はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 280 [花嫁の秘密]
サミーの言葉を疑う余地はない。こいつはハニーを犯そうとした男同様、自分の手でジュリエットを始末したいに違いない。だがそれをさせるわけにはいかない。もしも、その時がきたら、先に俺がやる。
「ところで、君の方は収穫はあったのかな」サミーが揶揄するように言う。わざわざ連れ出しておいて収穫なし、なんてないよねといった挑発的な目つきに、エリックは予期せず身体の芯を疼かせた。
この数日、なぜかサミーに欲情しっぱなしだ。二人きりで過ごす時間が増えたからか、欲情しているから二人の時間を増やしたのか、もうどっちがどっちだかわからない。「まあ、そこそこな。馬車を回すように言っておいた。詳しくは帰ってから話そう」
「あれ?もう帰るの?」セシルが甲高い声をあげた。
「もうじゅうぶん食べただろう」エリックは目をすがめた。今夜は役目をきちんとこなしているようだからいいが、こいつはとにかく食べ過ぎだ。
「ちがっ、そうじゃなくて……まあ、食べたけどさ」セシルは潔く認め、きゅっと口をすぼめた。
「僕はてっきり、ひと晩中デレクを見張るのかと思っていたよ。そこの椅子に座ったらどうだ?」いつまでも暖炉脇に立つエリックを邪魔だとでも言いたげに、本がいくつか重ねられている小さな丸テーブルのそばの椅子を指して言う。
エリックは踏み台らしき椅子を一瞥した。「あいつに張り付いても得るものはない。招待客リストは入手したし、用済みだ。ああ、そういえば、キャンベル夫人がついさっき到着したようだ。このあとの晩餐会に出席するらしいが、誰の招待だろうな?」
「もう夜一〇時だけど?」とセシル。さっきもう帰るのと言ったのを忘れたか?
「だからなんだ?クリスマスイヴだぞ、盛り上がるのはこれからだ」
「もしかして、ジュリエットも晩餐会に出席するのか?」サミーが訊いた。おそらく答えによって、ジュリエットがいつの時点で今日ここへ来ることになったのか、勝手に判断するつもりだ。そして俺を責める。つまりセシルは告げ口していないってことか。
「いや、生憎俺たち同様ブライアークリフ卿の御眼鏡には適わなかったようだ」今回は古くから付き合いのあるメンバーだけを集めたようだが、これがどうにも胡散臭い。これはまた別途調べることにしよう。
「あんなに寄付したのに?僕じゃなくてサミーの事だけど」
「サミーは俺の連れだし、俺が晩餐会なんてものに出ないことは彼も知っている」
「だから呼ばれなかったその他大勢は、応接室のビュッフェってわけね。僕は堅苦しい晩餐会よりもビュッフェの方でよかったけど」セシルが言うとなぜか負け惜しみに聞こえるが、実際食べたいものを好きなように選べる方がセシルにとっては満足度が高いだろう。
「そう、それじゃあ帰ろうか。僕はジュリエットに帰るとひと言声をかけた方がいいのかな?」サミーはゆるりと立ち上がり、上半身を軽くひねった。
「好きにすればいいが、玄関広間にデレクがいたから伝言でも頼んだらどうだ?」まだいるかはわからないが。
「あいつに頼むくらいなら、今夜ジュリエットと過ごした方がましだ」サミーはぴしゃりと言い、エリックに背を向けた。憤然とした足取りで部屋を横切っていく。
エリックとセシルは顔を見合わせ、慌てて後を追う。
今晩ジュリエットと過ごさせるくらいなら、この屋敷の寝室に引きずり込んでもうやめろと懇願するまで犯してやる。どちらにしろ、今夜は眠らせないと決めていた。場所が変わったところでどうということもない。
つづく
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「ところで、君の方は収穫はあったのかな」サミーが揶揄するように言う。わざわざ連れ出しておいて収穫なし、なんてないよねといった挑発的な目つきに、エリックは予期せず身体の芯を疼かせた。
この数日、なぜかサミーに欲情しっぱなしだ。二人きりで過ごす時間が増えたからか、欲情しているから二人の時間を増やしたのか、もうどっちがどっちだかわからない。「まあ、そこそこな。馬車を回すように言っておいた。詳しくは帰ってから話そう」
「あれ?もう帰るの?」セシルが甲高い声をあげた。
「もうじゅうぶん食べただろう」エリックは目をすがめた。今夜は役目をきちんとこなしているようだからいいが、こいつはとにかく食べ過ぎだ。
「ちがっ、そうじゃなくて……まあ、食べたけどさ」セシルは潔く認め、きゅっと口をすぼめた。
「僕はてっきり、ひと晩中デレクを見張るのかと思っていたよ。そこの椅子に座ったらどうだ?」いつまでも暖炉脇に立つエリックを邪魔だとでも言いたげに、本がいくつか重ねられている小さな丸テーブルのそばの椅子を指して言う。
エリックは踏み台らしき椅子を一瞥した。「あいつに張り付いても得るものはない。招待客リストは入手したし、用済みだ。ああ、そういえば、キャンベル夫人がついさっき到着したようだ。このあとの晩餐会に出席するらしいが、誰の招待だろうな?」
「もう夜一〇時だけど?」とセシル。さっきもう帰るのと言ったのを忘れたか?
