はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 233 [花嫁の秘密]

「支度は済んだのか?」

上掛けに潜り込んでいたサミーは、朝から聞きたくもない声を耳にして思わず眉間にしわを寄せた。ゆっくりと這い出るようにして顔を出すと、すぐそばにエリックの顔があった。ダークスーツに暗褐色のシルクのネクタイを締めベッドの端に腰かけている。

「君はここで何を?僕の眠りを妨げる権利はないはずだけど」

「俺はどんな権利も持ち合わせている。ぐだぐだ言ってないでさっさと起きろ。ハニーはもう起きて母様を見送ったところだ」

「まだ暗いのに、ソフィアはもう行ってしまったのか?アンジェラは少しは話をできたのかな」サミーは肘をついて少し上体を起こすと、カーテンがひかれたままの薄暗い部屋を見まわした。もしかしてカーテンを開ければ日はもう高く昇っているのだろうか?

「通常通り親子として別れを惜しんでいたから、大丈夫だろう」

「そう、よかった。それで?支度って?」もしかして、昨日言っていたロンドンへ行くという話をしているのだろうか?具体的にいつ行くとは言っていなかったけど、まさか今からなのか?

ああ、だからこいつは朝からこんな格好をしているのか。サミーは寝起きの頭で、これから自分がすべき様々なことを秤にかけた。

「まさかしていないとは言わないよな?まあ、俺としてはお前の身体ひとつあれば十分なんだが」

サミーはエリックの言外に含む意味に気づかないふりをして答える。「着替えは向こうにあるし、ステッキさえ忘れなければ問題はないだろう」

「愛用の銃も持っていったらどうだ?」

アンジェラの事件があってからは携帯するようにしているが、あからさまに皮肉るあたりエリックはどうやら気に入らないらしい。

「言われなくても持っていく。どうでもいいけど、出て行ってくれないか?」サミーは溜息を吐いた。

「別に何度も見ているから気にすることはない」エリックがニヤリとする。

「僕が気にする。出ていけ」

「お前は、本当にかわいくないな」ふいにエリックが圧し掛かってきた。上掛けの中に手を滑り込ませ、無防備な肌に触れる。

「馬鹿!冷たいだろ!」サミーはエリックの無遠慮な手から逃れるように身体を丸めた。

「すぐに温まる」

エリックの唇が首筋に押し付けられる。もしかして彼は今ここでする気なのだろうか?いつ従僕がカーテンを開けるために部屋へ入ってきておかしくないというのに。いや、僕の部屋のカーテンを開けに来るものはいない。そうしないように命じているからだ。

ということは誰にも邪魔されず、エリックは欲を満たせるわけだ。酒も入っていない状態でこういうことをしてきたことがあっただろうか?まったくのしらふでエリックの愛撫を受けるのは初めてだ。支度をしろと言ったのに、なぜこいつは僕のベッドに入ってくる?

「やめろ……」抵抗は弱弱しく、サミーは戸惑った。いくら寝起きとはいえ、こうも身体に力が入らないものだろか?

「いつもこのくらいおとなしければ楽なんだがな」エリックはそう言ってベッドから出ると、名残惜しげに身体を傾げて唇にキスを落とした。「一時間で支度をしろ」言い残し、部屋から出て行った。

一時間?

くそっ!勝手な奴め!誰が唇に触れていいと言った!

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

花嫁の秘密 232 [花嫁の秘密]

その夜遅く、クリスは書斎で頭を抱えていた。

クリスマスの飾りつけは無事済んだし、アンジェラへのプレゼントも準備万端だ。何も困ることはないはずだったのだが、アンジェラのいささか刺激的過ぎたプレゼントを受け取ってしまったソフィアが、アップル・ゲートへ戻るという。

クリスはソフィアと話をする必要があった。この結婚は間違いなどではなく、今後も続いていくのだと。けれどもソフィアはクリスはおろか、アンジェラとも話すことを拒んだ。

アンジェラの突然の告白を受け入れるために時間が必要なのは理解できる。クリスもかつて同じような経験をしたのだから。だが、本当に同じと言えるだろうか?過ごした時も愛の種類も違う。ソフィアはいったいどうやって納得するのだろう。いや、クリスと違って受け入れるという選択しか、ソフィアにはない。

