はじめまして。
BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。
コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。
花嫁の秘密 295 [花嫁の秘密]
いったいこいつをどうしようか。
エリックは自分の感情をうまくコントロールできずに苛立っていた。
ひとまずすべきことはした。ハニーの安全を確保したいまは、とにかく目の前の男の事だけに集中しよう。
「ウッドワース・ガーデンズのカウントダウンイベントに行くんだろう?それで十分だ」図々しいジュリエットの言うことをいちいち聞いていたらきりがない。ひとつ何か許せば、いくらでも要求してくるタイプの女だ。
「そうは言っても、一度くらいは会っておいた方がいいと思うのは、僕だけかな」サミーはまるで近所の子犬にでも会いに行くような気軽さで言う。それがまたエリックを苛立たせた。
「俺は思わないね。簡単に手に入る獲物だと思われてもいいのか?」エリックはサミーを見つめた。サミーは視線を逸らしはしなかったが、感情を読み取られないように目の動きを抑えている。
「ただお茶を飲むだけだ。とにかく君は僕の行動を管理しないと気が済まないんだな。ついでにアンジェラに例の贈り物をしたか尋ねようと思っていたのに」拗ねたふうに唇をすぼめる。
「尋ねる?」エリックは頓狂な声をあげた。「元恋人の妻にナイフを送り付けたか訊くのか?」こいつにはいつも驚かされるが、まさか本気じゃないだろうな。
「もちろん直接ではないよ。遠回しに探ろうと思っただけだ」
まったくなんて無謀なんだ。女の扱いもままならないのに、なぜ聞き出せると思うのだろうか。こういう時、自分とサミーの経験値の差を嫌でも感じる。サミーは長い間、ハニーと同じように閉じた世界で過ごしてきた。しかもハニーとは違ってひどい扱いを受けてきた。もし前侯爵が生きていたら八つ裂きにしていただろう。
「その贈り物を回収してこっちに送るように言ったから、そこから調べようと思っている。ナイフはごくありふれたものなのか、ハンカチはどこで買われたものなのか、刺繍から何かわかることがあるか、もちろん箱も」どれかひとつでも入手先が分かれば、犯人なんかすぐにわかる。だからわざわざサミーの手を煩わせることもない。
「僕の出番はどこにあるのかな?僕にできることなんてなさそうだけど」サミーは立ち上がって呼び鈴を鳴らしに行った。
するとプラットが間を空けずに部屋に滑り込んできた。あまりの素早さに、廊下で立ち聞きしていたのではと疑いたくなるほどだ。
「熱いお茶をお願い。それから、何かつまめるもの……クッキーか何かあれば」
サミーにしては珍しい。セシルに影響されたか、食欲も戻ってきているようだ。プラットも同じことを思っているのだろう、「すぐにご用意いたします」と上機嫌で部屋を後にした。
サミーが元の場所に戻るのを待って、エリックは切り出した。「メリッサをこっちに呼んだ。カウントダウンイベントに連れて行く」
「メリッサ嬢を?なぜ?」
「俺とお前とジュリエットで花火を楽しむのか?お前はジュリエットと俺はメリッサと、その方が自然に見えるだろう?」
サミーはしばらく考え込んでいたが、やがて言った。「そうかもね。メリッサ嬢とジュリエットがどんな会話をするのか見てみたい気もするし」
「お前はなかなか意地が悪いな。だが、俺も興味がある」エリックはにやりとした。
「僕はジュリエットが彼女を侮辱するようなことを言わないか心配だよ」
「侮辱ならされ慣れているから気にするな。あいつはそんなにやわじゃない」
「彼女はどこに滞在するの?君の隠れ家?」サミーが探るような視線を向ける。どういう意図かはわからないが、嫉妬でもしてくれれば可愛げもあるんだが。
「自分の屋敷を持ってる」エリックは短く答えた。
「てっきり売り払ってから向こうへ行ったのかと思っていたけど。だって、屋敷をひとつ買っただろう?」
「帰る場所を残しておけと言ったんだ。あいつの夢は失敗に終わるかもしれないし、オークロイドの事もあるからな」
サミーが顔をしかめた。「ああ、クリスの親友ね。確か彼、婚約したんだよね。とても意外な展開だけど」
意外な展開なんてものじゃなかった。せっかくメリッサとうまくいきかけていたのに、オークロイドは結婚を焦るファニー・ブレナンの策略にまんまとはまって、彼女の名誉を守るため婚約をせざるを得なくなった。断ればよかったのにとひと言では片付けられない世界に身を置いているのだから、それも仕方ないだろう。
こっちの問題が落ち着いたら、まあ助けてやらないこともないが、それをメリッサもオークロイドも望むかだな。
「何が起こるかわからないからこそ、お前ももっと慎重に行動するんだな」そうしないと、本当にジュリエットと結婚する羽目になる。
