はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 221 [花嫁の秘密]

アビーとロジャーの馴れ初めを聞き終える頃には、皿の上のナッツケーキはアンジェラの胃の中へとすっかり姿を消していた。ほんの少しだけアビーの胃の中にも。

「それって結局はロジャー兄さまの一目惚れってことよね?」

「たぶんね」アビーははにかみながら、皿の上に転がるナッツのひとかけらを摘まみ口に運んだ。「あら、ごめんなさい。ついくせで」慌てて目の前のカップを取り上げ冷め切らない紅茶を啜り、アンジェラに恥じ入るような視線を向けた。

「気にしないわ。アビーが食べなかったら、わたしが食べようと思ってたもの」

ふたりで顔を見合わせ笑う。そこへやって来たのは、ナッツケーキに目がないセシルだ。セシルは大抵の食べ物には目がない。

「あれ、お茶とケーキが沢山あるって聞いて来たんだけど?」

どこかに隠してるんじゃないのと伺うような目でアンジェラを見ながら、ちゃっかり女性陣の輪に加わるセシル。

「セシル、随分と遅いのね。朝食は済ませたの?」
おはようの挨拶もなしにやって来たセシルに、アンジェラは咎めるような口調で言ったものの、セシルはこういう事には随分と鈍感なようで「もちろん。ギリギリセーフだったよ」とのんきに返した。

アビーがくすくすと笑う。
「セシルは世間知らずの食いしん坊ってロジャーは言っていたけど、ひとつは当たっているようね」

「アビー、おはよう。世間知らずもあながち間違ってはいないよ。ところで、ロジャー兄様はハニーの事はなんて言っていたの?」

それはわたしも気になる。アンジェラは期待に胸を膨らませ、アビーが何と答えるのか待った。

「そうねぇ、世間知らず、無鉄砲、頑固で、えーっとあとはなんだったかしら?――食いしん坊も入っていたかしら?」

「もういいわ」力なくそう言い、渇いたのどを潤す為メイドを呼んで、熱々の紅茶とセシルの為に追加のナッツケーキを頼んだ。

「ところでハニー、あのメグって子を正式に雇ったの?」

アンジェラは驚いて、自分よりも少しだけ大人の兄の顔をまじまじと見た。

「もう知ってるの?」

「じゃあ、本当なんだね。マーサは引退?って、母様がいるからそういうわけにはいかないか」
セシルがそう言ったところで、メイドが部屋へ入って来た。数種類のケーキが乗った銀盆を手にするメイド、特大のティーポットと新しい食器を持ったメイド、そしてもうひとり――その手にはセシルの好物のサーモンサンド。

あまりに早すぎる。どうやらセシルはここのメイドたちに気に入られたようだ。

「ありがとう」セシルがお礼の言葉を口にしただけで、メイドたちは頬を赤らめてしまった。

ああ、セシルに恋しても無駄なのに、とアンジェラは思いつつ、威厳のある侯爵夫人ぶって「もうさがっていいわ」とメイドたちに告げた。

つづく


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