く逃げなきゃ。

今度こそ逃げ出そうと、両手をユーリの胸につけ力いっぱい押した。けれどその手を逆に掴まれ、自分のネクタイで縛り上げられてしまった。

ほんとに手際がいい。

陸は一瞬感心してしまった自分を叱責した。

その間に両足を上に引っ張られ、尻を晒すはめになった。

「なんで引っ張るのっ!」
こんな恥ずかしい姿を晒すなんて……。
それ以前から随分恥ずかしい状態にあることも忘れ、陸は憤慨した。

「うるさい口だ」
そう言ってユーリは陸の口に何かを捻じ込んだ。

陸はいよいよ恐怖に駆られ、閉ざされた口で悪態をめいっぱい吐いてみるのだが、あえなく徒労に終わった。

その間、ユーリはどこからともなく陸を犯すための道具を取り出し、すでに尻に指が突っ込まれていた。

ぬるりと滑り込む指が一本から二本に増やされた時点で、陸は体力の限界を感じていた。この悪党は本当に俺を犯すつもりなのだと、半ば諦めてきた。
こうなったらさっさと終わらせてもらうしかない。

陸が力を抜いたことに気付いたユーリは、ニヤリと意地の悪い笑みを陸に向けた。
まるで獲物を捕獲した時のような満足げな笑みだ。

腹が立つし、本当は泣き出したいほど困った状態にあるのだが、それでも陸はこれに耐える事にした。こういうことも長い人生の間にあることなのだと、自分を納得させようとした。

「うっ…んんっ!」

ああ、とうとうやられちゃう。
尻の孔にかかる圧迫が半端ない。できるだけ陸は力を抜き、抵抗しないようにした。諦めも肝心なのだと、これまでの短い人生の中で悟っている。

ああ、ブッチ。これは浮気じゃないからね。

入口の圧迫が下腹部全体に広がっている。
どんどん奥まで入っていっている証拠だ。

「いい子だな。もう少しで全部呑み込むぞ」

こんな事で褒められてもうれしくない。
それよりも、うるさくしないから口の中のものを出してくれないかな?息苦しくてたまらない。

陸はユーリに目で訴えてみるが、まあ、気付くはずもなく、首筋に吸い付かれ腰をぐっと押し込まれた。

苦しい。もうこれで満足だろう?さっさと離れろっ!

変に抵抗すれば痛い思いをしそうで、陸は表面上は従順そのものの態度を崩さず、脳内に思いつく限りの悪態を並べ立てた。
無意味だと分かっていても、そのくらいしないと耐えられない。

つづく


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好きとか言ってないし 6 [好きとか言ってないし]

「ああ、陸。すごくいい――」ユーリが恍惚の声を漏らした。腰を前後に揺らし、抜き差しをしながら、陸の口元にキスをする。

くそうっ!
名前を呼ぶなんてずるいぞ!ちょっとドキッとしたじゃないか。そんな関係でもないのにさっ!

ユーリはどうやら陸からの反応も欲しかったようで、あっさりと口の中の布きれを取り去ってくれた。よだれが頬に冷たく糸を引いた。

犯されるより、よだれを垂らす方が悔しい。この恥ずかしさをどうやって紛らわすべきなのか分からず、とにかく頬をユーリの肩に擦り付けた。ざまあみろ!

「お前のココは男を虜にするな。よく締まって、食い付きもいい」

それは褒め言葉なのか侮辱されたのか分からなかったが、自由に喋れるはずなのに、言葉は一切出てこなかった。
しばらくしてやっと口に出来た言葉は、「手が痛い」だった。
すると夢中で腰を動かしているはずのユーリが手を自由にしてくれた。

もしかして、こいつ案外いいやつ?などと陸が的外れな事を思っている間に、ユーリが腰を激しくぶつけて来た。
突かれる度に、陸の口から反射的に声が洩れる。

「その声、いい――陸」
そう言ってキスをしてくる。そのキスが腰の動きとは真逆の、あまりにもゆったりとした動きだったため、なにか変な感情が陸の中に湧きあがってきた。

気付けばユーリに必死にしがみついていた。
犯されているはずなのに、それとは違う、きちんとした行為の様な気さえしてきた。

もしかして、こいつ俺に一目惚れとかしたのかな?
そんな事をうっすら思っていると、ユーリがついに果てた。

やっと……いや、もう?
時間的にはどのくらいが妥当なのかさっぱりわからないが、この状況を脱することを前提にすればやっとと思うべきなのだろう。けど、これが通常のセックスだとしたら?

