はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 番外編 結婚へのカウントダウン 3 [花嫁の秘密 番外編]

手紙には次回の訪問日時も書かれていた。

先日侯爵が訪問した際には、アンジェラが愛用している香水をプレゼントしてくれた。母にも違う香りのものを用意してくれていた。
定期的にアップル・ゲートを訪れる侯爵に、どんどん惹かれていく。
それはどちらかといえば、母の方がはっきりとわかるほどだ。
毎回ほんの三十分ほどの滞在だが、母は二人きりの時間を作ってくれるのだ。

そして、この日も母は二人きりにさせようと、子供の様な作戦に出る。

「婚約してるのだから、二人きりでも何の問題もないのよ」と侯爵に聞こえるようにアンジェラに耳打ちをする。
そして「ちょっと用事を思い出して、五分ほど席を外すわ」とわざとらしく言うのだ。

そんな母の姿に、アンジェラも侯爵も笑いをかみ殺しながら、部屋から出て行く姿を見送る。

アンジェラの座る長椅子に侯爵が移動してきた。
それだけでアンジェラは顔が火照り、心臓の鼓動が早くなる。

「今日はミセス・モーガンはいないんだね」

ミセス・モーガンはマーサの事だ。
マーサはいつも母が退出した後、反対のドアからそっと入って来て、部屋の隅で見守っているのだ。

「今日は町へ出掛けています」
最近はマーサは町へ出掛けることが多い。
何しに行っているのかは訊いても教えてくれないのだ。

「そう。あの、ミス・コートニー、何か心配な事は無いですか?その……結婚について」

そう言った侯爵の方が不安そうな顔をしている。

(今がチャンスかもしれない。結婚は無理だと、今言えば――)

「何か私に出来る事はある?君が不安になることは早めに解決しておきたい」

侯爵は結婚の準備を進めている。きっと早く日取りを決めたがっている。早く断らなければ――そう思って、いざ口をついて出た言葉は、自分でも信じられないものだった。

「結婚式は家族だけで、あまり大勢人が集まるのは嫌です」

そう言った瞬間、自分でも驚いて、思わず侯爵をじっと見つめてしまった。
侯爵の顔がたちまち明るくなって、いつもの優しい笑顔というより、無邪気な笑顔を覗かせた。

それもそのはず、初めてアンジェラの方から結婚という言葉が出たのだ。
どんな注文だろうと、侯爵が舞い上がらないはずない。

「わかった、そうしよう。もし、不安なら特別結婚許可証をとっておくから、二人ですませることも出来るけど」

「いえ、大丈夫です」
迷ったけれど、そう言ったのは、やはり母のためにきちんと結婚式をしたかったのだ。
それに、侯爵がウエディングドレス用にレースを注文している。もちろん直接確かめてはいないけど、新聞にはそう書いてあった。

「そろそろ、五分経つかな?」
侯爵は長椅子から立ち上がると、アンジェラの前に立った。
思わずアンジェラも立ちあがる。

「本当に待ち遠しいよ」
そっとアンジェラを抱きしめた。
マーサがいないのをいいことに侯爵は大胆な行動に出た。

アンジェラの身体が強張った。侯爵に抱きしめられるのは今までに何度かあったが、やはり一瞬後ろへ引きそうになる。
けれどあまりに優しい抱擁に、アンジェラの身体は一気に熱くなり、不思議とそれが心地よく、そのまま侯爵の胸に身体を預けた。

「お待たせしているかしら?」
ドアの外で母がまたしてもわざとらしく声を掛けた。
二人はかすかに笑いながら身体を離すと、侯爵はそのままドアまで歩いていき「ミセス・コートニー、私はそろそろ失礼いたします」とドアを開け入ってきた母に挨拶をすると帰って行った。

母と侯爵を見送って、応接室へ戻ったアンジェラは、母から好奇心いっぱいの攻撃を受けることになる。

「それで、侯爵様と手ぐらい握ったのかしら?」
せっかく時間をあげたのだから、と目を輝かせてアンジェラの返事を待つ。

「そんなはしたない事しないわ」
母の好奇心を満たすようなことは言えない。

「まあ、そうなの?もうすぐ結婚するんだから、その、キスくらいなら許されるわよ」
母はうっとりとした様子で宙を見つめていた。

きっと父との思い出に浸っているのだ。
肖像画の中でしか知らない父。優しくて威厳のあるその姿。
時々、自分だけ知らないと思うととてつもなく悲しくなる。

アンジェラはうっとりする母を残して、自室へ戻った。

つづく


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