はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 429 [花嫁の秘密]

「ねえ、メグ。これクリスには不評みたいよ」アンジェラは足元に落としたズボンを鏡越しに見ながら言う。足元が温かいし、動きやすいし、文句なしなのに。

「たいていの夫はそういう反応をすると思います」メグはきびきびと言い、ズボンを回収する。

「でもこれはセシルのおさがりでも紳士用でもなく、ちゃんと婦人用のズボンなのよ。狩りや乗馬する時にスカートより便利だし、みんなもそうするべきよ」そうは言いつつも、ドレスに袖を通すとホッとする。身体にぴったり馴染むこの感覚は、他の人には理解できないものかもしれない。

「でも奥様は狩りも乗馬もされないでしょう?」メグは背中のリボンを結びながら言う。

「まあ、そうね」ついでに言えば、女性でもないわ。

アンジェラは口元だけで呟き、鏡の中の貧相な身体を見つめた。背はまだ伸びる可能性はある。けど身体つきに関して言えば、兄たちを見てもこれからアンジェラの肉付きがよくなる可能性は低い。鍛えれば少しくらい逞しくなるかもしれないけど、セシルもアンジェラも上の兄とは明らかに違う。

きっと母に似たんだわ。

「今日はミセス・ワイアットとスコーンに挑戦するの。来週農場の視察に行くときの差し入れにしようと思って」この屋敷の人たちはいろいろなことに挑戦させてくれる。スコーン作りも、庭の土いじりも、興味深そうに見ていたらやってみますかとすすめてくれた。クリスは反対のようだけれど、明日は今日土を掘り返したところに種をまく予定。寒い時期なりの適した野菜があるのだと、菜園を管理しているハウが教えてくれた。

「うかがっております。奥様さえよろしければ、わたしも参加したいのですが」

「もちろんよ」メグがレシピを覚えてくれたら、向こうへ戻ってもいつでも美味しいスコーンが食べられるもの。

ああ、そうだ。ここでの問題がひと段落したら、犯人探しをしないといけない。でも、そんなの無駄だって最初から分かっている。兄たちは犯人が誰だかわかっていても言わないし、きっといまも裏で工作している。わたしやクリスに知られたくない相手はいったい誰だろう。

二人に共通する人物か、それともどちらかに恨みのある人物か。クリスマスの朝まではそう考えていた。けど、血染めのハンカチとナイフの贈り物で、ターゲットは確実にわたしなのだと実感した。

劇場で出会ったようなわかりやすく敵意を向けてきた人ではなく、どこかの催しで挨拶も交わさなかったような人の可能性もある。これまで出会った人物を一人一人思い出しているけど、まだ結婚式辺りまでしか整理できていない。戻ったらまずそれぞれの催しの出席者名簿を確認して、怪しそうな人物をリストアップして、それからどこかに調査を依頼する。兄たちの息のかかっていないところがあればいいけど。

メリッサにお願いしているけど、リックとの仲もあるし、友情を天秤にかけるような真似はさせたくないし、とても困った状況に追い込まれている気がしてならない。

「奥様、髪はどうしますか?」メグに促され、アンジェラは鏡の前に座った。年代物の装飾が施された鏡は少しくすんでいる。

「そうね、このあとキッチンへ行くからまとめておいた方がいいわね」髪が短くなってまとめやすくなったし、これからは少し大人びた格好をするのもいいのかもしれない。

メリッサのアドバイスが欲しいけど、こういう時のためにメグがいる。とても優秀な侍女だから、任せておけば安心だ。

つづく


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