はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 230 [花嫁の秘密]
夕方、お茶の時間に少し遅れて屋敷へ戻ったサミーは、邸内の様子がおかしい事にすぐに気付いた。これといって何か変化がみられたわけではなかったが、外の寒さ同様、身体が芯から冷えるような何かが起こった事は疑いようがなかった。
「ダグラス、僕がいない間に何かあった?」サミーは分厚いコートを脱ぎながら尋ねた。
ダグラスはそれを受け取りながら「レディ・ラウンズベリーがお倒れに」といたって簡潔に述べた。
想定外の答えに、さすがにサミーは驚き「なんだって?」と声をあげたが、ダグラスのあまりに落ち着き払った表情に、問題はそこではないのだと感じた。
「レディ・ラウンズベリーは現在お部屋で休まれております。念の為、ドクターにも来ていただきましたので、ご安心ください」
ドクターねぇ……。あのよぼよぼのじいさんをこの寒いなか呼んだのか?それなら、ソフィアの心配よりもドクターの心配をした方がよさそうだ。
「そう。で、みんなはどこ?」
「応接室にいらっしゃいます」ダグラスが玄関広間の奥に向かって歩き出す。
「そっちの応接室か。いい、勝手に行くから。それより、実は帽子をぬかるみに落としてしまって、それはもうひどい有様なんだよ」そう言って、サミーは玄関の向こうを指差した。「クリスマスの飾りつけと一緒に外の木に掛けておいたんだ。アンジェラは怒るかな?」
たぶん、少しは怒るだろう。真っ白な肌の、ほっぺただけを赤くして。
サミーは愉快な笑い声をあげ、応接室の扉を開けた。
部屋の中は思ったよりも暖かだった。
しかし、サミーに向けられた視線のいくつかは想像よりも遥かに冷ややかだった。
「サミー、早く扉を閉めろ」面白いことなどひとつもないといった顔つきでクリスが言った。
「まったく、何がそんなに愉快なんだ?さっさとここへ来て座れ」エリックは自分の隣の席をぽんぽんと叩き傍に座るように命じた。
幸いなことにアンジェラとマーサは何も言わなかった。確かに不謹慎だった。ダグラスの様子から心配するほどではないにしても、ソフィアが倒れたと聞かされたばかりなのに。アンジェラはさぞ心を痛めているだろう。
サミーは扉をぴたりと閉じ、従順にもエリックの横に腰を下ろした。
「アンジェラ、ソフィアが倒れたんだって?何があったんだい?」こうやって勢揃いをしているということは、思っていたよりも差し迫った状態なのかもしれない。
「母様は、娘を失ったショックで気を失ったんだ。いつかはと思っていたが、まさか今日とはな」エリックが言った。
「いったい、何を言っているんだ?」サミーはエリックに困惑した顔を向けた。
「ハニーが真実を告げたんだ」
「真実?」
「お前は――ったく、あきれてものも言えない。お前にとってハニーはたいそうかわいらしいお姫様に映っているんだろうが、忘れるな、ハニーは男だ」
「わかっているさ!ひと目見た時からアンジェラが男の子だってことを、僕が見抜いていたのを忘れないでもらえるかな?」今更なんだって、アンジェラが男だってことをかくに……ん――「まさか、言ったのか?」
アンジェラが申し訳なさそうな表情でこくりと頷く。
「でも、信じないだろう?だって、君は完璧な侯爵夫人だ」完璧は言い過ぎかもしれないが、アンジェラがその役目を立派にこなしていることは確かだ。それはソフィアも認めているはず。
エリックが短く息を吐く。「俺にもお前にもついているアレを見せたんだ。さすがの母様も認めないわけにいかないだろう」
サミーはアンジェラのアレについては想像しないように努めた。「それで倒れたのか……」
「ああ、マーサが事情を説明してくれたが、ぼんやりとして聞いているのかいないのかわからない状態だったそうだ」クリスが言った。
そうだろうとも。生まれてから十七年、娘だと思っていたのに実は息子だったと聞かされて、どんな顔で何を言えばいいっていうんだ。しかも、結婚までしている――男と。母親に知られた今、婚姻無効にでもする気だろうか?そうなったらアンジェラは悲しむどころではないだろう。
けど、僕に何ができる?
