はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
溺れるほど愛は遠のく 5 [溺れるほど愛は遠のく]
花村は頼めば何でも言う事を聞いてくれるが、須山はなにも言わなくても察してくれる。
実際、海がそれを望んだのかどうかは分からないが、放課後、須山の家までやってきたということは、そういうことなのだろう。
「遊んでるだろ?」
ついそう言ってしまったのは、須山のキスが上手すぎたからだ。いや、キスそのものと言うよりも、そこまでのもっていきかたが、あまりに自然だったからかもしれない。
まったく。
朋ちゃんみたいな綺麗な顔でキスまで上手かったら、なにも俺なんかにちょっかい出さなくてもいいじゃん。
「それ、よく言われるんだよね」
『よく言われる』と言った時点で、遊んでいると肯定したようなものだ。
なんだか急に熱が冷めた。いいように遊ばれるのだけは二度とごめんだ。
「俺、帰る」
「なんで?帰るなよ」
そう言って須山は、海を座っていたベッドに素早く押し倒した。
こういう強引なのは嫌いだ。これまでどんな行為も無理強いされた事はない。遊ばれていた時でさえ、自らそうしたいと思ったことしかしなかった。
「離せっ」と多少もがいてみるが、須山は引き下がりそうにもない。
仕方がない。花村の力を借りるか。
海は鋭い目つきで須山を睨みつけ「これ以上俺に触れたらお前の秘密をばらすぞ」と脅しをかけた。
「秘密?花村に聞いたの?あいつ、クラス全員――いや、学校中、ネタになりそうなことは何でも探ってくるからな。だから嫌われるんだ」
「俺は嫌ってないからな」
「海のそういうところが結構好きなんだよな」
キスをしてこようとする須山をかわし、驚くほど軽い告白に反論する。
「へえ、お前俺の事好きなのか?いつから?」
なぜか動揺し声が震える。
「それがさ、不思議なんだけど、俺にしては珍しくひと目惚れなんだよね」
「俺さ、ひと目惚れだけは信用しない事にしてるんだ。だから、お前とは何もしない」
「そう言うなよ。本気なんだからさ。どうやったら信用してくれる?」
絶対信用しない。一言一言が軽すぎる。真実味の欠片さえない。
それが無性に腹立たしかった。
「お前の暇つぶしに付き合うつもりはない。でも、まあ、そうだな――お前が坊主にでもしたら、信用してやってもいい」そう言うと、海は力いっぱい須山を押しのけた。素早く起き上がり、鞄を手に一目散に逃げ出した。
こういう場合、逃げるが勝ちだ。
外に出ると、門扉からこちらを覗き見ている花村が見えた。
あいつ、俺まで偵察しているのか?
海はそこそこ怒っているといった顔つきで花村に近づいて行った。門の外に出て、自転車の前かごに鞄を投げ入れ、花村を睨むように見上げた。
「俺の何が知りたい?」
「あ、いや、ごめん海」
普段ならもっと怒っているだろう。けど今日に限っては、この場に花村がいて助かった。
「帰るぞ」
歩きの花村に合わせて、自転車には乗らずに押して歩く。
「うん」と言った花村は、その場を動こうとはせず、何か訊きたそうな顔でもじもじとしている。大男がもじもじする姿ほどみっともないものはない。海は立ち止まり「言いたいことあるなら言えよ」と苛々と言った。
花村はのろのろと海の傍まで来て「あいつと何かしたの?」と親指の爪を弾きながら尋ねた。
「それ、お前に報告する義務ある?キスしたって言ったら、お前のネタのひとつにでも加わるのか?」
「キス、したの?」
なぜ、花村は泣きそうなのだろうか。
「お前、俺の事好きなの?」
海の問いかけに、花村は無言で頷いただけだった。
つづく
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実際、海がそれを望んだのかどうかは分からないが、放課後、須山の家までやってきたということは、そういうことなのだろう。
「遊んでるだろ?」
ついそう言ってしまったのは、須山のキスが上手すぎたからだ。いや、キスそのものと言うよりも、そこまでのもっていきかたが、あまりに自然だったからかもしれない。
まったく。
朋ちゃんみたいな綺麗な顔でキスまで上手かったら、なにも俺なんかにちょっかい出さなくてもいいじゃん。
「それ、よく言われるんだよね」
『よく言われる』と言った時点で、遊んでいると肯定したようなものだ。
なんだか急に熱が冷めた。いいように遊ばれるのだけは二度とごめんだ。
「俺、帰る」
「なんで?帰るなよ」
そう言って須山は、海を座っていたベッドに素早く押し倒した。
こういう強引なのは嫌いだ。これまでどんな行為も無理強いされた事はない。遊ばれていた時でさえ、自らそうしたいと思ったことしかしなかった。
「離せっ」と多少もがいてみるが、須山は引き下がりそうにもない。
仕方がない。花村の力を借りるか。
海は鋭い目つきで須山を睨みつけ「これ以上俺に触れたらお前の秘密をばらすぞ」と脅しをかけた。
「秘密?花村に聞いたの?あいつ、クラス全員――いや、学校中、ネタになりそうなことは何でも探ってくるからな。だから嫌われるんだ」
「俺は嫌ってないからな」
「海のそういうところが結構好きなんだよな」
キスをしてこようとする須山をかわし、驚くほど軽い告白に反論する。
「へえ、お前俺の事好きなのか?いつから?」
なぜか動揺し声が震える。
「それがさ、不思議なんだけど、俺にしては珍しくひと目惚れなんだよね」
「俺さ、ひと目惚れだけは信用しない事にしてるんだ。だから、お前とは何もしない」
「そう言うなよ。本気なんだからさ。どうやったら信用してくれる?」
絶対信用しない。一言一言が軽すぎる。真実味の欠片さえない。
それが無性に腹立たしかった。
「お前の暇つぶしに付き合うつもりはない。でも、まあ、そうだな――お前が坊主にでもしたら、信用してやってもいい」そう言うと、海は力いっぱい須山を押しのけた。素早く起き上がり、鞄を手に一目散に逃げ出した。
こういう場合、逃げるが勝ちだ。
外に出ると、門扉からこちらを覗き見ている花村が見えた。
あいつ、俺まで偵察しているのか?
海はそこそこ怒っているといった顔つきで花村に近づいて行った。門の外に出て、自転車の前かごに鞄を投げ入れ、花村を睨むように見上げた。
「俺の何が知りたい?」
「あ、いや、ごめん海」
普段ならもっと怒っているだろう。けど今日に限っては、この場に花村がいて助かった。
「帰るぞ」
歩きの花村に合わせて、自転車には乗らずに押して歩く。
「うん」と言った花村は、その場を動こうとはせず、何か訊きたそうな顔でもじもじとしている。大男がもじもじする姿ほどみっともないものはない。海は立ち止まり「言いたいことあるなら言えよ」と苛々と言った。
花村はのろのろと海の傍まで来て「あいつと何かしたの?」と親指の爪を弾きながら尋ねた。
「それ、お前に報告する義務ある?キスしたって言ったら、お前のネタのひとつにでも加わるのか?」
「キス、したの?」
なぜ、花村は泣きそうなのだろうか。
「お前、俺の事好きなの?」
海の問いかけに、花村は無言で頷いただけだった。
つづく
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2012-10-14 01:06
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