はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

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ひとひらの絆 11 [ひとひらの絆]

息を切らせながら、どちらともなく唇を離した。
一葉は艶っぽい瞳で容を見つめていた。不覚にもその視線に、容は思わず胸を掴まれた様な感覚に襲われ、もう一度一葉の唇に吸い付いた。そしてそのまま、寝間着のボタンをはずしていき、一葉の肌に直接手を触れた。
鎖骨を指でなぞり、そのまま胸へと滑らせ、すでに硬くなった乳首を指の腹で弄ぶ。
「んっ……あぁ……」
口づけの合間に発する一葉の声が甘さを帯びてきている。
乳首を優しく捏ね回し、時々強く摘まむと、一葉はビクッと身体を撓らせる。
一葉の反応に満足しつつも、容は自分の方が優位だとはとても思えなかった。
それほど今この行為に夢中になっていたからだ。
「あん……よぅ……にぃ……」
一葉が容にぎゅっと抱き付きベッドに引きずり込むように横になっていった。
それから一葉は背にまわしていた手をどんどん下へと向かわせ、容の尻を擦り始めた。
容は首筋に舌を這わせ、身体の線をなぞりながら手を腰のあたりに持って行った。

「お前、もう少し肉付けろよ。好き嫌い多すぎなんだよ」
一葉はその言葉に、一瞬切なそうな目をした。
「容兄さんは僕と違って、逞しいんだね」
服の上を滑る一葉の手には、容の引き締まった筋肉の動きが直接伝わってきた。

「容にぃの硬いのが当たってる――」
一葉は元の誘うような瞳に戻っている。
「お前のも当たってる――」

二人は見つめ合っているが、甘いと言うよりかは火花が散っているようだった。

容がそのまま腰を前後に揺らし、お互いのペニスを布越しに擦り合わせる。
「容兄さん……触って、僕のペニス触ってよ……」
まるで守がお願いするように、一葉も同じように懇願する。

「じゃあ、脱げよ」
一葉は黙って言われた通りにし、下半身を露にした。
「上も、全部――」
ほとんど肌蹴ていて、脱ぐほどでもなかったが、一葉はすべてを容の目に晒した。
一葉の青白い肌には、同じように色のない乳首と、容に弄られ赤くなった乳首が見えた。
「容兄さんも脱いでよ」
寝間着の裾をくいっと引っ張り、甘えた声を出す。
その言葉に容もすべてを脱ぎ捨て全身を一葉に晒す。

触ってと言っていた割には、一葉が容のペニスに先に触れた。
「容兄さんの、大きい――もういっぱい濡れてる」
容は一葉に先手を取られた気がして、慌てて一葉のペニスに触れる。
「お前のも大きい」
お互いがペニスの先から滴る液をその手に絡め扱き合う。
ペニスを擦り合わせ、ぬちゃぬちゃと淫猥な音を響かせる。
容はお互いのペニスをすり付けるように扱く。
「あぁ……ようにぃ……もうイキそう……」
「俺も……イキそう――」
そう言いながらもお互い最後の瞬間を我慢している。
ふいに容は一葉に口づけをし、耳元で「イケよ」とねっとりとした声で絶頂へと促した。
「あん……イク……容にぃも……イって……あぁ…だめイクぅ」
容の手の中で一葉のペニスが脈打って達するのと同時に、自分の手と一葉の手の絡む中で容も達した。

容は一葉に覆いかぶさるようにして脱力し、少し顔をあげるとキスをした。

「容兄さん、今日はこれ以上は駄目だよ」
一葉は今までの盛り上がりなどなかったかのように、冷静に声を発した。
まるで、早く部屋から出て行けと言っているようだった。
容はその言葉に顔色を変えることなく、サッと寝間着を着ると、無言で部屋から出て行った。


一葉は容が出て行ってから、一人身体を拭きながら、容の手の感触が残るペニスに触れた。
そこはまだ熱く、お互いの蜜が絡み合った状態で滑っていた。
一葉はゆっくりと手を動かし始めた。
「あぁ……容にぃ……よう……に…っ」
一葉は布団を被り、容の名前を何度も言いながらもう一度達した。

つづく


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ひとひらの絆 12 [ひとひらの絆]

部屋に戻った容はこの状態に頭を悩ませていた。
嫌がる一葉を無理やりに抱いてでも自分のものにして、それを両親にばらす、そういう流れで行けばよかったはずだ。
だが、一葉は抵抗どころか逆に容を手玉に取ろうとしていた。

あのままいけば最後まで行けたはずなのに、一葉に止められすごすごと引き下がってしまった。
確実にあの瞬間の主導権は一葉にあった。結局、容は追い出された感じになってしまったのだ。

こんな予定ではなかった。
もともと一葉は眼中になかったのだ。
自分が何かを仕掛けるほどの相手でもないと思っていたのだ。
家族が少しずつ崩壊していけば、一緒にもろく崩れ去るような存在だと思っていたのだ。
それなのに、自分よりも頭の切れる奴で、容の考えていることをすべて見通しているかのようだった。