元はマーサがついた嘘からすべてが始まった。それは本当に仕方がなくついた嘘で、これまで隠し通してきたマーサの献身ぶりを否定することはできない。

きっとマーサはアンジェラが生まれた瞬間からいままでの成長を余すことなく伝えるだろう。すばらしい贈り物を授かった喜びは、アンジェラが男の子だったからといって変わるものではない。

もうひとつクリスの頭を悩ませているのが、ラムズデンで起こった問題だ。金に関して言えば、サミーがすでに銀行へ行って対処してくれたので問題はない。フォークナーがぬかりなくやってくれているだろう。

問題なのは領地がうまく運営されていないことだ。金を持ち逃げするような管理人なのだから、運営に関してもずさんだったはずだ。帳簿をしっかり見ないことには何とも言えないが、これまでこの土地を無視してきたつけを払わされているのは間違いないだろう。

明日、リード家の顧問弁護士がここへ来る。ラムズデンの前管理人クラーケンとうまく話ができていればいいが。彼の一族は代々あの土地を守ってきた。だからこそ安心してあの土地を任せていたのだが、クラーケンが高齢なことを理由に実質引退し、そのあとを任されたのが遠戚にあたるモリソンだった。クラーケンの推薦とはいえ身元調査は十分にしたが、どうやら不十分だったようだ。残された妻子はどうなったのだろう?確か息子はまだ幼かったはず。

もし滞在が長引きそうならアンジェラを連れて行こうか?ソフィアもマーサもいないフェルリッジにサミーと二人にするのは気が進まない。

クリスはかぶりを振り、この考えを押し退けた。気分転換になってかえってよさそうにも思えたが、やはり今実家から遠く離れた場所へ行くのはいい考えとは言えない。何かあればすぐにでも駆けつけられる距離にいたいと、アンジェラは思うだろう。
年明けにはアビーとロンドンで合流すると言っていたから、もしすぐに戻れないとなればロジャーに任せてしまうのも手かもしれない。

いっそラムズデンにはサミーが行ってくれないだろうか。去年管理人が交代した際、それまでの帳簿の確認をしたのはサミーだ。クラーケンの帳簿のつけ方は独特で、もしもモリソンがそれを引き継いでいたなら――いや、きっと引き継いでいる――サミーが目を通す方が状況を把握しやすい。

いずれにせよ明日弁護士と話をしてから決めることにしよう。今はただ一刻も早く愛する人の待つベッドへともぐり込みたい。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

花嫁の秘密 231 [花嫁の秘密]

問題解決を先送りにしたまま、一同は一旦解散した。

そのタイミングで長い昼寝から目覚めたセシルがやって来たため、アンジェラとマーサは状況説明のために応接室に残った。

クリスは書斎へ行き、エリックは部屋に戻るサミーの後を追い、扉が閉じられる前に中へ滑り込んだ。

「お前、ハニーとクリスが別れればいいと思ったんじゃないのか?」サミーの背に向かって言う。

「は?冗談でもそういうことを言うのはやめて欲しいね。僕はアンジェラの幸せを誰よりも願っている」サミーはエリックを見もせず肩越しに言い返し、上着を脱いでベッドに放った。

まったく、忌々しい男だ。自分で聞いておいて馬鹿みたいだが、こいつがハニーのことを何より大切にしていることを忘れていた。

「まあ、いいさ。とにかく母様は真実を知ってしまった。もう、クリスマスパーティーどころじゃないな。さて、どうするか……」こうなったら例の計画を早めるか。

「ロジャーには知らせたのか?」
ようやくこちらを向いた。その表情から心底アンジェラを気遣っているのがうかがえ、エリックは苛立たしげに指先を太腿に打ちつけた。

「使いをやったから、すぐに知ることになるだろうな。結婚に影響がなければいいが」

「あの婚約者なら真実を知っても平気じゃないかな?それよりも、もしかして例の計画への影響を考えているのか?君って人は」サミーは呆れた口調でそう言うと、椅子の背に掛けてあったウールケットを手に暖炉のそばに寄った。