いやいやいや。
無理矢理やられておいて、通常ってありえないよな。

こんな状況下においても陸は案外冷静だ。

一方のユーリはまるで全力疾走で百メートルを往復したかのように、息を切らせている。全体重をかけられ、陸は「重い」とぼやいた。

なんだかまるで、愛の営みを終えたかのような満足感が漂っていないか?これが世に言う、セックスのあとまったりとするというやつなのかな?

だが、そう思っていたのは陸だけだったようで。最終的には、初めてのセックスの相手が男というだけではなく、紛れもなく何の意味も持たないものだと気付かされた。

なぜなら陸はその場に置き去りにされてしまったのだから。

つづく


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あとがき
こんばんは、やぴです。
やり捨てヽ(`Д´#)ノ  
50000hitありがとうございます♪

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好きとか言ってないし 7 [好きとか言ってないし]

屈辱。

それが一番しっくりくる。
ユーリに置き去りにされ、真っ暗な応接室(おそらく)で、脱がされたシャツのボタンを留めていた。長い時間圧し掛かられていたためか、身体がいう事を訊かなかった。ギシギシと軋むのは尻にも言えることで、陸はソファの下に落ちている携帯電話を拾った。

着信のランプがチカチカしていた。
携帯を開くと、コウタからメールが数件入っていた。

心配してくれたのは、コウタだけなんだ。自分を除いた兄弟は四人。
長兄の聖文、次兄の朋、そしてコウタ。弟の海。

そんなにいるのに、心配してくれたのはコウタだけ?
一番頼りたくない人物なのに、気付いたらコウタに電話をしていた。

『陸!いまどこ?何してるの?』

「ちょっとね……あのさ、迎えに来てくれる?誰にも内緒で――」

『内緒……?いいけど、学校?』

「えー、うん。校門の前で待ってるから。お願いね」

陸は電話を閉じ、高等部の校舎にいる事がばれずに中等部の校舎まで戻れるのかを考えていた。
あれからいったい何時間経ったのか――時間を確認して、あの悪党に掴まって三時間が過ぎていたことに気付いた。

陸はゆっくりと立ち上がった。
途端に身体が悲鳴を上げた。

痛い。痛すぎる。

涙が溢れ、やっと自分がされたことがどんなものだったのかを自覚した。
ろくに抵抗できず、まんまと犯された自分に腹が立つ。
しかも、あれが犯されたといえるのかどうかも疑わしい。なにせ、その間に自分もイっちゃったのだから。

陸はなんとか身体を引きずり、校門の前まで辿り着いた。ゆうに三十分は経ったのではないだろうか?

「陸っ!何かあったの?」
心配そうに駆け寄ってくるコウタに自然と顔が歪み涙が零れていた。
俺よりもチビのコウタの前でなんか泣きたくないのに、それでも、こうやって来てくれたのはコウタだけなんだ。

陸はコウタに倒れ込むように抱き付いた。しっかりとしがみつき、声をあげて泣いた。その間コウタは何も訊いてこなかったが、おそらく陸の状態からなにが起こったのか気付いているのだろう、しばらくしてゆっくりと口を開いた。

「陸、自転車は?」

「今日は無理、乗れない」

「じゃあ一緒にタクシーで帰る?」

「俺お金持ってない」

「馬鹿、そんな心配するなよ。お金は僕が持ってるから」

コウタが頼もしく見えた。兄弟で一番小さくて、泣き虫で、けど、一番やさしくて、実は朋ちゃんの好きな人で――たぶんコウタも好きで。

いまはコウタにすべてを打ち明けたくて堪らなかった。
ひとりで抱え込むには重すぎる出来事だ。それに兄弟で彼氏×彼氏の状態にあるコウタなら、なにかいいアドバイスをくれるかもしれない。
本当は朋ちゃんの方に訊きたかったけど、今目の前にいるのはコウタだから仕方がない。

「ねえ、コウタ。朋ちゃんとセックスしたことある?」

この質問が一番の近道だ。

つづく


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好きとか言ってないし 8 [好きとか言ってないし]

俺はろくでなしか?