それ以来、一葉にどう対抗していいか分からず、容がこの家に来た目的の復讐という言葉すら、胸の奥に仕舞い込まれて、気が抜けたようになってしまった。


翌日学校から帰ると、堂林が来ていた。
一応まだ名目上家庭教師として来ている。
容の部屋へ入ると、早速堂林が口を開いた。
「なぁ、お前まだあの人の事恨んでんの?」
もちろん堂林の言うあの人とは京子の事だ。
「なんでだ?」
「いや……」
それっきり堂林は黙り込んでしまった。

「それで、今どういう関係なんだ?」容は気になって訊いた。
「それが……分からない……、恋人同士みたいな気もするけど、子供と一緒に出掛ける親みたいな感じもするし、嬉しそうな顔はするけど、それ以上は何もないし――どんなに誘ってもキス一つさせてくれない。お前の言っていた感じだと、すぐ身体も手に入ると思ったんだけど――」
「違ったのか……意外にガードが堅いって事か……?」
「いや、ガードが堅いって言うよりも、もともとそう言う人じゃない気がするんだ。親友の旦那を奪うようなタイプじゃない…っつーか――」
堂林は完全に京子に心を奪われていた。身体なんかよりも、京子の心が欲しいと言っているようなものだった。

――いったい、なんなんだ?まったく自分の思っていた事とは違う。すべて俺の勘違いなのか?

容はその夜じっくりと考えてみた。
守が生まれると同時くらいに、父は京子を選び結婚した。
それよりもずっと前に、一葉が生まれているから、関係が長年続いた末の結婚だ。
ではなぜ、一葉が生まれたときにあっちの家庭を選ばなかったのだろうか?
なぜ、守が生まれてからなのだろうか?

以前父は何をしていたのだろうか?
なぜ、自分は金持ちなのに、子供を二人も抱えた母に援助をしなかったのだろうか?

疑問ばかりが浮かび、答えなど到底出るはずもなかった。
そして気が付けば、一葉のあの艶っぽい表情を思い浮かべているのだった。

つづく


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ひとひらの絆 13 [ひとひらの絆]

守はまた時々だが容の部屋へ枕を持ってくるようになった。
今まで通り、股間をぎゅってしてもらうだけで満足しているようだった。
別に一葉と仲良くするのもいいと言ってやった。
でも、兄ちゃんに内緒にするのだけは駄目だと念を押した。

それから暫くは特に変わり映えのしない毎日を送っていた。

この日は、お手伝いの五月さんがお休みの日で、おやつが準備されていなかった。
守は台所のテーブルに何もないのを見てがっかりしていた。
とぼとぼとランドセルを引きずるように二階へ上がると、一葉が部屋からひょっこり顔を出し守を呼んだ。
「守くん、チョコ食べる?」
守は 顔いっぱいに笑みを浮かべ「うん!」と言ったが、そのまましばらく考えて「ううん…いい」としょんぼりしながら答えた。
「大丈夫だよ。そのうち容兄さんも帰ってくるから、一緒に食べればいいんだから」
守の頭の中はおやつの事でいっぱいになっていた。

兄ちゃんに内緒にしなければいいんだから……そうだ!

「それじゃあ、ランドセル置いたら一葉の部屋に行く。あとから兄ちゃんも来るんだよね」と弾むように言うと、自分の部屋にランドセルを投げ入れ、そのまま一葉の部屋に入った。


「んっ……んっ…一葉……気持ちいい…ほんとに兄ちゃんに怒られない…?」
一葉は顔をあげ「大丈夫だよ。容兄さんにも一緒にやればいいんだよ」と答えた。
「あん……一葉……兄ちゃんもやるの…?兄ちゃん……こんなことしないけど……」
バタンと勢いよく一葉の部屋のドアが開いて、容がものすごい目つきで立っていた。
二人は同時に音のした方を見て、守はおどおどしながらほとんど声が裏返った状態で言い訳を始めた。

「にぃぃーちゃん!ぼく…内緒じゃないよ。兄ちゃんも参加するって……一葉が――」
とうとう堪らず一葉のせいにした。
一葉はくすりと笑って、守を見てから容の方に顔を向けた。
「そうだよ。容兄さんが遅いから、少し先に始めてただけで、のけ者にする気はなかったんだよ」

