はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
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花嫁の秘密 282 [花嫁の秘密]

サミーは怒って当然だ。だが、もう少し突っかかってくると思った。
やけにおとなしいのは、予想以上に怒っているからか、それとも呆れかえっているからか。

気付けば自然とサミーの肩に手を回していた。時折、頭を撫で、まだ湿ったままの毛先を弄ぶ。きちんと乾かせとあれほど言ったのに、こんなことだから、こいつは風邪をひくんだ。

「話は終わり?」サミーが顔をあげてこちらを見た。いつもより瞳が青みがかっている。今どんな心境なのだろう。

「セシルにした話を、俺にする気はあるのか?」全部聞いていたが、サミーの口からもう一度聞きたかった。父親の話をするのはまれで、その時少なくとも好感を持った男についても、もう少し知る必要がある。

「どうせ聞いていたんだろう?昔会ったことのある男を見かけた、それだけだよ」サミーはエリックの胸に寄り掛かって目を閉じた。同じ話を繰り返す気はないようだ。

「そいつはもしかして短髪の男か?」サミーが従者のようだと言っていたが、あの男を見た時の違和感はこれか。

「金髪で青い目のね」

「同じやつを怪しいと思ったわけだ」さすがはサミー。人を見る目がないだと?とんでもない。こいつほど人を見抜く能力に長けたやつが他にいるもんか。

「僕の場合、怪しいとはちょっと違うかな。ただ不思議に思っただけなんだけど、つまり怪しいと思ったってことかな?」サミーはほとんど独り言のように言い、じっと考え込んでしまった。また過去の記憶を掘り起こしているのだろうか?

「以前どこかで見た記憶はあるんだが、いつどこで、いったい誰なのかが思い出せない」この一,二年のことなのかそれよりもずっと前なのか、まずはそこから絞り込む必要がある。

「四人目の可能性があるのか?」

「いや、違う……」エリックは慎重に答えた。確信は持てないが、四人目ではない。でも、あいつに感じた違和感は他にもあった。「クレインに調べさせたからそのうち正体がわかるだろう」

「クレイン?」サミーが顔をあげた。

「ただの調査員だ。お前が気にすることはない」

「僕の事は知りたがるくせに、僕が知ろうとするのは拒むってわけだ」サミーがあからさまにむっとした顔をする。この反応が単純に俺の事を知りたがっているものだと、喜べればいいのだが。

「拒んだりしない。ただ説明するほどの事じゃないだけだ」こういう返しをして、サミーが納得するはずがない。知られて困るわけでもないし、言っておくか。「個人的に雇っている男で、今回の件には最初から絡んでいる。お前を守るために動いている、それと、あのチョコレートを勧めたのはクレインだ」まあ、正確には違うが。バーンズの所へ行ったのはまた別の機会に話すことにしよう。

「チョコレートで僕の機嫌を取って、ジュリエットの相手をさせようって魂胆だったわけね」

「お前はいちいちうがった見方をしなきゃ気が済まないのか?」あながち間違っていないのが恐ろしい。

「まあ、いいけどね。それで?他に気になった人はいた?」

サミーはこの調査を楽しんでいるようだ。ずっと俺の腕の中にいるのに文句ひとつ言わないのは珍しい。

「ああ、何人かいた。それも別口で調べさせている。もちろん詳細が分かり次第、お前には知らせる」

「エリックは自分で会社を興そうとか思わないの?フリーとはいえ、一応新聞社に所属はしているんだろう?」

「そういう話をしだしたらきりがない。せっかくのクリスマスが台無しになるだろう。ほら、キスくらいさせろ」エリックはサミーの顎を指先で軽く上げた。

「もう十二時を過ぎてたんだ。ここにヤドリギはないからキスはしないよ」炉棚の上の置時計を見て言う。

「小枝をポケットに忍ばせている」確かめたかったらどうぞと、腰をひねる。

「嘘つき」サミーは笑った。

「いいから、黙ってこっちを向け」エリックはそう言って唇を重ねると同時に、サミーを寝椅子にゆっくりと押し倒した。

つづく


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