やるだけやっといて相手を置き去りにしたのはなにも初めてではない。
だが、校舎内でたまたま見つけたガキを部屋に引きずり込み、縛り上げてやったのは初めてだった。

こんなくだらない事を気に病むのは自分らしくない。ユーリは悪態をつきながら、自宅マンションのエレベーターを降りた。

大体、ハルの奴が余計な事を口にするからだ。
これまで良好な関係を築いていたのに、くだらない独占欲で俺を縛り付けようとした。

及川春人ことハルはユーリよりひとつ年下の十六歳。良家のおぼっちゃんで、素行の悪いユーリとの付き合いはわりと長い。

ユーリは自嘲した。自分の素行の悪さは再確認するほどでもない。
ハルはそんなユーリを憧れの対象としていた。雁字搦めの窮屈な人生のなかの唯一の逃げ場だったのだろう。

だからこそあんな言葉を口にして欲しくなかった。

『他の男との遊びはやめて』
遊びはやめろだと?笑わせる。

『本気で男と付き合うわけないだろう』そう喉から出かかったが、かろうじて呑み込んだ。

その代りに、『そうだな。そろそろ遊びも終わりだ。他の奴らともすべて手を切ろう、ハル、まずお前から』

ハルはあっけにとられ、それから細い顎を強張らせた。純粋そのものの瞳には涙が浮かび、大人しそうな唇は小刻みに震えていた。

『本気の誰かが出来たの?』
ユーリに限ってそんなはずないといった口調だった。
ユーリは誰にも本気にならない。好きだの何だのという言葉を口にする事すら嫌悪しているのをハルはよく知っている。

『そうだと言ったら?』
嘘とわかっていても、そう口にするのは不快だった。

ハルはユーリの嘘をやすやすと信じた。ユーリが嘘でもそんな言葉を口にしないと分かっているからだ。

それからが大変だった。ハルが泣き始めたからだ。

ユーリは誰かに縋り付かれるのが嫌いだった。真面目で重い雰囲気も嫌いだ。

軽い口調で慰め、なんとか一度は涙を止めさせた。
関係をややこしくしたくなかったため、話を終わらせようとしたが、ハルに腕にしがみつかれ、幼い頃の記憶が一瞬頭をかすめた。母親に細い腕にしがみつかれ引きちぎられそうな程引っ張られた記憶。
しっかりと蓋をして閉じ込めておいた記憶を引き出され、怒りとも恐怖ともつかない感情に襲われた。
ハルを引き剥がすために殴ろうと拳を握った瞬間、この事態を逃れるための救世主が現れた。

それが、中等部のガキだろうとユーリには関係なかった。
おかげでいつもの自分に戻ることが出来たのだから。

けれど、それを維持できたのはハルを追い払うまでだった。

「あのガキが、いかにもやってくださいとうろついていたからだっ!」

ユーリは1201号室のドアを開け、唯一の聖域とも呼べる場所へ戻って来たことに安堵しつつ、迎えに出て来た愛猫に手を伸ばした。

つづく


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好きとか言ってないし 9 [好きとか言ってないし]

「ねえ、コウタ。朋ちゃんとセックスしたことある?」
陸はコウタの横顔をまじまじと見ながら訊いた。見下ろすほどの身長差はないが、気持ちの上ではいつも見下ろしている。だがこの時ばかりはさすがにそんな気分にはなれなかった。

「なっ!なんてこと訊くんだよっ!」
コウタは顔を真っ赤にし、慌てふためいた。

「したの?してないの?」

「しっ、してない!!」

「じゃあ、どこまで?」

「な、な、なんのことだよ。なんで朋ちゃんと僕がそんなことを?」

「あのさあ、ばれてないとでも思っているの?夏頃からおかしかったの知ってるんだからね。まあ、それよりも前から朋ちゃんはコウタばっかりかわいがってさ……」案外拗ねたような口調になり、陸は一度咳払いをして言葉を続ける。「とにかく、コウタも朋ちゃんの事好きなんでしょ?兄弟でも付き合ってるとか言うのかな?で、もうしたの?」

コウタは何とか誤魔化そうと言葉を選んでいたが、自分にそんな高等な嘘がつけるはずもないと観念したようで、「だからしてない」と付き合っている事は肯定するような口調で答えた。

「少しも?」

「まあ、少しは……」

少しか……。
たぶん少しでは終わってないと思う。
コウタは経験値ゼロだから仕方がないとしても、朋ちゃんは色々経験済みだ。さすがに男を相手にしたって言うのは聞いたことがないけど。

「朋ちゃんは優しい?」

「え、うん」
コウタは朋の優しさを思い出したのか、はにかみながら答えた。

「そっか……。もしさ、初体験したいんだったら、海と出掛けとくけど?さすがに男同士で近所のホテルとかまずいでしょ。知り合いのおばさんとか受付してそうだし」

最近、家の近くに――正確には島田家の近く――ラブホテルが二軒も出来た。県道から入ってすぐの場所に道路を挟んで向かい合うように建っている。

「は、初体験とか、そういうのじゃないから」
あくまでそこは否定するコウタ。

陸はこれ以上コウタをからかうのはやめて、大通りに目を向けた。校門からほんの数百メートルなのに身体が痛くて歩くのももう限界だ。

「陸、その腕どうしたの?」

「あー、これ?」
陸は縛られていた手首をあげ、コウタにしっかりと見せた。縛られていたことは黙っていようかと思っていたけど、気付かれたなら仕方がない。

「縛られてたんだ。それでやられちゃってさ」
なるべく軽い口調を心掛けた。そうじゃないとまた泣き出しそうだったからだ。

「やられたって……?」
コウタは言葉の意味に気付いているはずだ。けれど、それを否定したくて訊き返しているだけだと陸には分かっていた。

可哀相だと思われたくない。だけど、コウタは誰よりもそう思うタイプだ。

「優しくされなくもなかったかな。身体はあちこち痛いけど、そう悲惨でもないし。このこと、誰にも言わないで。コウタだから話したんだからね」
コウタは絶対に秘密を漏らすことはしない。たとえ相手が朋ちゃんでも。