「だからなんだ?クリスマスイヴだぞ、盛り上がるのはこれからだ」
「もしかして、ジュリエットも晩餐会に出席するのか?」サミーが訊いた。おそらく答えによって、ジュリエットがいつの時点で今日ここへ来ることになったのか、勝手に判断するつもりだ。そして俺を責める。つまりセシルは告げ口していないってことか。
「いや、生憎俺たち同様ブライアークリフ卿の御眼鏡には適わなかったようだ」今回は古くから付き合いのあるメンバーだけを集めたようだが、これがどうにも胡散臭い。これはまた別途調べることにしよう。
「あんなに寄付したのに?僕じゃなくてサミーの事だけど」
「サミーは俺の連れだし、俺が晩餐会なんてものに出ないことは彼も知っている」
「だから呼ばれなかったその他大勢は、応接室のビュッフェってわけね。僕は堅苦しい晩餐会よりもビュッフェの方でよかったけど」セシルが言うとなぜか負け惜しみに聞こえるが、実際食べたいものを好きなように選べる方がセシルにとっては満足度が高いだろう。
「そう、それじゃあ帰ろうか。僕はジュリエットに帰るとひと言声をかけた方がいいのかな?」サミーはゆるりと立ち上がり、上半身を軽くひねった。
「好きにすればいいが、玄関広間にデレクがいたから伝言でも頼んだらどうだ?」まだいるかはわからないが。
「あいつに頼むくらいなら、今夜ジュリエットと過ごした方がましだ」サミーはぴしゃりと言い、エリックに背を向けた。憤然とした足取りで部屋を横切っていく。
エリックとセシルは顔を見合わせ、慌てて後を追う。
今晩ジュリエットと過ごさせるくらいなら、この屋敷の寝室に引きずり込んでもうやめろと懇願するまで犯してやる。どちらにしろ、今夜は眠らせないと決めていた。場所が変わったところでどうということもない。
つづく
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花嫁の秘密 279 [花嫁の秘密]
「父が亡くなった時だから、四年前かな」
サミーは葬り去った記憶を掘り起し、先代のメイフィールド侯爵が亡くなった時のことを思い出していた。忘れたと思っていたけど、案外当時の光景がすんなりと目の前に浮かんでくる。
「その時見たの?その人」セシルがおずおずと訊いた。
「うん……でもまだ子供だった」そう見えただけで、本当は成人していたのかもしれない。「笑っていたんだ。父の葬儀の時に――それでよく覚えている」天使が僕の代わりに笑ってくれたのかと思った。クリスは自分に圧し掛かってくる責任に顔をこわばらせていたけど、僕は解放されて安堵していた。さすがに笑わないだけの分別はあったけど。
「親戚、ではないんだよね?」
「たぶん父と懇意にしていた誰かの息子だと思う。その時、彼が連れていた従者に今日見かけた男は似ていた」その従者に目を留めたのも、彼が目立ち過ぎていたからだ。歳はおそらく、その誰かの息子と同じくらいか少し上。見た目もどことなく似ていたから、それこそ親戚か何かだろう。
「名前はわかるの?」セシルは期待を込めて尋ねた。
サミーは小さく首を振った。「いや、まったくわからない。フェルリッジに戻って調べれば、当時葬儀に出席していた人物から割り出せるかもしれないけどね」
「でも、従者が四人目とは考えにくいね」セシルは指先で唇をはじき、あれこれ考えを巡らせている。
「そうだね。こんなところで会うとは思わなかっただけで、別におかしいところはなかったし。エリックの話から推測するに、四人目はやはりある程度の地位と、遊びに使える潤沢な資金を持っている人物だろうから、彼はちょっと違うかな」
だいたい、存在するのかもわからない人物をどうやって見分ければいいって言うんだ?エリックのように人と会うことを仕事としているわけでもないし、人を見抜く才に恵まれているわけでもない。
「そういえば、ジュリエットとはこれからどうするつもりなの?」セシルも考えるのを諦めたようだ。きっぱりと話題を変えてきた。
「それは俺も聞きたいね」
背後から声をかけられ、サミーの背は粟立った。セシルとなら気楽に話せることも、相手がこの男となれば話は違う。
「リック、よくここだってわかったね」セシルは椅子から身を乗り出した。兄に会えて案外嬉しそうだ。
「お前たちのいそうな場所くらいわかる。ジュリエットはどうした?」エリックは鼻で笑い、ゆったりとした足取りで近づいた。
「別のお友達と仲良くしているさ」サミーは素っ気なく答えた。
