はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 304 [花嫁の秘密]

デレクの人生の中で、サミーの存在はそれほど大きなものではない。ほとんど交流のないただの同級生で、お互い好感を抱いているとは言い難い。

いや、はっきり言って、サミーは俺を嫌っている。理由は明確。もうずっと昔の、まだお互い子供だった頃、俺がサミーを傷つけたから。

もちろん当時はそんなつもりはまったくなかった。寄宿学校ではあれは通過儀礼のようなものだし、気に入らないからしたわけではない。あの後、サミーはまるで元からそこにいなかったかのように姿を消し、残った者は記憶からサミーを消した。

でもいまは違う。何から何まで気に入らない。味方を得て気が大きくなっているようだが、エリック・コートニーなど潰すのは簡単だ。先にあの目障りな男から始末したっていい。あいつは害でしかない。

「エリックの事を言っているのなら、まああながち間違いではないかもね。彼は兄弟の面倒を見るのが好きだし、この世界のルールをよく知っている。だから敵に回さない方がいい」サミーは冷静に切り返してきた。煽られて怒鳴り散らしたりはしないようだ。けど確かに動揺はしている。

「それなら注意されなかったか。兄の元恋人と付き合うなと」

そう、サミーがジュリエットと付き合ったりしなければ、数年に一度顔を見かける程度の男のことなど思い出しもしなかったし、今回のターゲットにもならなかった。これまでサミーが新聞紙面を騒がせたことがあっただろうか。誰かと噂になったこともなければ、その存在すら先代のメイフィールド侯爵が亡くなるまで忘れ去られていたくらいだ。

「ジュリエットの事なら、ただの友人だ。だいたい僕が誰と付き合おうが、彼には関係ない。君にもね」サミーはうんざりしたように溜息を吐き、気だるげに髪をかきあげた。

「侯爵夫人も同じように思うだろうか?できれば夫の元恋人と顔を合わせたくはないだろう」デレクは意地悪く微笑んだ。ジュリエットを思い通りに動かすのは、そう難しいことではない。

「どういう意味だ?」

「世間は狭い。顔を会わせる機会はいくらでもある」

「君は僕にジュリエットと付き合うなと言っているのか?」サミーは訝しがりながら尋ねた。

いや、その反対だ。そう言い返したかったが、余計なことを口にしないだけの分別はある。けれどサミーの顔を見ていると無性に腹立たしく、ありとあらゆる言葉で傷つけてやりたくなる。

「サミーにはジュリエットくらい経験豊富な女がいいかもしれないな。無垢な少女だと背中の傷に――」

言い終わらないうちに突然掴みかかられた。いや、猟犬が獲物を仕留めようと喉元に噛みつくような、とにかく気づけば背中が絨毯に押し付けられていた。

つづく


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