はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 277 [花嫁の秘密]
締めのベリーのタルトを食べ終え、やっぱり最後にもうひとつ食べておこうかと腰をあげたところで、サミーに流れるような仕草で会場から連れ出されていた。
「彼女は一緒に来ないの?」セシルは背中越しにちらりとジュリエットの方に視線を向けた。彼女はもうすでに別の席へ移動している。
「ああ、ブライアークリフ卿には会いたくないみたいだ」サミーは袖の糸くずをさっと払う仕草をした。
「そうなの?どうしてだろう」ジュリエットが今夜サミーと一緒に過ごせる機会をあっさり諦めるなんて意外だ。
「もしかすると以前何かあったのかもね。エリックに聞いてみたらすぐ答えてくれるんじゃないかな」どこか棘のある口調だ。
もしかして、サミーはリックが黙っていたことに気づいていて、当てこすっているのだろうか。まあ、僕が気づいたくらいだから、サミーが気づかないはずないよね。
「広間に行くの?」この屋敷の間取りは知らないけど、あきらかに広間とは別方向に進んでいる。でも、近づきたくない気持ちはわかる。きっと今はオークションみたいなことが行われていて、見栄っ張りな連中がわんさかいるに決まっている。
「どうしようか。寄付はもうしてきたけど、探らないといけないよね」
「え、そうなの?」さすがサミー。やるべきことはもう済ませたってわけか。それなら思う存分、例の四人目を探せるってわけだ。「でもさ、具体的になにを見ればいいのか全然わからないよ。これまで怪しい人はいた?」
「怪しいというか、なぜここにいるのか不思議に思ったやつなら一人いる」
「え、誰?どうして不思議に思ったの?」
「ここではまずいから、図書室でも行こうか」
今夜図書室は解放されていないけど、入ったからといって怒られたりはしないだろう。それに静かに話を出来る場所はだいたい図書室と決まっている。
図書室には誰もいなかったが、明かりは灯されていて部屋も十分暖められていた。きっと僕たちみたいに静かな場所へ避難したいと思う人がいた場合に備えていたのだと、セシルは都合よく思うことにした。
暖炉のそばの入口からは見えない場所に二人は座って、ホッとひと息ついた。
「セシルもこういう場所は苦手?アンジェラの誕生日の仮面舞踏会の時はあまり思わなかったんだけど、気になって」
「あれはすごく楽しかったよ。みんな知った人ばかりだったからかもね。僕はハニーより外の世界を知っているけど、結局、学校か家かしか知らないし」
「卒業後も、しばらく大学に残るんだって?」サミーはソファにゆったりと背を預け、細く長い脚を組んだ。リックの言うように、サミーは痩せすぎだ。もっと食べさせなきゃ。
「まあね。僕は三男だし、とくにお金持ちってわけでもないから、せめてそれなりの職に就かなきゃいけないからさ……」もう少し頭がよければ弁護士とか医者とか、それらしい仕事が選択肢に上がったのかもしれないけど、改めて言葉にしてみると本当にダメな三男で、溜息も出ないや。
「偉いね、セシルは。僕なんてずっとクリスの世話になってるだけなのに」サミーは力なく微笑んだ。
「サミーは、その、お金持ちでしょ」セシルはためらいながらも、一歩踏み込んだ。以前よりもサミーとの距離が近づいたいまなら、もっと兄弟らしい会話もできる気がした。それにリックはもっとずけずけしている。
「たぶん、そうだね。だからエリックが僕に屋敷を買わせようとしているのかな」
なんだかさらりとすごいこと言わなかった?リックの持ち家をサミーに売りつけるってこと?リックならやりかねないけど、サミーに相応しい屋敷を持っているのだろうか。
「それで、買うの?」確かめずにはいられなかった。
つづく
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「彼女は一緒に来ないの?」セシルは背中越しにちらりとジュリエットの方に視線を向けた。彼女はもうすでに別の席へ移動している。
「ああ、ブライアークリフ卿には会いたくないみたいだ」サミーは袖の糸くずをさっと払う仕草をした。
「そうなの?どうしてだろう」ジュリエットが今夜サミーと一緒に過ごせる機会をあっさり諦めるなんて意外だ。
「もしかすると以前何かあったのかもね。エリックに聞いてみたらすぐ答えてくれるんじゃないかな」どこか棘のある口調だ。
もしかして、サミーはリックが黙っていたことに気づいていて、当てこすっているのだろうか。まあ、僕が気づいたくらいだから、サミーが気づかないはずないよね。
「広間に行くの?」この屋敷の間取りは知らないけど、あきらかに広間とは別方向に進んでいる。でも、近づきたくない気持ちはわかる。きっと今はオークションみたいなことが行われていて、見栄っ張りな連中がわんさかいるに決まっている。
「どうしようか。寄付はもうしてきたけど、探らないといけないよね」
「え、そうなの?」さすがサミー。やるべきことはもう済ませたってわけか。それなら思う存分、例の四人目を探せるってわけだ。「でもさ、具体的になにを見ればいいのか全然わからないよ。これまで怪しい人はいた?」
「怪しいというか、なぜここにいるのか不思議に思ったやつなら一人いる」
「え、誰?どうして不思議に思ったの?」
「ここではまずいから、図書室でも行こうか」
今夜図書室は解放されていないけど、入ったからといって怒られたりはしないだろう。それに静かに話を出来る場所はだいたい図書室と決まっている。
図書室には誰もいなかったが、明かりは灯されていて部屋も十分暖められていた。きっと僕たちみたいに静かな場所へ避難したいと思う人がいた場合に備えていたのだと、セシルは都合よく思うことにした。
暖炉のそばの入口からは見えない場所に二人は座って、ホッとひと息ついた。
「セシルもこういう場所は苦手?アンジェラの誕生日の仮面舞踏会の時はあまり思わなかったんだけど、気になって」
「あれはすごく楽しかったよ。みんな知った人ばかりだったからかもね。僕はハニーより外の世界を知っているけど、結局、学校か家かしか知らないし」
「卒業後も、しばらく大学に残るんだって?」サミーはソファにゆったりと背を預け、細く長い脚を組んだ。リックの言うように、サミーは痩せすぎだ。もっと食べさせなきゃ。
「まあね。僕は三男だし、とくにお金持ちってわけでもないから、せめてそれなりの職に就かなきゃいけないからさ……」もう少し頭がよければ弁護士とか医者とか、それらしい仕事が選択肢に上がったのかもしれないけど、改めて言葉にしてみると本当にダメな三男で、溜息も出ないや。
「偉いね、セシルは。僕なんてずっとクリスの世話になってるだけなのに」サミーは力なく微笑んだ。
「サミーは、その、お金持ちでしょ」セシルはためらいながらも、一歩踏み込んだ。以前よりもサミーとの距離が近づいたいまなら、もっと兄弟らしい会話もできる気がした。それにリックはもっとずけずけしている。
「たぶん、そうだね。だからエリックが僕に屋敷を買わせようとしているのかな」
なんだかさらりとすごいこと言わなかった?リックの持ち家をサミーに売りつけるってこと?リックならやりかねないけど、サミーに相応しい屋敷を持っているのだろうか。
「それで、買うの?」確かめずにはいられなかった。
つづく
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