容はムカつくというよりかはイラついていた。
ゆっくりとドアを閉めると、二人のいるベッドまで歩み寄った。
「守……またチョコに釣られたのか?」
ベッド脇で静かに見下ろされ、守は身を縮めた。
「違うよ……今日おやつなかったから……五月さんお休みだったから……」
子供の言い訳はこんなものかと思いながら、一葉を見た。
「一葉は……手ぇ出すなって言わなかったっけ?手は出してないとか、つまんない言い訳するなよ」
一葉は黙って、容の手首を掴みグイと引っ張った。
まさかそんな事されると思いもしなかった容は油断していたためか、あっさりとベッドに突っ伏した。
「ねぇ、守くん、容兄さんを二人で気持ち良くしてあげようか?」
そう言って、うつ伏せになっている容の身体の下に手を入れ、制服のボタンをはずし始めた。
一瞬この状況が理解できず固まっていた容は、ハッと我に返ると、一葉の手を振り払って身を起こした。
「ねぇ、このままじゃ守くんがかわいそうだよ。中途半端過ぎて……」
この状況で、そんなことを言う一葉がいまいち理解できない。
「守、あとは自分でやりなっ」
「自分でって?」
「兄ちゃんがやってやったみたいに、自分で擦るんだ、部屋へ行って自分で続きをやれ」
そう言って、守にズボンとパンツを渡し、部屋から出る様に促した。
守はぷぅっと口を尖らせ、テーブルのチョコレートを箱ごともって出て行った。

「ふふっ、守くん追い出して何する気なの?」
先ほどとは全く違う目つきで、誘う様に容を見る。
「お前は、俺に何されたいんだ?」
「容兄さんがしたいことだよ……」
またしても火花がバチバチと飛び散るほど見つめ合い、容は思わずそのまま一葉を押し倒したい衝動に駆られた。

「今日はそんな気分じゃねぇ」
まるで自分の気持ちを隠すように、容は一葉の部屋を出た。
自分の部屋へ行く途中、守の部屋を覗いたが、チョコレートをぱくついてるだけだった。
まだ性欲よりも、食欲の方が上みたいだ。

つづく


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ひとひらの絆 14 [ひとひらの絆]

一葉は朝弱いうえに、午後は早退することが多い。
身体が弱いのだろうか?確かに見た目はそうだが、特に何かの病気でもなさそうだ……。
容は守の事を心配していた。
確実に一葉が家にいる時間の方が多いからだ。
さすがにいつも守の事を気にして、学校を早退するわけにもいかなかった。

「じゃあ、兄ちゃん、行ってきまーす」
守が元気よく家を出て学校へ向かった。
今朝はお手伝いの五月さんがお休みなので、朝食はパンを焼いただけの簡単なもので済ませて、みなそれぞれ出掛けて行った。
容は前日の日曜日に学校のイベントで登校したので、この日は振替休日となった。
もちろん、一葉もだ。

一葉はまだ寝ていた。
休みだと分かっているからなのだろうか、朝食にも下りてこなかった。
容は適当に朝食の片づけを済ますと、二階の自分の部屋へ上がって行った。
ベッドにごろんと横になり、もう一眠りしようかと思っていたら、ドアをノックされた。

「容兄さん、入っていい?」

一葉だ――

「どうぞ」と一応返事をしたものの、ふいに違和感が湧き上がる。
一葉が容の部屋に来るのは初めてだ。

なんでわざわざ……。

部屋に入って来た一葉は、まだ寝間着のままだった。
そのままてくてくと傍により、ベッドに潜り込んできた。
「ちょっ……自分の部屋で寝ろよ」
「一人じゃ退屈だから、容兄さんと一緒に寝ようと思って」
すでにきゅっとくっ付きながら一葉が言う。
「寝るのに退屈も何もないだろ」
容は心臓がどきどきして、自分の腕に絡まる一葉の腕を振り払おうとした。
「あん……兄さん、いいじゃない……」
そう言って一葉は足も絡めてきた。
そして容の耳元で囁いた。

「ねぇ、僕……したい」

容の心臓が大きくドクンと鳴った。
「朝から何言ってんだ――早く部屋から出ていけよ」
言葉とは裏腹に、容は一葉を求めている。
それも、最初に思ったような復讐心とは違って、ただ一葉を手に入れたいと思い始めていた。

「いやだよ――」
一葉はそう言って容に口づけをした。
積極的に舌を入れて、なんとか容の舌に絡ませようとしている。
容はなぜ一葉がこんなことをするのか分からなかった。
守と同じように手玉に取って、何をどうしたいのだろうと、訝しく思った。
それでも、ぬるりと絡められる舌に抗う事など出来ず、気付けば夢中になって唇を貪っていた。
「あっ……容にぃ……んっ……っ」
一葉は気持ちよさそうな声を出して、容を求めた。
それから二人は衣服を脱ぎ捨て、お互いの肌に触れ、裸で絡み合い、そして見つめ合った。

「容兄さんの僕の中に入れて。ちゃんといる物持ってきたから――」
一葉は容の股間に手を添えそう言うと、脱ぎ捨てられた寝間着のポケットから小振りな容器とコンドームを一つ取り出した。

