はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 294 [花嫁の秘密]
セシルが行ってしまうと、やけに屋敷の中が静かで広く感じられた。図書室を覗いても、ただ整然と並ぶ本棚と空っぽのソファがあるだけだ。
エリックはセシルを送ったらすぐに戻ってくるのだろうか?それともまた彼の言う仕事とやらを口実に僕を避けるだろうか。
サミーはクッションを抱えてソファに横になった。エリックが部屋に来なかった昨夜は、ゆっくりと眠れたはずなのになぜか瞼が重い。目を閉じてこれからの事を思う。
当初の計画は単純なものだった。ジュリエットの自尊心を擽り牙を剥かせる、ただそれだけ。
僕を殺したいならそうすればいい。失敗しても成功しても、あとはエリックが何とかする。だから僕は先の事なんか考えず、思いついたまま行動すればよかった。
でもいまは事情が変わった。
「サミュエル様、手紙が届いております」
目を開けると、プラットが心配そうな顔でそばに立っていた。クッションを抱える男がそんなに珍しいか?
サミーは手紙をちょうだいと、手を伸ばした。漂ってくる香りから、誰から届いたのかすぐにわかった。朝早くに届いた手紙からも同じ香りがしたからだ。
躊躇いがちに手の上にそっと手紙が置かれ、プラットはそのまま静かに消えた。
サミーはゆっくりと起き上がり、クッションを脇に置いてソファの背にもたれた。手紙を開封し、目を通す。
今度はジュリエットの方から誘いが。カウントダウンイベントまで会わなくて済むかと思ったけど、そんなに甘くはなかった。
どうしようか。別に応じる必要もないけど、断るのも面倒だな。ティールームでお茶を飲むくらいなら、一昨日の埋め合わせにちょうどいい。ジュリエットは僕に置き去りにされて機嫌を損ねているようだ。エスコート役はデレクだったのに。
彼女の感情に興味はなかったが、アンジェラに贈り物をしたのか探る必要がある。具体的になんと聞けばいいのか見当もつかないけど。
熱い紅茶を頼もうと視線をあげた途端、手の中の手紙を取り上げられた。音もなく目の前に現れたエリックは、手紙を一瞥するとまっぷたつに破いた。
「無視しろ」と、前置きもなしにひと言。
「セシルはちゃんと列車に乗ったの?」こんなに早く戻ってくるとは予想外。途中でセシルを放り出していたりしたら、僕はエリックが思う以上に腹を立てるだろう。
「一等車に押し込んだから心配するな。この手紙はいつ届いた?俺に隠せるとでも思ったか?」エリックが冷ややかに言う。てっきり詰め寄ってくると思ったら、苛立たしげに息を吐き出し向かいのソファに座った。
「隠すつもりはないよ。さっき届いたばかりだしね」隠すつもりはないけど、わざわざ話すつもりもなかった。エリックは僕にいくつも隠し事をしているのに、どうして僕がすべてを話す必要があるのだろう。
「ジュリエットには会うな」エリックは選択肢はないとばかりに言い放った。
会うな?いまさら?「断る理由は?ジュリエットは少々の事では納得しないよ」
「理由なんかいくらでも思いつくだろう?予定が詰まっているとか、風邪を引いたとか。だいたいこの時期に暇だと思うな!」怒気を含んだ最後の言葉は、ジュリエットに向けたものだろう。
確かに、誘われればいつでも応じるほど暇だと思われるのも癪だ。なぜかエリックは昨日から怒っているし、これ以上面倒を増やすこともないのかもしれない。
「わかった。それで?僕はこれから何をしたらいいんだ」
つづく
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エリックはセシルを送ったらすぐに戻ってくるのだろうか?それともまた彼の言う仕事とやらを口実に僕を避けるだろうか。
サミーはクッションを抱えてソファに横になった。エリックが部屋に来なかった昨夜は、ゆっくりと眠れたはずなのになぜか瞼が重い。目を閉じてこれからの事を思う。
当初の計画は単純なものだった。ジュリエットの自尊心を擽り牙を剥かせる、ただそれだけ。
僕を殺したいならそうすればいい。失敗しても成功しても、あとはエリックが何とかする。だから僕は先の事なんか考えず、思いついたまま行動すればよかった。
でもいまは事情が変わった。
「サミュエル様、手紙が届いております」
目を開けると、プラットが心配そうな顔でそばに立っていた。クッションを抱える男がそんなに珍しいか?
サミーは手紙をちょうだいと、手を伸ばした。漂ってくる香りから、誰から届いたのかすぐにわかった。朝早くに届いた手紙からも同じ香りがしたからだ。
躊躇いがちに手の上にそっと手紙が置かれ、プラットはそのまま静かに消えた。
サミーはゆっくりと起き上がり、クッションを脇に置いてソファの背にもたれた。手紙を開封し、目を通す。
今度はジュリエットの方から誘いが。カウントダウンイベントまで会わなくて済むかと思ったけど、そんなに甘くはなかった。
どうしようか。別に応じる必要もないけど、断るのも面倒だな。ティールームでお茶を飲むくらいなら、一昨日の埋め合わせにちょうどいい。ジュリエットは僕に置き去りにされて機嫌を損ねているようだ。エスコート役はデレクだったのに。
彼女の感情に興味はなかったが、アンジェラに贈り物をしたのか探る必要がある。具体的になんと聞けばいいのか見当もつかないけど。
熱い紅茶を頼もうと視線をあげた途端、手の中の手紙を取り上げられた。音もなく目の前に現れたエリックは、手紙を一瞥するとまっぷたつに破いた。
「無視しろ」と、前置きもなしにひと言。
「セシルはちゃんと列車に乗ったの?」こんなに早く戻ってくるとは予想外。途中でセシルを放り出していたりしたら、僕はエリックが思う以上に腹を立てるだろう。
「一等車に押し込んだから心配するな。この手紙はいつ届いた?俺に隠せるとでも思ったか?」エリックが冷ややかに言う。てっきり詰め寄ってくると思ったら、苛立たしげに息を吐き出し向かいのソファに座った。
「隠すつもりはないよ。さっき届いたばかりだしね」隠すつもりはないけど、わざわざ話すつもりもなかった。エリックは僕にいくつも隠し事をしているのに、どうして僕がすべてを話す必要があるのだろう。
「ジュリエットには会うな」エリックは選択肢はないとばかりに言い放った。
会うな?いまさら?「断る理由は?ジュリエットは少々の事では納得しないよ」
「理由なんかいくらでも思いつくだろう?予定が詰まっているとか、風邪を引いたとか。だいたいこの時期に暇だと思うな!」怒気を含んだ最後の言葉は、ジュリエットに向けたものだろう。
確かに、誘われればいつでも応じるほど暇だと思われるのも癪だ。なぜかエリックは昨日から怒っているし、これ以上面倒を増やすこともないのかもしれない。
「わかった。それで?僕はこれから何をしたらいいんだ」
つづく
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