はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 288 [花嫁の秘密]
ブラックが戻ってもう一〇分が過ぎた。エリックは寄り道をしているようだが、急いで戻れという僕の言葉は無視したというわけか。
この三〇分の間にセシルと話せることは話した。クリスにはアンジェラを守ってもらい、僕たちは犯人を捜す。見つけた後どうするかはまだ決めていないが、僕は引き金を引くことに躊躇いはない。
「ねえ、ブラックはすぐに戻ってきたけど、リックは案外近くにいたのかな?」セシルは薄くスライスされたシュトーレンを紅茶に浸してから口に入れた。残り物でもなんでも美味しそうに食べるセシルは、この屋敷でもすでに人気者だ。
「ほんと、彼はいったい何者なんだろうね」サミーは腹立たしげに吐き出した。やってることは単純明快で、彼は自分の仕事のために調査員を何人も雇い情報を手に入れている。それを新聞や雑誌に売る、もしくは自分で記事にする、それとおそらく特別な機関への情報提供なんかも行っているのだろう。
エリックはどうやってその地位を手に入れた?後ろ盾は、ロジャー?いや、それよりもずっと地位が上の人間だろう。
「どこまで話が進んだ?」エリックが戻ってきた。前置きもなしに話し始める辺り、どこかで情報を掴んできたのだろう。無理矢理隣に座り、ひとのカップを取って勝手に飲み干す。だんだんとこういう不作法さにも慣れてきた。
サミーはポットに手を伸ばして、ティーカップを再び満たした。
「アンジェラ宛てに物騒なものが届き、クリスはそれを殺害予告だと思っている。それが置かれた状況から、内部犯を疑っているようだけど、思い当たる人物はいない。だから僕たちの知っている、いや違うな、君たちの知っている情報をよこせとクリスは言っている、こんなところかな」
「本当に内部犯じゃないのか?」エリックは念のためといった感じで確認し、髪を縛っている革紐を解きテーブルに投げ出した。軽く頭を振るといつもとは違う匂いがした。
いったいどこに行っていたのか、後で尋ねる時間はあるだろうか。
「僕の知る限り、違うね。それに、あの事件の後クリスは使用人の調査を行っている。昔からいる者がほとんどだけど、金に目がくらんでということもありえるからね。もちろん問題のある者などいなかったけど」二人の目で確認したことだ、まず間違いはないだろう。
「クリスの考えはわかった。お前たちはどう思う?」エリックは訊いた。
「そりゃ、断然怪しいのはあの人でしょ?」とセシル。
「僕もセシルと同じ意見だけど、目的がよくわからないな」
「目的が何であれ、このままにはしておけないな」そう言ったエリックの声音はひどく冷淡で、これがたとえただの脅しだったとしても、脅した者は無事では済まないだろうと想像できた。
「僕が向こうへ戻ろうか?状況を把握するにはそれがいいと思うけど」サミーはそう言って、エリックを見た。許可を求めたわけではないが、この問題にはそれぞれが役割を持って行動する必要がある。
「いや、お前はここでジュリエットを見張ってろ。向こうへはセシルが行け」
「え?僕で大丈夫かな?」セシルは戸惑い、サミーに目を向けた。
誰がどう動くかを決定するのは、いったい誰にあるのだろう。
「見張りね……彼女が滞在しているホテルにでも移ろうか?」いっそそうしてしまえば、彼女の動きを追いやすい。ついでにエリックからしばらく逃げることもできる。
「そうじゃない。見張りはすでに付けてる。お前はハニーが無事ラムズデンに到着するまで、ジュリエットを引きつけておけ」
エリックはアンジェラを守るため、僕を生贄として差し出すわけだ。至極まっとうな提案だとわかっていても、なぜか、すごく、胸が痛んだ。
つづく
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この三〇分の間にセシルと話せることは話した。クリスにはアンジェラを守ってもらい、僕たちは犯人を捜す。見つけた後どうするかはまだ決めていないが、僕は引き金を引くことに躊躇いはない。
「ねえ、ブラックはすぐに戻ってきたけど、リックは案外近くにいたのかな?」セシルは薄くスライスされたシュトーレンを紅茶に浸してから口に入れた。残り物でもなんでも美味しそうに食べるセシルは、この屋敷でもすでに人気者だ。
「ほんと、彼はいったい何者なんだろうね」サミーは腹立たしげに吐き出した。やってることは単純明快で、彼は自分の仕事のために調査員を何人も雇い情報を手に入れている。それを新聞や雑誌に売る、もしくは自分で記事にする、それとおそらく特別な機関への情報提供なんかも行っているのだろう。
エリックはどうやってその地位を手に入れた?後ろ盾は、ロジャー?いや、それよりもずっと地位が上の人間だろう。
「どこまで話が進んだ?」エリックが戻ってきた。前置きもなしに話し始める辺り、どこかで情報を掴んできたのだろう。無理矢理隣に座り、ひとのカップを取って勝手に飲み干す。だんだんとこういう不作法さにも慣れてきた。
サミーはポットに手を伸ばして、ティーカップを再び満たした。
「アンジェラ宛てに物騒なものが届き、クリスはそれを殺害予告だと思っている。それが置かれた状況から、内部犯を疑っているようだけど、思い当たる人物はいない。だから僕たちの知っている、いや違うな、君たちの知っている情報をよこせとクリスは言っている、こんなところかな」
「本当に内部犯じゃないのか?」エリックは念のためといった感じで確認し、髪を縛っている革紐を解きテーブルに投げ出した。軽く頭を振るといつもとは違う匂いがした。
いったいどこに行っていたのか、後で尋ねる時間はあるだろうか。
「僕の知る限り、違うね。それに、あの事件の後クリスは使用人の調査を行っている。昔からいる者がほとんどだけど、金に目がくらんでということもありえるからね。もちろん問題のある者などいなかったけど」二人の目で確認したことだ、まず間違いはないだろう。
「クリスの考えはわかった。お前たちはどう思う?」エリックは訊いた。
「そりゃ、断然怪しいのはあの人でしょ?」とセシル。
「僕もセシルと同じ意見だけど、目的がよくわからないな」
「目的が何であれ、このままにはしておけないな」そう言ったエリックの声音はひどく冷淡で、これがたとえただの脅しだったとしても、脅した者は無事では済まないだろうと想像できた。
「僕が向こうへ戻ろうか?状況を把握するにはそれがいいと思うけど」サミーはそう言って、エリックを見た。許可を求めたわけではないが、この問題にはそれぞれが役割を持って行動する必要がある。
「いや、お前はここでジュリエットを見張ってろ。向こうへはセシルが行け」
「え?僕で大丈夫かな?」セシルは戸惑い、サミーに目を向けた。
誰がどう動くかを決定するのは、いったい誰にあるのだろう。
「見張りね……彼女が滞在しているホテルにでも移ろうか?」いっそそうしてしまえば、彼女の動きを追いやすい。ついでにエリックからしばらく逃げることもできる。
「そうじゃない。見張りはすでに付けてる。お前はハニーが無事ラムズデンに到着するまで、ジュリエットを引きつけておけ」
エリックはアンジェラを守るため、僕を生贄として差し出すわけだ。至極まっとうな提案だとわかっていても、なぜか、すごく、胸が痛んだ。
つづく
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