「なんだ?ハニーを守るためにお前も計画を進めているんだろう?」エリックはサミーの背を抱き「寒いなら暖めてやってもいいぞ」と耳元で囁いた。

サミーは数日前から風邪をひいているようで、出掛けていないときはずっと火のそばにいる。出掛けずにじっとしていればいいものを、休めと言っても聞きやしない。領地の問題はクリスに任せておけばいいし、ハニーのことは俺に任せておけばいい。とはいえ、もう仕掛けた後だ引き下がれないのだろう。

「君がこんなにべたべたするタイプだとは思わなかった。僕は一人になりたいんだ、出て行ってくれるかな?」サミーはそう言いながらも、エリックの腕を払い退けたりはしなかった。

諦めているのか、体調がいよいよ悪いのか、後者だとしたらしばらくベッドに縛り付けておかなければならないだろう。何もせずにいられる自信はないが、暖めてやることはできる。

「まあ、いいから座れ」エリックはサミーをソファに座らせると、自分も近くの椅子に腰かけた。本当はサミーに勝手をさせたくないが――こいつはいつだって勝手をする――だからこそ、せめて計画をすり合わせておく必要がある。いや、サミーに手を出させないためにこいつが俺のものだと奴らに知らせておく必要がある。

「クリスは数日でラムズデンの問題を片付ける気でいるが、無理だと思わないか?」サミーは袖口に手をやり大粒のサファイアが埋め込まれたカフスを外すと、サイドテーブルに無造作に置いた。「行き帰りだけで何日かかると思っているんだか」

「クリスが戻ってこない方がお前には都合がいいんじゃないのか?」

「僕はすることがあるし、アンジェラを一人にするのは心配だよ」

こいつには心底苛々させられる。頭の中は常に人のものになった愛しい人のことでいっぱいで、こっちがどれだけ心を向けても、まるで気に留めやしない。

「メグがいるから平気だ。何のために俺がメグをハニーの侍女に推したと思っているんだ」

「はいはい、すべて計画通りね」サミーは適当に言葉を返し、目を閉じた。

「そうだ、すべて計画通りだ。だからお前は計画の邪魔をするな」

「また、その話かい?僕は僕の好きにするって言っただろう」

「クリスマス、ロンドンへ出るぞ」

「君は人の話を聞いているのか?クリスマスはここで過ごす」

エリックはサミーの言葉を無視した。「たぶん、母様はアップル・ゲートへ戻る。気力があればロジャーのところへ行くかもしれないが、無理だろうな。まあ、セシルも邪魔だし恋人のところへでも行ってもらうか。ここはハニーとクリス二人にしてやれ。しばらく離れることになるんだからな」

サミーはゆっくりと目を開き、軽蔑するような視線をエリックに向けた。

「君は本当に嫌な奴だな。僕がどういう気持ちになるかなんてお構いなしで、そういうことを平気で言う。だいたいなぜ僕が君とクリスマスを一緒に過ごさないといけないんだ?」

「いくつか招待されている催しがある。顔を出しておいて損はない。ついでに<プルートス>に行こう」

「ついで?それが目的だろう?」

<プルートス>はあらゆる娯楽を提供する紳士クラブのうちのひとつで、メンバーの顔触れはあまり上品とは言えない。そこに出入りするエリックとサミーの評価も世間的にはそんなものだ。女優と付き合っていた(ことになっている)伯爵家次男に、兄の元恋人と付き合っている(ことになっている)侯爵家次男。

世間の噂などひとつも当てにならないという証明にもなっている。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

花嫁の秘密 230 [花嫁の秘密]

夕方、お茶の時間に少し遅れて屋敷へ戻ったサミーは、邸内の様子がおかしい事にすぐに気付いた。これといって何か変化がみられたわけではなかったが、外の寒さ同様、身体が芯から冷えるような何かが起こった事は疑いようがなかった。

