はじめまして。


BL小説を書いております、やぴと申します。
こちらは男同士の恋愛小説となっております。
ストーリーの関係上、性描写があります。
ご理解いただける方のみ、自己責任において閲覧ください。
実際は小説と呼べるほどのものでもなく、趣味で書いていますので、稚拙な文章ではありますが楽しく読んで頂けると幸いです。

コメントなど気軽に頂けると嬉しいです。
誹謗中傷などの心無いコメントは当方で削除させていただきます。ご了承下さい。

花嫁の秘密 274 [花嫁の秘密]

「ダンスでも申し込んだらどうだ?」

サミーは目の前のいかれた男を睨むように見つめた。デレクは突如目の前にジュリエットを登場させただけでは飽き足らず、この僕に踊れと言う。

「踊るのは好きじゃない」きっぱりと言い切った。「誰とでも」ジュリエットの手前ひと言付け足すのも忘れなかった。相手が誰であろうとも、僕は踊ったりしない。

「サミュエルを困らせるのはやめてちょうだい」ジュリエットがデレクに向かって言った。くすくす笑い、まるで自分の飼い猫にちょっかいを出された時のような口調だ。

彼女との関わりを一切絶つと決めたのはほんのわずか前の事。新聞社にも僕たちのことを記事にするなと告げたばかりで、よりによってこんな場所で遭遇するとは思いもしなかった。いったいいつ彼女はこっちへ出てきたのだろう。この場で彼女に冷たくするのは得策ではないが、かといってこれまでのような振る舞いはできない。

サミーは溜息を吐きたいのをなんとか堪えた。
仕方がない。さっきからずっと僕の様子をうかがっている二人に助けを求めるか。

サミーは視線を舞踏室の入り口に向けた。もう彼らはこっちへ向かって歩いてきている。ふいにエリックはこのことを知っていたのではという疑惑が頭をもたげた。ジュリエットと僕を対峙させるため、わざわざこの集まりを選んだ。そう考えるとしっくりくる。

やけに擦り寄ってきていたのも、僕を思い通りに動かそうって魂胆だったのでは?

「サミー、ここだったか」いかにもな、わざとらしいセリフ。誰もがエリックを胡散臭いと思うのもこういったところからくるのだろう。

「君が迷子になってはと思って、動かずにいたんだ」悪いのは僕じゃないと肩をすくめる。

エリックの視線はすぐにいかれた男へと移った。「やあ、デレク。まさか、ナイト子爵未亡人――いや、今はレディ・オースティンと呼ぶべきだったか、一緒だったとはね。次の曲がそろそろ始まりそうだ。踊ってきたらどうだ?」

どうやらデレクの先ほどの言葉は、エリックの耳にも届いていたようだ。僕の代わりにやり返すとは、エリックへの怒りは収まらないが、この場で争うような真似だけは避けることにしよう。

「そろそろ父のところへ行かないと」デレクはひきつった笑みを顔に張り付けたまま言った。「レディ・オースティンはゆっくりしていってください。では」そそくさと去っていく姿は、沈みゆく船から脱出するねずみのようだ。

デレクが行ってしまうと、ジュリエットはサミーの肘の辺りにそっと手をかけた。ほとんど触れるか触れないかで、相手がどう反応するのか出方を伺っている。「喉が渇いたわ、サミュエル」

「応接室に飲み物と食べるものがありましたよ」セシルがつと口を挟む。

ジュリエットは形よく整えられた眉を上げてサミーを見た。初対面のセシルを紹介しろといった様子。当然知らないはずはないのだが、こういう形式ばったやり取りは必要なのだろう。

「ジュリエット、彼はセシル・コートニー。エリックの弟だ」

「はじめまして、ジュリエット・オースティンです。ジュリエットと呼んでください」親しげに振舞うのは、自分も家族の仲間入りを目論んでいるからか。

実際、彼女と結婚したらどうなるのか試してみたくてうずうずする。けどどうやってもうまくいかないのは明らかだ。それに、目の前の男がそれを絶対に許さないだろう。下手したらジュリエットに殺される前に、エリックに殺されてしまうかもしれない。

つづく


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