「でも、それって、まさにいに言った方がいいんじゃない?それより、相手は誰なの?まさかっ!先生とかじゃないよね……」
コウタが声を潜めた。反対方向から人が歩いてきたからだ。

「違うし、まさにいにも知られたくない。だって、知られたら大変なことになる」

まさにいに言えば驚くほど完璧に対処してくれるだろう。
まずは学校に乗り込み、相手の男を見つけだし、退学に追い込むこと間違いなしだ。けど、陸自身無傷でいられるとは思えない。進学できたとしても学校に居づらくなるだろう。

男子校はその手の噂が広まるのは早く、陸は間違いなくそういう対象で見られるようになる。

そんな事になるくらいなら、黙って泣き寝入りする方がマシだ。あの、ユーリってやつが三年だったら、もう二度と会うことも無い。

「もしかして付き合ってる人?無理に身体を求められたの?」コウタが真顔で訊く。

あんな奴と付き合うかっ!ってゆーか、コウタの妙に古臭い言い回し、どうにかなんないの?

「付き合ってる人じゃないけど、確かに無理に求められたけど……結果、そうでもなかったっていうか……」
陸の言葉は尻すぼみになった。

だって結局、抵抗位できたんじゃないかって思う。しなかった自分が悪いような気がしないでもない。

「あっ、タクシー!!」
コウタは右手を思いきりあげ手首にスナップをきかせて振った。

今どき、そんな風にタクシー止める奴見たことないんだけど。陸が目を丸くする中、コウタは手柄をあげた武将の様に、誇らしげに手をおろした。

つづく


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好きとか言ってないし 10 [好きとか言ってないし]

「コウタ、本当に内緒だからね」

自宅の玄関前までやっとのことで戻って来た陸は、迎えに来てくれたコウタに念を押した。

「うん、わかってるよ。とにかく家に入ったら、荷物は玄関に置いて、そのままお風呂に入りな。海も朋ちゃんももう入ってるから、ゆっくりしても大丈夫。着替えは今日取り込んだやつを洗濯機の上に置いておくから」
そう言って、コウタが玄関のドアを開けた。

陸はこそこそと家の中へ入ると、そのまま風呂場に向かった。

海はおそらくゲームをしているから大丈夫だとして、朋ちゃんはコウタが外出した事をおかしいと思うはずだ。コウタはどうやって言い訳をするんだろうか?嘘がつけないくせに。

とにかくお風呂に入って、今日起こった出来事を忘れよう。

陸は念入りに身体を洗うと――尻の孔は泡で優しく洗った――ぬるま湯に浸かった。

じんわりと身体が温まり、凝り固まっていた身体が徐々にほぐれた。湯船から手を出しバスタブの淵に腕を置くと、小さく溜息を吐いた。

今日は本当に油断していた。
男子校だから、そういったこともあると分かっていたのに、よりによってやったあと置き去りにするような卑劣な奴に掴まってしまった。

ユーリ――

あいつ、キスが上手かった。
おかげであそこも反応しちゃって、やられる羽目になったのだ。バカバカ!
しかも手でイかされて……それも気持ちよくて……バカバカ!

それに、俺の事名前で呼んだりしてさ、余計に感じちゃったじゃん!

思い出しているうちに、陸の分身がむくむくと起き上がって来た。

「ち、違うっ!これはあいつの――」

「陸、何が違うの?」
コウタが声を顰め、風呂場に入って来た。

陸は湯の中で飛び上がらんばかりに驚き、振り返ってコウタを見上げた。コウタは目を背けたまま着替えを洗濯機の上に置いているところだった。

「なんでもない」陸は慌てて言い繕う。ユーリとのセックスを思い出して、あそこを立たせてますとは言えない。「それより、朋ちゃんにはなんて言ったの?」

コウタが素早くこちらを向いた。口元をきゅっと閉じ、目を真ん丸にして赤面している。

「あ、いいや。着替えありがと」
陸がそう言うと、コウタはさっと脱衣場から出て行った。

おそらく、コウタは陸が提案したアレを朋に伝えたのだと、陸は考えた。

初体験で誤魔化すとは、コウタもなかなかやるな。

つづく


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