はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 223 [花嫁の秘密]

「愛人でも恋人でもなかった。ただの友人だ。それよりお前こそ、屋敷に籠っていた割に詳しいな」
エリックは元の硬い椅子に座り、弁解がましく聞こえなければいいがと、あえて視線を向けずに言った。

「あの頃は――ちょくちょくロンドンへ出ていたんだ。それに、屋敷へこもっている時も、新聞を欠かさず読んでいたし、使用人たちの噂話にも耳を傾けていたからね」

サミーのこの言い方にピンときた。
ロンドンへは恋人に会いに行っていたか、もしくは恋人と出掛けていたかだ。嫉妬の感情がエリックの胸を焦がす。色恋に気を逸らされている場合ではないのに、この男を目の前にするとほかのどんな重要な案件も、些末なものに思えてくる。

エリックは問題を元に戻そうと深呼吸をした。

「俺と同じように、ジュリエットに疑いを持った人物がいる。そいつは、そうだな――危険なゲームが好きなんだ」

「そいつと犯罪組織と何の関係が?」

「俺はわざわざ犯罪組織と言ったが、そんなものはどこにも存在しない。ああ、まて――最後まで聞け。メンバーは四人。頭の切れる奴がひとりいて、そいつを中心に活動している。他のやつらもそこそこ頭は切れる。だがこいつは特別だろう。最近起こった事件で言えば――ウェズリー男爵が銃の暴発で亡くなったのは知っているか?」

「知っているが、噂では愛人を巡って決闘をしたと――あの大人しいウェズリーが決闘なんてと、耳を疑ったが、本当だったのか?」

「そうだ。男爵の介添人はメンバーの一人だった」

「わざと殺したのか?」サミーはエリックを食い入るように見つめ、尋ねた。

「いや、違う。奴らはそんなことしない。ただ、男二人の前に女を一人差し出した。それだけだ。そうやって、結果ひとりの男を死に追いやる。時間と金を持て余すと、ろくなことにならない典型的な例だ」

「彼らは一見すると犯罪とはいえないような計画を立てて、自分たちの関与が疑われることなくそれを遂行することを楽しんでいるわけか……。ウェズリーの事件は些細なもので、もっと大きなこともやっているんだろう?まさか、ジュリエットに絡む事件でそいつらも一緒に捕まえようとか思ってるのか?」
サミーはすっぽり体を覆っていたケットが足元へすべり落ちても気付かないほど、話にのめり込んでいる。自分でどうにかできないだろうかと考えているに違いない。

「いいや。今回は奴らにジュリエットに存分に手を貸してもらおうと思ってる。そうすれば、ジュリエットをこの国内から追放することも、もしくは絞首刑にすることも可能だ」

「一網打尽にすればいいのに」簡単だろうと言わんばかりに目を輝かせるサミーに、エリックは首を振った。

「そんなに簡単じゃない。あいつらは法に触れる事は何ひとつしていない。直接的には。だから今回はジュリエットだけに的を絞る」

「ふうん。てっきり君は僕を利用してそいつらを捕まえようって魂胆だと思ったが、違うのか」なあんだとがっかりとした表情を見せ、サミーはソファの背にぐったりともたれかかった。

「だいたいお前はジュリエットとは結婚しないだろう?」
いくら事件解決のためでもサミーをあの女に一瞬でもくれてやる気はない。

「でも、結局彼女に恨まれる僕がターゲットになるんじゃないのかな。それとも彼らは別の夫をジュリエットにあてがい、殺すように仕向けるのか?どちらにしても、時間も金もかかりそうな壮大な計画だな」サミーはふんっと鼻を鳴らした。

サミーの言うとおりだ。いまのところあいつらがどう出るかは分からないが、ジュリエットがどんな行動を起こすかは予想できる。

「ところで、ジュリエットはなぜ夫を殺す必要があったんだ?」

こいつはそんな事も分からないのかと、エリックはサミーの考えを探るように綺麗な瞳と視線を交わらせた。そして気付いた。こいつは全部知っていて、俺にくだらない質問を投げかけたらしい。

まったく。
この美しい男こそ、金と時間を持て余した悪魔に違いない。

つづく


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