はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 317 [花嫁の秘密]

いったい僕は何をしているんだか。

サミーは頭の部分に貴婦人をあしらった真鍮製の火かき棒で、赤くくすぶる石炭をざくざくと突き暖炉の火を大きくしていた。

エリックはまだ戻ってこないが、食事は済ませてくるのだろうか。てっきり晩餐までには戻ってくると思っていつも通りの時間に食事を用意させたが、一向にその気配がない。今夜は一段と冷えるし、さっさと部屋へ引き上げたいのに。

「何してる?」

前かがみになっていたサミーは顔をあげて声の主を仰ぎ見た。「火を大きくしている」

「見ればわかる。食事は済ませたのか?」

「いつもの時間にね」サミーは火かき棒を台に立てかけ、エリックに向き直った。ひんやりとした空気がエリックから流れてくる。

「少しくらい待てなかったのか?」エリックはそう言いながら、炉棚の上に脱いだ手袋を置いた。

「少しは待ったさ。五分くらいね」その五分でさえ、待っている自分に馬鹿馬鹿しくなった。エリックは勝手にここに居座っているだけで、一緒に暮らしているわけでもないのに、なぜ合わせる必要がある?

「たった五分ね」エリックは呟き、サミーに手を伸ばした。腕を掴み引き寄せ、まるで熱を奪うかのようにきつく抱きついた。「しばらくゆっくりしよう」

「どういう意味だ?」なぜ抱きつく必要が?

「カウントダウンイベントまで面倒なことは全部棚上げだ」エリックは頬をすり寄せ、ほっと息を漏らした。

「メリッサに全部任せたから?」サミーは尋ねた。メリッサはジュリエットの監視を引き受けたが、本当ならその役目は僕にあった。面倒を押し付けてしまった気がして、ずっともやもやしている。

「いいや、全部手配が済んだからだ」エリックの冷たい手が頬に触れた。このあと何をされるのかわかっていても、いまさら騒いだりはしなかった。わざわざ声をあげて人を呼び寄せる必要もない。

重なってきた唇はかさついて冷たかった。外でいったい何をしてきたのだろう。性急に熱い舌が滑り込んできて、サミーは驚いてエリックにしがみついた。驚くことなどひとつもないのに、隠し事をしているせいだろうか、やけに心臓がどきどきしていてこれでは何かあったとすぐにばれてしまう。

「甘いな、デザートも食べたのか?」エリックが囁いた。

「勝手に味わうのはやめてもらえるかな?」サミーは震える声で言い返した。

「それに石鹸の香りがする」そう言いながらエリックは、当然の権利とばかりに冷たい鼻先を首筋にこすりつけた。

「食事の前に入浴も済ませたからね」

「感心だな」エリックは満足そうににやりとした。

いつもそうしているだけで、エリックのために支度をして待っていたわけではない。そう言い返してもよかったけど、なぜか機嫌が良さそうなのでやめておいた。提案を受け入れ、このままあと数日何も考えずのんびりと過ごすのも悪くない。どうせカウントダウンのイベントで、またあれこれ揉めるに違いないからだ。

「君の方はひどい臭いがしているけど、シャワーを浴びてさっさと食事を済ませる気はあるのかい。みんなをもう休ませてやりたいんだけど」サミーはエリックを押し退け、小さな丸テーブルに置かれた本を手にすると、少し前まで座ってくつろいでいたソファに戻った。

「誘ってるのか?」サミーが睨むと、エリックは冗談も通じないのかと肩をすくめた。「そうだな、汚れを落として着替えてくる間に、何か軽くつまめるものを用意しておいてくれたら、あとは勝手にできるだろう?」

「勝手にするのは君ひとりで?それとも、僕も巻き込まれるのかな」寝る前に読み終えたい本があったけど、今夜は諦めてエリックが外で何をしてきたのか聞き出す方が無難か。

「お前は家族団らんにも付き合えないのか?ったく、いいから準備しておけ」エリックはぶつくさ言いながら、居間を出て行った。

家族団らんね……。まぎれもなく家族ではあるけど、それとは違う感情とどう折り合いをつけたらいいのだろう。問題を先延ばしにするのはあまりいいことではないが、いまのところ向こうが一方的に要求してくるだけだし、しばらくは成り行きに任せで様子見をするしかないだろう。

つづく


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