はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 302 [花嫁の秘密]

「おい、サミー。その辺にしとけ」

サミーに酒を飲ませるんじゃなかった。いや、軽く食事をして程よく酔った状態まではよかった。特に顔色が変わるわけでも暴れるわけでもなく、ただ少しいつもより感傷的になるだけだし、普段喋らないことも喋ってくれる。飲みすぎればもっと違った姿が見られるのだろうが、そんな姿は他の誰にも見せるつもりはない。

カードルームへ行ったのが間違いだ。てっきり酔ったら弱くなるものだと思っていた。デレクが姿を現すまでの時間潰しでと始めたが、このままではテーブルに着く三人を丸裸にしてしまう。

エリックは青ざめる三人に愛想笑いを向け、サミーの腕をがっちり掴み引き上げると、そのまま引きずるようにしてカードルームを出た。

「まったくお前はどうしようもないな」サミーを壁に押し付けシルバーの瞳を覗き込む。多少ぼんやりとしているが、一見酔っているようには見えない。

「せっかく勝っていたのに」不貞腐れて睨んでくるサミーはまるで子供みたいだ。色々な紳士クラブがある中でここを選んだのは、賭けは二の次で、純粋にゲームをするのが好きだからだろう。

「俺が好きなもの買ってやるから我慢しろ。もう少ししたらデレ――」

『来ました』

耳打ちをされ、エリックはラウンジの向こうに目をやった。デレクは時間通りってところか。ホワイトはおそらくオルセンの所へ顔を出してから、ここへ来るだろう。あいつは自分を見せびらかすことしか頭にない間抜けだ。

「もう少ししたらなんだ?」サミーは言いながら目を閉じた。テーブルから離れ集中力が切れたようだ。

エリックはサミーを連れてスモーキングルームへ入った。部屋を横切り、別のドアから出ると暗い廊下を慎重に進んだ。足取りはしっかりしているが、何も言わずに従っているところがもう普通ではない。たかがグラス三杯程のシャンパンで酔いはしないと言い切れないのがサミーだ。

「サミー、上で少し休め」エリックはサミーを先に行かせながら言った。階段は狭く二人並んであがるのは不可能だからだ。

「僕を追い払って何をするつもりだ」サミーが顔だけ振り返って不満をこぼす。

追い払うどころか襲い掛かりたいところだが、せっかくのチャンスをふいにはできない。「クィンがいたからちょっと話をしてくる」今夜会えると思わなかったから、少し予定変更だ。

「オーナーに何の用?もしかしてここを買うって話じゃないだろうね」

「別件だ。いいからお前はコーヒーでも飲んでろ」エリックはさっさと行けとサミーの背中を押した。

「コーヒーはあまり好きじゃない」

「ならココアにしてやるから文句は言うな」

まったく。ここまで甘やかして、俺はこいつのいったい何なのだろうな。

つづく


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