「一葉……経験あるのか?」あまりの準備の良さに、容が訊いた。
「ううん……容兄さんが初めて。でも、やり方は分かるよ――容兄さんは初めてじゃないでしょ」
一葉はどこでそんなこと知ったのだろかと容は一瞬考えたが、今はこのままこの行為を続けることで頭がいっぱいになっていた。
容は一葉から容器を受け取ると、自分の指にトロリと滴る液体を絡め、一葉のアナルにその指を這わせた。
一瞬ぴくっと緊張したように窄まったが、ゆっくりと刺激してやると、徐々に柔らかくなっていくようだった。
「あふっ……兄さん……指、上手……」
初めてという割には容に向かって上手だという一葉がますます分からなかった。
自分でやっていたのだろうか?少し弄っただけで自ずと指を呑み込んでいくようだった。
「あんっ……ん……容にぃ…気持ちいい……もっと…」
かわいい声で求められれば、容の気持ちもより一層昂ぶり、一葉の孔内の指の動きも自然と激しさを増す。
指を二本に増やしグチュグチュと掻き乱す。一葉は容に抱き付き、指の動きに合わせて腰を動かす。
その動きで、お互いにペニスが擦り合い、それだけで達しそうになる。
「にぃ……僕、もう……イキそう……」
一葉は孔の中を探られどうしようもなく感じている。
容は指を動かすのをやめ、一葉の中からその指を引き抜いた。
「容兄さん……どうして、やめないで――」思わず泣きそうな顔で懇願する一葉に、この瞬間自分が優位にいる様な気がした。
「一葉、まだ入れてもないのに一人でイク気か?」意地悪そうな顔で、一葉と視線を絡める。
「だって……我慢できなくて……じゃあ、すぐ入れてよ」
容はそんな一葉を満足そうに見下ろすと、コンドームを取り出し素早く装着した。
一葉はそれを見ながら、胸がチクッと痛んだ。

(容兄さん……やっぱり慣れてるんだ――)

つづく


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ひとひらの絆 15 [ひとひらの絆]

容は迷わず一葉の中へ侵入していく。ゆっくりと確実に、手慣れた様子ですべてを呑み込ませる。
一瞬一葉は苦痛に顔を歪めたが、容はそれには気付かなかった。

「一葉、初めてにしては上手だな――」
その言い方にはとげがある。
一葉が抵抗なく受け入れているのを見て、容はきっと初めてではないと思ったに違いない。
一葉は容の言動一つ一つに胸を苦しくした。
それでも、自分の中で容が動き出すと、すべての思考はどこかへ行ってしまう。
最初はゆっくりと、そして徐々に激しく突かれ、一葉は声を大きくして喘ぐ。
容の汗で湿った黒髪が肌に触れると、そこから全身が絡め取られたようにビリビリと痺れ、どんどんと絶頂感がやってくる。

「容……にぃ…もうダメ……本当に……もうイっちゃうよーー」

容は手加減することなく一葉を突き上げる。
身体を抱え密着したまま、中を掻き乱すように揺さぶり、そしてまた大きく抜き差しをする。

一葉はおかしくなるほど突かれ、自分でペニスを扱き、押し出される様に勢いよく吐精した。
そんな一葉を見届けるように容も間もなくして達した。

一葉が容に抱き付き、しばし余韻に浸る。
そして、さっきから何度も言おうとしていた言葉を、胸の奥から外へ出す。

「容兄さん……気持ちよかった。僕……兄さんの事、す――」
「俺は守のようには手懐けられないからな」

一葉の言葉に被せる様にして容が放った言葉は、一葉の胸をえぐった。

容にとって一葉は憎むべき家の子で、この行為も好きだのなんだのというものではない。
それでも、一瞬でも気持ちがあったように感じた。
ずっと口にしたかった言葉を、最後まで言わせてもらえず、一葉は涙が溢れそうになった。

「でも、僕とのセックス気持ちよかったでしょ。またしたかったらいつでもいいよ――」
震えそうになる声を落ち着かせ、傷ついてなんかない振りをする。
容はずるっと一葉の中からペニスを引き抜くと、さっさと後始末を始める。
一葉はその様子を見ながら、裸のままふらふらと自分の部屋へ戻った。

そんな一葉を見ながら、容はきゅっと唇を噛んだ。
一葉とセックスして、気持ちよくなって、まるで恋人にでもなった気がした。
一葉の思い通りにすべてが進んでいる気がして嫌だった。
自分も守と同じように、快楽に溺れ、一葉を求めてしまうのが嫌だった。

一葉はゲームを仕掛けている。
最後に言った言葉『いつでもいいよ』――きっとまた自分は一葉を求める。

このゲームは一葉の勝ちだ――

つづく


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ひとひらの絆 16 [ひとひらの絆]

身体がだるい――
初めてのセックスに容は手加減をしてくれなかった。
初めてだって言ったのに……。
なんども繰り返し想像した、容とのセックス。それは思ったよりも苦しいものだった。それでも容に抱かれていると思うと、それだけで興奮し感じた。

