はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

溺れるほど愛は遠のく 3 [溺れるほど愛は遠のく]

食堂を出て、教室へ戻る道すがら、海は花村の情報収集の現場を見掛けた。あの大きな体で案外堂々とネタ集めをしていることに驚きつつ、思い直して、昼休憩の残りを過ごすために中庭へ向かった。雨ざらしで薄汚れたベンチに腰掛け、携帯電話を取り出した。

朝、知らない番号から着信があった。鞄の中に入れていたため着信には気付かず、電話には出られなかった。着信時刻は七時五十五分。ちょうど家を出たくらいの時間だ。

いったい誰だろう?
ただの間違い電話か、知り合いの誰かか。どう考えても、朝早くに電話を掛けてくる人物には心当たりがない。

海は思い切って、その番号に電話を掛けてみることにした。

その時、嫌な予感がしたといえばそんな気がしないでもない。だが、実際は何も考えていなかったに違いない。

コール音が鳴るだけで相手は電話に出ない。留守電にもならない。

お前が掛けてきたくせにと、海はふんっと鼻を鳴らし、意地でも相手が出るまで待とうとねばった。
すると、十何回目のコール音の途中で、やっと電話が繋がった。

ざまあみろと海は内心思いながら、自分の粘り強さを褒め称えた。

『もしもし?』

そっちが最初に掛けてきたくせに、いかにも何か御用でしょうかみたいな口調は腹が立つ。

「もしもし?電話貰ったんですけど?」強めの口調で言い返す。

『楓はいま電話に出られなくて――』

そこで男が何かに気付いたようにハッとして、喋るのをやめた。

それと同時に、海もあることに気づき、思わず電話を切っていた。
いまいったいなにが起こったのだろうかと、手の中の携帯電話をじっと見おろす。

あいつだ。あいつが電話に出た。しかも自分のケータイじゃなくて、楓ってやつのケータイなのに。

海はベンチの上に足を乗せ、膝を抱え、まるで痛みから身を守るように身体を丸めた。
けれどそんなものではどうにもならなかった。忘れていた――忘れようと封印していた記憶が脳内にどっと溢れ出し、海は混乱し、カタカタと身を震わせた。

「海?大丈夫?」

頭上から声が聞こえ、海はゆっくりと顔を上げた。いつのまにか陽は雲に隠れ、心配する花村の顔がぼんやりと霞む海の目に映った。

「大丈夫。そっちこそ、偵察は終わったのか?」

「うん、まあね」そう言って花村は海の横に座った。「海が大丈夫って言うなら、大丈夫なんだろうな。まあでも――」と言い掛けたまま花村は口を閉じた。最後まで言わないのが花村流の気遣いなのだろう。まったく余計な御世話だ。

そんな花村に、海は力尽きたように目を閉じ寄り掛かった。

つづく


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