はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 231 [花嫁の秘密]

問題解決を先送りにしたまま、一同は一旦解散した。

そのタイミングで長い昼寝から目覚めたセシルがやって来たため、アンジェラとマーサは状況説明のために応接室に残った。

クリスは書斎へ行き、エリックは部屋に戻るサミーの後を追い、扉が閉じられる前に中へ滑り込んだ。

「お前、ハニーとクリスが別れればいいと思ったんじゃないのか?」サミーの背に向かって言う。

「は?冗談でもそういうことを言うのはやめて欲しいね。僕はアンジェラの幸せを誰よりも願っている」サミーはエリックを見もせず肩越しに言い返し、上着を脱いでベッドに放った。

まったく、忌々しい男だ。自分で聞いておいて馬鹿みたいだが、こいつがハニーのことを何より大切にしていることを忘れていた。

「まあ、いいさ。とにかく母様は真実を知ってしまった。もう、クリスマスパーティーどころじゃないな。さて、どうするか……」こうなったら例の計画を早めるか。

「ロジャーには知らせたのか?」
ようやくこちらを向いた。その表情から心底アンジェラを気遣っているのがうかがえ、エリックは苛立たしげに指先を太腿に打ちつけた。

「使いをやったから、すぐに知ることになるだろうな。結婚に影響がなければいいが」

「あの婚約者なら真実を知っても平気じゃないかな?それよりも、もしかして例の計画への影響を考えているのか?君って人は」サミーは呆れた口調でそう言うと、椅子の背に掛けてあったウールケットを手に暖炉のそばに寄った。

「なんだ?ハニーを守るためにお前も計画を進めているんだろう?」エリックはサミーの背を抱き「寒いなら暖めてやってもいいぞ」と耳元で囁いた。

サミーは数日前から風邪をひいているようで、出掛けていないときはずっと火のそばにいる。出掛けずにじっとしていればいいものを、休めと言っても聞きやしない。領地の問題はクリスに任せておけばいいし、ハニーのことは俺に任せておけばいい。とはいえ、もう仕掛けた後だ引き下がれないのだろう。

「君がこんなにべたべたするタイプだとは思わなかった。僕は一人になりたいんだ、出て行ってくれるかな?」サミーはそう言いながらも、エリックの腕を払い退けたりはしなかった。

諦めているのか、体調がいよいよ悪いのか、後者だとしたらしばらくベッドに縛り付けておかなければならないだろう。何もせずにいられる自信はないが、暖めてやることはできる。

「まあ、いいから座れ」エリックはサミーをソファに座らせると、自分も近くの椅子に腰かけた。本当はサミーに勝手をさせたくないが――こいつはいつだって勝手をする――だからこそ、せめて計画をすり合わせておく必要がある。いや、サミーに手を出させないためにこいつが俺のものだと奴らに知らせておく必要がある。

「クリスは数日でラムズデンの問題を片付ける気でいるが、無理だと思わないか?」サミーは袖口に手をやり大粒のサファイアが埋め込まれたカフスを外すと、サイドテーブルに無造作に置いた。「行き帰りだけで何日かかると思っているんだか」

「クリスが戻ってこない方がお前には都合がいいんじゃないのか?」

「僕はすることがあるし、アンジェラを一人にするのは心配だよ」

こいつには心底苛々させられる。頭の中は常に人のものになった愛しい人のことでいっぱいで、こっちがどれだけ心を向けても、まるで気に留めやしない。

「メグがいるから平気だ。何のために俺がメグをハニーの侍女に推したと思っているんだ」

「はいはい、すべて計画通りね」サミーは適当に言葉を返し、目を閉じた。

「そうだ、すべて計画通りだ。だからお前は計画の邪魔をするな」

「また、その話かい?僕は僕の好きにするって言っただろう」

「クリスマス、ロンドンへ出るぞ」

「君は人の話を聞いているのか?クリスマスはここで過ごす」

エリックはサミーの言葉を無視した。「たぶん、母様はアップル・ゲートへ戻る。気力があればロジャーのところへ行くかもしれないが、無理だろうな。まあ、セシルも邪魔だし恋人のところへでも行ってもらうか。ここはハニーとクリス二人にしてやれ。しばらく離れることになるんだからな」

サミーはゆっくりと目を開き、軽蔑するような視線をエリックに向けた。

「君は本当に嫌な奴だな。僕がどういう気持ちになるかなんてお構いなしで、そういうことを平気で言う。だいたいなぜ僕が君とクリスマスを一緒に過ごさないといけないんだ?」

「いくつか招待されている催しがある。顔を出しておいて損はない。ついでに<プルートス>に行こう」

「ついで?それが目的だろう?」

<プルートス>はあらゆる娯楽を提供する紳士クラブのうちのひとつで、メンバーの顔触れはあまり上品とは言えない。そこに出入りするエリックとサミーの評価も世間的にはそんなものだ。女優と付き合っていた(ことになっている)伯爵家次男に、兄の元恋人と付き合っている(ことになっている)侯爵家次男。

世間の噂などひとつも当てにならないという証明にもなっている。

つづく


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