はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
好きとか言ってないし 9 [好きとか言ってないし]
「ねえ、コウタ。朋ちゃんとセックスしたことある?」
陸はコウタの横顔をまじまじと見ながら訊いた。見下ろすほどの身長差はないが、気持ちの上ではいつも見下ろしている。だがこの時ばかりはさすがにそんな気分にはなれなかった。
「なっ!なんてこと訊くんだよっ!」
コウタは顔を真っ赤にし、慌てふためいた。
「したの?してないの?」
「しっ、してない!!」
「じゃあ、どこまで?」
「な、な、なんのことだよ。なんで朋ちゃんと僕がそんなことを?」
「あのさあ、ばれてないとでも思っているの?夏頃からおかしかったの知ってるんだからね。まあ、それよりも前から朋ちゃんはコウタばっかりかわいがってさ……」案外拗ねたような口調になり、陸は一度咳払いをして言葉を続ける。「とにかく、コウタも朋ちゃんの事好きなんでしょ?兄弟でも付き合ってるとか言うのかな?で、もうしたの?」
コウタは何とか誤魔化そうと言葉を選んでいたが、自分にそんな高等な嘘がつけるはずもないと観念したようで、「だからしてない」と付き合っている事は肯定するような口調で答えた。
「少しも?」
「まあ、少しは……」
少しか……。
たぶん少しでは終わってないと思う。
コウタは経験値ゼロだから仕方がないとしても、朋ちゃんは色々経験済みだ。さすがに男を相手にしたって言うのは聞いたことがないけど。
「朋ちゃんは優しい?」
「え、うん」
コウタは朋の優しさを思い出したのか、はにかみながら答えた。
「そっか……。もしさ、初体験したいんだったら、海と出掛けとくけど?さすがに男同士で近所のホテルとかまずいでしょ。知り合いのおばさんとか受付してそうだし」
最近、家の近くに――正確には島田家の近く――ラブホテルが二軒も出来た。県道から入ってすぐの場所に道路を挟んで向かい合うように建っている。
「は、初体験とか、そういうのじゃないから」
あくまでそこは否定するコウタ。
陸はこれ以上コウタをからかうのはやめて、大通りに目を向けた。校門からほんの数百メートルなのに身体が痛くて歩くのももう限界だ。
「陸、その腕どうしたの?」
「あー、これ?」
陸は縛られていた手首をあげ、コウタにしっかりと見せた。縛られていたことは黙っていようかと思っていたけど、気付かれたなら仕方がない。
「縛られてたんだ。それでやられちゃってさ」
なるべく軽い口調を心掛けた。そうじゃないとまた泣き出しそうだったからだ。
「やられたって……?」
コウタは言葉の意味に気付いているはずだ。けれど、それを否定したくて訊き返しているだけだと陸には分かっていた。
可哀相だと思われたくない。だけど、コウタは誰よりもそう思うタイプだ。
「優しくされなくもなかったかな。身体はあちこち痛いけど、そう悲惨でもないし。このこと、誰にも言わないで。コウタだから話したんだからね」
コウタは絶対に秘密を漏らすことはしない。たとえ相手が朋ちゃんでも。
「でも、それって、まさにいに言った方がいいんじゃない?それより、相手は誰なの?まさかっ!先生とかじゃないよね……」
コウタが声を潜めた。反対方向から人が歩いてきたからだ。
「違うし、まさにいにも知られたくない。だって、知られたら大変なことになる」
まさにいに言えば驚くほど完璧に対処してくれるだろう。
まずは学校に乗り込み、相手の男を見つけだし、退学に追い込むこと間違いなしだ。けど、陸自身無傷でいられるとは思えない。進学できたとしても学校に居づらくなるだろう。
男子校はその手の噂が広まるのは早く、陸は間違いなくそういう対象で見られるようになる。
そんな事になるくらいなら、黙って泣き寝入りする方がマシだ。あの、ユーリってやつが三年だったら、もう二度と会うことも無い。
「もしかして付き合ってる人?無理に身体を求められたの?」コウタが真顔で訊く。
あんな奴と付き合うかっ!ってゆーか、コウタの妙に古臭い言い回し、どうにかなんないの?