つづく
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エリックは自分の感情をうまくコントロールできずに苛立っていた。
ひとまずすべきことはした。ハニーの安全を確保したいまは、とにかく目の前の男の事だけに集中しよう。
「ウッドワース・ガーデンズのカウントダウンイベントに行くんだろう?それで十分だ」図々しいジュリエットの言うことをいちいち聞いていたらきりがない。ひとつ何か許せば、いくらでも要求してくるタイプの女だ。
「そうは言っても、一度くらいは会っておいた方がいいと思うのは、僕だけかな」サミーはまるで近所の子犬にでも会いに行くような気軽さで言う。それがまたエリックを苛立たせた。
「俺は思わないね。簡単に手に入る獲物だと思われてもいいのか?」エリックはサミーを見つめた。サミーは視線を逸らしはしなかったが、感情を読み取られないように目の動きを抑えている。
「ただお茶を飲むだけだ。とにかく君は僕の行動を管理しないと気が済まないんだな。ついでにアンジェラに例の贈り物をしたか尋ねようと思っていたのに」拗ねたふうに唇をすぼめる。
「尋ねる?」エリックは頓狂な声をあげた。「元恋人の妻にナイフを送り付けたか訊くのか?」こいつにはいつも驚かされるが、まさか本気じゃないだろうな。
「もちろん直接ではないよ。遠回しに探ろうと思っただけだ」
まったくなんて無謀なんだ。女の扱いもままならないのに、なぜ聞き出せると思うのだろうか。こういう時、自分とサミーの経験値の差を嫌でも感じる。サミーは長い間、ハニーと同じように閉じた世界で過ごしてきた。しかもハニーとは違ってひどい扱いを受けてきた。もし前侯爵が生きていたら八つ裂きにしていただろう。
「その贈り物を回収してこっちに送るように言ったから、そこから調べようと思っている。ナイフはごくありふれたものなのか、ハンカチはどこで買われたものなのか、刺繍から何かわかることがあるか、もちろん箱も」どれかひとつでも入手先が分かれば、犯人なんかすぐにわかる。だからわざわざサミーの手を煩わせることもない。
「僕の出番はどこにあるのかな?僕にできることなんてなさそうだけど」サミーは立ち上がって呼び鈴を鳴らしに行った。
するとプラットが間を空けずに部屋に滑り込んできた。あまりの素早さに、廊下で立ち聞きしていたのではと疑いたくなるほどだ。
「熱いお茶をお願い。それから、何かつまめるもの……クッキーか何かあれば」
サミーにしては珍しい。セシルに影響されたか、食欲も戻ってきているようだ。プラットも同じことを思っているのだろう、「すぐにご用意いたします」と上機嫌で部屋を後にした。
サミーが元の場所に戻るのを待って、エリックは切り出した。「メリッサをこっちに呼んだ。カウントダウンイベントに連れて行く」
「メリッサ嬢を?なぜ?」
「俺とお前とジュリエットで花火を楽しむのか?お前はジュリエットと俺はメリッサと、その方が自然に見えるだろう?」
サミーはしばらく考え込んでいたが、やがて言った。「そうかもね。メリッサ嬢とジュリエットがどんな会話をするのか見てみたい気もするし」
「お前はなかなか意地が悪いな。だが、俺も興味がある」エリックはにやりとした。
「僕はジュリエットが彼女を侮辱するようなことを言わないか心配だよ」
「侮辱ならされ慣れているから気にするな。あいつはそんなにやわじゃない」
「彼女はどこに滞在するの?君の隠れ家?」サミーが探るような視線を向ける。どういう意図かはわからないが、嫉妬でもしてくれれば可愛げもあるんだが。
「自分の屋敷を持ってる」エリックは短く答えた。
「てっきり売り払ってから向こうへ行ったのかと思っていたけど。だって、屋敷をひとつ買っただろう?」
「帰る場所を残しておけと言ったんだ。あいつの夢は失敗に終わるかもしれないし、オークロイドの事もあるからな」
サミーが顔をしかめた。「ああ、クリスの親友ね。確か彼、婚約したんだよね。とても意外な展開だけど」
意外な展開なんてものじゃなかった。せっかくメリッサとうまくいきかけていたのに、オークロイドは結婚を焦るファニー・ブレナンの策略にまんまとはまって、彼女の名誉を守るため婚約をせざるを得なくなった。断ればよかったのにとひと言では片付けられない世界に身を置いているのだから、それも仕方ないだろう。
こっちの問題が落ち着いたら、まあ助けてやらないこともないが、それをメリッサもオークロイドも望むかだな。
「何が起こるかわからないからこそ、お前ももっと慎重に行動するんだな」そうしないと、本当にジュリエットと結婚する羽目になる。
つづく
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