「ダグラス、僕がいない間に何かあった?」サミーは分厚いコートを脱ぎながら尋ねた。

ダグラスはそれを受け取りながら「レディ・ラウンズベリーがお倒れに」といたって簡潔に述べた。

想定外の答えに、さすがにサミーは驚き「なんだって?」と声をあげたが、ダグラスのあまりに落ち着き払った表情に、問題はそこではないのだと感じた。

「レディ・ラウンズベリーは現在お部屋で休まれております。念の為、ドクターにも来ていただきましたので、ご安心ください」

ドクターねぇ……。あのよぼよぼのじいさんをこの寒いなか呼んだのか?それなら、ソフィアの心配よりもドクターの心配をした方がよさそうだ。

「そう。で、みんなはどこ?」

「応接室にいらっしゃいます」ダグラスが玄関広間の奥に向かって歩き出す。

「そっちの応接室か。いい、勝手に行くから。それより、実は帽子をぬかるみに落としてしまって、それはもうひどい有様なんだよ」そう言って、サミーは玄関の向こうを指差した。「クリスマスの飾りつけと一緒に外の木に掛けておいたんだ。アンジェラは怒るかな?」

たぶん、少しは怒るだろう。真っ白な肌の、ほっぺただけを赤くして。
サミーは愉快な笑い声をあげ、応接室の扉を開けた。

部屋の中は思ったよりも暖かだった。
しかし、サミーに向けられた視線のいくつかは想像よりも遥かに冷ややかだった。

「サミー、早く扉を閉めろ」面白いことなどひとつもないといった顔つきでクリスが言った。

「まったく、何がそんなに愉快なんだ?さっさとここへ来て座れ」エリックは自分の隣の席をぽんぽんと叩き傍に座るように命じた。

幸いなことにアンジェラとマーサは何も言わなかった。確かに不謹慎だった。ダグラスの様子から心配するほどではないにしても、ソフィアが倒れたと聞かされたばかりなのに。アンジェラはさぞ心を痛めているだろう。

サミーは扉をぴたりと閉じ、従順にもエリックの横に腰を下ろした。

「アンジェラ、ソフィアが倒れたんだって?何があったんだい?」こうやって勢揃いをしているということは、思っていたよりも差し迫った状態なのかもしれない。

「母様は、娘を失ったショックで気を失ったんだ。いつかはと思っていたが、まさか今日とはな」エリックが言った。

「いったい、何を言っているんだ?」サミーはエリックに困惑した顔を向けた。

「ハニーが真実を告げたんだ」

「真実?」

「お前は――ったく、あきれてものも言えない。お前にとってハニーはたいそうかわいらしいお姫様に映っているんだろうが、忘れるな、ハニーは男だ」

「わかっているさ!ひと目見た時からアンジェラが男の子だってことを、僕が見抜いていたのを忘れないでもらえるかな?」今更なんだって、アンジェラが男だってことをかくに……ん――「まさか、言ったのか?」

アンジェラが申し訳なさそうな表情でこくりと頷く。

「でも、信じないだろう?だって、君は完璧な侯爵夫人だ」完璧は言い過ぎかもしれないが、アンジェラがその役目を立派にこなしていることは確かだ。それはソフィアも認めているはず。

エリックが短く息を吐く。「俺にもお前にもついているアレを見せたんだ。さすがの母様も認めないわけにいかないだろう」

サミーはアンジェラのアレについては想像しないように努めた。「それで倒れたのか……」

「ああ、マーサが事情を説明してくれたが、ぼんやりとして聞いているのかいないのかわからない状態だったそうだ」クリスが言った。

そうだろうとも。生まれてから十七年、娘だと思っていたのに実は息子だったと聞かされて、どんな顔で何を言えばいいっていうんだ。しかも、結婚までしている――男と。母親に知られた今、婚姻無効にでもする気だろうか?そうなったらアンジェラは悲しむどころではないだろう。

けど、僕に何ができる?

ここで下手に口出しすれば、隣に座る男に何を言われるかわかったもんじゃない。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

花嫁の秘密 目次 [花嫁の秘密 目次]

   花嫁の秘密 目次

    ・あらすじ 
     第一部 / 第二部 / 第三部 / 第四部 / 第五部 / 第六部 / 第九部


    第一部 (1~17)
     1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 

    番外編1 
     結婚へのカウントダウン 1 / 2 / 3 / 4

    第二部 (18~37)
     18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36
     37

    番外編2
     侯爵の憂鬱 

    第三部 (38~61)
     38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56
     57 58 59 60 61

    番外編3
     晩餐会に出席する人々

    第四部 (62~83)
     62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80
     81 82 83

    番外編4
     寝間着と誘惑の行方 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7

    第五部 (84~104)
     84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101
     102 103 104