「付き合ってる人じゃないけど、確かに無理に求められたけど……結果、そうでもなかったっていうか……」
陸の言葉は尻すぼみになった。
だって結局、抵抗位できたんじゃないかって思う。しなかった自分が悪いような気がしないでもない。
「あっ、タクシー!!」
コウタは右手を思いきりあげ手首にスナップをきかせて振った。
今どき、そんな風にタクシー止める奴見たことないんだけど。陸が目を丸くする中、コウタは手柄をあげた武将の様に、誇らしげに手をおろした。
つづく
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陸はコウタの横顔をまじまじと見ながら訊いた。見下ろすほどの身長差はないが、気持ちの上ではいつも見下ろしている。だがこの時ばかりはさすがにそんな気分にはなれなかった。
「なっ!なんてこと訊くんだよっ!」
コウタは顔を真っ赤にし、慌てふためいた。
「したの?してないの?」
「しっ、してない!!」
「じゃあ、どこまで?」
「な、な、なんのことだよ。なんで朋ちゃんと僕がそんなことを?」
「あのさあ、ばれてないとでも思っているの?夏頃からおかしかったの知ってるんだからね。まあ、それよりも前から朋ちゃんはコウタばっかりかわいがってさ……」案外拗ねたような口調になり、陸は一度咳払いをして言葉を続ける。「とにかく、コウタも朋ちゃんの事好きなんでしょ?兄弟でも付き合ってるとか言うのかな?で、もうしたの?」
コウタは何とか誤魔化そうと言葉を選んでいたが、自分にそんな高等な嘘がつけるはずもないと観念したようで、「だからしてない」と付き合っている事は肯定するような口調で答えた。
「少しも?」
「まあ、少しは……」
少しか……。
たぶん少しでは終わってないと思う。
コウタは経験値ゼロだから仕方がないとしても、朋ちゃんは色々経験済みだ。さすがに男を相手にしたって言うのは聞いたことがないけど。
「朋ちゃんは優しい?」
「え、うん」
コウタは朋の優しさを思い出したのか、はにかみながら答えた。
「そっか……。もしさ、初体験したいんだったら、海と出掛けとくけど?さすがに男同士で近所のホテルとかまずいでしょ。知り合いのおばさんとか受付してそうだし」
最近、家の近くに――正確には島田家の近く――ラブホテルが二軒も出来た。県道から入ってすぐの場所に道路を挟んで向かい合うように建っている。
「は、初体験とか、そういうのじゃないから」
あくまでそこは否定するコウタ。
陸はこれ以上コウタをからかうのはやめて、大通りに目を向けた。校門からほんの数百メートルなのに身体が痛くて歩くのももう限界だ。
「陸、その腕どうしたの?」
「あー、これ?」
陸は縛られていた手首をあげ、コウタにしっかりと見せた。縛られていたことは黙っていようかと思っていたけど、気付かれたなら仕方がない。
「縛られてたんだ。それでやられちゃってさ」
なるべく軽い口調を心掛けた。そうじゃないとまた泣き出しそうだったからだ。
「やられたって……?」
コウタは言葉の意味に気付いているはずだ。けれど、それを否定したくて訊き返しているだけだと陸には分かっていた。
可哀相だと思われたくない。だけど、コウタは誰よりもそう思うタイプだ。
「優しくされなくもなかったかな。身体はあちこち痛いけど、そう悲惨でもないし。このこと、誰にも言わないで。コウタだから話したんだからね」
コウタは絶対に秘密を漏らすことはしない。たとえ相手が朋ちゃんでも。
「でも、それって、まさにいに言った方がいいんじゃない?それより、相手は誰なの?まさかっ!先生とかじゃないよね……」
コウタが声を潜めた。反対方向から人が歩いてきたからだ。
「違うし、まさにいにも知られたくない。だって、知られたら大変なことになる」
まさにいに言えば驚くほど完璧に対処してくれるだろう。
まずは学校に乗り込み、相手の男を見つけだし、退学に追い込むこと間違いなしだ。けど、陸自身無傷でいられるとは思えない。進学できたとしても学校に居づらくなるだろう。
男子校はその手の噂が広まるのは早く、陸は間違いなくそういう対象で見られるようになる。
そんな事になるくらいなら、黙って泣き寝入りする方がマシだ。あの、ユーリってやつが三年だったら、もう二度と会うことも無い。
「もしかして付き合ってる人?無理に身体を求められたの?」コウタが真顔で訊く。
あんな奴と付き合うかっ!ってゆーか、コウタの妙に古臭い言い回し、どうにかなんないの?
「付き合ってる人じゃないけど、確かに無理に求められたけど……結果、そうでもなかったっていうか……」
陸の言葉は尻すぼみになった。
だって結局、抵抗位できたんじゃないかって思う。しなかった自分が悪いような気がしないでもない。
「あっ、タクシー!!」
コウタは右手を思いきりあげ手首にスナップをきかせて振った。
今どき、そんな風にタクシー止める奴見たことないんだけど。陸が目を丸くする中、コウタは手柄をあげた武将の様に、誇らしげに手をおろした。
つづく
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2012-04-20 00:08
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