容がこの家に来る前からずっと好きだった。
この家に来たとき嬉しくて、顔を上げられなかった。
でも、ちらっと見た容の目には憎しみが見て取れた。
容が自分たちを恨んでいるのが分かった。
すごく辛かった。

容の気を惹きたくて一葉は守にちょっかいを出した。
容の弟だと思うとそれだけで、一葉にとってかわいい存在だった。

憎まれていても、容に抱いてもらえるならそれだけでいい……一葉は胸が苦しくて、苦しくて、いくら泣いてもその痛みは取れなかった。

午後になり、部屋から出ると家の中はシンと静まり返っていた。
容は出掛けたみたいだ。
一葉はシャワーを浴びて、それからお腹が空いたので冷蔵庫の中を覗いた。
タッパーに詰められた一葉専用のおかずがあった。
だけど一人での食事は気が進まない。一葉はタッパーをまた冷蔵庫に戻した。

好き嫌いが多い一葉は、他の家族とは違うものを食べる。
食事の時間、容や守は不思議そうに一葉の事を見ていた。
一葉は容に言われた言葉を思い出していた。
『肉付けろ』と言った言葉は、一葉の身体に魅力がないと言っているようなものだった。
確かに自分は痩せすぎている。
以前、容に肩を掴まれたとき全く抵抗できず、すごく痛かった。

ふと、どうやったら太れるんだろう?と考えた――やはり好き嫌いがダメと言う事なのだろうか?
今日からみんなと同じ食事をしてみようと思った。

しかしなんとか頑張ったものの、やはり急には嫌いなものを好きにはなれず、食事が余計に苦痛になった。
いつもおいしそうに食事をする守を、一葉は羨ましそうな目で見ていた。
それに気づいた容が、一葉を牽制するような目線を投げつけた。
容は一葉がまだ守を狙っていると思っているのだ。

違うのに……。

一葉はそんな胸の痛みを誤魔化すように、容とのセックスに溺れた。
抱かれている瞬間だけは、容は一葉だけを見つめてくれる。
こんな関係おかしいと思いつつも、容に憎まれている一葉にとっては、容に触れられなくなるくらいなら、胸の痛みは些末な事だと、快楽と痛みの中に身を埋めた。

つづく


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ひとひらの絆 17 [ひとひらの絆]

容はあれから、一葉に誘われるがままセックスをしている。
一度味わった快感が忘れられず、また次また次と求めてしまう。

「くそっ、これじゃあ守と同じじゃないか――」
おでこに手を当て前髪をぐしゃりと握り、自分が溺れてしまった相手を思い浮かべる。
勢いよくこの家に乗り込んできて、結局このざまか――容はそう思うととてつもなく自分が情けなくなった。
慌てて他のことに思考を移す。

堂林に時々話を聞くが、やはり京子との付き合いは今のところ友人と言った程度らしい。
それでも、堂林は満足して付き合っているのだとか……。

そして父。
父の生活は思いの外質素だ。
社長自ら時間を潰して仕事に明け暮れている、父に対しても自分が思うような人物ではなかったのではないかと思い始めていた。
それでは、いったいあの当時何があったのか?
もしかすると自分が思い込んでいる当時の記憶が違うのではないかと思った。
父に捨てられた当時、容は七歳――どんな事情で別れたにしても、幼い容には自分たちを捨てた父は悪者でしかない。それにその当時から、一葉の存在は知っていた。知らないところで弟が存在している。その事実に衝撃を受けたのを覚えている。

しかし、母は文句ひとつ言ったことはなかった。
今更自分が復讐をしてやろうなどと思ったことは、なんだか馬鹿馬鹿しく思えてきた。
母はそんな事を望むような人ではない。

そう思うと、容の気持ちは軽くなった。
結局父のおかげで、容も守も何不自由なく生活が出来ているのだから、感謝するべきなのだろうか?
今度、父とゆっくり膝を突き合わせて話をしてみる必要があると思った。


『容兄さん、いい?』部屋の外で一葉の声がした。

容が返事をすると、一葉がそろりと嬉しそうな顔で入って来た。
容はそんな顔を見ながら、胸が痛む。
一葉がベッドに腰を下ろし、椅子に座る容に手招きする。
容は一葉に吸い寄せられるように、傍に寄る。
二人はキスをしながら、ベッドに倒れ込み、お互いがただ相手の身体を求めて絡み合う。
ふと目を開ければ、艶っぽい濡れた瞳が容の目に飛び込んできた。
容はその瞳に例えようのない虚しさが込み上げてきた。

「一葉……俺の負けだな――」容はそう言うと身を起こした。
「負け…って何?どうしてやめるの?」一葉は容を縋るような眼で見ている。

「一葉の思い通りになったな――俺は一葉に溺れている。身体を奪ってやろうと思っていたのに、自分の方が心を奪われた。復讐してやろうなんて、馬鹿な事を思ったよな……」
情けない自分をどうしていいかわからず、ふーっと長い息を吐いた。

一葉は戸惑っていた。
容の言う、一葉の思い通りってどういう意味なのだろうか?
一葉に溺れていると言った言葉は?
そして――そして、心を奪われたと言った言葉は――

「容兄さん……それってどういう意味なの?心を奪われたって……僕の事――」

好きだってこと?そうなの?

