はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 315 [花嫁の秘密]

午後七時 <S&J探偵事務所>にて

「今日も暇そうだな」エリックは事務所に入るなり言った。どうせ誰もいないし遠慮することもない。

数日前に来た時も客が来た気配は微塵もなく、S&J探偵事務所の所員ステファン・アストンとジョン・スチュワートはひとつに椅子に二人で座って何かしていた。今日は珍しく離れた場所にいる。本当に珍しい。

「もう店仕舞いです。ミスター・コートニー」机に向かって頬杖をついていたステフが、不機嫌そうに返す。ふたつ年下のこいつは、ほとんどの場合相手が年上でも生意気な態度だし、ジョンに触れていないと不機嫌だ。

「どうせ開けてもいないんだろう?」エリックは来客用のソファに身を投げ出すようにして座った。あちこち歩いたせいか、足が重い。

「年の瀬ですからね。ここのところ新規の依頼はないんですよ」ジョンがやんわりと口を挟む。愛嬌のある黒っぽい瞳はいつもきらきらと輝いていて、いまの生活に満足していることがうかがえる。

「それで、何の用です?この前の案件なら、まだ調査中ですよ。一日二日でどうにかできることではありませんし」ステフは横柄な態度で椅子にふんぞり返った。

今日は客としてきたわけではないが、言い方ってもんがあるだろう?「いや、それとは別の話だ」

「何か飲まれますか?」ジョンは棚の上に並ぶボトルに目をやった。なかなかいい酒が揃っているが、これは誰の趣味なのだろうか。

「ありがとうジョン。このあとまだ寄るところがあるから、次回な」エリックはジョンの申し出を丁寧に断り、さっそく用件を切り出した。こういう話はぐずぐずしていても始まらない。「ステフ、お前クラブに出資しないか?ついでにフェルリッジの近くに新しく専用駅を作ってくれ」

ぽかんとするステフとジョン。当然の反応だ。これまで仕事の依頼をすることはあっても、ここまでの大きな依頼はしていない。依頼というより提案だが、どちらもはいそうですかと二つ返事で引き受けられるような内容ではない。

「えーっと……まずは――」何から返事をしていいのか、さすがのステフも言葉を詰まらせた。頭の回転の速いステフは、大抵において即答するのだが、今回ばかりはもう少し詳しい説明でもしないと、返事のしようがないといったところだろう。

ジョンはエリックの向かいに座って、心配そうにステフの方を見た。「株主になれってことですか?」エリックに向き直って尋ねる。

「クラブをひとつ買いたいと思っている。共同経営者にしてもいいが、出資だけでも別に構わない。ちなみに新しいオーナー候補の許可はまだもらっていないから、ひとまずの提案だと思ってくれたらいい」もちろんサミーが嫌だと言えば、この話はなしだ。

「どこのクラブです?俺に何の得が?」ステフは眉間にしわを寄せ、疑わしい目つきでエリックを睨むように見た。

「何の得もないかもな。ただ定期的な収入は得られる」ひとまずプルートスの名は避けた。顧客の金の動きを把握できれば、様々な方面で役に立つが、同時に守秘義務も発生する。まあ、それも状況によるが、おそらくステフにはどこのクラブだか見当がついているに違いない。

「金には困っていませんが、共同経営者にジョンの名前も連なるなら考えないこともないですよ」こういうセリフを嫌味なく言ってのけるのがステフだ。金に困っていたらとっくにこの事務所は潰れているだろう。

「それは出資割合によるな」エリックはジョンを見て言った。ジョンはこういう時あまり口出しをしない。ステフがいいと言えば、それに従うだけだ。駄目だと言えば、それまで。

「まあ、考えておきます。それで専用駅はメイフィールド侯爵の依頼ですか?」ステフはクラブの購入などたいした問題でもないとばかりに、次の話題に移った。

つづく


前へ<< >>次へ


にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村


web拍手 by FC2

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。