    番外編5
     教えてクリス 1 / 2 / 3

    第六部 前半 (105~116)
     105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116

    番外編6
     ドレスの魔法 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 
     12 / 13 / 14 / 15

    第六部 後半 (117~126) 
     117 118 119 120 121 122 123 124 125 126

    番外編7
     悶々とするクリス 前編 / 後編

    第七部 (127~170)
     127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140
     141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154
     155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168
     169 170

    番外編8
     結婚記念日(8月3日) 1 / 2 / 3 / 4 / 5

    裏・花嫁の秘密
      1 - 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7
      2 - 1 / 2 / 3 / 4 / 5

    第八部 (171~207)
      171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184

    裏・花嫁の秘密
     3 - 1 / 2 / 3 / 4

    番外編9
     旅のお楽しみ 1 / 2 / 3

     185 186 187 188 189 190 191 192

    番外編10
     中途半端な男 前編 / 後編

     193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206
     207 

    裏・花嫁の秘密
     4 - 1 / 2 / 3

    番外編11
     悪いのはいったい誰? 

    第九部 (208~
     208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221
     222 223 224 225 226 227 228 229 
  
 花嫁の秘密 スピンオフ
   不器用な恋の進め方
    第一部 1 2 3 4 5 6 7 8 

    第二部 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 

    第三部 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 
         39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50  51 52 53 
         54 55 56 57 58 59 60 


web拍手 by FC2
 

Sの可愛い子犬 最終話 [Sの可愛い子犬]

<S&J探偵事務所>

「おいっ!依頼が全然来ないけど、ちゃんと宣伝しているのか?」
「はい、各紙に『依頼承ります』と載せているんですけど」
「はぁー、持ち込まれる依頼はすべてアルフレッド様の紹介じゃないか……」
「はい……」

ロンドンのアパートの一室で最近毎日かわされる会話だ。
ステフとジョンは大学を卒業し、今はロンドンで探偵業をしている。
アルフレッドに勧められて弁護士の道も考えたのだが、二人で自由にやって行きたいという事で結局断った。しかし、その恩には報いたいと二人は思い、弁護士の下請けのような仕事もかねて、探偵という職を選んだのだ。
探偵と言っても、今の所はそんなにややこしいものではなく、アルフレッドが受けた依頼の対象人物の素行調査や、一般人ではなかなか踏み込めない場所への調査などを行っている。
それでも少しでも自立をしたいと思い、自分たちで仕事を探しているもののなかなか依頼は舞い込んでこない。

「ジョン、今日も暇そうだから、そばに来いよ」ステフは客用ソファに寝ころび、請求書に渋面を作っているジョンを誘う。

ジョンは溜息を吐いて請求書を事務机に置くとやれやれといった様子で立ち上がった。こんなことではいつまで経っても仕事は増えないと思いながらも、身体はすでに反応している。

「はい、ステフ様」なるべく平静を装って返事をする。あまりに嬉しそうにすると、ステフに酷い目に遭わされる。本当に容赦ないんだ。

「おいっ、もう様はいらないって言ったろ!ステフでいいんだ。ちゃんと呼ばないと、かわいがってやらないぞ」ステフは口の端をあげてにやりと笑ってみせる。

もう何年もずっとステフ様と呼び続けていたのに、事務所の共同経営者になった途端呼び方を変えろなんて言われても、そうすぐに切り替えられるものではない。

でも、そんな些細なことでステフは子供みたいに喜ぶから、つい言う通りにしてしまう。

「はい、ステフ」

ジョンはソファの隙間を見つけてそこに座ると、手を伸ばしステフの頬に触れた。顔を近づけキスを落とす。
唇が触れ合った瞬間から、ステフは決して手加減しない。執拗に絡みつき吸い尽くす。ジョンがそれを望んでいるとわかっているから。

燃え上がる二人がキスだけで終わるはずはなく、上下を入れ替えてステフがジョンに圧し掛かる。ジョンの手を取り昂った自身に触れるように導くと、ステフもジョンのズボンの中に手を入れた。

「濡れてるな」

「そ、そんなこと――」

「ないって言うのか?」

ステフの挑発的な視線にジョンはかすれ声で言い返した。「ステフだって……」

「だからどうした?お前の中に入りたがってるんだから仕方ないだろ」

そう言われてしまえば、何も言い返せない。ジョンもこれが欲しくて、ここが事務所だってこともどうでもよくなっている。それでも鍵を閉めに行こうとするだけの理性がジョンにはあった。が、ステフにはそんなものはない。

