はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 301 [花嫁の秘密]
「今夜は人が少ないようだね」
ポーターにコートと帽子、ステッキを預け、サミーはラウンジを見回した。この時間にしては――と言うほどプルートスに通い詰めているわけではないが――人はまばらで、会員より従業員の方が多いほどだ。
「オルセンのところで大きなパーティーがあるからだろう」エリックはポーターに何か耳打ちすると、そばに来て言った。
「オルセン?大富豪のあの?」
「娘の婿探しさ。適当なやつらを手当たり次第に招待している」エリックは難を逃れてホッとしているようだ。
「もしかして君も招待されていたのか?」訊くまでもない。オルセンがエリックを招待するのは当然だ。家柄もよく見た目も申し分ない、職業柄オルセンの助けにもなるとなれば婿候補として名前が上がってもおかしくはない。
「しばらく予定はないと言っただろう」エリックはさらりと言って、サミーにどこでも好きな場所へ座れと促す。何から何まで仕切るかと思えば、席は選ばせてくれるようだ。
「キャンセルしたからだろう」サミーはエリックを睨みつけ、暖炉の近くの席を陣取った。いつも年寄りに占拠されている場所だ。いつもの年寄りたちもオルセンに招待されたのだろうか?花婿候補にはなりそうにもないのに。
座るとすぐに給仕係がシャンパンとグラスを運んできた。確かエリックは外では飲むなと言っていなかったか?それとも、俺がいない場所では飲むな、だったか。どちらにしても従う気はなかったけど。
グラスが満たされ給仕係が行ってしまうと、サミーは声をひそめて言った。「今夜の目的は?ただ遊びに来たわけじゃないだろう」
「ただ遊びに来ちゃ悪いか?」エリックは喉の渇きを潤すようにグラスをいっきに空けると、ようやくひと心地つけたというように長く息を吐いた。
「ポーターには何を?」サミーはグラスを手に尋ねた。来て早々指示を出していたように見えたけど、彼もエリックが潜り込ませているスパイの内の一人なのだろうか。
「別に、たいしたことじゃない」エリックは軽く受け流すと、ボトルを手にしてさっさとグラスを開けろと顎をしゃくった。
「僕はゆっくり飲みたいから、勝手にどうぞ」一口飲んだところで、テーブルにスモークサーモンが運ばれてきた。小さなパンケーキのようなものが添えられている。「そういえば、メリッサ嬢はいつこっちへ?」
「明日には戻って来るんじゃないのか。そんなに遠くにいるわけでもないし」エリックは自分のグラスを満たすとパンケーキをつまんだ。
「オークロイド・パークの隣だろう。あそこはちょっと不便だよね」
「行ったことあるのか?」
「一度だけね。でも僕は狩猟なんかちっとも楽しいと思わないし、クリスの親友と気も合わないから、それ以来行っていない」
「ああいう集りは引きこもりには辛いだろうな」エリックは笑いながら言って、フォークでスモークサーモンをすくいあげた。「ほら、食え」
「押し付けるのはやめてもらえるかな?」いくら人が少ないとはいえ、誰に見られてもおかしくない場所で子供みたいな扱いをされるのは我慢ならない。けれど、面倒なのでフォークごと受け取り、エリックの望み通り口に押し込み、ついでにグラスも空にした。
これで文句はないだろう。
つづく
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ポーターにコートと帽子、ステッキを預け、サミーはラウンジを見回した。この時間にしては――と言うほどプルートスに通い詰めているわけではないが――人はまばらで、会員より従業員の方が多いほどだ。
「オルセンのところで大きなパーティーがあるからだろう」エリックはポーターに何か耳打ちすると、そばに来て言った。
「オルセン?大富豪のあの?」
「娘の婿探しさ。適当なやつらを手当たり次第に招待している」エリックは難を逃れてホッとしているようだ。
「もしかして君も招待されていたのか?」訊くまでもない。オルセンがエリックを招待するのは当然だ。家柄もよく見た目も申し分ない、職業柄オルセンの助けにもなるとなれば婿候補として名前が上がってもおかしくはない。
「しばらく予定はないと言っただろう」エリックはさらりと言って、サミーにどこでも好きな場所へ座れと促す。何から何まで仕切るかと思えば、席は選ばせてくれるようだ。
「キャンセルしたからだろう」サミーはエリックを睨みつけ、暖炉の近くの席を陣取った。いつも年寄りに占拠されている場所だ。いつもの年寄りたちもオルセンに招待されたのだろうか?花婿候補にはなりそうにもないのに。
座るとすぐに給仕係がシャンパンとグラスを運んできた。確かエリックは外では飲むなと言っていなかったか?それとも、俺がいない場所では飲むな、だったか。どちらにしても従う気はなかったけど。
グラスが満たされ給仕係が行ってしまうと、サミーは声をひそめて言った。「今夜の目的は?ただ遊びに来たわけじゃないだろう」
「ただ遊びに来ちゃ悪いか?」エリックは喉の渇きを潤すようにグラスをいっきに空けると、ようやくひと心地つけたというように長く息を吐いた。
「ポーターには何を?」サミーはグラスを手に尋ねた。来て早々指示を出していたように見えたけど、彼もエリックが潜り込ませているスパイの内の一人なのだろうか。
「別に、たいしたことじゃない」エリックは軽く受け流すと、ボトルを手にしてさっさとグラスを開けろと顎をしゃくった。
「僕はゆっくり飲みたいから、勝手にどうぞ」一口飲んだところで、テーブルにスモークサーモンが運ばれてきた。小さなパンケーキのようなものが添えられている。「そういえば、メリッサ嬢はいつこっちへ?」
「明日には戻って来るんじゃないのか。そんなに遠くにいるわけでもないし」エリックは自分のグラスを満たすとパンケーキをつまんだ。
「オークロイド・パークの隣だろう。あそこはちょっと不便だよね」
「行ったことあるのか?」
「一度だけね。でも僕は狩猟なんかちっとも楽しいと思わないし、クリスの親友と気も合わないから、それ以来行っていない」
「ああいう集りは引きこもりには辛いだろうな」エリックは笑いながら言って、フォークでスモークサーモンをすくいあげた。「ほら、食え」
「押し付けるのはやめてもらえるかな?」いくら人が少ないとはいえ、誰に見られてもおかしくない場所で子供みたいな扱いをされるのは我慢ならない。けれど、面倒なのでフォークごと受け取り、エリックの望み通り口に押し込み、ついでにグラスも空にした。
これで文句はないだろう。
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