はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 296 [花嫁の秘密]

予定時間を三〇分ほど過ぎて、フェルリッジの最寄り駅にセシルの乗った列車が到着した。
三等車にはエリックに例の箱を回収するように言われた男が乗っていて、侯爵邸まで一緒に行くことになったが、うまく連絡が行っていなかったみたいで、クリスが寄越した迎えの従僕とひと悶着あった

警戒するのも仕方がない。僕の連れだということで何とか説得したけど、向こうでクリスにきちんと説明しないと、この従僕の首が飛んでしまうだろう。きっとクリスはかなり神経質になっているだろうから。

一時間かけて侯爵邸に到着した時には、セシルのお腹は悲鳴を上げていた。
とにかく何か食べなきゃ。ちょっと早いけど、お茶の時間にしてもらおう。僕にとってはお昼だけど。

「やあ、ハニー久しぶり。と言うほどでもないけど」セシルはアンジェラを抱擁し、その後ろに立つクリスに小さく頷いてみせた。話は中でということだ。「いきなりだけど、お腹すいちゃって」

「そう思って色々用意しておいたわ」アンジェラはにっこりと笑った。兄をもてなすことなど余裕のようだ。

「クリスマスのごちそうが残っているといいんだけど」セシルは舌をぺろりと出した。ケーキなんかもあるとすごくありがたい。

「大丈夫よ。食べきれないほどあるから」アンジェラはそう言って、セシルを居間へ引っぱって行く。こちらも話がたくさんありそうだ。「クリスも一緒にお茶にするでしょう?」夫を誘うことも忘れていない。

おそらくクリスはハニーに内緒で話をしたかったはず。でもまあ、どう考えても無理な話だ。クリスも諦めた様子で後に続いた。

大きなポットにたっぷりの紅茶と、花柄の陶器の大皿に盛られたサンドイッチがまず運ばれてきた。薄切りのハムが幾重にも重ねられたサンドイッチはここでのお気に入りのひとつだ。

「それで、こっちではどういう話になっているの?」セシルは尋ねるだけ尋ねて、まずはサンドイッチにかぶりついた。熱々の紅茶を飲もうとしたら、ちょうどスープが運ばれてきて静かにカップをソーサーに戻した。オニオングラタンスープだ。火傷しないように気をつけなきゃ。

「セシルが来たら一緒にロジャー兄様の所へ行くんでしょ」アンジェラはどこか不満そうに隣のクリスを見る。

クリスは何とか威厳を保とうと硬い表情を崩さずにいるけど、昨日の朝から今日までの間に揉めに揉めたのは明白だった。それでもハニーがクリスに従うことにしたのは懸命だ。アチッ!美味しい。気の利くリクエストをしてくれたハニーを褒めるべきか、キッチンにいる料理人を褒めるべきか、とにかく身体が冷えていたからありがたい。

「ハニー、せっかくだからソフィアとじっくり話をしたらどうだい?」クリスは目的をすり替えてなんとか納得させようと試みているようだ。納得させるのはたぶん無理だから、不機嫌なハニーを受け入れるしかクリスに残された道はない。

「お母様とはもちろん話をするわ」アンジェラはつんと顎をあげて挑戦的だ。

「ハニー、クリスを困らせちゃだめだよ。とりあえず安全が確認できるまでは、ここを離れているのが一番いいんだから」チキンの付け合わせの揚げたてのチップスを口に入れる。ほくほくでこれも美味しい。

「困らせたりしないわ。ただ、大袈裟な気がして……」アンジェラは肩の力を抜いて、息を吐いた。

「大袈裟なもんか」クリスは声を震わせ、アンジェラを抱き寄せた。数ヶ月前殺されかけたことを思えば、クリスの反応は当然だ。

「ああ、そうだ。クリス、サミーがすごく怒っていたよ」これを伝えなきゃいけなかったんだ。どうしてクリスはサミーに電報を打たなかったのか、答えてくれるだろうか。

つづく


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