はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 287 [花嫁の秘密]

美術品の収集家であるチェスター卿の屋敷を訪問していたエリックは、突如現れたブラックに驚きを隠せなかった。静かに人の輪を抜け、ギャラリーから廊下へと出る。

「サミーになにかあったのか?」ブラックを玄関広間のすぐ隣の部屋に引き込みながら、性急に尋ねた。こいつの役目はサミーのそばを離れず守ること。離れてここへ来ているということは、つまり――

「疲れているようですが、なにも――」ブラックが淡々と言う。

「だったらなんだ?まとまりかけた商談を潰すためにここへ来たわけじゃないだろう?」勿体つけるブラックに、エリックは苛々と訊き返した。なにもなくて持ち場を離れるはずがない。

「メイフィールド侯爵から電報が届いたようです、あなた宛てに」

「俺に?クリスは何だって?」

「俺は中を見ていませんので、ただ、あの方よりいますぐに戻ってきて欲しいと伝言を受けました」

サミーがすぐに戻れと?あいつがそんなことを言うのは、まれだ。よほどのことがあったに違いない。

「それを先に言え!」いったいいまので何分ロスした?「話は帰り道で聞く」

エリックはチェスター卿に挨拶もせず、玄関広間にいた従僕にコートとステッキを出せと命じ、最後に帽子をひったくるようにして頭に乗せると屋敷を飛び出した。俺一人いなくなったからといって誰も困ったりしない。ただせっかくの機会をふいにするのは、とても惜しい。

「馬車を拾いますか?」ブラックが大通りに目を向け尋ねる。

「いや、道が混んでいるからこのまま歩いて戻る。それで、なんで俺宛ての電報をあいつが読むんだ?」

「コートニー邸に届いた電報はあなたとセシル様宛でした」

それだけで、この流れのすべてが理解できた。向こうの屋敷から回された電報をセシルが読み、おそらく一緒に茶でも飲んでいたサミーも内容を知ることになったのだろう。だがなぜクリスはサミーではなく俺たちに電報を寄越した?サミーには知られなくない内容だったとしか思えないが、なにが起こったにせよハニーに関することなのは間違いないだろう。

通りを行き交う人々の波を縫うようにして、車道を横切り、エリックはリード邸へと戻る道とは別の通りに入った。もし重大な事件が起こっていたのだとしたら、こっちにも知らせが届いているはずだ。タナーがうまく電話を受けてくれていたらいいが。あいつはいまだに電話を恐ろしい悪魔か何かと思っている。

「ブラック、お前は先に戻っていろ」いまはサミーから目を離したくない。

「かしこまりました。ですが早く戻ってください、あの方はかなり怒っていらっしゃいましたから」そう言い残し、ブラックは別の道を行った。

怒っている?それも最初に言えなかったのか?あいつが誰の目から見ても怒っているということは、つまり激怒しているということ。いったい何に?まさか俺にじゃないだろうな。

こっちは仕事をひとつ潰したっていうのに、いったい戻ったら何が待ち受けているんだ。

つづく


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