はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

溺れるほど愛は遠のく 1 [溺れるほど愛は遠のく]

妙に空虚な気持ちになるのは、相棒で兄弟で、ある意味では分身だった陸が幸せいっぱいだからなのだと、海は最近気づいた。

迫田家の双子、海と陸。
陸が兄で、海が弟だ。

なんで俺の方が先に生まれたのに弟なんだ?

このことに関して海は常々不満に思っているが、あまり口にした事はない。
陸がほとんど兄貴面しないからだ。

二か月前、陸に恋人が出来た。この恋人神宮優羽里はかなりのくせものだ。
同じ顏の海には目もくれず――それどころか邪険に扱いさえする――陸を溺愛している。

時を同じくして、海は合コンで知り合った女の子とひと月だけ付き合った。
童貞もその時卒業した。

陸は驚いていたが、去年の出来事を知っているので「頑張ってね」と心から応援してくれた。早くあの時の事を忘れろという意味だったんだろう。けど、俺はもうあの事は忘れていた。

陸が余計な事を言うから、思い出しただけだ。
そう、本当に忘れていたんだ。

あいつが俺に一目惚れをして、俺もすぐに好きになって、あんなことして、あげくに――

「海、今日の英語、テストやるらしい」

海の物思いを破るようにして現れたのは、同じクラスの花村だ。まだ三時限目が終わったばかりだというのに、この日何度目かの最新の情報を手に入れた花村は、教室へ入るなり得意げに海に伝えた。

「確か先週もやったよな?」海はうんざりと溜息を吐いたが、内心ほっとしていた。あいつのことを考えたくなかったからだ。

「やった」
脇に立つ大男の花村は、まるで褒めてくれと擦り寄る犬のようだ。

高等部からここへ入った花村は、いわゆる情報屋だ。
ほんの些細な情報から、口にするとやばい情報もどこからか仕入れてきて、海にだけはいちいち報告する。
ちなみにこの花村、陸の恋人ユーリと関係を持った生徒や先生もすべて知っている。海はそれを聞いて、さすがに陸に報告する気にはなれなかった。過去のこととはいえ波風が立つのは目に見えている。

「食後は頭が働かないってゆーのに……」

「そういえば、今日のランチは学食へ行くんだよね。だったら席は気をつけた方がいいよ。テラス席と、一階の中央あたりは避けた方がいい。一年は出入り口か、返却口付近が安全だよ」

「へえ、そうなの。ありがと花村」
こういう情報はありがたい。下世話な情報に関しては、途中で話すのをやめさせることもあるのだが、自分の身の安全にかかわるネタに関しては、ありがたく聞き入れることにしている。

礼を言われた花村は、えへへっと満足げに笑って、空いている横の席に図々しくも座った。

花村は海に好意を抱いている。
性的な意味合いの込められたものではないが、はっきり言って、花村に好かれるのはまっぴらごめんだ。

なんといっても、花村は大き過ぎる。
身長が一九〇センチもあるのだ。
ボディーガード気取りで傍に居られても、顔に凄みがないため、まったくその意味をなさない。

それを示すように、海をわずらわす第二、第三の男が着実に傍に近づいて来ていた。

「海、今日の放課後、ヒマ?」
そう言ってキザったらしく笑ってみせたのは、自称イケメンの吉沢。こいつはなぜか自分を美男だと信じて疑わない。

「お前にやる暇はない」手厳しく言い返す海。吉沢には甘い顔は一切しない。

「海の時間は俺が貰うよ」
第三の男については、本当にイケメンだ。背も高く美人の須山は、迫田家の次男、朋と同レベルの美を備えている。

「お前にもやらない」

「海は学校が終わったらまっすぐ家に帰るんだ」

しょうもない情報を垂れ流したのは、ことあるごとに海とその他の男どもの間に立ちはだかる花村だ。まあ、役には立つが、下手すると花村との関係を勘違いされかねない。
あいにく、目の前の二人はそんな勘違いをするようなお人好しではないが。

「余計な事言うなよ」まるで俺が暇人みたいじゃんと、海は不機嫌に言うと、うざったい三人をしっしと追い払った。だが、そんなもので怯まないのが、海の取り巻きたちだ。

花村は変な下心を持っていないので、傍に居てもそんなに嫌ではないが、吉沢と須山にはあまり傍に寄って来て欲しくない。吉沢には傍に寄るなと直接命じているが、あまり効果はない。須山に関して言えば、言い寄ってくるもののどこまで本気なのか分からないので、適当にあしらっているといった感じだ。

なんで俺の周りにはこんな奴しか集まってこないのだろうか。陸のように、身体全体で好きだと告げてくれるような相手が欲しい。

ああ、もうっ!恋愛はこりごりで、男はもちろんのこと女とも、もう付き合う気はない。このまま一生、ひとりで生きていくんだ。

その決意を後押しするように、四時限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。

つづく


>>次へ
 
あとがき
こんばんは、やぴです。
今度は海のお話。
なぜか高等部に入ってからモテモテの海。
お気づきかどうか、この日はユーリの誕生日です。

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