はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
溺れるほど愛は遠のく 4 [溺れるほど愛は遠のく]
「なあ、花村。俺の頼み聞いてくれる?」
海は頭を花村の腕にあずけたまま、呟くように言った。
海の急なひと言にも、花村は忠犬よろしく「何?」とすぐさま訊き返す。
「五時限目、さぼらない?」
花村は一瞬の迷いもなく「いいよ」と返事をした。
こいつは何も考えていないのか、本当に俺の下僕にでもなったつもりなのか……。
「嘘。次テストだもんね。内容分かる?教えて」
ぐちゃぐちゃと乱れた心の中を探られないように、海はいつもの軽い調子を装った。
こういうとき期待を裏切らないのが花村だ。いつもとは明らかに違う海の姿にまるで気づかない振りを決め込み、まずはテストの範囲から喋り始めた。
「ちょっ、待て。教室の戻ってからにしようよ。いま言われてもわかんないじゃん」
自分で教えてと言っておきながらダメ出しをする海。それでも花村は「あ、ごめん」と謝るだけだ。
こんな花村に甘えたくなるなんて、やはり最近の俺は情緒不安定なのだろうか。
恥ずかしげもなく「おんぶして」と子供みたいなことを口にしても、花村は言い付け通り背負ってくれる。そのまま他の生徒たちの目なんか気にすることなく、ふたりは二階の自分たちの教室へ戻っていった。
途中、海はユーリにその姿を見られた気がしたが、陸と間違えてやきもきすればいいのにと意地悪な事を思っただけだった。
教室へ入ると早速、吉沢と須山が血相を変えて寄って来た。
「海、どうした?」心底心配そうなのは須山。
「花村、お前海に何したんだっ!」
吉沢は偉そうに怒声をあげ、白馬の騎士気取りで海を花村の背から引きずりおろそうとした。
「触るなっ!」
まったく図々しい男だ。海は吉沢を激しく拒絶した。
花村は威嚇するように喉の奥を唸らせながら、海を吉沢から庇うようにしてゆっくりとおろし椅子に座らせた。
「ちぇっ、冷たいな」とこぼす吉沢など無視して、海は机から英語の教科書を取り出した。
海に冷たくされ、吉沢は諦めたようにふらふらとどこかへ行ってしまったが、須山の方は机に手をつき前かがみで顔を覗き込んできた。
何を言うでもなくじっと顔を覗き込んでくる須山にもどかしくなり、海は「何さっ!」と須山を仰ぎ見た。
須山は驚くほど近くに居た。覗き込んでいたのだから当たり前だが、鼻先がもう少しで触れ合う所だった。迂闊にもドキドキしてしまったことを悟られないように、あたふたと自分から目を逸らすようなことはしなかった。
いま思えば、たぶん、それがいけなかったのだろう。
恩知らずにも、ここまで運んでくれた花村の事など綺麗さっぱり忘れ、海は、午後のほとんどを須山と過ごすこととなった。
つづく
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海は頭を花村の腕にあずけたまま、呟くように言った。
海の急なひと言にも、花村は忠犬よろしく「何?」とすぐさま訊き返す。
「五時限目、さぼらない?」
花村は一瞬の迷いもなく「いいよ」と返事をした。
こいつは何も考えていないのか、本当に俺の下僕にでもなったつもりなのか……。
「嘘。次テストだもんね。内容分かる?教えて」
ぐちゃぐちゃと乱れた心の中を探られないように、海はいつもの軽い調子を装った。
こういうとき期待を裏切らないのが花村だ。いつもとは明らかに違う海の姿にまるで気づかない振りを決め込み、まずはテストの範囲から喋り始めた。
「ちょっ、待て。教室の戻ってからにしようよ。いま言われてもわかんないじゃん」
自分で教えてと言っておきながらダメ出しをする海。それでも花村は「あ、ごめん」と謝るだけだ。
こんな花村に甘えたくなるなんて、やはり最近の俺は情緒不安定なのだろうか。
恥ずかしげもなく「おんぶして」と子供みたいなことを口にしても、花村は言い付け通り背負ってくれる。そのまま他の生徒たちの目なんか気にすることなく、ふたりは二階の自分たちの教室へ戻っていった。
途中、海はユーリにその姿を見られた気がしたが、陸と間違えてやきもきすればいいのにと意地悪な事を思っただけだった。
教室へ入ると早速、吉沢と須山が血相を変えて寄って来た。
「海、どうした?」心底心配そうなのは須山。
「花村、お前海に何したんだっ!」
吉沢は偉そうに怒声をあげ、白馬の騎士気取りで海を花村の背から引きずりおろそうとした。
「触るなっ!」
まったく図々しい男だ。海は吉沢を激しく拒絶した。
花村は威嚇するように喉の奥を唸らせながら、海を吉沢から庇うようにしてゆっくりとおろし椅子に座らせた。
「ちぇっ、冷たいな」とこぼす吉沢など無視して、海は机から英語の教科書を取り出した。
海に冷たくされ、吉沢は諦めたようにふらふらとどこかへ行ってしまったが、須山の方は机に手をつき前かがみで顔を覗き込んできた。
何を言うでもなくじっと顔を覗き込んでくる須山にもどかしくなり、海は「何さっ!」と須山を仰ぎ見た。
須山は驚くほど近くに居た。覗き込んでいたのだから当たり前だが、鼻先がもう少しで触れ合う所だった。迂闊にもドキドキしてしまったことを悟られないように、あたふたと自分から目を逸らすようなことはしなかった。
いま思えば、たぶん、それがいけなかったのだろう。
恩知らずにも、ここまで運んでくれた花村の事など綺麗さっぱり忘れ、海は、午後のほとんどを須山と過ごすこととなった。
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2012-10-13 09:19
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