はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 309 [花嫁の秘密]
クィンの話を聞きたがっていたサミーは、自分の話が終わると眠ってしまった。さすがに抱えて階段をのぼるわけにもいかず、プラットに言って毛布を持ってこさせた。
「目を覚ましたら部屋へ連れて行くから、気にせずもう休め」エリックはプラットを気遣い慇懃に言った。
「何かございましたらすぐにお呼びください」プラットは気づかわしげにサミーを一瞥したが、特に意見することはなかった。
「ああ、そうだ。プラットは先代の時はここにいたんだっけ?」下がろうとするプラットに、エリックは思い出したように尋ねた。
「いいえ。いまの旦那様になってからでございます。今年に入ってから父が引退しましたので、この屋敷全般を任された次第です」
任されたと言っても、クリスがこっちに出てくるときはダグラスも連れてくるから、胸中は複雑だろう。
「お父上は元気にしているのか?」そう歳にも見えなかったが、息子に職を譲るために引退したのかもしれない。ここに来る前は何をしていたのだろう?お屋敷勤めよりも、帽子屋か何かが似合いそうだ。
「おかげさまで。旦那様が郊外に家を用意してくださって、そこで母とのんびりと暮らしております」プラットの表情に尊敬の色が浮かんだ。まだ新人と呼んでもいいほどだが、クリスとしっかり主従関係は結ばれているようだ。
「それはよかった」
プラットは下がり、居間にはエリックとサミーだけになった。今夜はクレインも顔を出すことはないだろう。
サミーの話を聞いて、すっかり酒を飲む気が失せた。口を付けずじまいのグラスを眺めながら、サミーの言葉を反芻する。
『裸にされて――』
そのあといったい何をされたのだろう。いたって軽い口調でよくあるいじめだと言ったが、学校に行ってもいないサミーに何がわかる?クリスから話を聞いていた可能性はある。ハニーがセシルから学校のあれこれを聞いていたように。
その時のサミーの傷の程度はどうだったのだろう。血が滲むほどの生々しさなら、学校で問題になってもおかしくはない。学校がいじめを見過ごさない体制なのは珍しい気もするが、侯爵家の子息に傷をつけたとあっては責任問題にもなりかねないから、きっと犯人探しに躍起になっただろう。
もしかすると、サミーは誰にやられたのか答えなかったのかもしれない。だからこそ呼び出しを受けた侯爵は――実際対応したのは叔父らしいが――すべてを揉み消し、サミーはまた地獄へと逆戻りとなった。
そこであいつにいいようにされたわけだ。家庭教師とは名ばかりの男、マーカス・ウェスト。この男の事を調べたとサミーが知ったら、さぞかし怒るだろう。
それでもサミーのことを知らずにはいられない。寄宿学校で何があったのか、詳しく知りたければデレクに聞くのが早いが、それではあいつに餌をやることになる。学校関係者を探る方が、面倒でもサミーをこれ以上傷つけることはないだろう。
関わった前侯爵も叔父も亡くなっている。けどダグラスは何か知っているだろう。あの屋敷でずっとサミーの成長を漏らさず見ているのはおそらく彼だけだ。
喋るとは思わないが、次に会ったら聞いてみるのも悪くない。
つづく
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「目を覚ましたら部屋へ連れて行くから、気にせずもう休め」エリックはプラットを気遣い慇懃に言った。
「何かございましたらすぐにお呼びください」プラットは気づかわしげにサミーを一瞥したが、特に意見することはなかった。
「ああ、そうだ。プラットは先代の時はここにいたんだっけ?」下がろうとするプラットに、エリックは思い出したように尋ねた。
「いいえ。いまの旦那様になってからでございます。今年に入ってから父が引退しましたので、この屋敷全般を任された次第です」
任されたと言っても、クリスがこっちに出てくるときはダグラスも連れてくるから、胸中は複雑だろう。
「お父上は元気にしているのか?」そう歳にも見えなかったが、息子に職を譲るために引退したのかもしれない。ここに来る前は何をしていたのだろう?お屋敷勤めよりも、帽子屋か何かが似合いそうだ。
「おかげさまで。旦那様が郊外に家を用意してくださって、そこで母とのんびりと暮らしております」プラットの表情に尊敬の色が浮かんだ。まだ新人と呼んでもいいほどだが、クリスとしっかり主従関係は結ばれているようだ。
「それはよかった」
プラットは下がり、居間にはエリックとサミーだけになった。今夜はクレインも顔を出すことはないだろう。
サミーの話を聞いて、すっかり酒を飲む気が失せた。口を付けずじまいのグラスを眺めながら、サミーの言葉を反芻する。
『裸にされて――』
そのあといったい何をされたのだろう。いたって軽い口調でよくあるいじめだと言ったが、学校に行ってもいないサミーに何がわかる?クリスから話を聞いていた可能性はある。ハニーがセシルから学校のあれこれを聞いていたように。
その時のサミーの傷の程度はどうだったのだろう。血が滲むほどの生々しさなら、学校で問題になってもおかしくはない。学校がいじめを見過ごさない体制なのは珍しい気もするが、侯爵家の子息に傷をつけたとあっては責任問題にもなりかねないから、きっと犯人探しに躍起になっただろう。
もしかすると、サミーは誰にやられたのか答えなかったのかもしれない。だからこそ呼び出しを受けた侯爵は――実際対応したのは叔父らしいが――すべてを揉み消し、サミーはまた地獄へと逆戻りとなった。
そこであいつにいいようにされたわけだ。家庭教師とは名ばかりの男、マーカス・ウェスト。この男の事を調べたとサミーが知ったら、さぞかし怒るだろう。
それでもサミーのことを知らずにはいられない。寄宿学校で何があったのか、詳しく知りたければデレクに聞くのが早いが、それではあいつに餌をやることになる。学校関係者を探る方が、面倒でもサミーをこれ以上傷つけることはないだろう。
関わった前侯爵も叔父も亡くなっている。けどダグラスは何か知っているだろう。あの屋敷でずっとサミーの成長を漏らさず見ているのはおそらく彼だけだ。
喋るとは思わないが、次に会ったら聞いてみるのも悪くない。
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