はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 293 [花嫁の秘密]

翌日、朝食を済ませるとエリックはセシルを連れて、リード家の馬車で駅へ向かった。

これから大役を果たさなければならないセシルは、食事が詰め込まれたバスケットを手に陰鬱な溜息を吐き、用が済んだらすぐに戻るからねと言ってサミーとの別れを惜しんだ。

「クリスにはちゃんと知らせてあるんだよね?」セシルは心配そうに尋ねた。

「ああ、駅に到着する時間も告げてあるが、時間通りにとはいかないだろうな。まあ、昼までには向こうに戻れるから心配するな。戻ったらすぐに支度をしてロジャーの所へ行け」

クリスにもロジャーにも連絡済みだが、こっちの考えに賛成してくれているかは不明だ。クリスがハニーを危険から遠ざけることに反対するとは思えないが、なんにしてもセシルがハニーをうまく動かす必要はある。

「結局、みんなで年越しだね。母様はショックから立ち直ったかな?いつも通りおしゃべりなら安心だね。それで、リックはサミーと二人でこれからどうするの?」セシルは好奇心いっぱいの瞳を兄に向けた。最初からこれを聞きたかったに違いない。

「別に。サミーが余計なことをしないように見張るだけだ」

「余計なことって、カウントダウンイベントにジュリエットと行くってあれ?昨日の新聞にも二人の記事が結構大きく載ってたけど、このままだと本当に――」

「うるさい。それ以上言ったら口を縫い付けるぞ」エリックはこれ以上何も受け付けないとばかりに、セシルの言葉を遮った。サミーの行動にはいつもやきもきさせられて、次は何をするかと気が気ではない。

「はいはい」セシルは適当に返事をし、またふと思いついたように言う。「そう言えば、彼女には他にパトロンはいないの?」

「いまはいないな。と言っても、デレクから援助はされているようだが」金だけが目当てなら相手はデレクでもいいはずだ。ジュリエットがサミーにこだわるのは、サミーがクリスの弟だからだ。つまり、ただの当てつけでしかない。

「お金の流れとか掴んでるの?」セシルが無邪気な質問をする。

「なぜ掴めていないと思う?あいつの財布は父親のブライアークリフ卿にしっかりと握られているから、調査しやすいんだ」そう言ってエリックは窓の外に目を向けた。昨夜はあまり眠れなかった。サミーに腹を立てて、食事の時以外顔を合せなかったからかもしれない。

「ふうん。僕も大金を動かしたらすぐにばれちゃうのかな?」真剣に言うセシルが可笑しかった。けど、セシルの金の動きを追っても面白いことなどひとつもない。

「お前は大金なんか持っていないだろう。小遣いが欲しいならいつでも言え」

「別に使うことないからいらないよ。でももしもの時は貸してね」

セシルにもしもの時などあるのだろうか?まだ学生を継続中だし、将来のこともあまり考えてなさそうだが、それも仕方がないか。セシルはずっとハニーの面倒を見てきたし、結婚してもこうして問題が起これば急いで駆けつける。

「戻ったらまたローストビーフを食べに連れて行ってやる」いまは金よりこっちだな。

つづく


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