はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 283 [花嫁の秘密]

「クリス!起きてっ」

「んん……もしかして今朝も雪が積もっているのかい」

クリスマスの朝も変わらずハニーは刺激的な起こし方をしてくれる。だが、正直まだ眠っていたい。

「違うわ、プレゼントが――」

クリスは腕を伸ばし、アンジェラを上掛けの中に引き入れた。昨夜脱がせた寝間着を着ている。

「もうっ、クリス。聞いて」アンジェラはくすくす笑いながら、クリスの逞しい胸に頬をすり寄せた。

「ハニー、この寝間着は素敵だけど、上に何か羽織らないと風邪をひいてしまうよ」

昨夜贈ったばかりのミセス・ローリングの薄紅色の寝間着は、着たと同時に脱がされ、アンジェラは一晩裸で過ごしたも同然なのだが、贈り主は都合よくそこは忘れたようだ。

「部屋が暖かいから平気よ。それにクリスもとても暖かいわ」アンジェラは大胆にもクリスの身体に脚を巻きつけぎゅっとする。クリスは思考が停止する前に何とか訊き返した。

「それで、プレゼントがどうしたって?ハニーから贈り物はキースがきちんと仕舞ったはずだ」ハニーからの贈り物は革の手袋で、年明けラムズデンに行くときに身に着けようと思っている。離れている間もハニーを感じられるように。

「わたしのじゃないわ。ダグラスが玄関にプレゼントが置いてあったって」

「誰から?」クリスはアンジェラを抱いたまま身体を起こした。「ダグラスはそれをどうしたか言っていたかい?」アンジェラの頬にかかるはちみつ色の髪の一筋を指先で払い、軽く口づける。いったいなんだってダグラスが寝間着姿の妻と話を?

「たぶん、まだ玄関よ。どうしたらいいのかクリスに聞きたがっていたの」

「ハニーはここにいなさい。ちょっと様子を見てくる」嫌な予感がする。これまでクリスマスの朝に、ダグラスが困るような贈り物が玄関に置いてあったことなど一度もない。

クリスはガウンを羽織り、もう一度アンジェラに口づけ、急いで部屋を出た。

「ああ、旦那様」ダグラスがちょうど廊下の向こうからやってきていた。余程困っているのか、主人を見るなり哀れな声を出した。

「ここではまずい。このまま下へ」おそらくハニーの耳に入れていい内容ではない。

二人は黙したまま玄関広間へ向かった。大理石の冷え冷えした玄関広間には新しく絨毯を敷いたばかりだ。この屋敷はまだハニーの思うような住まいになっていない。温かみがあり心地よく、誰もが離れがたくなるような屋敷をハニーと共に作っている最中だ。

その贈り物だという四角い箱は帽子がひとつ入るほどの大きさで、荷物を置く丸テーブルの上にメッセージカードともに置かれていた。その周りを使用人たちが取り囲んでいる。

「ほら、みな仕事へ戻りなさい」ダグラスが手を叩いて人払いをすると、使用人たちは主人に頭を下げつつ慌てて退散した。

「中を開けてみたのか?」クリスは閉じられた箱を見て尋ねた。メッセージカードには“Merry Christmas”とあるだけだ。宛名も差出人の名もない。

「はい。どうすべきか悩みましたが、やはり確認すべきだと思いまして――」

「どういう状況だったのか説明してくれるか?」怖気づいているわけではないが、中を確認する前に話を聞いておきたい。

「玄関の外に置いてあるのを、庭師のモリスが見つけてわたくしの所へ報告へ来ました。昨夜戸締りをした時にはありませんでしたので、夜中、置かれたと思われます。そのようなものが旦那様や奥様の目に入れていいものだとは思えませんでしたので、箱を開けることにしました」ダグラスはその時の驚きと動揺を思い出してか、わずかに身震いをした。

「他に見たものは?」

「わたくしとモリスと、あと、メグが……」

「メグが?メグが見て平気なものだったのか?」いくら感情が欠如している(ように見える)といっても、まだ子供だ。あまりにしっかりしているから忘れがちだが、エリックの身元保証がなければ雇ったりしなかっただろう。

クリスはゆっくりと蓋を持ち上げ、中を覗き見た。

レースの縁取りのされたハンカチの上にそっと置かれたナイフ。ハンカチにはアンジェラの名前が刺繍してあり、血痕がついていた。

つづく


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