はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 229 [花嫁の秘密]

「マーサ!気付け薬を」そう叫んだのはクリス。

「いいえ、旦那様。このままソフィア様には少しの間気を失っていてもらった方がよろしいかと――」と言ったのは、マーサ。

アンジェラはぼんやりと立ちつくしたまま、囁くように言った。
「クリスマスの贈り物には相応しくないわよね」

「ええ、ええ。本当ですよ」マーサは小ぶりのクッションをソフィアの頭の後ろに添え、それからアンジェラの傍にやって来た。「お嬢様も、さあ座ってくださいな。温かいココアを持って来させましょうね」

アンジェラはぽろぽろと大粒の涙を零し、マーサの優しい言葉にただ頷くことしかできなかった。

クリスがいつのまにか傍に来ていて、アンジェラの手を取りながら横に座った。アンジェラはゆっくりと身体を傾げ、クリスに寄りかかった。

「我慢できなくて……このままだとお母様は何年も何十年も、わたしのお腹が大きくなるのを待つことになるわ」

「ハニー、落ち着いて。大丈夫だから」
クリスはアンジェラの肩を抱き、こめかみにキスをする。優しく腕を擦り、アンジェラの興奮を鎮めていく。

しばらくして、マーサがココアの入ったポットを手に部屋へ戻ってきた。

カップを受け取ったアンジェラは、幾分落ち着いた調子でゆっくりと口をつけた。喉に心地よい温度のココアはまるで鎮静作用があるようだとアンジェラは思った。

それとも鎮静作用があるのは、隣で優しく肩を抱いてくれているクリスなのかもしれない。

クリスとは反対側に腰をおろしたマーサは「さて、どうしましょうかね?」と言い大きく息を吐いた。

二人が傍にいてくれたら、どんな問題でも解決できるに違いない。それがたとえ、母に真実を告げてしまったという難題だとしても。

「ショックついでに、すべてを打ち明けた方がいいと思うが」とクリスが言う。

「すべてというのは、旦那様がお嬢様を男だと承知で婚姻関係を継続しているということも、ということですか?」マーサもなかなかズバリ言う。

「ああ、そうだ。知っている人物がどれだけいるのかを把握しておいた方がいいだろう、今後の為にも」

「ええ、そうでしょうね。来シーズンも社交場へ出なければならないのですから――」マーサは不満顔だ。だがロジャーの頼みでクリスが渋々承諾した経緯を知っているからか、それ以上は何も言わなかった。

「ロジャーの結婚で、親族が増えるわけだし、秘密を守って行くうえで、これ以上ソフィアを欺けないと思うが?それに、顔を合わせるたびにハニーが子供の事を聞かれるのは耐えられない」

優しいクリス。アンジェラは頼もしい夫に、感謝に満ちた眼差しを向けた。
「いつもは平気だったのに、今日のお母さまはいつもと違ってて、もう嘘をつくのが苦しくて、どうしようもなくて、それで、つい、わたしは男なのよって」

「ソフィア様は信じませんでしたけどね」マーサはやれやれといった感じだ。

「信じなかったのに、なぜ気を失った?」クリスが不思議そうに問う。

「お嬢様がドレスの裾を持ち上げたんですよ」マーサはその時見えたものを思い出したのか、顔を顰め頭を左右にぶんぶんと振った。「わたしももう少しで気を失いそうでしたけどね」と付け加え、真っ赤になっているアンジェラに咎めるような視線を向けた。

「そ、それは、思い切った事をしたな――」そう言ってクリスは堪らず吹き出した。

「笑い事じゃないわ」と言ったものの、次の瞬間にはアンジェラも笑い声を漏らしていた。

つづく


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