はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

Sの可愛い子犬 27 [Sの可愛い子犬]

「君の母方の親族は口が堅くてね……。わかっている事実だけ述べると、彼女にはアストンと結婚する前に別に婚約者がいた。私はその婚約者が君の父親ではないかと思っている」

漠然としていたものが形を現わそうとしている。けど本当の父親だという男が見つかったとしても、親子関係を確かめるすべがあるとは思えない。

「それで、父さん……アストンをジョンから引き離す、いや、ジョンから奪ったものを取り返せたりするのですか?」

「いや、子爵が多額の負債を抱えて破産したのは変わらない。たとえ、騙されていたとしても、最終判断は子爵によるものだったからね。だけど、それ以上にアストンは不当に子爵の土地や屋敷を手に入れている。それは取り返せるかもしれないが、それらを維持するだけの資力はない。だから結論から言えば、アストンを追い落とすだけの材料はあるが、ジョンには何も戻らない」

「別に、何もいらない。ジョンは俺がいればそれでいいはずだ」
本当にそうだろうかという疑問が頭をもたげる。ジョンはよくてもジョンの兄のためにも、土地や屋敷を奪い返す必要がある。

「そんなに辛そうな顔で言う事ではないな……。不安か?ジョンが自分から離れるのではと」

アルフレッドの言うように、ステフは不安でたまらなかった。本当にジョンも自分と同じ気持ちなのだろうかと、何度自問したかわからない。

ジョンがアストンから解放され元の暮らしに戻ったら、二人で過ごした日々のことなどすっぱり忘れてしまうのではと、不安な要素をあげればきりがない。けれども、ステフはジョンを信じていたし、信じるしかなかった。

仮に、もしも失うことになっても、ジョンを助けたい気持ちには変わりない。
結果がどうなろうとも、アルフレッドにすべてを託す、それがステフに出来る唯一のことだ。

「アルフレッド様、どうかジョンを助けてやってください」

アルフレッドはただ羨ましかった。
自然と顔は綻び、若い二人の為にできるだけの事をしてやりたいと思った。

「実は、アストンは同じような事を繰り返し行っているんだ。被害にあった者は他にもいる。この後の事は私に任せてくれれば、アストンはこの国の鉄道事業から撤退を余儀なくされ、きっとアメリカへ逃げ帰るだろうな。その後、ジョンと兄は私が保護しよう。というよりも、スタンレー伯爵が、だがね」

「わかりました。お願いします。俺は――」どうなるのだろうか?アストンが本当の父親じゃなくても、実際は父親だ。その非難を浴びることになるのだろうか?ジョンは……俺の事好きでいてくれるのだろうか?

どうしてもぐずぐずと考えてしまう。手放せないのに手放さなくてはならない状況に追い込まれ思考は迷子だ。何度決断しても、それを覆してしまう自分がいる。

「ジョンが幸せになるならそれでいいです」ステフは何とか声を絞り出した。

アルフレッドと話し終えたステフは、ジョンを探しに庭へ出た。小さな屋敷の小さな庭は手入れが行き届いていた。庭師すらいないホワイトヒルの屋敷とは大違いだ。

ジョンは薔薇園にいた。
この屋敷に住む少年と楽しそうに話をしていた。ステフと同じきらきらと輝く金色の髪に青い瞳のかわいらしい少年。きっと自慢の庭なのだろう。アーチ状になった薔薇を指さし、説明に夢中になっている。ジョンは瞳を輝かせ、少年と同じように指のさす方を見上げ真剣に話を聞いている。

ステフは二人の姿を見て、ジョンの本来の居場所を見たような気がした。

しばらく声をかけずに様子を見ていたら、ジョンがこっちに気づいた。ステフの姿を目にした途端、一緒にいた少年に向けていた笑顔よりも、もっと幸せそうな笑顔で駆け寄って来た。

俺のジョン。

ステフは誰にかまうことなく、両手を広げてジョンを受け止めた。どうせ見ているのはまだ幼い少年ひとりだけだ。二人がどういう関係かなんて、考えもしない年齢だろう。

少年とは軽く挨拶を交わし邸内へ一緒に戻ると、アルフレッドと伯爵に礼を述べホワイトヒルの屋敷へ戻った。

つづく


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