はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 276 [花嫁の秘密]
エリックがセシルを残して席を立った。セシルは甘いものを探してか、料理のあるテーブルへふらふらと向かった。今日一日、ずっとセシルの食べている姿を見ている気がする。
ちょうどジュリエットにいつロンドンへと尋ねたところだったが、気が逸れて答えを聞き逃してしまった。だが、特に答えは必要なかった。きっとジュリエットは僕の動向を寸分の隙なく見張っていただろうし、そうしていなかったとしてもきっと田舎暮らしに耐えられず、放っておいてもそのうち戻ってきていただろう。
「それで、ナイト子爵とは仲違いしたままなのかい?」サミーは何気ない会話を装いつつ、次の質問をした。
「別に喧嘩をしているわけではないのよ」ジュリエットは控えめに言って、サミーが差し出したグラスを手に取り中身を少しだけ口に含んだ。「ただ少し……考え方が合わないだけ」
それはそうだろう。浪費癖のあるジュリエットに対して、現ナイト子爵はかなりの倹約家だ。もちろんそうするだけの理由があり、ジュリエットもそれを理解しているべきだが、家計管理さえろくにしていなかった彼女にわかるはずもなかった。
返事をする気にもなれず、サミーは周りに視線を彷徨わせた。セシルはもう席に戻っていて、赤い実の乗ったケーキを美味しそうに食べている。セシルが見られていることに気づいたのか、目が合った途端照れ隠しのようににっこりと笑った。
サミーは笑みを返した。セシルはアンジェラと似ていると思っていたけど、エリックの方に似ているような気がしてきた。幼い顔つきや笑顔もアンジェラを思い起こさせるのに、夜会服姿のせいで今夜はずいぶんと大人の男に見える。
周りではセシルに声を掛けたくてうずうずしている女性たちが、機会をうかがっている。おそらくセシルは次のシーズンも変わらず花婿候補として名前が上がるだろう。
「それで?今夜は寄付をするためにここへ」サミーはごく軽い口調で訊いた。無駄な質問だとわかっていたが、ジュリエットが何と答えるのか興味があった。
ジュリエットはサミーの冗談を面白がるようにくすくすと笑った。「デレクはそんなつもりでわたしを招待したわけではないわ」
デレクがジュリエットを招待した理由は言うまでもない。「君とデレクが親しい間柄とは知らなかったよ」
「親しいというほどではないわ。ただお互い顔を合わせる機会が多かっただけ」
「僕はあまり賑やかな場所へは出掛けないからね」
「今日はどうして?クリスマスは向こうで過ごすと思っていたけど、何かあったの?」ジュリエットは先ほどサミーがした質問をそっくりそのまま返した。
本当はもっと質問攻めにしたいのだろう。けれど、今夜は連れが二人もいて、そのうち一人はあのエリック・コートニーだ。あまり踏み込めば自分が怪我をしかねない。
「もちろん寄付をするためだよ。僕は田舎でゆっくりしていたかったんだけど、エリックがどうしてもって言うから仕方なくね。」サミーは言葉を切って、セシルのいるテーブルに目を向け言った。「セシルのお腹も満たされたようだし、そろそろブライアークリフ卿のところへ行ってくるよ」席を立って付け加える。「君も一緒に行くかい?」
「いいえ、二人で行ってきてちょうだい」ジュリエットは懸命にもそう言った。
つづく
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ちょうどジュリエットにいつロンドンへと尋ねたところだったが、気が逸れて答えを聞き逃してしまった。だが、特に答えは必要なかった。きっとジュリエットは僕の動向を寸分の隙なく見張っていただろうし、そうしていなかったとしてもきっと田舎暮らしに耐えられず、放っておいてもそのうち戻ってきていただろう。
「それで、ナイト子爵とは仲違いしたままなのかい?」サミーは何気ない会話を装いつつ、次の質問をした。
「別に喧嘩をしているわけではないのよ」ジュリエットは控えめに言って、サミーが差し出したグラスを手に取り中身を少しだけ口に含んだ。「ただ少し……考え方が合わないだけ」
それはそうだろう。浪費癖のあるジュリエットに対して、現ナイト子爵はかなりの倹約家だ。もちろんそうするだけの理由があり、ジュリエットもそれを理解しているべきだが、家計管理さえろくにしていなかった彼女にわかるはずもなかった。
返事をする気にもなれず、サミーは周りに視線を彷徨わせた。セシルはもう席に戻っていて、赤い実の乗ったケーキを美味しそうに食べている。セシルが見られていることに気づいたのか、目が合った途端照れ隠しのようににっこりと笑った。
サミーは笑みを返した。セシルはアンジェラと似ていると思っていたけど、エリックの方に似ているような気がしてきた。幼い顔つきや笑顔もアンジェラを思い起こさせるのに、夜会服姿のせいで今夜はずいぶんと大人の男に見える。
周りではセシルに声を掛けたくてうずうずしている女性たちが、機会をうかがっている。おそらくセシルは次のシーズンも変わらず花婿候補として名前が上がるだろう。
「それで?今夜は寄付をするためにここへ」サミーはごく軽い口調で訊いた。無駄な質問だとわかっていたが、ジュリエットが何と答えるのか興味があった。
ジュリエットはサミーの冗談を面白がるようにくすくすと笑った。「デレクはそんなつもりでわたしを招待したわけではないわ」
デレクがジュリエットを招待した理由は言うまでもない。「君とデレクが親しい間柄とは知らなかったよ」
「親しいというほどではないわ。ただお互い顔を合わせる機会が多かっただけ」
「僕はあまり賑やかな場所へは出掛けないからね」
「今日はどうして?クリスマスは向こうで過ごすと思っていたけど、何かあったの?」ジュリエットは先ほどサミーがした質問をそっくりそのまま返した。
本当はもっと質問攻めにしたいのだろう。けれど、今夜は連れが二人もいて、そのうち一人はあのエリック・コートニーだ。あまり踏み込めば自分が怪我をしかねない。
「もちろん寄付をするためだよ。僕は田舎でゆっくりしていたかったんだけど、エリックがどうしてもって言うから仕方なくね。」サミーは言葉を切って、セシルのいるテーブルに目を向け言った。「セシルのお腹も満たされたようだし、そろそろブライアークリフ卿のところへ行ってくるよ」席を立って付け加える。「君も一緒に行くかい?」
「いいえ、二人で行ってきてちょうだい」ジュリエットは懸命にもそう言った。
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