以前一度自分が口にしかけた言葉を、どうしても怖くて口にできない。
早く、何か言ってと、容の顔を必死に見る。

容が一葉に覆いかぶさり首元に顔を埋める。
そしてとうとう言った。
「一葉が好きなんだ。どうしようもなく――憎むべき相手だったはずなのに、気付いたらいつも一葉の顔が浮かんで、挑戦的に俺を見る目も愛おしくて……一葉に誘われるまま、気持ちなんか無視してセックスして――どうかしてるよな……」
「気持ちって……容兄さんは僕の事好きなんでしょ?それとも僕の気持ちの事?だって、僕が誘ってるんだから、容兄さんは悪くないよ――」
容が一葉の顔に掛かる髪の毛を梳きながら言う。
「確かにな……でも、誘われても断るべきだった。こんなこと好きな相手としかするべきじゃない――」
「なんで?僕は容兄さんの事好きなのに……容兄さんだって好きって今言ったよね……ねぇ」
一葉は目の端に涙を零しながら必死に訴える。

容は一葉の口から出てくるはずのない、絶対に自分の耳に届くはずのないセリフを耳にし面食らっていた。
もちろん、今の言葉は自分の聞き間違いだと思った。
憎まれていると感じていた一葉がそんなこと言うはずない。
それでも、一葉に泣き顔を向けられ頭の中を整理してみると、やはり一葉も自分を好きだと言ったことは間違いではないと気付いた。

「一葉も俺の事好きなのか?――いつから?」思わずそんなどうでもいいことを聞いてしまった。
「ずっと、昔からだよ。ずっと、ずっと昔――父さんが家に来たときだよ」
更に容は驚き困惑する。
「どうして、そんな昔……俺のこと知ってたのか?」
「一度、家に見に行ったことがあるんだ。僕達は父さんを奪った――奪われた家族はどうなったのか、見に行ったんだ。その時、容兄さんの事見たんだ――その時の力強い目が忘れられなかった。それからずっと僕は兄さんに恋をしていた」

容は顔がとてつもなく熱くなり、目の前の一葉に目を向けられなかった。
自分の事を十年近くも想ってくれていたのだ。
その事実に、長い間一葉を恨んできた自分がどれだけ器の小さい男なのか実感したが、どうしてももう一つ器の小さいセリフを吐かなければならなかった。

「じゃあ、俺の事好きなら、守にもうあんなことするな。――俺にだけ、ああいうことはしろっ」
顔を真っ赤にしながら言ったセリフは、弟に対する嫉妬が現れていた。
「もうしない――」一葉はぎゅっと容に抱き付き約束した。

つづく


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ひとひらの絆 18 [ひとひらの絆]

「父さん、少しいいですか?」
容がこの家に来て半年、ようやく父と正面から向き合う決心をした。
この家で書斎と呼ばれる父の部屋に初めて入ったが、想像していた書斎のイメージとは全く違っていた。容や守の部屋と大差なかったからだ。
壁一面本棚だったり、真ん中にドンとデスクが置いてあって、座り心地のよさそうなリクライニングチェアみたいなのがあると思っていたが、シンプルなパソコンデスクと椅子、それとベッドもあった。京子とは寝室がどうやら別と言うことが今更ながら分かった。

容はどこにいればいいのかわからず、とりあえず立ったまま入口のドアに寄り掛かり、椅子に腰かけている父を見る。
そしてそのままずっと訊きたかったことを口にした。
「なぜ、俺たちを捨てたの?」

暫く沈黙が続く。

父がじっと容を見て、唇を一度きゅっと結んだ。
そして静かに話し始めた。

「捨てたのではないのだ――私は逃げたのだよ」
そう言った父はとても情けない顔をしていた。

「あの頃私は友人の借金を背負う事になってね……毎日金策に駆け回っていたのだよ。そして、ついにはお前たちを残して死のうとさえしたんだ……。そんな時に、百合子からある提案をされたんだよ。自分の友人――京子の事だが――自分と別れて京子と結婚してくれないかと言うものだった」

「ちょっ……なんで、母さんがそんな事言うんだよ!借金に愛人に子供まで――何してんだよ!」
容は父の一方的な話に激しい憤りを感じた。

「容、違うんだよ――京子は愛人ではないし、一葉も私の子ではないんだ――」
父の衝撃の告白に、容は何の反応も出来ず、ただただ呆然とした。
「京子が当時付き合っていた相手はな、子供が出来た途端逃げたのだよ。未婚の母となった京子は勘当同然でね、そんなときこの話が持ち上がったのだ。私が京子と結婚し、一葉の父親になって、実家に戻り会社を継ぐ。こうすれば一葉の将来は安泰だし、それと引き換えに私の借金を肩代わりしてくれると言うものだったのだ――」

