はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

ひとひらの絆 3 [ひとひらの絆]

大体だがこの家の中を見て回った。
二階は自分たちの部屋も含めて四部屋ほどがあり、一階には父の書斎とおそらく二人の寝室の他は、応接室や事務スペース、リビングなどいたって普通だ。確かに応接室は広くて豪華だったが、有名な会社の社長と言う割にはそんなに豪邸に住んでいるわけでもなかった。

そもそも会社自体は京子の家のものだ。
元々は粉製品を扱う食品会社だったが、今では数店舗レストランなど飲食店も経営している。
イタリアンレストランにラーメン屋など粉を使った麺がウリなのだろうと思う。
生パスタはスーパーにも卸している。

まさか、父は金でこっちの家族を選んだわけではないよな……いや、そうかもしれない、そうでなければ母さんを捨てるはずない。
ふと、容の中に湧いた疑問はあっさりと脳内で肯定されてしまった。
そう思うと、自分の中の怒りや恨みがまた沸々と湧き上がってくる。
そしてその怒りは自分自身にも向いている。

容は母の病気に気がつかなかった自分が許せないでいた。
母の好きな、暖かく彩り豊かな春が来たというのに、例年よりも早く散り始めた桜と同じくその命の火を消してしまった。いつもと変わらず元気だったのに、桜が咲き始めた頃、急に体調を崩し病院に入院して、そのまま帰宅する事は無かった。
だけど、一つだけ分かっている事は、母は自分の死期に気付いていたと言う事だ。確実に知っていたといってもいい。
自分が亡くなった後に、容と守が困らないように身の回りの整理がきちんとされていたからだ。
それなのに父の連絡先はおろか、父に関する物が何も残されていなかったことが不思議でならない。
もし、容が父に連絡を取らなかったらどうなっていたのだろうか?父は母の死を知ることも無かったのだろうか?
堂々巡りする考えに、容は父やその家族に対しての恨みで雁字搦めになる。

容の考えは一貫している。守以外のこの家に住む人間はすべて敵なのだ――だからまずはじっくり相手がどんな奴か見極めなければならない。

転校手続きも終え、容は一葉と同じ公立高校に通うことになった。守は家から五百メートルほどの距離にある小学校へ通う。

容はこの家に越してきてから、しばらく各々の人となりを観察していた。
父は初日にちらりと顔を出したが、気まずいのか書斎に閉じこもりあまり顔を合わせようとはしなかった。

守は初めて見る自分の父親に不思議そうな顔を向けていた。だけど、その幼く可愛らしい顔には僅かだが、嬉しそうな表情が垣間見えた。
容の背に隠れるようにして父を覗き見る守を、父も同じような表情で見ていた。いや、それよりももっと――そう、親が子供に対して見せる、愛おしい者を見る様な顔つきだった。

容はそんな父親に、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
しかしそんな気持ちを押し殺し、その顔に笑みさえ浮かべて堪えたのは、ここで成し遂げるべき事があったからだった。

つづく


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