はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

溺れるほど愛は遠のく 2 [溺れるほど愛は遠のく]

昼休みになり、隣の教室から陸がやってきた。これから一緒に学食へ向かうのだ。

今朝はコウタが弁当作りを渋ったので、朋ちゃんがランチ代を快く提供してくれたのだ。

「なあ、海。一年が通っちゃダメな場所があるって知ってた?」
陸がため息交じりに訊いてきた。すでにダメな場所を通って、すこぶる嫌な思いをしたといった口調だ。

「知ってるよ。花村が全部教えてくれたから」
この学校は思ったよりも危険なのだ。だいたい陸は、中等部の頃すでにこの校舎でとんでもない目に遭っている。応接室に引きずり込まれ、手と口を封じられ犯されたのだ。現在の彼氏に。

なんて馬鹿馬鹿しい出会いだ。それが運命の出会いになるなんてお互いに思わなかっただろう。

「なんで教えてくれなかったの?俺知らなくてさ、うっかり四階のトイレの前通っちゃったよ」

「まじで?ってゆーか、知らないと思わなかった。ユーリは教えてくれなかったの?」
どうせ知らなくても、ユーリの男に手出しするような奴はこの学校にはいない。ということは、同じ顏の海も安全という事だ。

「教えてくれたよ。今日。それまで何回か普通に通ったし」

「まあ、あの階段自体二階以上あがらない方がいいけどね。三階が安全な訳じゃないし」

「この学校って、金持ちエリート学校じゃなかったの?学校にそんな危険が潜んでるなんて誰も思わないよ」陸はぷりぷりと怒りながら言った。

「あははっ。金持ちエリート学校だったら、そもそも俺たちここにいないよ。それにさ、そういうやつらこそ、ストレス溜まるんじゃない?ああ、あとさ。食堂にも座っちゃダメな場所とかあるから、気を付けた方がいいって、花村が」

そう。俺たちがこの学校に通えているのは自分たちの能力とは無関係だ。迫田家は特に金持ちでもないし、勉強だってコウタよりもマシなだけで、聖文や朋に比べるとそこそこといった感じだ。

食堂に着き、いちおう座れそうな場所に目を配っていたが、ユーリの元セフレ、ハルに声を掛けられその心配はなくなった。そのうちユーリも合流して、楽しいランチタイム――になるはずがない。

海自身は楽しかったのだが――ハルともなんとなく気が合ったし――陸の方が奇妙な組み合わせのランチには不満だったようで、最終的には不貞腐れて食堂を飛び出していったのだ。まあ、原因は明らかで、ユーリが去年ハルから貰った誕生日プレゼントを後生大事に肌身離さず持っていたからだ。携帯電話のストラップなので、そういう結果になっただけなのだが。

「あの、クソ馬鹿っ!」ユーリが逃げ去る陸の背にそこそこ大きな声で悪態を吐いた。

「まあ、ユーリが完璧悪いけどね」

「うるさいっ!クソガキが」

ほらね。俺には愛情のひとかけらもこもっていない。まあ、ユーリからの愛情なんか一ミリだって欲しくないけどね。
海はそもそもの原因であるハルを見やり「いまのわざとでしょ?」と意地悪げに問いかけた。

「そうだよ。仲の良い二人にちょっとしたプレゼントだよ」無邪気な笑みを浮かべるハル。

「ハル、てめぇ――犯されたいのか?」

「いつでもどうぞ」そう言ったハルは、先ほどの無邪気さが一瞬にして消え、なんとも艶めかしい顔つきに変わった。まだ、ユーリを好きなのだろうか?食事中の会話から察した所では、どうやらハルは実の兄――学校のすぐ近くでカフェをしている――と出来ているようだと思ったが、勘違いだったのかな。

「俺、もう行くからね」と海はランチトレイを手に立ち上がる。

「さっさと行け」とユーリ。

「またね」とハルはにこりと笑った。

「じゃあね、ハル。いつかまたランチ一緒にしような」海はそう言って食堂を後にした。

おそらくもうここに来る事はないだろう。やっぱりコウタの弁当を教室で食べるのが一番だ。

つづく


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