言いたいことはなんとなく分かった……しかし、なぜ母はそんな事を了承し、なぜ父は援助一つしてくれなかったのか?
今一つ父の話は信用できない――そんな容の気持ちを察した父が話を続ける。

「百合子はどうせ死ぬ気だったんだから、死んだつもりで、自分の親友京子を助けてやって欲しいと言ったんだ。わたしはあなたが死んだと思って親子三人で頑張るからと……もちろん、私はお前たちにそれなりに援助はしたんだ」
「じゃあ、なんで俺たちはあんなに貧しい暮らしをして、母さんは働きづめで死んだんだよっ!」
「途中何度か会社が危なくなった時があって、援助出来ない時もあったのも事実だ。確かに貧しい暮らしはしていたと思うが、それが百合子が選んだ生活だったのだよ。使わなかったお金はすべてお前たちの名前で預金してあるんだ」
「どうして、父さんがそんなこと知ってるんだ?」
「百合子は自分の病気を知って、私にお前たちの事を頼みに来たのだよ。私がお前たちを迎えに行く勇気もなく、まごついている間に、お前達が家にやって来た。私はな……容――今でも百合子を愛しているのだよ」

だから、父さんはすんなりと俺たちを受け入れ、京子さんも、一葉も……?

「そんな……ちょっと待って。――じゃあ、一葉は……父さんが本当の父親じゃないって――」

「知っているよ」

ずっと疑問に思っていたことが一気に頭の中へ入って来て、すべてが入り乱れて収拾がつかなくなっていた。
「言ってくれればよかったじゃないかっ!そしたら誰の事も恨まなかったのに……」
容は涙が止まらなかった。悲しいのか怒っているのか、それとも嬉しいのか分からなかった。
「私を恨んで欲しかったんだ――こんなダメな父親を……だけどそのせいでお前に辛い思いをさせたようだな」そう言って父は椅子からおり、床に膝をつくと、頭を下げた。
「すまなかった」
土下座をする父を目の前にして、父も苦しんでいたのだと思った。
すぐに気持ちの整理ができるか分からないが、すべてを許したいと思った。
「もういいよ、父さん」
優しく声を掛け、容は父の部屋から出た。

つづく


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ひとひらの絆 19 第一章 最終話 [ひとひらの絆]

父の部屋を出た容は、真っ直ぐ一葉の部屋へ向かった。
ノックも忘れ、ドアを開け中へ入った。
いつものようにベッドの上で本を読んでいた一葉は、驚いた表情を一瞬見せたが、容だと分かるとその顔に笑みがこぼれた。
そんな愛しい一葉に瞬く間に抱き付きキスをしていた。
一葉は優しく容を受け止めてくれた。
そのキスは今まで以上に優しく甘いものだった。

少し落ち着きを取り戻し、一葉をじっと見つめやっと言葉を発した。
「一葉、知ってたんだな……俺たちが兄弟じゃないって」

「うん」
一葉は目を伏せぽつりと言った。

容は一葉の目元にキスをし、ぎゅっと抱きしめた。
「責めてはないんだ。言ってくれたら、一葉も一葉のお母さんも恨まなかった。あんな、けしかけるような真似しなかった――ごめん」
「ううん。恨まれて当然だよ。容兄さんや守くんから父さんを奪ったんだもの。それに、母さんは堂林さんが好きなんだよ。でも今のままじゃ、堂林さん愛人になっちゃう」
最後は少し笑う様に一葉が言った。
容もおかしくなって笑った。

「なんだか、家族みんなが変な関係だな」
「そうだね、だって僕たち恋人でしょ」

そう言った一葉の顔はほんの少しだけ以前よりも赤みが差している。
最近、容が一葉の為に特製栄養ジュースを毎朝作っているからだった。
青白かった顔は少しずつ健康的になってきている。
一葉はまずいと言いながらも嬉しそうに全部飲み干している。

「それにしても、守には悪いことしたな……欲求不満になってないかな?」
「ふふっ、心配?守くんはまだまだ美味しいものの方が好きみたいだよ。時々、お兄ちゃんが出してあげたら?僕は駄目っていわれたから」
少しおどけて言う一葉がとてもかわいかった。

「じゃあ、時々出してやるか……その前に俺たちが――」
容はニッと笑い一葉を押し倒していった。

「うんっ……んっ……容にぃ……さん……」
「おいっ!もう兄さんじゃないだろ」
「それって、キスを中断してまで言う事?」
「言うに決まってんだろ。容でいいだろ――」
一葉は頬を赤く染め、「容…」と小さく言った。
容はそんな一葉が堪らなく愛おしくて、このまま腕の中から離したくないと思った。