ステフの熱く硬く大きなものと一緒に握られ、ジョンは快感に喘いだ。硬いのに肌触りはなめらかで質量の違いに驚かされるが、これがいつも自分の中にぴったりと納まると思うと余計に興奮する。

「あっ、あっ、ステフ……そんなに一気にしたら……あん……だめ」

絶妙な力加減で扱かれ早くも達しそうだ。我慢しなきゃと思うのに腰が勝手に動いてしまう。

「もっと、その顔を見せろ。いつ見てもかわいいな」

意地悪く微笑むステフは、今にも達しそうなジョンがそれを堪える姿に欲情する。

「本当に……もう、限界……ステフお願い……」

「いいよ、その顔……俺ももうイキそうだ……ジョン、いやらしくキスして」

無理。キスなんてしたら、一秒だって我慢できない。

ジョンの躊躇いなどお構いなしでステフが唇を押し付けてきた。強引に舌を差し込み、ジョンの口内を我が物顔で蹂躙する。

ジョンのすべてを知り尽くすステフは何をすればジョンが喜ぶのか知っている。そしてどうすれば自分の大好きな顔を見せてくれるのかを。きっとステフは目を開けて僕の顔をうっとりと眺めているはずだ。

薄目を開けてステフの顔を見返したかったけど、その前に限界が来てしまった。身体中が震え、あまりの快感にジョンは悲鳴をあげそうになった。きっと口を塞がれていなかったら通りまで聞こえるほどの叫び声をあげていただろう。

瞬間的にステフがジョンをぐっと抱き締めた。「ジョン――ッ」先に達したジョンの上でステフも脈打ち熱いものをほとばしらせた。

二人は抱き合ったまま、わずかな脱力感と身体中に次々と湧き上がる高揚感と余韻に浸った。

「ジョン、また俺より先にイったな……たっぷりお仕置きしてやるからな」

結局そのまま二人は上階の寝室へと向かい、今日も開店休業だ。

――S&J探偵事務所
どんな小さなことでも、困った事があればご依頼ください。承ります。

おわり


前へ<<


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2


nice!(0)  コメント(0) 

Sの可愛い子犬 28 [Sの可愛い子犬]

とにかく疲れていた。そして苛ついていた。

ステフは泥だらけのブーツを脱ぎ捨てベッドに身を投げ出した。帰り道、行きと同じようにジョンと話すことはなかった。アルフレッドと何を話したのか言う必要があったが、口を開けば余計なことまで言ってしまいそうで怖かった。弱い自分は見せたくない。

「ジョン入るぞっ」

ステフがジョンの部屋へ入ると石鹸の清潔な香りがした。ジョンは濡れた髪のまま、まるで行き倒れのようにシャツ一枚の姿でベッドに突っ伏していた。疲れているのはジョンも同じ。けど、汗と汚れを落とすだけの気力はあったようだ。剥き出しの白い脚を揉んでやろうか、それとも両足を押し広げ中にこの身を埋めようか。

ステフが近づくとジョンはのそりと起き上がり、ゆったりと微笑んだ。ずっと待っていたと言わんばかりの温かい笑みにステフの胸は締め付けられた。

アルフレッドにすべてを託した今、何も心配はいらないはずなのに、なぜそわそわと落ち着かないのだろう。ジョンはこんなにも落ち着いているというのに。

いや、理由ははっきりしていた。

スタンレー伯爵の屋敷にいたあの少年と並ぶジョンの姿が目に焼き付いていたからだ。庭の美しさなど興味もないし理解もできないが、あの場にいた二人はまるで一枚の風景画のようだった。きっとジョンと俺が並んでもああは見えないだろう。

ステフはベッドに飛び乗ると横になった。「ジョン、俺のを舐めろ」

ジョンは一瞬驚いた顔をしたが、いつものように傍らに膝をついた。ズボンに手をかけ、ステフのものを取り出すとそっと口に含んだ。

動きの鈍さにステフは顔を顰めた。いつもならジョンはもっと喜んでしゃぶりついていたはず。それを言うならステフのものはズボンの前を開けた瞬間飛び出していたはずだ。けれども、今はくったりと萎れたままで、ジョンがぴちゃぴちゃと舐めてもなかなか大きくならなかった。