ここで下手に口出しすれば、隣に座る男に何を言われるかわかったもんじゃない。
つづく
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「ダグラス、僕がいない間に何かあった?」サミーは分厚いコートを脱ぎながら尋ねた。
ダグラスはそれを受け取りながら「レディ・ラウンズベリーがお倒れに」といたって簡潔に述べた。
想定外の答えに、さすがにサミーは驚き「なんだって?」と声をあげたが、ダグラスのあまりに落ち着き払った表情に、問題はそこではないのだと感じた。
「レディ・ラウンズベリーは現在お部屋で休まれております。念の為、ドクターにも来ていただきましたので、ご安心ください」
ドクターねぇ……。あのよぼよぼのじいさんをこの寒いなか呼んだのか?それなら、ソフィアの心配よりもドクターの心配をした方がよさそうだ。
「そう。で、みんなはどこ?」
「応接室にいらっしゃいます」ダグラスが玄関広間の奥に向かって歩き出す。
「そっちの応接室か。いい、勝手に行くから。それより、実は帽子をぬかるみに落としてしまって、それはもうひどい有様なんだよ」そう言って、サミーは玄関の向こうを指差した。「クリスマスの飾りつけと一緒に外の木に掛けておいたんだ。アンジェラは怒るかな?」
たぶん、少しは怒るだろう。真っ白な肌の、ほっぺただけを赤くして。
サミーは愉快な笑い声をあげ、応接室の扉を開けた。
部屋の中は思ったよりも暖かだった。
しかし、サミーに向けられた視線のいくつかは想像よりも遥かに冷ややかだった。
「サミー、早く扉を閉めろ」面白いことなどひとつもないといった顔つきでクリスが言った。
「まったく、何がそんなに愉快なんだ?さっさとここへ来て座れ」エリックは自分の隣の席をぽんぽんと叩き傍に座るように命じた。
幸いなことにアンジェラとマーサは何も言わなかった。確かに不謹慎だった。ダグラスの様子から心配するほどではないにしても、ソフィアが倒れたと聞かされたばかりなのに。アンジェラはさぞ心を痛めているだろう。
サミーは扉をぴたりと閉じ、従順にもエリックの横に腰を下ろした。
「アンジェラ、ソフィアが倒れたんだって?何があったんだい?」こうやって勢揃いをしているということは、思っていたよりも差し迫った状態なのかもしれない。
「母様は、娘を失ったショックで気を失ったんだ。いつかはと思っていたが、まさか今日とはな」エリックが言った。
「いったい、何を言っているんだ?」サミーはエリックに困惑した顔を向けた。
「ハニーが真実を告げたんだ」
「真実?」
「お前は――ったく、あきれてものも言えない。お前にとってハニーはたいそうかわいらしいお姫様に映っているんだろうが、忘れるな、ハニーは男だ」
「わかっているさ!ひと目見た時からアンジェラが男の子だってことを、僕が見抜いていたのを忘れないでもらえるかな?」今更なんだって、アンジェラが男だってことをかくに……ん――「まさか、言ったのか?」
アンジェラが申し訳なさそうな表情でこくりと頷く。
「でも、信じないだろう?だって、君は完璧な侯爵夫人だ」完璧は言い過ぎかもしれないが、アンジェラがその役目を立派にこなしていることは確かだ。それはソフィアも認めているはず。
エリックが短く息を吐く。「俺にもお前にもついているアレを見せたんだ。さすがの母様も認めないわけにいかないだろう」
サミーはアンジェラのアレについては想像しないように努めた。「それで倒れたのか……」
「ああ、マーサが事情を説明してくれたが、ぼんやりとして聞いているのかいないのかわからない状態だったそうだ」クリスが言った。
そうだろうとも。生まれてから十七年、娘だと思っていたのに実は息子だったと聞かされて、どんな顔で何を言えばいいっていうんだ。しかも、結婚までしている――男と。母親に知られた今、婚姻無効にでもする気だろうか?そうなったらアンジェラは悲しむどころではないだろう。
けど、僕に何ができる?
ここで下手に口出しすれば、隣に座る男に何を言われるかわかったもんじゃない。
つづく
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2022-09-23 11:21
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