「あっ……あん……よう、よう……好き……」
一葉はずっと大好きだった容に抱きかかえられ貫かれて、歓喜の声をあげる。
「一葉、好きだよ――」
「あん……僕も…僕の方が、愛してる……」
二人はそのまま口づけをし、抱き合い想いを一つにした。


それから容は京子にここに来た時の想い、堂林の事を説明した。
もちろん堂林がかなり本気だと言うことも。
京子はただ優しく微笑み、わかってるわと一言言った。
この家の家族の形は今までとは変わるかもしれない。
けれど、母百合子が繋いでくれた絆は解けることはないだろう。

第一章 おわり     

そして第二章へ続く



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あとがき
こんにちは、やぴです。
『ひとひらの絆』のひとひらは一葉の事で、一葉がいたからこの絆は結ばれたと思います。
第二章はトライアングル!?かな…

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ひとひらの絆 20  ~第二章 [ひとひらの絆]

密かに公認の仲になりつつある、容と一葉。
この日は容の部屋で二人でまったりと過ごしていた。
おもむろにドアが開き、守が入って来た。

「兄ちゃんせこいぞ!一葉独り占めしてるー!」
ずかずかと二人の間に割って入り、どちらかといえば一葉に甘えたように身を寄せる。
どうやらライバル出現だ。

「守、一葉は俺のものだから諦めろ」
容は守を軽く突き飛ばし一葉を傍に寄せる。
「うう……兄ちゃんせこいぞ…ぼくも一葉欲しいよぉ」
まだガキのくせにとんでもないことを口走る。
「お前は美味しいチョコレートでも食べてればいいだろ」
「チョコも食べるけど、一葉も食べる」
「おっ、おい……一葉は食べられないだろ?どこでそんなこと覚えたんだ…?」
守は一葉の腕に絡みつき、「堂林が言ってた」と答えた。
堂林は京子と恙なく上手くいっている。家にもちょくちょく遊びに来る。

七歳も年下の弟と張り合うことも無いが、一葉とは五歳しか離れてない訳だし、そのうち取られることもあるかもしれないと、今のうちに守を潰しておこうと心に決めた。

「一葉、俺にキスして」
容は一葉とのラブラブ振りを見せつけて諦めさせようという、またしても稚拙な作戦に出た。
「嫌だよー、守くんいるから恥ずかしいもん」と一葉に丁重に断られた。

容はその返事にムッとした。
「おい、一葉、おかしくないかそれは?大体、俺に見せつけるように守のしゃぶってただろ」
「ちょっと…今それ言う?守くんが目をキラキラさせてるけど――」
守を見たら、何かを期待するように目を大きく見開いていた。
「期待しても、もうしないからな」
「兄ちゃんじゃなくて、一葉だもん」
「一葉もしないの」
「そうなの一葉?」
守は子犬のように一葉に縋り付く。
いい加減このやり取りに疲れた容は、守の首根っこ掴んでずるずると引きずり部屋の外へ出した。
「これから、兄ちゃんたち気持ちいいことするから入って来るなよ」
そう言ってドアを閉めると念のため鍵も掛けた。


振り返ると一葉が、艶っぽくそして守と同じように何かを期待する表情で容を見ていた。
「一葉、そんないやらしい顔で俺を見ないでくれ。我慢できなくなるだろ――」
我慢する気など毛頭ないくせに……一葉に擦り寄り、熱で溶けたような顔をしてキスをせがむ。
「んふっ……容がしてよ……」
一葉は最近容を翻弄することを覚えた。
十年ずっと片思いしていて、やっと両思いになったのだ。
自分ばっかり想うなんて不公平だと、子供っぽく張り合っている。
容はあまりそんなこと気にしていない。
どちらにしても最終的には愛しい一葉は自分の腕に抱かれるのだから。

*****

「くそー、兄ちゃんだけ……ぼくも一葉の声聞きたい……」
容のものになってからと言うもの、一葉は以前よりも健康的で色っぽくなった。
たぶん、色っぽくなったと感じているのは容と守だけだとは思うが……。

守は時々一葉の部屋から聞こえる官能的な声に耳を澄ませていた。
一葉の部屋は奥まった場所にあるので、守の部屋にまで声が届くことはない。
だから容と一葉が部屋に閉じこもったのを確認すると、そーっと部屋の前を陣取り聞き耳を立てる。
中で何が行われているのか、覗きたくてうずうずするが、一葉の声に興奮し、急いで自分の部屋に戻ると、自慰に耽るのを繰り返している。そして、そのとき必ず一葉にされた行為を思いだすのだ。

「んっ…んっ…かずはぁ……」
小さなペニスを兄に言われた通りに擦って、一葉の声と顔を思い出すといつもすぐに達してしまう。
ティッシュでガードした精液をじっと見ながら、一葉に飲んでもらったのを思い出す。

守は勢いよく立ち上がると、ある決意をした。

つづく


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