気もそぞろでやる気がないのはステフの方で、ジョンは一生懸命に気持ちよくしようとしている。

「ステフ様……あの」

ジョンのその声にステフは顔を向けたが、ズボンをグイッとあげるとベッドから降りた。

「もういい。お前、したくなさそうだし……」違う。ジョンは悪くない。二人の未来がどうなるかわからない時でさえ、こんなことしかできない自分が嫌になっただけだ。こんな俺にジョンが愛想を尽かしたとしても仕方がない。

とにかくさっさと汗と一緒に汚れを洗い流してこよう。すっきりすればこの嫌な感情も余計な考えも消え去るはずだ。そうしたら、ジョンとゆっくり話をしよう。

ステフはぐちゃぐちゃな思考をジョンに悟られまいと、顔をそむけたまま部屋を出て行こうとした。するとジョンが突然背後から飛びかかってきた。腰に腕をまわし縋りつく。

「ちょっ!」

「ごめんなさい、ちゃんと気持ちよくしますから。僕ちゃんと――」

そうじゃない!そうじゃないのに……ジョンが悪いわけじゃない。けど――

「嫌なんだろっ!舐めろって言ったら躊躇っただろ!どうせ、俺は貴族じゃないし……お前は貴族で、あいつの方が俺より一緒にいて似合ってた――」

しがみつくジョンを振りほどきたいのに、気づいたらしっかりとその腕を掴んでいた。離せるわけないってわかってる。

ステフの目から涙がこぼれ落ちる。ジョンの前では強くありたい。こんなみじめな姿を見せたくない。

「ステフ……さ、ま?」膝を折っていたジョンが恐る恐る立ち上がって、前を覗き込む。見上げて驚き、前に回ると少し背伸びをしてステフの目元に唇を寄せた。ぺろぺろと涙をぬぐい、そのまま唇にキスをした。

「お前しょっぱい……」ステフは笑って、そのままジョンを抱きしめた。

「ステフ様、好きです。僕はただのジョンで、将来はステフ様と共にあります。少し躊躇ったのは、その……キスしたかったからです。ずっとしたかったんです」

「お前、相変わらずかわいい事言うな。俺もお前の事好きだからな」

ジョンは一瞬きょとんとしていたが、次の瞬間には溢れるほどの笑顔になっていた。

「ステフ様、初めて僕の事好きって言ってくれました」

なんだって?何度もジョンのことを好きだと言っているのに、初めてってことはないだろ。俺はジョンが涙目で喘ぐ姿も、イクのを我慢して悶えてる姿も好きだと飽きるほど言ったと思うが……。

まあ、こいつがこんなに喜んでいるならいいか。ついでに泣かせてやるか。

***

それから一気にいろんな出来事が起こった。
ステフ達がロンドンに行く間もなく、アストンの悪事が暴かれ、逃げる様に国外へ出た。
アストン夫人はもともと自由な人でさっさと離婚し、今はカリブ海の島でのんびりと過ごしているらしい。

ステフは今ジョンといる。
ステフの母親の弟に引き取られた形になっている。
アストンは自分が父親ではないと知っていた。婚約者から奪う形で結婚した妻を心底愛していたのだ。だからステフを愛するのは当然で、将来の為に大事な息子を手放す決断もした。そんなアストンをステフは変わらず父親だと思う事にした。

アストンが売り払ったホワイトヒルの屋敷とその周辺の土地は、スタンレー伯爵が買い取っていた。将来的にはジョンの兄、現コッパー子爵が受け継ぐことになるだろう。

スタンレー伯爵はジョンの兄にも援助し、ジョンとステフは今ホワイトヒルの屋敷で暮らしている。

以前いた使用人はすべて解雇され、スタンレー伯爵家の有能な執事によって新しい使用人が揃えられた。
二人の将来は、アルフレッドに一任されている。

アルフレッドは法律家にならないかと勧めてくれたが、返事は先送りにした。
今はスタンレー家の屋敷を管理しながら、しっかりとした教育を受けている。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。