はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

好きとか言ってないし 1 [好きとか言ってないし]

後期の期末試験が終わったある日の午後のこと。

突然腕を掴まれた。何者かの力強い手に引き寄せられ、迫田陸は足元を大きくよろめかせた。

「こいつ。こいつが俺の男」

俺の男?

陸はありえないほど身体を密着させる――抱きしめられているといっても過言ではない――男を見上げた。
兄であるコウタの背を追い抜かしていい気になっていたが、この男は陸など足元にも及ばないほど背が高い。これは言い過ぎだが、長兄の聖文を思わせるような、威圧感さえある。その威圧感はいまは陸にではなく、抱き合う二人を迎え撃つ相手に向けられているのだが。

陸は困惑したままの顔で、その相手に視線を向けた。

「そんなわけないっ。こんな子供がユーリの相手なはずないっ!」

興奮する相手も男で――男子校なので当たり前だが、陸は自分に向けられた敵意に満ちた目を見ないように努めた。

ユーリと呼ばれた男がくくっと笑った。「馬鹿かお前は」

わぁ、この口調まさにいにそっくり。

「こいつが何も知らないうぶなガキに見えるか?」
男の手が、陸の身体を滑り降り、尻たぶをぐっとつかんだ。陸はぎょっとして思わず呻き声を漏らした。

「ほら、いい声出すだろう」
耳元にふっと息を吹きかけるように囁かれ、陸の膝がガクンと折れた。抱きしめられていなかったら、無様に尻もちをついていたに違いない。

「やだ、ユーリ。僕を捨てないでっ」
相手の男が両手で顔を覆い、わっと泣きだした。

陸は彼が哀れに思えた。男子校にいがちな線の細い綺麗な男の子で、このユーリという極悪非道な男に心酔しているのは一目瞭然だ。

「ハル、泣くな」
ユーリのあまりに冷たい口調に、陸は身震いした。

「また抱いてくれる?」

ええっ!この状況でよくそんなこと言えるな……。このハルってやつが相当な馬鹿なのか、それともユーリってやつが相当いい男なのか?見た目は確かにいい男に見えなくもないが、朋ちゃんみたいな綺麗で優しい感じは一切なく、どっちかといえば、まさにいみたいな目元に凄味を利かせたような恐ろしい雰囲気だ。

「気が向いたらな」
そっけない一言。

きっとハルはユーリの気が向くなんて思ってないはずだ。けれど、いまは食い下がるべきではないと判断したのだろう。涙を止め、二度三度と振り返りその場から去っていった。

その姿をじっと見ていた陸は、思い切り手を伸ばしユーリを突き飛ばした。
不意をつかれたユーリは少しよろめいただけで、愉快そうな目を陸に向けている。まるで力の強い五歳児でも見るような目つきだ。

「お前、サイテーだな」
陸はそう言い放つと、廊下を出口に向かい大股で歩き始めた。

前方の沈みかけた夕日の強烈な光が、陸の目をすがめさせた。

なんでこんなまぶしい造りなんだ?設計者は誰だ?
これだから高等部の校舎には来たくなかったんだ。進学するにあたって書類に不備がありそれを届けに来たのだが、中等部の迫田兄弟は有名なようで、いちいち足止めを食らった。有名の原因は本人たちよりも、長兄の聖文によるもので、兄の近況を訊かれてうんざりとしていたところに、痴話げんかに遭遇した。というよりも巻き込まれた。

「生意気なガキだ」

「ちょっ!!」

陸はいともたやすく腕を取られ、手近な部屋に引きずり込まれた。

つづく


>>次へ

あとがき
こんばんは、やぴです。
新連載スタートしました。
今度は陸ですが、コウタと朋のゆるゆるな感じとは違って、
いきなりアレアレな展開に(;´Д`A ``` 
時系列的にはコウタと朋が恋人になったのが8月末で、現在は11月末です。

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