「ひとまず、今夜は逃げたわけだ」エリックはサミーの背後に立ち椅子の背に両手を置いた。「何か具体的な話をしたのか?」
「具体的って?僕と結婚しようかって言ったかどうかってこと?」
「笑えないからやめろ。結婚しようがどうしようが、お前は命を狙われているってことを忘れるなよ」エリックは二人の前に回り、強い口調で念を押した。
「ジュリエットに僕を殺せるとは思えないけどね」サミーは軽く受け流した。
「僕もそう思う。彼女はお金に執着するタイプかもしれないけど、サミーに何かするとは思えない」セシルはサミーに同調した。
「あの女がハニーにしたことを忘れたわけじゃないだろうな?ったく、お前らみたいな世間知らずがいいカモになるんだろうな」
「忘れるものか!彼女には僕は殺せないと言っただけで、そうしないとは言っていない。もし次に同じことをしてきたら、僕が彼女の息の根を止める」
つづく
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サミーは葬り去った記憶を掘り起し、先代のメイフィールド侯爵が亡くなった時のことを思い出していた。忘れたと思っていたけど、案外当時の光景がすんなりと目の前に浮かんでくる。
「その時見たの?その人」セシルがおずおずと訊いた。
「うん……でもまだ子供だった」そう見えただけで、本当は成人していたのかもしれない。「笑っていたんだ。父の葬儀の時に――それでよく覚えている」天使が僕の代わりに笑ってくれたのかと思った。クリスは自分に圧し掛かってくる責任に顔をこわばらせていたけど、僕は解放されて安堵していた。さすがに笑わないだけの分別はあったけど。
「親戚、ではないんだよね?」
「たぶん父と懇意にしていた誰かの息子だと思う。その時、彼が連れていた従者に今日見かけた男は似ていた」その従者に目を留めたのも、彼が目立ち過ぎていたからだ。歳はおそらく、その誰かの息子と同じくらいか少し上。見た目もどことなく似ていたから、それこそ親戚か何かだろう。
「名前はわかるの?」セシルは期待を込めて尋ねた。
サミーは小さく首を振った。「いや、まったくわからない。フェルリッジに戻って調べれば、当時葬儀に出席していた人物から割り出せるかもしれないけどね」
「でも、従者が四人目とは考えにくいね」セシルは指先で唇をはじき、あれこれ考えを巡らせている。
「そうだね。こんなところで会うとは思わなかっただけで、別におかしいところはなかったし。エリックの話から推測するに、四人目はやはりある程度の地位と、遊びに使える潤沢な資金を持っている人物だろうから、彼はちょっと違うかな」
だいたい、存在するのかもわからない人物をどうやって見分ければいいって言うんだ?エリックのように人と会うことを仕事としているわけでもないし、人を見抜く才に恵まれているわけでもない。
「そういえば、ジュリエットとはこれからどうするつもりなの?」セシルも考えるのを諦めたようだ。きっぱりと話題を変えてきた。
「それは俺も聞きたいね」
背後から声をかけられ、サミーの背は粟立った。セシルとなら気楽に話せることも、相手がこの男となれば話は違う。
「リック、よくここだってわかったね」セシルは椅子から身を乗り出した。兄に会えて案外嬉しそうだ。
「お前たちのいそうな場所くらいわかる。ジュリエットはどうした?」エリックは鼻で笑い、ゆったりとした足取りで近づいた。
「別のお友達と仲良くしているさ」サミーは素っ気なく答えた。
「ひとまず、今夜は逃げたわけだ」エリックはサミーの背後に立ち椅子の背に両手を置いた。「何か具体的な話をしたのか?」
「具体的って?僕と結婚しようかって言ったかどうかってこと?」
「笑えないからやめろ。結婚しようがどうしようが、お前は命を狙われているってことを忘れるなよ」エリックは二人の前に回り、強い口調で念を押した。
「ジュリエットに僕を殺せるとは思えないけどね」サミーは軽く受け流した。
「僕もそう思う。彼女はお金に執着するタイプかもしれないけど、サミーに何かするとは思えない」セシルはサミーに同調した。
「あの女がハニーにしたことを忘れたわけじゃないだろうな?ったく、お前らみたいな世間知らずがいいカモになるんだろうな」
「忘れるものか!彼女には僕は殺せないと言っただけで、そうしないとは言っていない。もし次に同じことをしてきたら、僕が彼女の息の根を止める」
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