はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 222 [花嫁の秘密]
「いま巷でお前がジュリエットの三番目の夫になるか、賭けが行われているのを知っているか?」
エリックは立ち上がって、部屋をうろつき始めた。壁際に整然と並ぶ蔵書の数々に、リード家の裕福さがうかがえる。ジュリエットにとってサミーは格好の獲物だ。
「ああ、もちろん。倍率は――忘れたけど、僕は結婚しない方に賭けたよ」
「お前は――」呆れて言葉も出ない。こいつの無謀さは知ってはいたが、賭けに参加しているとは思いもしなかった。ということはあのクラブを利用しているという事か……。
エリックは図書室の扉が閉まっていることを確認するように、素早く視線を走らせ、口を開く。
「会員の中に、お前がジュリエットと結婚して、殺される方に賭けた奴がいる。意味分かるか?」
エリックはサミーの背に向かって言った。
サミーはわずかに振り向き「分からないな」と困惑気味に答えた。
「ジュリエットの過去の夫――ひとり目は病死、二人目は事故死。この死にジュリエットが関わっているとしたら?」
エリックはサミーのすぐ後ろに立ち、肘掛の部分に両手をついた。サミーの肩がまるで触れたらただじゃおかないぞと警告するように上下した。
一瞬の間が開き、サミーはかぶりを振りながらエリックの意見を退けた。
「馬鹿馬鹿しい。最初の夫は確か高齢で、特に死因に疑わしいところはなかったはずだ」
「そうだ。俺も二人目の夫――ナイト子爵が亡くなるまで、彼女を疑った事はなかった」
「ナイト子爵は、確か転落死だったはずだ。自宅の屋敷の階段を踏み外したと聞いているが、酔っていたのだろう?彼の酒好きは誰もが知っている事だ」
「お前みたいに酒に弱い、と言いたいところだが、彼は相当酒に強かった。悪酔いする時もあったが、少々では酔っ払ったりしなかった」エリックは断言した。
「まるで一緒に酒を飲んだことがあるような言い方だな」
「ああ、あるさ」何度もな。
エリックは遠い記憶を探るように、一瞬だけ目を閉じた。
「もしかして、その、君の――」
サミーが耳を赤くして――ここからでは見えないが、おそらく顔も赤くなっているだろう――珍しく言葉に詰まっている。
おいおい。どうやらこいつはとんでもない勘違いをしているようだ。このまま勘違いをさせておくのもいいが、ひねくれ者のこいつをこれ以上ひねくれさせるのも面倒だ。こいつは人に心を開かないくせに、こっちの心はすべて捧げろという姿勢を取る。すべては無意識なのだが、それがかえって厄介なのだ。
とにかく、きちんと弁解しておいたほうが後々の事を考えた時、エリック自身の為であることは明らかだ。
エリックは小さく溜息を吐き、サミーの傍から離れた。
つづく
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エリックは立ち上がって、部屋をうろつき始めた。壁際に整然と並ぶ蔵書の数々に、リード家の裕福さがうかがえる。ジュリエットにとってサミーは格好の獲物だ。
「ああ、もちろん。倍率は――忘れたけど、僕は結婚しない方に賭けたよ」
「お前は――」呆れて言葉も出ない。こいつの無謀さは知ってはいたが、賭けに参加しているとは思いもしなかった。ということはあのクラブを利用しているという事か……。
エリックは図書室の扉が閉まっていることを確認するように、素早く視線を走らせ、口を開く。
「会員の中に、お前がジュリエットと結婚して、殺される方に賭けた奴がいる。意味分かるか?」
エリックはサミーの背に向かって言った。
サミーはわずかに振り向き「分からないな」と困惑気味に答えた。
「ジュリエットの過去の夫――ひとり目は病死、二人目は事故死。この死にジュリエットが関わっているとしたら?」
エリックはサミーのすぐ後ろに立ち、肘掛の部分に両手をついた。サミーの肩がまるで触れたらただじゃおかないぞと警告するように上下した。
一瞬の間が開き、サミーはかぶりを振りながらエリックの意見を退けた。
「馬鹿馬鹿しい。最初の夫は確か高齢で、特に死因に疑わしいところはなかったはずだ」
「そうだ。俺も二人目の夫――ナイト子爵が亡くなるまで、彼女を疑った事はなかった」
「ナイト子爵は、確か転落死だったはずだ。自宅の屋敷の階段を踏み外したと聞いているが、酔っていたのだろう?彼の酒好きは誰もが知っている事だ」
「お前みたいに酒に弱い、と言いたいところだが、彼は相当酒に強かった。悪酔いする時もあったが、少々では酔っ払ったりしなかった」エリックは断言した。
「まるで一緒に酒を飲んだことがあるような言い方だな」
「ああ、あるさ」何度もな。
エリックは遠い記憶を探るように、一瞬だけ目を閉じた。
「もしかして、その、君の――」
サミーが耳を赤くして――ここからでは見えないが、おそらく顔も赤くなっているだろう――珍しく言葉に詰まっている。
おいおい。どうやらこいつはとんでもない勘違いをしているようだ。このまま勘違いをさせておくのもいいが、ひねくれ者のこいつをこれ以上ひねくれさせるのも面倒だ。こいつは人に心を開かないくせに、こっちの心はすべて捧げろという姿勢を取る。すべては無意識なのだが、それがかえって厄介なのだ。
とにかく、きちんと弁解しておいたほうが後々の事を考えた時、エリック自身の為であることは明らかだ。
エリックは小さく溜息を吐き、サミーの傍から離れた。
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2012-08-10 19:50
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