はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

好きとか言ってないし 8 [好きとか言ってないし]

俺はろくでなしか?

やるだけやっといて相手を置き去りにしたのはなにも初めてではない。
だが、校舎内でたまたま見つけたガキを部屋に引きずり込み、縛り上げてやったのは初めてだった。

こんなくだらない事を気に病むのは自分らしくない。ユーリは悪態をつきながら、自宅マンションのエレベーターを降りた。

大体、ハルの奴が余計な事を口にするからだ。
これまで良好な関係を築いていたのに、くだらない独占欲で俺を縛り付けようとした。

及川春人ことハルはユーリよりひとつ年下の十六歳。良家のおぼっちゃんで、素行の悪いユーリとの付き合いはわりと長い。

ユーリは自嘲した。自分の素行の悪さは再確認するほどでもない。
ハルはそんなユーリを憧れの対象としていた。雁字搦めの窮屈な人生のなかの唯一の逃げ場だったのだろう。

だからこそあんな言葉を口にして欲しくなかった。

『他の男との遊びはやめて』
遊びはやめろだと?笑わせる。

『本気で男と付き合うわけないだろう』そう喉から出かかったが、かろうじて呑み込んだ。

その代りに、『そうだな。そろそろ遊びも終わりだ。他の奴らともすべて手を切ろう、ハル、まずお前から』

ハルはあっけにとられ、それから細い顎を強張らせた。純粋そのものの瞳には涙が浮かび、大人しそうな唇は小刻みに震えていた。

『本気の誰かが出来たの?』
ユーリに限ってそんなはずないといった口調だった。
ユーリは誰にも本気にならない。好きだの何だのという言葉を口にする事すら嫌悪しているのをハルはよく知っている。

『そうだと言ったら?』
嘘とわかっていても、そう口にするのは不快だった。

ハルはユーリの嘘をやすやすと信じた。ユーリが嘘でもそんな言葉を口にしないと分かっているからだ。

それからが大変だった。ハルが泣き始めたからだ。

ユーリは誰かに縋り付かれるのが嫌いだった。真面目で重い雰囲気も嫌いだ。

軽い口調で慰め、なんとか一度は涙を止めさせた。
関係をややこしくしたくなかったため、話を終わらせようとしたが、ハルに腕にしがみつかれ、幼い頃の記憶が一瞬頭をかすめた。母親に細い腕にしがみつかれ引きちぎられそうな程引っ張られた記憶。
しっかりと蓋をして閉じ込めておいた記憶を引き出され、怒りとも恐怖ともつかない感情に襲われた。
ハルを引き剥がすために殴ろうと拳を握った瞬間、この事態を逃れるための救世主が現れた。

それが、中等部のガキだろうとユーリには関係なかった。
おかげでいつもの自分に戻ることが出来たのだから。

けれど、それを維持できたのはハルを追い払うまでだった。

「あのガキが、いかにもやってくださいとうろついていたからだっ!」

ユーリは1201号室のドアを開け、唯一の聖域とも呼べる場所へ戻って来たことに安堵しつつ、迎えに出て来た愛猫に手を伸ばした。

つづく


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